ナザリック地下大墳墓。その最奥に位置する玉座の間でモモンガは混乱の最中にいた。
DMMORPGユグドラシル。そのサービス終了時間になったにも関わらずゲームが続いていた……そのことはいい。いや、よくはないが……。しかしその後が問題であった。ログアウトはできず、さらにはNPCたちが自我を持ったように話をしてきたのだ。
「セバス、周囲の状況は?」
「はっ!以前ナザリックがございました沼地とは異なり、辺りは平原になっているようです」
周囲の状況を確認し、目の前でモモンガに報告しているのはナザリック地下大墳墓における執事という設定を与えたセバス・チャンだ。見た目こそ白髪の老紳士ではあるが、その実は竜人という異形種であり、100レベルという階層守護者に匹敵する力を持っている。
さらにその周りには守護者筆頭のアルベドを始め、各階層守護者が集まっていた。
「それで……周りに生物はいたのか?」
「はい……それがまるで我々がそこに現れるのを待っていたかのように探っていた者達がおりまして……」
「なんだと!?……む……なんだ?」
ナザリックを探っている者がいる。セバスのその報告は非常に警戒すべきものだ。すぐに次の対応へ移ろうとモモンガが声を上げたところ……頭の中にやけにテンションの高い声が響いた。
「これは……《
『モモンガ様……、モモンガ様でいらっしゃいますか!?』
聞こえてきたのは男性の声。聞き覚えのない声だ。しかし《伝言》がつながったこと、そして自分をモモンガと呼んでいること。それらを考えるに自分かギルドメンバーの関係者だと思われた。
『……誰だ?』
モモンガは慎重に名乗ることなく聞き返す。こちらの情報を考えもなく垂れ流すなど愚か者のすることだ。戦闘において情報を何より大切にするモモンガらしい発想である。
『おお!そのお声はまさにモモンガ様!お待ちしておりました!私です!あなたの忠実なるしもべ!パンドラズ・アクターでございますぅ!』
感極まったように高かったテンションのボルテージがさらにあがったような声。まるで演劇の役者のようなそれは聞いているだけで相手の姿が想像できた。そしてモモンガは存在しない眉間をしかめる。
───パンドラズ・アクター
それはモモンガが作成したナザリックのNPCであり、宝物殿の守護者として配置していたキャラクターだ。種族は
「モモンガ様、いかがいたしましたか?」
目の前に控えるセバスや守護者達が心配そうにモモンガを見つめている。一瞬自我を持ったばかりの彼らを信頼していいのだろうかという心配が過るが背に腹は代えられない。
「《伝言》が来た。相手はパンドラズ・アクターを名乗っている」
「パンドラズ・アクター……。確か宝物殿の領域守護者……ですね?」
「パンドラ?誰でありんす?それは……」
守護者筆頭であるアルベドは名前だけは知っていたようだが、シャルティア達階層守護者はその存在を知らなかったようだ。確かにユグドラシルで守護者を宝物殿に連れて行ったことはない。
モモンガは守護者達の反応を見つつやるべきことを整理する。この《伝言》の相手が本物かどうか、それを確かめるのが先決だ。
「宝物殿にパンドラズ・アクターがいるか確認してくる。通常であれば奴はそこから出られないはずだからな」
宝物殿はナザリックにおいて隔離された空間にあり、ギルドの指輪、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンなしでは入ることも出ることもできない。そして宝物殿に指輪を置いてない以上、パンドラズ・アクターが外に出ていることなどありえないはずなのだ。
「モモンガ様、お一人では危険です!私もお供を!」
モモンガを心配するアルベドの言葉にモモンガは頷く。アルベドは100レベルのタンク職であり、魔法詠唱者であるモモンガの盾役としては申し分ない。ナザリックが転移したというこの瞬間にパンドラズ・アクターを名乗る者からの《伝言》。警戒する意味では必要な対応だろう。
「そうだな、ではお前もこれを持つがいい」
モモンガはアイテムボックスからギルドの指輪を取り出すとアルベドへと差し出す。差し出された指輪をアルベドは震える手で受け取った。
「宝物殿はこれによる転移でないと飛べないからな」
「はぅぁ……こ、これを……私に……」
頬を紅潮させながら震える手で指輪を左手の薬指へとつけるアルベド。迷いもせずにその指に装備する様子にモモンガはアルベドの設定を変更したことを思い出し天を仰ぐ。アルベドの「ビッチである」設定を「モモンガを愛している」設定に書き換えた影響に違いない。
「ずるいでありんす!護衛ならわらわのほうがふさわしいでありんす!」
護衛を任され指輪を与えられたアルベドに地団駄を踏んで悔しがるシャルティア。
(羨ましいって何が!?なんでそんなに俺の護衛をしたがるの!?何この忠誠心!?)
