ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう   作:ルピーの指輪

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にわかな部分もありますので、ご了承ください。
それでは、よろしくお願いします。


東の海編
ヤソップの娘


「カヤ、君は輪廻転生という言葉を信じるかい?」

 

 私はそう金髪の少女に話しかけた。病弱で外に出ることが出来ない彼女は私の話を楽しそうに聞いていた。

 

「輪廻転生? つまり、生まれ変わりということ?」

 

 美しい彼女はキョトンとした表情で私を見ていた。

 なぜ、そんなことを言うのかって? それは私が――。

 

「転生者……。私は前世はまったく違う世界に居たんだ……」

 

 私は自分が前に居た世界の話をした。この世界とは別物の科学が発展した異世界の話を……。カヤという金髪の幼馴染は私の話をただ、楽しそうに毎日聞いてくれていた。

 まぁ、創作だとは思われてるだろうけど……。

 

 しかし、私は彼女に告げてないことがある。

 

 それは――この世界が自分の前に居た世界の漫画の中だということを……。

 そして、私はどうやらその漫画の主要人物らしいのだ。その漫画の名は《ONE PIECE》――。

 

 私は海の王者と言われる最強の海賊たち――四皇の一角である赤髪海賊団の一員のヤソップの子供だ。

 

 つまり、この物語の中心である麦わらの一味の初期メンバーの一人になるはずの人間ということである。

 

 しかし、おかしな事が二つある。それは、私の性別が前世と同じだということ。

 私の性別は――女なんだ……。しかも、ヤソップの子と言えば鼻の長いウソップなのだが――。

 

「うふふ、とても面白い話をありがとう。ライアさん」

 

 彼とは名前も違う……。まぁ、性別が違うから当たり前かもしれないが……。

 私の名前はライア。赤髪海賊団のヤソップの娘だ。

 

「いつか、私は海に出る。そうしたら、もう少しだけ面白い話が出来るようになるかもしれないね」

 

 未来が漫画と同じなら私は麦わらの一味に入るはずだ。まぁ、入らなくても偉大なる航路(グランドライン)を目指すつもりではいるが……。

 

 最初はそんな気はさらさらなかった。《ONE PIECE》が嫌いと言うわけじゃないが、あんな血生臭い戦いに巻き込まれるなんて、嫌でしかなかったからだ。

 

 私が偉大なる航路(グランドライン)を目指すきっかけは母の死だ……。

 

 優しかった母は毎日のように父が帰ってくるのを楽しみに待っていた。

 そう、死んでしまうその日まで――。

 

 だから私は父を恨んだ。いや、戻ってこられない事情は理解しているのだが、恨まずにはいられなかった。

 私に出来る事は、父に母の墓標の前で謝罪をさせることだけだ――。

 

 しかし、この世界は死と隣り合わせ。赤髪海賊団は確かに大物だけど、いつかやられてしまうかもしれない。

 それならば、確実に会えるタイミングで父を説得して連れて行くしかない。

 

 私が知っている赤髪海賊団の出てくるシーンは頂上決戦――ポートガス・D・エースの死刑執行でヒートアップしたあの戦いを止めるために出てきた、あの瞬間だ。

 

 どうにかして、あの戦いにルフィと共に潜り込んでバカ親父を連れて帰る!

 

 そんな計画を私は密かに立てていた。

 

「やっぱり、お父様を見つけに行くの?」

 

 カヤは少しだけ寂しそうな顔をしていた。はぁ、この顔に私は弱い。

 

「ちょっとだけさ。パパッと行ってきて、見つけて、連れて帰ってきたら、私はずっとこのシロップ村に住むつもりだ」

 

 私はカヤに出来るだけ優しく笑いかけた。彼女は私の目をジッと見ていたかと思うと、カーッと顔を赤らめる。

 

「カヤ? どうしたのさ、ボーッとして」

 

 私は彼女の表情を覗き込むようにして問いかける。

 

「――はうっ、時々、ライアさんが女性だということを忘れてしまうわ。最初に会ったときはホントに男の子だと思ってしまったもの。それに格好もそういう服装が好きだから……」

 

 カヤは私の気にしてる事をズバリと言う。そう、私の見た目は何故か中性的というか、なんというか、《ONE PIECE》のキャラクターでいうとキャベンディッシュの髪型をストレートロングにしたような見た目だ。髪の色は銀髪だけど……。

