ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう 作:ルピーの指輪
今回はローグタウン脱出までです。
それでは、よろしくお願いします。
「罪人“モンキー・D・ルフィ”はおれ様を怒らせた罪でハデ死刑ぃぃぃぃぃぃッ!」
死刑台でバカ騒ぎしている道化のバギーとその仲間たち。
あの、派手なのがバギーか。初めて見た。
「あいつ、なんであんなところにいんだ?」
サンジがエレファントホンマグロを背負いながら、ルフィを呆然とした表情で見ていた。
「お前らの船長はどうかしてるのか!? 何があったらあんな状況になるんだよ!?」
「おれが知るか!」
Mr.9は指をさしてゾロに説明を求めるが、あんなことになった状況なんてわかるはずがない。
「じゃあ、あんたたち、何とかルフィを連れてきなさい。もうすぐ嵐が来るから早く出航させたほうがいいわ」
「そっ、そんなことが分かるの?」
ナミは冷静に天候を読んで、私たちを急かした。ふむ、肌で天候を感じ取る天性の才能。
彼女の力はグランドラインでは重宝するだろうな……。ミス・ウェンズデーも両手いっぱいに荷物を持たされながら驚いている。
「これより! ハデ死刑を! 公開執行するぅぅぅぅ! 何か言い残すことはないか?」
バギーはルフィに最期の言葉を質問した。どう見ても絶体絶命……。
この状況で彼の放ったひと言はもちろん――。
「おれは! 海賊王になる男だァァァァァァ!」
ルフィはこの状況で、この町で、巨大な野望を口にする。
あまりに果てしなく、そして大きすぎて口に出すことすら憚られるその野望を叫ぶルフィに町の住人は少なからず度肝を抜かれたようだ……。
「はっはっはッ! 言い残すことはそれだけか! それでは、ハデに死ねぇぇぇッ!」
バギーは勝ち誇った顔をして剣を構えた。
「その死刑待ったァァァ!」
私たちはバギー一味に向かって行ってルフィを救出しようとする。
あの奇跡が起きなきゃどうすればいい? この距離ならバギーの剣を撃ち落とす事も可能かもしれない。
でも、この町であの奇跡を見せつけることが出来れば、ルフィの今後のアドバンテージは相当高くなる。
迷いが判断力を鈍らせて、引き金を重くする。
――バカなのか、私は……。未来を知っているというのは錯覚だ。正確には知っているかもしれない、だ。
既に漫画とは違った動きをしているのだから……。
「ここで、あるかわからない奇跡を信じて……、救える命を救わないことこそ――。あり得ない!」
私は愛銃、
「ゾロ! サンジ! ライア! ナミ……!」
ルフィが私たちの名前を告げる。
「わりい! おれ死んだ!」
「必殺ッ! 鉛星ッッ――!!」
笑顔で彼が死を受け入れたのと、同時に私は引き金を引いた。
しかし、私の弾丸はバギーの剣に届かなかった――。
なぜなら……。
「奇跡だっペ……、おれァ奇跡を見た……」
私の近くに立っていた男が涙を流して感動していた。
奇跡だという言葉はまさにこの場にピッタリだろう。
なぜなら、私の弾丸がバギーの剣に当たるよりも早く雷がその剣に向かって落ちて死刑台が崩壊したのだから――。
ふぅ、奇跡の可能性も捨てきれなかったからギリギリのタイミングを見極めるのは大変だったな……。
私は結局どちらも捨てきれなかった。だから、刹那のタイミングを狙ったのだ。
そのせいで、雷による爆風で浮き上がったルフィの麦わら帽子に弾丸が当たってしまい、穴が空いてしまったが……。
あとで彼に謝って直さなきゃ……。
1つわかったことがある――それは、奇跡は未来視で見ることは出来ないということ!
