あにめのべる   作:nyanoD

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第1話 戦士よ、再び

▶惑星サンライズ・クラウド大陸◀

 

カンジ「いよいよ出航かぁ。『アスタンテ』の整備の仕事も終わって、ようやくのんびり出来るぜ」

 

 雲海に閉ざされた大陸『クラウディア』

 そこに住む若い青年が『カンジ・アカツキ』だ。無職というわけではないが、物事を決意すること・継続することが苦手なため、周りからは“なまけ者”と認識されている。

 

 本人も、そのように見られていることに気付いてはいるが、改善する気は誰から見てもなかった。

 そんな彼の元へ、1台の車が走ってきた。車は、彼の目の前で止まり、中から軍人らしき人物が降りてきた。

 

軍人らしき人物「おまえが、カンジ・アカツキか?」

 

カンジ「ん? ああ、そうだが?」

 

 どうやら軍人らしき人物は、カンジに用があったらしい。一方、カンジは状況を理解しきっていなかった。

 

軍人らしき人物「探しましたよ。さっ、乗って! 送りますから」

 

カンジ「えっ!? 送るって、どこにだよ?」

 

軍人らしき人物「あまり妹さんを心配させないで下さいよ」

 

カンジ「あっ? どうして、そこでリエの話になるんだよ!?」

 

軍人らしき人物「早く乗ってください! アンタを連れてかないと、給料引かれちまうんだよ……」

 

カンジ「(あー、めんどいなぁ)」

 

 カンジは、渋々と軍人らしき人物が運転してきた車に乗った。どこに連れて行かれるかは、聞かなくてもカンジは分かっていた。

 

そう……『アスタンテ』の停留所だ!

 

▶クラウド大陸・停留所◀

 

???「おまえさんが、カンジ・アカツキか?」

カンジ「えっ?」

 

 停留所に着いたカンジに、パイロットスーツを着た2人の男が声をかけた。見た限りだと、年齢はカンジとあまり離れてなさそうだ。1人は、異文化的な人種に見えるが、今は気にしないことにした。

 

???「雲海調査船『アスタンテ』遊撃隊・隊長のイサム・ダイソンだ! よろしくな」

 

???「待て。いつから貴様が隊長になった?」

 

イサム「細けぇこた、言わなくて良いんだよ。女に逃げられるぞ?」

 

???「貴様のその性格が、ミュンを困らせていることを気付いてないとは言わせんぞ!」

 

イサム「何だぁ、やんのか!?」

 

カンジ「あ、あのぉ……」

 

 到着して迎えてくれた遊撃隊のパイロット2人が、カンジの存在を忘れて言い争ってるのに、さすがのカンジも困り始めた。それに気付いた異文化的に見えるパイロットが、カンジに名を名乗った。

 

???「俺も、こいつと同じ遊撃隊として雇われた。ガルド・ゴア・ボーマンだ」

 

カンジ「あ、あぁ。よろしく……って、オイッ!? これって、すごく嫌な予感がするぞ……」

 

 カンジは、気付き始めた。そう、

 自分も『アスタンテ』に関わることになることを。

 

軍人らしき人物「では、皆さん。ブリッジに行って、艦長に挨拶を済ませて来て下さい」

 

 軍人らしき人物は、しゃべり終わった後にカンジを見てニヤけた。イサムとガルドは、艦長とは初対面になるが、カンジにとっては、そうではなかった。

 

▶アスタンテ・ブリッジ◀

 

イサム「ひぇーい。マクロス級じゃないけど、けっこう大きい戦艦じゃないの」

 

ガルド「艦長は、どこにいる?」

 

カンジ「……」

 

 ブリッジに艦長の姿は、なかった。イサムとガルドは、困っていたが、カンジは嫌な予感からか背後から近づく人影に気付いた!

 

??「だーれだ?」

 

 突然、カンジの視界が真っ暗になった。

 妹の『リエ』だ。

 

 年齢的には、そこそこ大人なハズなのに背後から近づき、両手でカンジの目を隠した。

 

カンジ「リエだろ」

 

リエ「正解~」

 

イサム「へぇ~。かわい子ちゃん、じゃないの。カンジの知り合いか?」

 

カンジ「あー……知り合いでは……あるな」

 

ガルド「どうでもいい。それより女、この艦の艦長を知らないか?」

 

カンジ「……」

 

リエ「フフフッ、艦長は、どこかなぁ~」

 

 この含みのある言葉は、ちょっとしたトラブルになるかもしれない。彼らは、普通のパイロットではなく正式に軍から派遣されたパイロットだ。

 

リエも一応、女の子。

年上の男性、それも軍属のパイロットと口論して、勝てる訳がない。

 

カンジ「おい、リエ! 立場は、向こうが上だ。ふざけるのは、そこまでにしとけ!!」

 

リエ「は~い……(今日のお兄ちゃん、ちゃんとしてる。いつもこれくらいなら助かるのになぁ~)」

「では、改めて。雲海調査船『アスタンテ』艦長の『リエ・アカツキ』です。よろしくお願いします!」

 

イサム「ハァッ!? 待て、待て、待て!!」

 

ガルド「……おい、カンジ。説明しろ!」

 

カンジ「リエの言葉通りです。あっ、でも博士号を持ってるから心配なく」

 

リエ「(それを言ってる、お兄ちゃんが1番心配なんだけどね)」

 

 イサムとガルドが驚くのも、無理はない。2人は、軍属パイロットの中では若い方で、それより年齢が若い者が艦長だと言っているのだ。

 

イサム「信じられねぇな……なぁ、ガルド?」

 

ガルド「見た目だけで決めつけるな。貴様の悪いクセだ」

 

