父親が斬る………といいなぁ   作:初任者

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久しぶりに書いてみました。楽しみにされていた方は大変申し訳ございませんでした。


第11話ー滅ぶ者達ー

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第11話

ー滅ぶ者達ー

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*********

○帝国○

○王宮:謁見の間○

 

 

俺達の目の前に、大臣派でも【大臣の裾持ち】とまで呼ばれた貴族の男が、衛兵に引っ立てられて連れて来られる。

 

 

「汝を汚職、犯罪組織との癒着、殺人、恐喝、脱税………大臣、これはなんと読む?「国家転覆未遂罪ですね」なるほど‼︎ 国家転覆未遂の罪により、死刑に処す‼︎」

 

 

幼き皇帝が罪人に宣言する。

 

 

「さて、カイドウ………どのような刑が妥当か?」

 

 

幼き皇帝が俺に問いかける。

 

 

「………【ファラリスの雄牛】が妥当かと」

「ふぁらりすの?まあよい、それにしよう」

 

 

少し待つと、出入り口から鉄製の牛の置物が運び込まれてくる。

 

 

「ーーーッ⁉︎」

 

 

猿轡をされ四肢を拘束された罪人が、泣きながらジタバタと暴れる。

 

 

「うーむ、これはどう使うのだ?」

「将軍も中々に乙な処刑方法をお選びになられる…私から説明いたしましょう」

 

 

オネスト大臣が前に出て説明を始める。

 

 

「まず、罪人を牛の中に入れます」

 

 

牛の中は空洞であり、暴れる罪人が牛の中に入れられる。その際に猿轡を取られ、拘束も解かれる。しかし、鍵を閉められるために外に出ることはできない。

 

 

「牛の下の大皿で火を焚きます」

 

 

パチパチと皿の上で火が踊る。

 

 

「あとは鉄に伝わる熱で呼吸できなくなった死刑囚が、新鮮な空気を求めて牛の内部に備え付けられている管で呼吸をしようとすると…」

ーーーぶぉおおお。

 

 

牛から牛の鳴き声のような音がする。そう、これは死刑囚が新鮮な空気を求めて奏でる死の音楽である。

 

 

「という風に音楽を焼け死ぬまで奏でてくれるのですよ」

「こ、これは中々に残酷な処刑方法だな…朕は少し苦手だぞ。焦げる匂いも臭いし」

 

 

オネスト大臣が幼い皇帝に語りかける。

 

 

「陛下、皇帝というものは女神の微笑みのような優しさだけでは国を統治できません。時には地獄すらも生ぬるいと感じさせるほどの残酷さも必要です。割合的には優しさ6の残酷さ4というところでしょうか?」

「残酷さ、か?」

「ええ、ご覧ください」

 

 

幼い皇帝が家臣達の顔を見る。全員が青い顔をしている。

 

 

「慈愛だけでは家臣達は勝手につけあがり、今回のような事を起こします。なればこそ、このような鞭を見せつける必要があるのデス‼︎」

 

 

オネスト大臣の視線が、ゆっくりと俺に向く。

 

 

「その点、このファラリスの雄牛は素晴らしいものです。ここまで見せつけるという行為を芸術的に仕上げたものはありません。開発者のカイドウ将軍はどう思われますかな?」

「ッ⁉︎」

 

 

タツミが驚いた顔で俺を見る。

 

 

「………元々、ファラリスの雄牛は命令に逆らい略奪等の重罪軍務違反に対して執行される処刑方法だ。他の兵士達への見せしめも含めてある程度は残酷なものでなければならない。

ーーーそう、このファラリスの奏でる音を聞いた時に恐怖を感じる程度でなければならない」

 

 

その点、前世の知識からコピー生産したこのファラリスの雄牛は十二分に効力を発揮した。

 

 

「よって、当時俺の部隊での軍規違反はいない」

「だ、だけど………」

「タツミ、戦争で人は死ぬ。将軍とは戦争で死んだ部下を無駄な死であったとさせないことだ」

 

 

俺は腕を組む。音が弱くなってきた。

 

 

「軍規違反の死刑など無駄な死以外の何物でもない。ならばその死すらも俺は利用した。一度は俺に預けてくれた命を無駄にしないように」

「お、親父」

 

 

音が止み、死刑官が死体を確認して、ファラリスの雄牛ごと運び出す。

 

 

「カイドウは前へ」

「はっ」

 

 

俺は皇帝の前へ出て片膝をつく。

 

 

「カイドウよ、朕が汝に命ずる。将軍に復職し、再び帝国のためにその武を振るえ」

「ははっ‼︎ 謹んで将軍の任を拝命いたします‼︎ 陛下に大義がある限り、我が武を振るいましょうぞ‼︎」

「うむ、汝に【右将軍】の地位を与える‼︎これは大将軍の次に高位の地位である‼︎」

 

