ハッピーバースデー!!!
※原作プロローグ部分のみ
「メル!メル!あそこに鎧を着た人が倒れているゴラ!!」
「えっ、サリチル本当?」
「こっちゴラ!」
「あっ、もう待ってサリチル!一人で行くと危ないわよ!」
鬱蒼とした森の中を急ぎ走るピンクと紫色を合わせたような色の髪と頭に同じような色の二枚の大きな葉を生やし、猩猩緋色の目を爛々と輝かせる活発そうな少女。そして、その後ろを長い灰桜色の髪を紅い帽子で広がらないように抑え、群青色の瞳で前を走る少女を見失わないよう追いかける女性。
その先にはいかなる理由からか、体に多数の傷を負い地面に倒れ伏す所々に壊れた軽鎧を纏う若き男。
ここに、【紅の魔女】【マンドラゴラの少女】【騎士】は出そろい役者は揃う。
これより描かれるは、永劫とも思える長き旅の終焉。
最後の旅が始まり、終わるまでの旅路と出会いの物語。
(ーー)
「鎧のお前、大丈夫ゴラか?生きてるゴラか?」
「気を失っていているみたいだけど大丈夫、この人は生きてるわサリチル。それにしてもなんて量の傷……一体この人に何があったのかしら。」
「生きてるゴラか、よかったゴラ…メルこの人の傷魔法で治せないかゴラ?」
「う~ん、さすがにこれだけの傷となると私には難しいわ。でも、町からは出発してだいぶ経ってしまっているし、どうしましょうか?サリチルはアレ嫌でしょう?」
「うっ、確かに嫌ゴラ…でもそうじゃなきゃ助けられないのなら、サリチルはちゃんと我慢するゴラ!そしてそしてサリチルが痛いのを我慢して助けた分、この鎧のヤツにいっぱいお礼してもらうゴラ!!」
「うふふ、サリチルは偉いのね。でもあんまり無茶なお礼を要求しちゃだめよ?」
「それは、こいつ次第ゴラね!それじゃあメル、できるだけ痛くないように頼むゴラよ?」
そう言った後、サリチルと呼ばれたマンドラゴラの少女はぎゅっと目をつむり、メルと呼ぶ女性の方に頭の大きな葉を向けてこれから来るであろう痛みに耐えるための姿勢を作った。
「それじゃあ、いくわよサリチル?」
「いつでも来いゴラ!」
ブチッ!
「ぎゃあーーーーーー!!!痛ッッいゴラ!!!」
サリチルが言い終わるや否や、メルは素早い動きでサリチルの頭に生える二枚の大きな葉、その片方をむしり取る。大事な葉っぱをむしり取られ痛みに悶えるサリチルを横目に、メルはナイフで葉を細かく切り手のひら大に束ねると腰から木製の短いワンドを抜き束ねた葉に向かい二振り。すると、不思議なことに紅い魔方陣が二つ現れ葉を挟み込んで圧縮してゆく。圧縮されて滲み滴るみどり色の液体をメルは腰のポーチから取り出した小さな器で回収してゆく。
「サリチル大丈夫?痛かったでしょう?」
「う~、痛かったゴラ…でももう大丈夫ゴラ。メル、それよりも早くこの鎧のヤツを起こしてやってほしいゴラ。」
「ええ、丁度絞り終わったから今から起こすわ。」
メルは器に溜まったみどり色の液体を倒れた若者に垂らしてゆく。そうすると瞬く間に傷ついた体が癒えてゆき、若者は気を取り戻したかのように体を身じろぎさせる。そしてゆっくりと体を起き上がらせて、傷を癒した者たちを見る。
「メル!メル!気が付いたゴラ!やっぱりサリチルの葉は最高ゴラ!やったゴラ!!」
「よかった……あなたはここで気を失っていたんです。お体に痛むところは有りますか?」
「いや、大丈夫です。痛むところは、特に…それより、あなた方は?」
「申し遅れました。私は……メル、旅人です。で、このうるさいのが―」
「メル、うるさいなんてひどいゴラ!!サリチルは、マンドラゴラ族のサリチルゴラ。よろしくゴラ!そして、おまえはこのサリチルが、身を削って助けてやったゴラ!早く恩返しをするゴラ!」
「サリチル、この人は起きたばかりなんですから調子に乗っちゃ駄目ですよ。」
ピコッ
「痛っ…ゴメンなさいゴラ。」
「それよりも『砂塵』が強くなってきています。一刻も早く『神の碑』を浄化しないと、ここら辺一帯が瘴気の砂塵に沈んでしまいます。」
「えっと、先ずは助けて頂きありがとう御座います。そして、『砂塵』と『神の碑』とは一体何なのでしょうか?」
「ん?おまえ『砂塵』や『神の碑』を知らないゴラ?とんだ田舎者ゴラね。」