イサム「あーっ! ガルド、てめぇ裏切りやがったな!?」

 

リエ「(ねぇ、お兄ちゃん。裏切るって、どういうこと?)」

 

カンジ「(リエ。世の中には、知らないほうが良いこともあるんだぞ)」

 

リエ「??」

 

 カンジは、自分の妹に“ナンパされそうになってるぞ”とは、兄の口からは絶対に言えなかった。

 周りから“ロリコン”とか“シスターコンプレックス”とか言われたとしても、いざとなった時は妹を心配するのが兄なのだ。

 

 そうこうしているうちに、出航予定時刻が迫っていた。

 

 だが、ここまでの流れで明らかになっていないことが1つある。

そう……カンジは、どういう役割でアスタンテに乗艦することになったのか。ブリッジにいる皆が気付いた時、ちょうどよく通信によるメッセージが届いた。

 

????「リエ、カンジ、そして統合軍のイサム隊員とガルド隊員」

「私は、地球連邦軍・独立部隊『ロンド・ベル』のブライト・ノアだ」

 

リエ「ご無沙汰しております、ブライト艦長」

 

ブライト「リエ、立派な艦長に成長したようだな」

 

リエ「いえ、私は、まだまだ半人前だと感じております」

 

イサム「(すっげぇー、あのブライト艦長と普通に話してやがるぜ!)」

 

ガルド「(フッ……期待できそうな、人材が艦長のようだな)」

 

カンジ「(なんだかなぁ~。2人共、リエに手ぇ出すなよ?)」

 

ガルド「(あ、あぁ……)」

 

イサム「(し、心配するなって……)」

 

カンジ「(?)」

 

 急にイサムとガルドの雰囲気が変わった。通信が来てからだろうか、さっきまでの軽い印象が無くなったようにカンジは感じた。

 

 パイロットスクールの教科書に載るような上司が目の前にいるのだ。

そして、その上司と仲良く話しているリエに“ナンパ”など、出来るハズがなかった。

 

ブライト「カンジ!」

 

カンジ「はっ、はいっ!!」

 

ブライト「インパルス7の修復が終わっているのだが……」

    「また、我々と共に戦う気は、ないか?」

 

カンジ「……」

 

ブライト「辛いのは、分かる。強制する気もない」

 

カンジ「(ルン……)」

 

 そう。カンジは、前大戦で偶然ではあるがパイロットとして戦っていた……

 しかし、その大戦中に恋人である『ルン・フォレスト』が行方を消してしまったのだ。

 

 カンジは、この時からパニック障害を発症し、パイロットとしての登録は抹消されていた。パイロットを外れた後は、整備班を手伝っていて現在に至る。

 

 戦時中に比べると、だいぶ症状は落ち着いてきたが、今でも軽い鬱が時々発症する。

 ブライトの言葉に、カンジは少し間をおいて返答した。

 

カンジ「俺の……俺なんかが、役に立つなら……」

   「あぁ、うぅぅ……くそぅっ!」

 

リエ「お兄ちゃん!!」

 

ブライト「(ダメか……すまない、カンジ……)」

    「(だが、我々には……雲海の戦闘を経験している、お前の力を借りたいのだ)」

「(強制しないとは言ったが……ズルい大人を許してくれ)」

 

イサム「おいおい、どうしたんだ?」

 

ガルド「(この震え方……コイツの魂は、前大戦で死んだのか?)」

   「イサム! 良い機会だ。久々に“ドッグ・ファイト”といくか!!」

 

イサム「ハァッ!? おまえマジで言ってんのか!?」

 

ガルド「分からないのか? 空は、いつでも輝いている」

   「嬉しい時はもちろん、悲しい時には希望をくれるのが“空”だ……そうだろう?」

 

カンジ「ルン……お、俺は……うぅぅ」

 

ブライト「(なるほど。君たちが光を見せてくれるのか)」

 

イサム「分かったぜ、ガルド! 勝った方が、飯おごるってことで」

 

ガルド「そう言って、手抜きしたら許さんぞ?」

 

イサム「へへぇ。航海初日と歓迎会だぜ! 余興も兼ねて本気で飛ぶぜ!!」

 

リエ「見て、お兄ちゃん! 本物のドッグ・ファイトだよ!!」

 

 ブライトの意思を感じ取り、カンジに空(世界)の素晴らしさを思い出させるために……

 イサムとガルド、そして

 

ルンの声「(カンジ、泣いてるの?)」

 

カンジ「(うぅぅ……ルン……そこに? そこにいるのか、ルン?)」

 

ルンの声「(私は、いつでもカンジと一緒にいるよ)」

    「(カンジ、飛んで! そして迎えに来て!! 思念体じゃなく……私の身体を……)」

 

 カンジの心の中で、ルンも語りかけた。

 

カンジ「大丈夫だ。皆、俺は、大丈夫だ!」

 

リエ「お兄ちゃん! 良かった……ホントに良かった……」

  「(ありがとう。ルンちゃん)」

 

イサム「ったく、世話かけさせやがってよぉ。まあ、良かったな、カンジ!」

 

ガルド「カンジ! ブライト大佐やアカツキ艦長はもちろん、俺もイサムもおまえには期待してる。よろしくな」

 

カンジ「あぁ、こちらこそよろしくな!」

 

 戦士が復活した。

 この時、カンジは大切なことを思い出すことが出来た!

 

 自分は、周りの支えがあって今の自分があることを……

 

もう迷わない!

恐怖や不安も、皆と一緒に乗り越えてやる!!

 

ブライト「(もう、大丈夫そうだな)」

「では、貴艦の安全な航行を祈る」

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