 おまけに、口調は前世からこんな感じだし、声も少しだけ低い。

 格好は自分の趣味だから譲りたくないんだけど、基本的に黒スーツに白シャツで、シルバーのブレスレットを付けている。

 

 だから、よく男だと間違われることが多い。

 まったく、神様は中途半端なことをしてくれる――。

 

 そんな格好だからとかは言わないでほしい。スカートは嫌いだし、スタイルに自信がないから体のラインが出る服は着たくないんだ。

 そもそも、すごく似合わない……。

 

 もっと可愛い感じに転生出来れば良かったなぁ……。

 

「じゃあ、カヤまた来るよ。ちょっと私はアルバイトがあるからさ……」

 

「うん、待ってるわ。いつもありがとう、ライアさん」

 

 私はそう言って、カヤの家の庭から出た。

 

 

 私は人目を気にしながら小舟を隠している場所まで行き、そこで手早く着替えて、顔の大部分が隠れるくらいの大きさのゴーグルを付ける。

 アルバイトというのは、ズバリ、賞金稼ぎだ。

 これから激しい戦いに巻き込まれると知っていて訓練をしないほど私は馬鹿ではない。

 来たるべきときに備えて私は自分の力を研磨していた。そう、頂上決戦を生き抜くために――。

 

 この世界の戦いは基本的に悪魔の実の能力者が有利だ。海に落ちたら終わりなはずだが、麦わらの一味の戦いは陸戦が多い。

 無能力者のウソップは機転が利く強者だが、運が味方して生き残ったシーンも多い。じゃあ、私はどうだろう? Mr.4のバットを頭に受けて生き残れるだろうか?

 

 巨大爆弾の爆発で生きていたり、かと思えば簡単なことで命を落としたりする世界だ。

 生存率を高くするためには強くなっておくに越したことはない。

 

 とにかくまずは悪魔の実の攻略だ。特に無策で自然系(ロギア)を相手にすると何も出来ずに蹂躙されてしまう。その他に初見殺しみたいな能力者も多い。

 

 これに関しては対策は色々とある。海楼石とか、武装色の覇気とか、弱点を突くとか……。だから、私はこれらの対策を実践するために動いてみた。

 

 まずは海楼石について……、残念だが、東の海(イーストブルー)じゃ、全然見つからなかった。

 スモーカー大佐が海楼石の十手を持ってたから、案外簡単に見つかると思ってたけど無理だった。よく考えたら海軍が特別に支給してる可能性が高いよなー。

 

 そして、武装色の覇気――まったく概念がわからん。大体、ルフィの修行シーンはほとんどカットされていたし、同じ修行なんてそもそも出来るはずがない。早い話、これも今は無理ということだ。

 

 弱点を突く――これが大本命だ。実際にウソップは狙撃する際に何かしらの効果を付与させる弾丸を使っていた。

 私にもそのスタイルが合っているみたいで、生来の器用さも相まって色々な銃弾や銃火器を開発した。

 将来的にフランキーと仲間になったら更に捗りそうだ。

 

 例えば、煙なら炎、砂なら水というように攻撃が出来たりすれば、かなり有利になるはずだ。当たりさえすれば――。

 

 ということで、私は狙撃の訓練を毎日欠かした事はなく、こちらは父親譲りの才能からなのか、すればするほど腕前は上がっていった。

 至近距離なら百発百中は当たり前だし、何なら動いてる相手の先読みまで出来るようになった。

 多分、知らない内に見聞色の覇気とやらが鍛えられたからだろう。

 

 そのおかげで、“避ける”ことに関しても私はかなりの自信がある。

 避けて、逃げて、逃げまくって、当てるという戦法は私の得意な戦法となった。情けないとかは言わないでほしい。

 

 こんなことをしてる内に、私はもう17歳になった。道化のバギーがやられたという情報や、モーガン大佐が失脚したというニュースはまだ届いてないが、そろそろ彼らがシロップ村に現れるかもしれない。

 

 

 今回の海賊との戦いは私の最終試験も兼ねている。

 

 

