父親が斬る………といいなぁ   作:初任者

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第10話ー王宮ー

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第10話

ー王宮ー

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☆☆☆☆☆☆☆☆

○語りside○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

帝国中の財が集められた場所こそ王宮である。

 

そんな王宮には精鋭と言えるだけの近衛兵達が詰め、多くの文官達も働き回っている。

 

つまり、豪華な見た目に反して王宮は騒がしい。

 

しかし、今日はピンと張った空気と共にその騒がしさは静けさへと変わっていた。

 

 

「あ、あれは………」

 

 

近衛兵の1人がゴクリと唾を飲み込む。

 

王宮の人間達の視線の先にいるのは、白地に所々に薄い青色を使った軍服を着た男であった。

 

 

「か、カイドウ将軍」

 

 

ーーー大嵐のカイドウ。

それは帝国の伝説となった男であった。

 

 

「エスデス将軍に会いに来た。いるか?」

「は、はひ‼︎ お、お部屋でお待ちです‼︎ ご、ご案内しましゅ‼︎」

 

 

近衛兵の案内で、カイドウが進む。

 

 

「あ、あれが大嵐のカイドウ」「隠居したと聞いていたが………」「子育てが終わったらしいぞ?」「将軍が復帰されるなら革命軍など鎧袖一触であろう」

 

 

ズンズンとカイドウは案内される道を進む。

 

 

「こ、こちらになります」

「ありがとう」

 

 

カイドウが部屋の中に入る。

 

 

「「あ」」

 

 

そこでは、椅子に座ったままのタツミに、エスデスが背後から抱きついていた。

 

 

「おいおい、熱々なのは見えないところでにしてくれんか?流石に目の前でやられると父親としてはちょっと複雑」

「いやいや!急に抱きつかれただけだから‼︎」

 

 

タツミがエスデスから離れる。

 

 

「タツミはいけずだな」

 

 

エスデスが頬を膨らませて怒ってますアピールを行う。

 

 

「ーーーさて、シラフで会うのはお久しぶりですな。義父」

「ああ、俺も昨日の記憶はないから実質的に数年ぶりだな」

 

 

カイドウが椅子に座り込む。

 

 

「ずいぶん長旅だったようですね」

「あー、変な危険種殺し回ってた。最近の帝国はあんな化け物を放置してるのか?ちょっと職務怠慢だぞ?」

 

 

カイドウがエスデスに注意する。

 

 

「こちらには報告は来ていませんが………分かりました。警備部隊を増員しておきます」

「囚人服を着た人型の危険種だ。戦力的には危険種1に対して一般帝国兵2.3名というところだろうな」

「私の直属兵なら問題ありませんな。対処させます」

「ああ、お前のところなら問題ないだろう」

 

 

カイドウはタツミをチラッと見てから、エスデスに声をかける。

 

 

「だいぶうちの息子が世話になってるようだな」

「未来の旦那様だからな‼︎」

 

 

エスデスがドヤ顔で答える。

 

 

「エスデス………そのだな」

「義父よ、奥で話しませんか?ここでは他人の耳もありますので………」

「それもそうだな。タツミそこで待ってろ。奥でエスデスと話してくる」

「え?あ、ああ」

 

 

カイドウとエスデスは部屋の奥へと向かう。そこは寝室であった。確かにここならば他人に聞かれることはないだろう。

 

 

「義父よ。この前言ってた事を答えていただきたい」

「あ〜すまん、言ったことを覚えてない」

「義父は本当に酒癖が悪いですな。義父は私が未来から逆行してきた事を当てたのですよ」

「………は?」

 

 

カイドウは思わずといった声を出す。

 

 

「どうして知っているか、お答えいただいても?」

「………あ〜簡単に言えば俺も同じようなもんだからだ」

 

 

カイドウはめんどくさくなり、普通に答える。

 

 

「しかし前の帝国には義父は………」

「ただしお前の知る世界ではない。違う世界から来たのさ。だから前の帝国には居なかった」

 

 

カイドウが笑みを浮かべる。

 

 