モンキー・D・ルフィという男の運命を私などが推し量るなど無理な話なのかもしれない。
「ライアちゃん、君は神を信じるかい?」
「そうだね。もしそういった存在がいるならば、
サンジのセリフに私はそう返した。しかし、グズグズしてはいられない。
早く海に出なければ、あの男がやってくる……。海軍本部、大佐――白猟のスモーカー……。おそらく
「ロロノア・ゾロ! あなたがロロノアで! 海賊だったとは! 私をからかってたんですね! 許せない!」
船に向かってしばらく走っていると、たしぎが我々を待ち構えていた。どうやら、ゾロに対して怒ってるみたいだ。
「こいつも黙ってたじゃねェか!」
ゾロは隣で走ってる私を指さした。余計なこと言わないでよ……。
「私は別にからかってないもん。ねぇ? 剣士さん」
「ひゃうっ! 《魔物狩り》のアイラっ……。 ――とっ、とにかくロロノア! あなたの和道一文字を回収します!」
私がたしぎの顔を覗き込むように話しかけたら、いきなり声をかけたからなのか、彼女は驚いた顔をして、私から顔を背けて、ゾロの刀を回収すると宣った。
「やってみな! おい、お前らは先に行ってろ!」
「おう!」
ゾロはたしぎの挑戦に受けて立ち。そして、彼女の刀を受け止めた。
「おい、お前! レディに手を出すとは――」
「あー、ゾロって普通に女の子とも戦うんだ。じゃあ、私はあのとき危なかったんだねぇ」
「行くぞ!」
サンジと私が後ろを向いてそんなことを言っていたら、ルフィに襟を掴まれて先に進んだ。
こういう空気は読めるんだよなー。この人は……。
さらに走っていくと大きな気配が私たちの進行方向に猛スピードで先回りして待ち構えているのを感じた。
なるほど、何かしらの乗り物を使っているのか――。これは逃げるのもひと手間だな……。
「ルフィ! この先に強い気配を感じる……、おそらくマトモに戦えば私たちが全滅するほどの――。回り道をした方がいい!」
「嫌だ! おれはこの道がいい!」
ルフィは私の忠告を聞かずにスモーカーの居る方に走っていく。
やはりダメか……。まぁ、
だけど彼は海楼石の十手も持ってるからなー。
というか、弱点を突くならそれを奪うのが一番なんだけど……。
「来たな! 麦わら!」
「誰だ!? お前は!?」
「おれの名はスモーカー。海軍本部の大佐だ! お前を海には行かせねェ!」
スモーカー大佐がルフィの前に立ちふさがり、モクモクの実の能力で彼を捕らえる。
ちっ、やはり実物は思った以上の化物……。
それならば……!
「ほら、良いものをくれてやる!」
私はスモーカーに向かって度数の強い酒瓶を投げた。彼はモクモクの実の能力者――炎なら何とか彼に多少はダメージを与えられるかもしれない。
「必殺ッ! 大火焔星ッッッ!」
瓶が彼の伸ばした煙の腕に触れる瞬間を狙って私は
どの程度の火力になるのか見当もつかないな……。
「――なっ!? くそっ、この雨で炎か――!? てめェは魔物狩り! おれの能力を対策してきたつもりか!」
スモーカーの伸ばした腕は炎によって断ち切られて、ルフィを落とした。
「なるほど、これくらいじゃ無傷ってわけか。参考になったよ。じゃあ、私たちはこの辺で!」
「逃がすか! バカッ! ホワイトブロー!」
スモーカーが伸ばしてきた腕を私は寸前のところで躱す。
「――おっと、危ない。やはり逃げるのが最善だな。しかし、どうやったら逃げられる?」
彼の攻撃スピードは速く、不意討ちの炎など二度と受けてくれなさそうなのだ。
「ライア! おれの腕と拳を燃やせ! あいつをぶっ飛ばす!」
「はぁぁぁ? そんなことして何の意味が?」
突然、ルフィがとんでもないことを言い出した。何を考えてるんだこの男は……。
「ライアちゃん、そいつは何かしら考えがあるはずだ。おれが時間を稼ぐから言うことを聞いてやってくれ」
サンジがスモーカーに向かっていく。しかし、彼はすぐに殴り飛ばされてしまった。
「早くしろ!」
「くっ、分かった。酒はもう一つあるから、これを腕と拳に――。そして、雨が降ってるから、マッチを濡らさない様に気を付けて……。点いた!」
「ゴムゴムのォォォォ!
「ぐおっ――!」
炎を纏った拳がスモーカーの腹に直撃すると、彼は吹き飛ばされた。
ていうか、ルフィってこんなに頭が良かったの?私とスモーカーのあの短いやり取りを見てモクモクの実の対策と、ダメージを与える方法を思い付いたってこと?