 さて、手頃な海賊がこの辺りに……。

 私は近海に賞金首の情報が入ると海賊でも山賊でも関係なく実戦訓練がてら、それを狩っていた。クラハドールに警戒されると厄介なのでゴーグルと“アイラ”という偽名で正体を隠しながら……。

 あと、武器の開発にも金がかかるので、小遣い稼ぎも兼ねている。

 

 そのせいで、少々名が売れてしまい、《魔物狩りのアイラ》とかいう、恥ずかしい二つ名まで出来てしまった。

 

 この島には、ここを拠点に暴れ回っている海賊が居ると聞いてやってきた。

 海賊の名は《牛刀のゲルグ》、懸賞金は500万ベリー。東の海(イーストブルー)の懸賞金の平均が300万ベリーだから、高い方と言えば高い方だ。私が仕留めた海賊の中では二番目に高額の賞金首である。

 

 私は武器である特殊な改造をした愛銃、緋色の銃(フレアエンジェル)を片手に連中のアジトである、洞窟へと足を踏み入れた――。

 

 

 入って5秒もしない内に私は見張りと遭遇する。まぁ、これは計算どおり。さすがに誰にも見つからないようにするのは無理だ。

 

「――しっ、侵っ!? はうっ……zzzz」

「えっ――!? うっ……zzzz」

 

 即効性の睡眠薬を仕込んだ銃で私は見張りの動きを封じる。怪我ぐらいじゃ叫んで煩いし、殺すのはちょっと合わないというか、何というか……。

 

 とりあえず、縛って目覚めても余計な事が出来ないようにしとこ。

 

「うーん、大きな気配はこっちだな……」

 

 私は枝分かれする道の前で、取り分け大きな気配がする方向を目指して歩き出した。

 見聞色の覇気が鍛えられているのか、私は気配の大きさで敵の強さや位置が離れていて見えない位置でも大まかにわかるようになっている。

 

 しかし、妙だ。今回、感じる気配はとても大きい。前に倒した700万ベリーの海賊よりも遥かに強い気配だ。これは、下手したら勝てないかもしれない。

 それならそれで、逃げれば良いけど……。

 

 私はなるべく最小限に敵を撃ち倒しながら、先へと進んで行った。

 

「おっおま……zzzz」

 

「これで、5人目か……。あんまりやり過ぎると気付かれて本命に逃げられる可能性もあるからなぁ……」

 

 私はゲルグの部下の動きを拘束しながら、ボヤいていた。

 しかし、気配は近い。近づけば、近づくほど凶暴な力を感じるが……。

 

 

 さて、ここが本命の居場所だな。果たして鬼が出るか蛇が出るか……。

 私は愛銃を構えて、ドアを蹴破った。そして、その瞬間に気配のする位置を狙って弾丸を放った。

 

「――っ!? 避けられた!? いや、弾いたんだ、刀で……」

 

 目の前の男は真正面から私の弾丸を弾いた。それも食料庫の中にある小麦粉の袋の上で寝転んだ状態で……。ていうか、ここの船長は牛刀使いのはずだけど、どう考えても違うな……。

 

「人の寝込みを襲うたぁ、いい度胸じゃねェか!」

 

 男は黒いバンダナを巻いており、二本の刀を両手に持って私を見た。いや、二本じゃあない、三本だっ……!? 口に剣を咥えたまま喋ってる。

 

 三刀流? それって……。

 

「まさか、海賊狩り……!? ロロノア・ゾロ……?」

 

 私は自分の軽率さに嫌気がさした。

 そうだよ。ロロノア・ゾロもそういえば、この時期は賞金稼ぎをしていたんだった。鉢合わせる可能性を全く考えてなかった。

 

「ん? おれの名も随分と上がったじゃねェか」

 

 ゾロって、女は斬らないんじゃなかったっけ? でも、私って女認定してくれるかなぁ?