いまだに理解できないがNPC達はモモンガに絶対の忠誠を誓っているように思える。命までも投げうつその覚悟のほどは現代人であるモモンガからすれば理解の範囲外であり、正直言ってドン引きである。
「モモンガ様、そのような偽乳ウナギなど放っておいて急ぎましょう」
「だ、誰が偽乳でありんすか!」
「偽乳……?ああ……」
思わずシャルティアの胸元を見ると黒いゴスロリ衣装が不自然なほどに膨れている。それがパットであったことをモモンガは知っていた。
(シャルティアを作成したペロロンチーノの趣味だったなぁ……。俺はどっちかというと大きい方が好きなんだけど……)
豊満な胸を強調しながら勝ち誇ったアルベドについつい目が行ってしまった。
誤魔化すように咳ばらいをするとモモンガは宝物殿へと飛ぶ。行きついた先は眼も眩むばかりの宝物の山であった。アルベドが感心したようにため息を漏らしているが、それらはギルドにとって大した価値のあるアイテムではない。本当に大事なものは最奥の棚に整理されているからだ。
そしてそこにはパンドラズ・アクターはいなかった。
「いない……な……しかし指輪がなければ出ることも叶わないここからどうやって……」
モモンガが顎に手をやり考え込んでいると、さらなる《伝言》が届いた。突然頭に響くテンションの高い声に体がビクリと震える。
『モモンガ様!あなた様のパンドラズ・アクターでございます!ただいまナザリックの入り口におります!』
『え!?』
いつの間に。そんな感想がモモンガの心に響く。この地に転移してまだ24時間もたっていない。最初にパンドラズ・アクターと名乗る者からの《伝言》を受け取ってからはまだ数時間だ。その間にどうやってここを見つけ、そして移動してきたと言うのだろうか。
モモンガの脳裏に子供のころ聞いた怪談が思い出される。携帯電話から亡霊の声が聞こえてくるというものだ。その声がだんだんと近づいてきて、最後にはこういうのだ。『わたしあなたの後ろにいるの』。
「モモンガ様!?」
「ひぃあああ!?」
後ろに立つアルベドから声を掛けれらモモンガは思わず悲鳴を上げる。
「ひぃああ??」
「い、いや。ヒアと言ったのだ。近くに寄れという意味のな……うん……」
「まぁまぁまぁ!モモンガ様にそんなことを言っていただけるなんて!喜んでお傍に侍らせていただきます!」
苦し紛れの言い訳であったがアルベドは満面の笑みを浮かべてモモンガの広い背中に抱きついた。正直歩きにくいと思うが一度口から出た言葉は戻せない。
「ナザリックの入口までパンドラズ・アクターが来たらしい。行くぞ!」
「はいっ」
威厳に満ちた声を意識してモモンガは言うがアルベドはモモンガにしがみついたままだ。離れる気はないらしい。モモンガはため息をつき、各種の防御系魔法をかけてから入口へと転移する。転移した直後を狙い撃ちするのはユグドラシルでは常套手段であったからだ。
「こいつは……」
墳墓の入り口まで転移したモモンガの目に飛び込んできたのは軍服をきた卵頭の異形。見間違えるはずもない。モモンガが外装を作成し、設定を記し、かっこいいと思ってその服を着せたのだから。正真正銘のモモンガの黒歴史、パンドラズ・アクターその人であった。
「おおおおっ!我が至高なる君。お会いできる日をどれだけお待ちしたことが……モモンガ様……モモンガさまああああ!」
跪いていたパンドラズ・アクターは感極まり耐えきれなくなったのかモモンガの胸に向けて飛びこんできた。長身の軍服男が飛び込んでくるのだからその迫力は推して知るべしだ。咄嗟に避けようと体を捻るが背中に抱きついたアルベドがそれを許さない。
「ぐほぁ!!」
100レベルのタンクに背中を固定された状態でのみぞおちへのタックルはダメージこそないものの精神的にくるものがあり、モモンガはあるはずもない肺から息を吐き出した。
「モモンガ様、モモンガ様、モモンガ様あああああ。100年……100年もお待ちしたのです!」
「おい、まて、ちょっと止まれ!あとアルベド。こいつは間違いなくパンドラズ・アクターだ。そんなに睨むな!っていうかおまえらさっさと離れろおおおおお!」