 

会場がざわつく。

 

 

「カイドウ右将軍には早速で申し訳ありませんが、裏社会で勢力を拡大させ続けている【六本指】という組織の撲滅に動いていただきたい。兵は近衛以外ならば自由に引き抜いていただいて構いません」

 

 

オネスト大臣が髭をいじりながら指示を出す。

 

 

「カイドウよ。民のため、帝国を蝕む闇を討て‼︎」

「はっ‼︎」

 

 

俺は頭を下げる。

 

 

「(オネストの奴…どういうつもりだ?俺に兵を持たせて懐柔する気か?)」

「続いて、カイドウの息子タツミよ」

「あ、はい」

 

 

俺の隣でタツミが片膝をつく。

 

 

「汝には一時的にカイドウの元で将軍見習いとして働いてもらいたい…いや、ここははっきりと言うべきだな」

 

 

皇帝がタツミの前まで歩いてくる。

 

 

「朕の父である前皇帝はカイドウに信を置いていた。カイドウが将軍職を辞した時は卒倒したほどだ」

「え、あ、はい」

 

 

皇帝はタツミの手を取る。

 

 

「タツミよ。朕は汝を朕の父におけるカイドウとしたい。朕の元で剣を振るってはくれぬか?」

「え?えぇええええ⁉︎」

 

 

タツミが驚愕の声をあげる。

 

 

「へ、陛下?」

 

 

あまりの事態に、オネスト大臣もたじろぐ。

 

 

「皇帝陛下。大変失礼ながら、私の息子は武を教えてあるとはいえ、鍛治師として生計を立てている身の上。それをいきなり将軍見習いというのは父親としては少々不安であります」

「それについては…ハウゼン‼︎」

「はっ‼︎」

 

 

同期であった将軍のハウゼンが皇帝の前に進み片膝をつく。

 

 

「朕の父が作りし帝国最高の諜報部隊【見えざる手】の部隊長であるハウゼンに問う」

「はっ」

「「「「ッ⁉︎」」」」

 

 

会場の全員が息を呑む。もはや妄想の産物、噂だけの存在とされた前皇帝が作り上げた最高の諜報機関"見えざる手"。その部隊長がそこにいるというのは全員が息を飲み込んでもおかしくない出来事であった。

 

 

「タツミはこの帝都にて何をしていた」

「反政府の暗殺組織ナイトレイドの構成員として活動しているのを確認しております。ただし見習いという但し書きが付きますが」

「「「「なッ⁉︎」」」」

 

 

全員が驚愕し、衛兵が武器に手をかける。

 

 

「タツミよ。朕はこれから色々なことに悩み色々なことに迷うだろう。もしも汝が朕が間違えを犯していると思った時は、朕を叱咤せよ。汝にその許可を与える。

ーーーナイトレイドに一時的に加入していたのであれば、私の首を狙う覚悟もできているだろう?」

「ッ⁉︎ 陛下‼︎」

 

 

オネストが声をあげる。しかし、皇帝が右手でオネストを黙らせる。

 

 

「正直に言えば、朕はこの帝国を朕の代で終わらせるのも一興かと思っていた。愚王としてナイトレイドや革命軍に首を打ち取られるのも覚悟していた。しかし、人というものは強いのだな。ハウゼンからの革命軍の情報、そしてオネストを代表とする人間の可能性…朕はこの帝国に希望を見出した」

 

 

皇帝が両手を広げる。

 

 

「朕はここに宣言する‼︎ この帝国を千年帝国とする‼︎ 朕の代では不可能であろう。しかし、朕の代で地盤を作り上げ、その子孫達が千年続く平和を築き上げるであろう‼︎」

「「「「ぉおおおお‼︎ 皇帝陛下万歳‼︎ 千年帝国に栄光あれ‼︎」」」」

 

 

部屋を轟音が支配する。

 

 

「さあ、どうするタツミよ」

「…やってやる」

 

 

タツミが立ち上がる。

 

 

「皆が笑顔で暮らせる国を作る‼︎」

「うむ、その返事を待っていた」

 

 

皇帝が従者に箱を持って来させる。皇帝が箱を開けると、そこにあったのは控え目の装飾がされた、しかし業物であろう剣であった。

 

 

「これは朕と汝の契約の証。我が千年帝国への約束…汝が持て」

「…ああ」

 

 

タツミが剣を受け取る。

 

 

「(待て…待て待て待て⁉︎ 一体全体どうなってやがる⁉︎ こんな設定あったか?)」

 

 

エスデスを見ると顔を真っ青にしている。

 

 

「さあ、我が臣達よ‼︎ 帝国の再建を始めよう‼︎」

 

 

こうして、帝国の再建が始まった。始まっちゃったのである。

 

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エンド

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