 

「いや、ごめんごめん。私も賞金稼ぎでさ、つい、間違って……」

 

「鬼――斬りッ!!」

 

 案の定というか、いきなり銃をぶっ放したんだから仕方ないんだけど、ゾロは容赦なく私に斬りかかってきた。

 

「――っ!? 速いっ!?」

 

 私は全力で避けるのに徹して、これを躱した。

 シャレにならん。あんなの食らったら死んじゃう。

 

「――ちょっと、待って私は……」

 

「今のを躱すとは大したもんだな。だが、次はそうはいかねェぞ!」

 

 ゾロの凶暴な剣技が再び私に向かってくる。やばいっ! こうなったら――。

 

蒼い弾丸(フリーザースマッシュ)ッ」

 

 私は彼の右腕を目掛けて、弾丸を放った。彼はそれを右手の刀で弾こうとするが――。

 

「――なっ!? 何だこりゃ!?」

 

 彼の刀は凍りついてしまい、そのまま右肘の辺りまで凍りつく。蒼い弾丸(フリーザースマッシュ)は冷気の弾丸だ。

 

「いきなり撃ってしまって申し訳ない。これには訳があるんだ。聞いてくれ、私は君と同じ――」

 

 私はようやく弁明が出来ると思った。しかし、それは甘かった。

 

「だったら、片腕で十分だっ!」

 

 ゾロは凍った右腕なんて、ものともせずに私に斬撃を放とうとしていた。

 くっ――、漫画以上の迫力だな……。仕方ない、ちょっと怖いけど……。

 

「――なっ!?」

 

 私は彼の動きを読みつつ、間合いを急速に詰めて、彼の懐に潜り込む。しかし、ゾロもそんな私の動きに対応して剣を振った。間に合うか――。

 

「はぁ……、提案だが、引き分けってことで手を打たないか?」

 

 私の首元には彼の刀が、彼の胸元には私の銃が突きつけられていた。

 お互い、決め手が無くなったわけだし、平和的に……。

 

「男の勝負に引き分けなんざっ! うおっ!?」

 

 ゾロが強引に動くから私たちは転んでしまった。私は彼に押し倒されてしまう。

 

 そして、彼の左手は刀を手放して、私の胸を鷲掴みにした――。

 

「――なっ、なっ、いや、この感触は……」

 

 ゾロの顔がみるみる真っ赤になる。普通逆じゃないか?

 

「なぁ、すまないが呑気に揉んでないで、そろそろ私の胸から手を放してくれないか」

 

 私は左手の感触に動揺している彼に声をかけた。

 不可抗力とはいえ、思いっきり揉みしだかれてしまった……。

 

「――っ!? すまねェ! まったく女に見えなくてつい……」

 

 彼はそこはかとなく私を傷付けるような発言をしながら、手を離した。自覚はあるし、ゴーグルも付けてるから仕方ないけど、はっきり言われるとなぁ……。

 

「いいよ、私も勘違いで撃っちゃったから――」

 

「勘違い?」

 

「私も君と同じ賞金稼ぎってことさ。強い力の気配を感じたから君が“牛刀のゲルグ”だと思っちゃったんだ。粗忽者で申し訳ない」

 

 私はゾロの凍った腕に薬品をかけて治しながら謝罪した。

 

「へぇ、なかなか腕が立つと思ったが、お前も賞金稼ぎだったのかよ。まったく、無駄なことしちまったぜ」

 

 彼は右手の感触を確かめるように手を開いたり握ったりしていた。少しだけ凍傷になっているが、特に問題なく動く所をみると、彼の回復力が並外れていることが窺い知れる。

 

「じゃあ、お互いに今回のことはなかったことに――」

 

 私は胸に手を置いて、彼に確かめるような言葉をかけた。

 

「おっおう。お前が良いんだったら……。その、悪かったな……」

 

 ゾロは目を逸らせながら、ばつの悪そうな顔をした。原因が完全に私だから気にしなくていいのに……。

 

 それに、すっかり忘れていたが、今の状況はそんないざこざなんて、どうでもいい状況だ。

 

「とりあえず誤解は解けたところで、悪いんだけどさ……」

 

「ん? ああ、そういや海賊のアジトだったな。すっかり忘れてた」

 

 そう、私たちの存在は思いっきりバレていた。あれだけ大暴れしたから当然だ。

 今現在、ゲルグ海賊団の戦闘員たちが武器を構えて一挙にこちらに押し寄せて来ているのだ。

 

 《魔物狩り》と《海賊狩り》は、互いの武器を構えて臨戦態勢を整えた――。

 予定とは違うけど、まぁしょうがないかー。

 




こんな感じのオリ主で進めて行こうと思います。
もし、ご意見やご感想があれば、一言でも狂喜乱舞しますので、お気軽によろしくお願いします!

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