まるで奪い合うようにモモンガを抱きしめるアルベドとパンドラズ・アクター。ナザリックの上に広がる晴天の青空にモモンガの絶叫が響き渡るのだった。
♦
「……というわけでございまして。ぜひモモンガ様にこの世界を案内したく思っております!」
一同はナザリックの玉座の間へと戻ってきていた。モモンガの前にはパンドラズ・アクターが報告のため跪いている。その周りには各階層守護者達に加え、セバスとプレアデスの6人も加わっていた。階層守護者のアルベドはモモンガの脇に控えている。
パンドラズ・アクターの話によると自身だけ100年前のこの世界に飛ばされていたということだ。その原因については不明であるが100年周期でそのような現象が発生しているらしい。
「モモンガ様にぜひお渡ししたいものがあるのです!」
パンドラズ・アクターは渡したいものが何なのかは分からないが余程自信があるのだろう。モモンガを見上げるその黒い空洞……否、瞳はまるで何かを成し遂げて褒めてもらいたい犬のようであった。尻尾があればブンブンと振っていることだろう。
「渡したいもの……?なんだ?」
「ふふふっ、それは見てのお楽しみと言うことで」
ニヤリと笑うパンドラズ・アクターにモモンガの脳裏に嫌な予感が過る。パンドラズ・アクターの一挙手一投足を見るたびにかつての自分がカッコイイと思っていたものがいかに痛々しいものだったのかと思い知らされるのだ。
「では私も護衛としてついてゆかねばなりませんね。くふふふふっ」
すでにアルベドは背中に抱きついてはいないものの、モモンガのマントの端を掴んで離そうとしない。それを聞いた階層守護者達が不平を漏らす。
「わらわも!今度はわらわも行くでありんす!」
「デハ私モオ供シヨウ」
「はいはーい!あたしも見たいです!モモンガ様への贈り物!」
「ぼ、僕もよろしいでしょうか?」
シャルティア、コキュートスにアウラとマーレも手を上げる。しかし、それにデミウルゴスが待ったをかけた。
「待ちたまえ君たち。ナザリックの守護はどうするのかね」
当然の心配であった。そもそも階層守護者は各階層を守るために存在する者達であり、本来は守護領域に詰めているべきものなのだ。しかし至高の存在を守るためとあらばその限りではない。誰かが残らないとならないのであれば自分こそが至高の存在の護衛に相応しいと守護者達がにらみ合う。
「ご安心ください!この辺りに敵対するものなどおりませぬゆえ!」
緊迫した雰囲気をパンドラズ・アクターが霧散させる。言葉とともに自信満々に手を広げ、サーコートを翻して手のひらを額に当てた空を仰ぐポーズを取っている。
(おまえ、それやらないと喋れないの……?)
モモンガの心の声もむなしく、パンドラズ・アクターは様々なポーズをとりながら説明を続け、デミウルゴスはそれに納得したようであった。
「ふむ。まぁナザリック有数の智者である君がいうのであれば信用しようか。あとでより詳しく説明してくれたまえ」
「もちろんですとも。デミウルゴス殿」
「お待ちください、ちょっとよろしいでしょうか」
そこに声を上げたのはプレアデスのリーダーのユリ・アルファであった。
「何かございましたか?麗しいお嬢さん」
パンドラズ・アクターにお嬢さんと呼ばれたことにムッとした表情を浮かべるが、ユリは言葉を続ける。
「僭越ながらナザリックの外においでになるのであればお世話をするメイドが必要かと思います。ぜひ我々プレアデスをお連れください」
メイドからお世話と聞いてモモンガは頭が痛くなる。元の世界でサラリーマンたるモモンガにはそんなことを言われても何を世話されるのかさえ分からない。どこの御大臣だという話だ。どう答えたものか逡巡しているうちにデミウルゴスが答えていた。
「確かにモモンガ様をお世話する者は必要だろうね。一般メイドでは戦闘力として不安であるし、プレアデスなら安心できるでしょう。よろしいですか?モモンガ様」
(え……?連れて行くの……!?)