私は驚いていたが、スモーカーという男がただ
彼は吹き飛ばされたが、そのままルフィの腕を掴み、炎が消えたことを確認するとモクモクの実の力で即座に彼を完全に取り押さえてしまった。
「どうやら、幸運はここまでのようだな……」
「そうでもなさそうだぞ――」
スモーカーが十手を掴もうとしたとき、彼の手を止めたのは黒いフードの男……。
彼は来てくれたか……。ルフィの父親――革命家のモンキー・D・ドラゴン……。
しかし、驚いたな……。戦いに夢中だったせいなのか彼の気配になぜか気付けなかった……。
「世界は我々の答えを待っている……!」
ドラゴンがそう言い放ったその瞬間――!
「なっ――! 突風だっ!」
凄まじい突風が吹き荒れて、私たちは吹き飛ばされてしまう。
逃げ出すチャンスだ――。
「ルフィ、走れっ! バカでかい嵐がくる! 島に閉じ込められるぞ!」
走ってこちらに来たゾロと合流して、私たちはゴーイングメリー号へ向かって行った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ああ、危なかった。危うく取り残されるところだったよ。ありがと、ナミ。それにMr.9にミス・ウェンズデー」
「まったくグズグズしやがって」
「ライアさん、無事で良かった……、じゃなかった! 本当よ! これじゃ、先が思いやられるわ!」
Mr.9とミス・ウェンズデーに文句を言われる。
「まぁ、あの騒ぎで逃げられただけ、幸運よね。あなたも連中のお守りは大変だったでしょう」
ナミは温かい飲み物を手渡しながら、私にそう言った。
「そうでもないさ。ルフィには助けられたよ。やはり、我々の船長は凄い。もちろん、ゾロもサンジも凄いけど……。彼らのことは素直に尊敬するよ」
私は飲み物に口をつけながらそう思い返していた。
本当にルフィの立ち振る舞いには感動した。
「ふーん。あなたって、男の人に興味がないと思ってた。女の子ばっかり口説いてたから」
「はぁ? まったく身に覚えのないことを言わないで欲しいな!」
私はナミの事実無根の言い草に反論した。
「身に覚えのない? あなた、本気で言ってるなら病気を疑うレベルよ! 見境なく手を出して!」
しかし、ナミは譲らなかった。その上言いようが辛辣だった。
見境なくなんてことは絶対にない。
「そっそんなことあるもんか。なぁ? ミス・ウェンズデー」
「えっ? そっそうね。私はまったくそうは思わないわよ! オホホッ!」
私がミス・ウェンズデーに同意を求めると彼女は顔を俯かせて同調した。
なんで目を合わせてくれないんだろう?
「ごめん、何か悪いことをしたかい? 君の顔を見たいのだが……」
私は彼女の顎を触って、私の顔が見えるようにクイッと動かした。
「あっ……、あっ……」
ミス・ウェンズデーは驚いた顔をして声を発しなかった。そんなに驚かせたかな?
「そういうのを止めなさい! バカッ!」
そして、私はナミに頭を思いきり殴られた。
仲良くしようと思っただけなのに……。
「おいおい、そんなことよか、導きの灯が見えたぞ! お前らは覚悟した方がいいんじゃねェか?
Mr.9は灯台の光を指さしてそんなことを言っていた。
「導きの灯ー? なんだそれ?」
「あの光の先に
ルフィの質問にナミがそう答える。そうだ、あの海にはここまでの冒険とはスケールが違う冒険が待ち構えている。
私はこれからある事を色々と思い浮かべて身震いした。
「よっしゃ、偉大なる航路に船を浮かべる進水式をしよう!」
サンジが樽を置いて足を乗せる。
「おれはオールブルーを見つけるために!」
「おれは海賊王!」
「おれは大剣豪に!」
「私は世界地図を描くため!」
「私は父親に会うために!」
「「行くぞ!
私たちが同時に踵を樽に落とすと、軽快な破裂音が嵐の海に響き渡る。
麦わらの一味がいよいよ、
ルフィのレッドピストルはレッドホークと似てますが、威力は普通のゴムゴムのピストルと同じくらいです。水を手に付けてクロコダイルを殴るのと、同じイメージをしてもらえればありがたいです。しかし、本当に有効なのかは勝手な解釈なので独自解釈のタグを付け加えておきます。
あと、前回のまえがきでライアのプロフィールを載せたところ、感想欄で服装を質問されまして、あまり考えてなかったのですが、第一話の最初の部分に付け加えておきます。ご興味がある方はぜひ読み返して見てください。物語の進行にはまったく関係ないですが……。