「しかし、エスデスが逆行してきていたとは………」

「私としても義父が違う世界から来たとは………驚きました」

 

 

カイドウは近くにあったイスに座る。

 

 

「で?お前は今後どうする気だ?」

「愛に生きます。私はタツミさえいればいい」

「恋でもなく、愛………か」

 

 

カイドウの脳裏に妻の姿が浮かぶ。

 

 

「愛と恋は別のものだ。お前はそれを愛と言えるか?」

「はい」

 

 

エスデスははっきりと答える。

 

 

「そうか………なら結果で表せエスデス。それで判断する。お前の思いが愛かどうか、な」

 

 

瞬間、ドアがものすごい勢いでノックされる。

 

 

「し、将軍‼︎ たたたた大変ですぅうう‼︎ だ、大臣がぁああああ‼︎ オネスト大臣がぁああああ‼︎」

 

 

衛兵が悲鳴のような声を上げている。

 

 

「狼狽えるな‼︎ 中に入ってはっきり報告しろ‼︎」

「は、はひ‼︎」

 

 

衛兵が中に入り説明を始める。

 

 

「ほ、報告いたします‼︎ オネスト大臣が粛清を宣言されました‼︎ 多数の兵士と近衛兵まで動員して対象者の捕縛を開始しています‼︎」

「反乱軍の前に帝国の良識派を叩く算段か? 誰が拘束されている?」

「"大臣派"の大物が次々と‼︎」

「「………ん?んん?」」

 

 

2人は聞き間違えかと思い問い直す。

 

 

「大臣派です‼︎ 大臣自ら大臣派の腐敗政治家たちの粛清を開始しました‼︎ 名だたる大臣派の大物達が拘束されています‼︎」

「「………はぁッ⁉︎」」

 

 

悪の親玉が部下たる悪の粛清を始める。それが現実に起きていた。

 

 

「大臣、狂ったか?」

 

 

そういえばとエスデスは思い出す。最近どうもオネストの様子がおかしかった事を。

 

 

「さらに大臣自ら良識派を重要ポストに抜擢しており、帝国の政治中枢が良識派へと変わってきています‼︎」

 

 

それは、帝国の腐敗の終わりを意味していた。

 

 

*********

○大臣執務室○

 

 

「この男は犯罪組織と内通しています。泳がせつつ部隊を配備して摘発しなさい」

「は、はい‼︎」

 

 

オネストの命令に、混乱を表情に浮かべながら将軍が敬礼を返す。

 

 

「………もう少し味方が欲しいところですかね」

 

 

オネストは退室する将軍を見送り、すっかり細くなった顎を右手でさする。

 

 

「国を悪くするのは容易かった………では、良くするのはどうでしょう?」

 

 

オネストは考えた末に考え方を変えた。財を溜め込み浪費しても己の空腹に似たそれを満たすことはできなかった。ならば逆に良い政治をしてみようと考えたのだ。

 

 

「くっふっふっふ………やはり思った通りですね。いいです、いいですよ‼︎ 満たされていく‼︎ 空腹が‼︎」

 

 

オネストは凶悪な笑みを浮かべる。

 

 

「さあ、私が育て上げた帝国の闇よ。今こそ私に逆らうがいい………それを真っ向から叩き潰して差し上げましょう」

 

 

オネストは政治闘争に快楽を見出していた。帝国の闇を育て上げた手腕が、遺憾無く育てたものを潰すために振るわれようとしていた。

 

そしてその手腕により、帝国の闇は大ダメージを受けていた。腐敗した政府高官達は次々と捕縛され、政府高官と癒着関係にあった犯罪組織も次々と壊滅することとなる。

 

のちに、帝国史に刻まれる奇跡の会心は、圧政に苦しんだ民達に、そして敵の総大将をオネストとしていた反乱軍に大きな衝撃を与えたのであった。

 

 

ーーー怪物は神に魅入られ、自ら邪道から正道を歩き始める。

ーーーしかし、その先は贖罪のための地獄か、はたまたそれとも………。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

○語りsideEND○

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エンド

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まさかの大臣大革命でした。この後も続く予定です。
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