モモンガの理解が追い付く前にどうやらすでに行くことに決定してしまっているらしい。そしてプレアデスたちの期待に満ちたキラキラした目を見てそれを断るだけの勇気はモモンガにはなかった。
「そ、そうだな……案内してくれるか」
「おまかせくださいっ!私の創造主たるモモンガ様にご満足いただけると思います!」
何とか言葉を発するモモンガであるがパンドラズ・アクターの贈り物というだけで警戒心が最高潮だ。特にその自信満々の態度に嫌な予感がする。
パンドラ。それは決して開けてはいけない禁断の箱を開けてしまった女性の名前だ。その箱の中にはこの世の災厄がすべて詰まっていたという。しかし、その箱の底には最後は希望が残されていたと言うが……。
モモンガは目の前の
♦
(なんじゃこりゃああああああああああああ!!)
モモンガが心のうちに絶叫したのは無理もない。そこは巨大な城に併設された舞台であった。いや、遥か下方(100mはあろうか)に広大な広場があることを考えるに演説台なのだろうか。
まず、モモンガの目が釘付けになったのはその真正面、広場の入り口付近に建てられている像だ。300mはあろうかと言う巨大な像であり、現実でそんなものを作ろうものなら日照権を求める苦情が殺到するであろう代物だ。
「お、おい……パンドラズ・アクター。聞くまでもないかもしれないがあれは……」
「はいっ!モモンガ様!モモンガ様の素晴らしさを知らしめるために作った150/1スケールのモモンガ様像でございます!
「あ……そうなんだ……へー……」
余りの事に精神の鎮静化が発生しそれしか言えなかった。しかしモモンガと違い守護者達から上がるのは絶賛の声だ。
「まぁ素晴らしい!あれほどの大きさならモモンガ様の威光が有象無象に知れ渡ること間違いなしね!」
「さすがはモモンガ様の創造されたパンドラズ・アクターです。このデミウルゴス、建造に関われなかったのが口惜しい想いでございます」
「ああ、そそり立つ巨大なモモンガ様……濡れてしまいんす……」
「お、おねえちゃん。すごいね……すごいね!」
「うん!モモンガ様の偉大さが分かるよ!」
「マルデ後光ガサシテイルヨウデアルナ」
次々と上がる称賛の声に、モモンガは穴があったら入りたい気分に襲われる。何が悲しくて自分の巨大像を晒されなければならないのか。
(偉大さとか威光ってなに!?俺にそんなものないよ!?っていうかあそこの人たちはなんなの!?)
モモンガの混乱に拍車をかけているのは広場に集まっている人々である。男は軍服を着こみ、女はメイド服を着ている。そしてそのどちらも何故かアインズ・ウール・ゴウンのギルドサインを入れた軍帽を被っているのだ。
ちらりと脇を見るとパンドラズ・アクターと同じ、つまりモモンガのデザインしたものをその場に集まった数万人はいるであろう人々が着ているのである。
その中には人間以外の種族も混ざっているようで、巨大なハムスターやトロルやナーガと思われる種族もいたのだが……それらさえ巨大な軍帽を被っているのだから頭が痛くなる。
「あの……モモンガ様。何故か視線を感じるのですが……」
後ろに控えていたユリが困惑したように声を上げる。確かにその場の人々からプレアデスの名前を叫んでいる声が聞こえる。それは親しみを込めた好意的なものであるが、プレアデスには不快でしかなかったらしい。
「なぜ羽虫が私たちの名前を叫んでいるのでしょう。不快ですね……殺してもよろしいでしょうか」
「何か変な視線を感じるっすねー。殺すっすか?殺すっすか?」
「食べ物がいっぱい……美味しそう……」
「シズちゃんとか呼んでる……馴れ馴れしい……」
「私にはなぜか嘗め回すような視線を感じますわね……殺しましょう」
何故か人々から名前を呼ばれ不快感のあまり殺そうと言い出すプレアデス。モモンガとしても訳が分からない。
「はははははっ、お嬢様方!殺すのはもったいないですよ。みなさんはこの世界の人気者でございますから!」
「ま、まぁ……殺す殺さないは最後まで話を聞いてからにしようか」
モモンガはいまだに混乱の最中であるがプレアデスを窘める。こんなところで殺戮パーティーを開かれてもたまらない。
「それでパンドラズ・アクター。これはどういう……」
「なるほど……そういうことですか」
モモンガがパンドラズ・アクターに問いただそうとしたその一瞬をついてデミウルゴスが納得したように顎に手を当てる。
(何がそういうことなんですかー!?)