「いえ、知らないというより何も、何も思い出せないのです。自分の名前さえも、すべて。」
「えっ?何も思い出せない……記憶喪失ですか…今は時間がありません、私たちに付いてきてください。ここで一人になるよりは安全だと思います。」
「わかりました、ありがとうございます。色々と。」
そうして三人組は、先頭に霧が出始め薄暗くなってきた森を歩き始める。どこかへと目的を持った足取りのメルを先頭に。
(=_=)
三人がしばらく歩くと、半分以上崩れた神殿のような石材で作られた遺跡にたどり着く。壁にはツタが這い、天井が無く無惨な姿にもかかわらず、どこか荘厳な雰囲気が残る遺跡。
「ここの中に入りましょう、外は危ないですし。私たちが、用が有る者もこの中にありますから。」
そう言い、メルは遺跡の中に入ってゆく。
「鎧のおまえ、はぐれない様に気を付けるゴラよ。」
「はい、サリチルさんも崩れた破片が転がっているみたいですから足元に気を付けて。」
「なかなか気が利くゴラね、鎧のおまえ。でも大丈夫ゴラ、サリチルもメルもこんな所は慣れっこゴラ!」
本当に慣れているのかサリチルは、器用に飛び跳ねながら遺跡を進んで行き。その後ろをはぐれない様に、小走りで若者が付いてゆく。
(´・ω:;.:...
「付きました、今は壊れ力を失っていますがこれが『神の碑』です。そして、このあたりに立ち込めている瘴気は『砂塵』と呼ばれています。そして、瘴気に呑まれた魔物は凶暴化し積極的に人などを襲うようになります。」
メルはとある広間の少し入った所で歩みを止め、広間の中心に置かれた8割がた崩れた馬のような石像を見上げながらそう言う。サリチルは石像に駆け寄り、石像を背に若者の方を向いてめいっぱいに両手を広げ
「『神の碑』をメルの力で浄化して、この石像の力を取り戻すのがメルとサリチルの仕事ゴラ!」
「つまり『神の碑』を浄化して、『砂塵』を抑えることを仕事にしているということですか?」
「はい、そうなりまッ……サリチル!後ろ!!」
《ガルォグオォォォ!!!》
何時から潜んでいたのか、石像の後ろから赤い毛を生やし、根元から首が三つに分かれた人間大のオオカミの化け物が現れる。化け物は耳を塞がざるを得ないほどの大音量で吠えた後、傍にいたサリチルへと向かい大きな体で威嚇するかの如く身を張りながらゆっくりと進み始めた。サリチルの元に付くには30秒もかからないであろう。
「あれはレッドガルム!流石にあの魔物相手に私一人では……」
「うわーーーん、こいつ一体何処に隠れていたゴラ!!メル!鎧のおまえ!助けてゴラ!!」
「今行く!こっちに走れサリチル!」
「待って!いくら鎧を着ているからとはいえ、素手でしかも貴方一人では!」
「それでも、私はあなた方に助けられたのでしょう。なら、危機に陥っている今この時に恩を返さなくて何時返すと言うのだ!」
「でも、何もなしで行ったらただの無駄に……あなた、その手の光は?」
若者がメルに言われ手を見ると、その手の中にはいつの間にやら一枚のカードがあった。表は白紙、その裏には翼を広げた鳥の絵が描かれた茶色なカードが。
「なんだこれ、いつの間に手の中に…」
「あなた………そのカードは。お願い!私と一緒にサリチルを助けて!あなたの力と私の巫女の力があれば!」
【燭明たる太陽神、冥暗たる月神よ…イシュタリアの騎士を呼び寄せたまえ】
メルが早口でそう唱えると、若者が手に持つカードから鉄紺色の雷が飛び出し始める。サリチルを捉えていたはずのレッドガルムも突然のことに、若者の方を見る。
「ッ」
雷がいきなり放たれ始めて驚いた若者はカードから思わず手を放すも、カードは不思議と一人で勝手に空中に浮き視界が真っ白に染まってしまうほどの光を放った。
光が収まるとそこには、菫色の和服を着た16~17歳ほどで黒い髪の少女が立っていた。その姿はこの争いの場には不釣り合いな程に落ち着いており、まるで争いには向かぬ華奢な体躯をしていた。そして、若者の姿を見つけると花が咲くような笑顔で若者に問いかける。
「あらあらお兄さん、どうされました?何か御用ですか?」
「君は…一体…」