勝手に納得したように話に割り込んできたデミウルゴスにモモンガにはもう何度目か分からない鎮静化が発動していた。そのおかげで強制的に冷静さを取り戻させられ、錯乱することさえ許されない。まるで拷問である。
「う、うむ……デミウルゴスも気づいたかね」
「はっ!もちろんでござます!モモンガ様!」
「で、ではパンドラズ・アクターよ……皆にも分かるように分かりやすーく丁寧に説明してあげたまえ。優しくだぞ、優しく」
「はっ!了解いたしました!我が至高の君!」
パンドラズ・アクターは元気いっぱいに敬礼をするとこれまでの経緯を話し出す。プレアデスとして人間社会に入り込み。ロフーレ商会の中で世界中を経済で支配したこと。やがて人間以外も取り込み、あらゆる種族がロフーレ商会の元に集ったこと。
その中心となったのはバハルス帝国である。ジルクニフが徹底的にロフーレ商会を守るために制定した法律をもとに盗みや詐欺などは徹底的に取り締まられるようになり、ロフーレ商会に反逆する者には容赦のない罰則が加えられた。
また、ツアレを中心としたプレアデスを信仰する者達によりさらに上位の神たるモモンガの名は至高神として世界中で崇められる宗教となり、その威光の下平和を享受している。
ロフーレ商会の絶大なる信頼を得た漆黒の剣については、莫大な財を手に入れ、やがて4大暗黒剣を揃えることにより名声を手に入れたという。彼らの冒険者としての心得は今もなお、冒険者たちに伝わっていた。
さらにアダマンタイト級冒険者、蒼の薔薇のリーダーであるラキュースについてはその後、ライバルであるルプーとの親交をさらに深め、この世界に数々の必殺技やポーズなどを伝えたという。
そしてやがてパンドラズ・アクターは正体を明かし、世界をアインズ・ウール・ゴウンの名のもとに統一する。そして100年目のその日を迎えるに際して世界各地に諜報員を送り、ナザリックの出現を待っていたということだ。セバスが見つけたのはその諜報員なのだろう。
淡々と語られるのはナザリック有数の頭脳の持ち主による世界征服の軌跡だ。それを聞いた守護者達はさも当然と言った顔をしている。至高なる存在が世界を支配するなど水が高きから低きに流れるがごとく当然のことだからだ。
しかし、モモンガは守護者の態度や語られる内容より、広場に集まった人々の恰好やそのしぐさや態度に目が行ってしまっていた。
(まさか……まさかな……)
そう思いつつもモモンガの中の危険感知センサーが最大限に警告を発している。
「……というわけでモモンガ様への貢ぎ物として世界をご用意いたしました!さて、では世界のすべての者達へ宣誓といきましょうか!」
「えっ、ちょっ、まっ……」
モモンガが止める間もなくパンドラズ・アクターはひらりと演説台の前に立ち、マイクのようなものに向かって声を張り上げる。その声は広場のそこここから拡声され聞こえるところを見るに音声を飛ばし拡声する魔道具なのだろう。
「
(え……神!?何言ってんのこいつ!?)
「思えば長く待ち遠しい日々でした!しかし!しかし我らが神は帰ってきてくださったのです!今この世界にある理はすべてモモンガ様の作ったもの!!」
(こ、理ってなに!?え……それって……まさか……)
「この世界の頂点!至高の御方々のまとめ役!死の支配者!
パンドラズ・アクターの言葉に、バッバッと広場のそこここでアインズ・ウール・ゴウンの旗が上がり、銃剣が捧げられ、軍ラッパの音が奏でられる。
(や、やめ……)
「敬礼いいいいいいい!」
広場にいたすべての男が、女が、子供が、老人が、亜人が、異形が、すべての者達が一切の乱れなく靴をカッとそろえると軍帽へと手のひらを掲げてモモンガを見つめる。その仕草のすべてがモモンガが設定としてパンドラズ・アクターに与えたもの。つまりこの世界の理である。
そして、人々は狂信者のような目をモモンガに向けたまま、あらん限りの声で高らかに叫ぶのだった。
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最後まで見ていただいた方いましたらありがとうございました。
それでは! ( ̄^ ̄)ゞ