「彼女は、刻を超えたイシュタリアの戦士です!私たちに協力して戦ってくれる筈です!」
「あそこで、私の恩人が襲われそうなんだ!助けるのを手伝ってほしい!!」
「任せてください、お兄さん。」
少女はくるりとレッドガルムの方に向きなおすと、彼女の周りの空間から燃え盛る木製の車輪が現れバチバチと燃える音を鳴らし自己主張をし始める。
《ガァァァァ!!》
そんな少女を見て、咆哮を挙げながらレッドガルムがサリチルなど全く無視して少女にその巨体を生かして押しつぶすかのように凄まじい速さで突貫を始めた。明らかな脅威が目の前から押し寄せてきているにも関わらず、少女は危機感を感じていないかの如き声色で
「じゃあ、燃やしちゃいますね。」
と言い、車輪を迎え撃つようにレッドガルムに向けてまっすぐと地を走らせ、その後ろを少女自身も走り追いかける。しかし、レッドガルムもそんな明らかな攻撃をわざわざ受けるわけもなく、車輪当たる直前にその身を空中へと移動させ地上にいる少女をこの勢いのまま叩き潰さんと姿勢を整えられなかった。なぜなら、少女がレッドガルムが飛び上がったと同時に自身の細い腕でもって叩かんと愚かな獣に空を駆けていたからだ。
「えいっ!」
かわいらしい声が広間に響くと同時に、レッドガルムは地面に体を打ち付けられ。追い打ちの火輪が、少しの間を開けてレッドガルムに体当たりをし纏う炎で瞬く間に獣を燃やし尽くし灰に変えさせられた。
「お兄さん、終わりました。」
「あ、ありがとう。そしてあの獣を全て君に任せてしまって済まない。」
「いえいえ、謝ることはないですよ。偶々私の方に向かってきて、それを倒しただけですから。」
「そうだ、君は一体何者なのか聞いてもいいかな?」
「あらあら、私としたことが自己紹介もまだでしたね。私の名前は骸火の魔描・カシャと申します。気軽にカシャとお呼びくださいお兄さん。ちなみに私がどういった存在かは、そこの紅い方に聞いた方が分かりやすいと思いますし、私は少し疲れてしまったので一度休ませていただきますね。」
若者の質問に答えると、和服の少女カシャは影が薄くなっていき消えてしまう。そして石像の方から再起動したサリチルが若者たちの方に寄ってきて話始める。
「二人とも助けるのが遅いゴラ!もう少しであわや魔物の養分に成る所だったゴラ!」
「こら、サリチル助けてもらったのだからまずはちゃんとお礼を言わなきゃだめですよ。」
「…わかったゴラ……その…か、感謝してるゴラ。」
「私からもお礼を言わせてください、ありがとうございます。それで、あの、今更なのですが一旦落ち着けましたし、あなたのことを何て呼べばよいでしょうか?」
「そう、ですね…ヴォイドとかどうでしょうか?」
「変な前ゴラ、その言葉はどんな意味ゴラ?」
「私は素敵な名前だと思いますよ。それとサリチルは今度、ゆっくりとお話ししましょうね。」
「しまったゴラ!!」
「まったく、サリチルは…それでなのですがヴォイドさん、もし宜しければ私たちと一緒に旅をしませんか?諸国を巡ると思いますので、もしかしたらあなたの記憶を取り戻すヒントが解るかも……」
「つまり、サリチルとメルの護衛ゴラ!」
「それは、今回みたいに遺跡を巡り『神の碑』を浄化していく旅ですか?」
「はい、そうです。今までなら凶暴化した魔物も私たちでも対処できていたのですが、『砂塵』はどんどん力増していて今回の件で私たちだけでは対処が難しい事もハッキリとしましたし。駄目………ですか?」
「こんな身元もハッキリとしない男でも良いのであれば、共に行かせていただきます。メルさんにはまだ、助けてもらった恩を返せていませんしね。」
「そうゴラ!助けた恩はちゃんと返すゴラよ!ってサリチルの分がカウントされてないゴラ?もしかしてさっきので終わりゴラ!?」
「そう、かな?」
「ぬあーーー!!仕方ないけど、仕方ないけど!なんか物凄くもったいないことをした気がするゴラ!」
「では、ヴォイドさんこれからよろしくお願いします。サリチル喜ぶのもいいけど、了承してくださったのだから挨拶を忘れないようにね?」
「鎧のおまえ、よろしくゴラ!」
「よろしくお願いします、メルさん、サリチル。」
人気が有ったら続きを書くかもしれないです。