ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう   作:ルピーの指輪

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いつも誤字報告と感想をありがとうございます!いろんなご意見を拝見させてもらうことが出来て楽しいです!
今回から大雑把に分けるとアラバスタ編がスタートです。
なので、そろそろ章を分けてみました。



アラバスタ王国編
グランドライン突入!


「おおっ! 見えたぞ! 偉大なる航路(グランドライン)ッ!」

 

 リヴァースマウンテンにはMr.9とミス・ウェンズデーの協力もあってあっさり辿り着き、ゴーイングメリー号は海を登り、グランドラインに到着した。 

 

 しかし、この後が大変だ。漫画と同じなら、ここからすぐに私にとって強大な敵が現れるのだ。

 

 それは、アイランドクジラのラブーン……。

 

 あいつは、その巨体で進路を塞ぐことで、私のゴーイングメリー号を傷付けようとしている。

 漫画ではルフィが機転を利かせて大砲を撃ち込んだおかげで、船首が折れるだけで済んだ。

 

 でも、私はカヤからもらったこの船の船首が折れる事も許したくない。

 まだ会ったこともないブルックとかいう人には悪いけど、私はこのクジラが憎くて仕方がないのだ。

 

「ブォォォォォン!!」

 

 案の定、バカでかいクジラが雄叫びを上げている。

 そして、壁の正体がクジラだということにもみんな気付いたようだ。

 

 

「ルフィ! 私が大砲で船を減速させる! 君はさっきのゴムゴムの風船とやらで、船首を守ってくれ!」

 

 私は船を最も減速出来る絶妙なタイミングと角度を狙いながら、ルフィに頼み事をした。

 

「ん? よし任せとけ!」

 

 ルフィは私の狙いを理解して右拳をパシッと左の手のひらにぶつけながら、返事をした。

 やはり彼は機転が利く……。

 

「おい、ライア! アレを撃つのか!?」

 

「バカなことは止めなさい! もし、あのクジラが怒ったら!」

 

「大胆なところがライアちゃんらしくて、素敵だ!」

 

 みんなは様々なリアクションをとって私を眺めていた。

 

「今だっ!」

 

「ゴムゴムの風船!」

 

 私がブレーキ代わりの砲弾を撃ち出す――そのタイミングでルフィは膨らみエアバッグの代わりをする。

 するとどうだろう? 思ったとおりルフィがクッションの役割を果たして、船はほとんど無傷で停止してくれた。

 

「よし! ルフィ! 手を伸ばしてくれ!」

 

 私はすかさず手を差し出して、彼は私の方に手を伸ばして、私の手を掴み、海に落ちることから逃れた。

 

「ふぅ、良かった。船が無事で……」

 

 私は船首を撫でながらそう言った。いやー、本当に良かった。

 

「自分たちの無事に感謝するのが先でしょ。どんだけ、船が好きなのよ」

 

 ナミはバカな人を見るような目で私を見ていた。

 だって、カヤがプレゼントしてくれたんだよ。

 あー、早く会いたい。空から頂上戦争降って来ないかな?

 

「とりあえず、これ以上クジラを刺激せずに、こっそりあの隙間から抜けよう」

 

「クジラに大砲ぶっ放した奴がなんか言ってるぞ……。ミス・ウェンズデー」

 

「ワイルドで素敵……、じゃなかった……、無茶ばかりしてバカみたいよね。Mr.9」

 

 私の言葉に二人がツッコミを入れる。確かに安易だったかもしれない。クジラがそのあと暴れだす可能性について考えてなかった。

 

「よし、もう少し後ろに下げるか!」

 

 ズドンという轟音と共に船が僅かに後進する。

 ルフィがラブーンに向かってもう一発大砲を撃ったのだ。

 

「ブォォォォォン!」

 

「えっ――?」

 

 2発目の大砲にはさすがのラブーンも気付いたみたいで叫び声を上げながら……。ゴーイングメリー号はクジラに飲み込まれた。

 ルフィには文句言えないけど……。船がァァァァァァッ!

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「私はクロッカス、双子岬の灯台守をやっている。歳は71歳、双子座のAB型だ」

 

「あいつ斬っていいか!?」

 

「良いわけ無いだろ。できるだけ下手に出て、頭を下げてでも状況を確認するべきだ」

 

 クジラの腹の中で灯台守のクロッカスと出会った。

 

「その顔でプライドのないことを言うな!」

 

「顔は関係なくない?」

 

 ナミの理不尽なツッコミに私は首をひねる。

 

「なぁなぁ、ここってあのでっかいクジラの中なのかー?」

 

 漫画とは違い、一緒に飲み込まれたルフィがクロッカスに質問をする。

 

「ここがどこか、みたいな間抜けな質問よりもマシだな。どう見てもネズミの腹の中には見えんだろ?」

 

「まぁ、ルフィの言うとおりクジラの腹の中だと考えるのが自然だね。まるで、おとぎ話の世界みたいだ」

 

「なんで、あんたはそんなに落ち着いてられんの!? クジラに消化されるかもしれないのよ!」

 

 クロッカスは私たちにこの場所がクジラの腹の中だと教えてくれた。

 それと思ってることを呟いたら、ナミにまた叱られた。

 

「出口ならあそこだ――」

 

 クロッカスが出口の存在を教えてくれた頃に、ラブーンがレッドラインに頭をぶつけ始めた。

 

 彼は鎮静剤をラブーンに射ち込み、そして教えてくれた。

 このクジラは海賊に付いてきたクジラで、この場所に置いていかれたという話を。

 そして、また会いに戻ってくるという約束を信じて50年もの間このように待っているということも……。

 その海賊たちは既に亡くなっているというのに――。ブルックは生きてるような死んでるような状態だけど……。

 

 うーん。話を実際聞くと実に切ない。敵視していて申し訳なかったよ。ラブーン……。

 

「で、君は今、何をしようとしたのかな? ルフィ……」

 

「あっ、ライア。ちょっと、あいつに喧嘩を売ろうと思って……」

 

 危なかった、ルフィがメリー号に乗り込んで行って何かしようとしている気配を察知して、慌てて来たから、間に合った。

 

「喧嘩を売るのにメインマストは関係ないよね? この船は私の宝物なんだ……。君にはそのことをよぉく理解して欲しいな」

 

「――そっか、わりいなライア! んーじゃあ、どーすっかなー」

 

 彼はメインマストを叩き折って、ラブーンにぶつけようとしていたのだ。まったく、この船をなんだと思ってるんだ……。

 

 

 で、そんなもの使わなくてもルフィは強いから巨大なクジラと十分喧嘩をすることは出来た。

 彼は敢えて、戦いの決着をつけずに終えて、もう一度戦う約束をラブーンと取り付けた。

 ルフィはラブーンに待つ意味を新しく上書きしたのだ。

 

 そして、ラブーンの件が落ち着いてサンジが食事を作ってくれていた頃、ナミが大声を出した。

 

「あーっ! 羅針盤(コンパス)が狂ってる!」

 

 羅針盤がグルグル回転しっぱなしで役に立たない様子を見て彼女は狼狽した。

 

「なーんだ、お前らそんなことも知らないで、こっちに来たのか?」

 

「この偉大なる航路(グランドライン)では、この記録指針(ログポース)を使って航海するのよ! ちなみにこれは、常識よ!」

 

 Mr.9とミス・ウェンズデーがドヤ顔で説明を開始した。

 この人たちはウィスキーピークを最初の行き先に選んで貰いたいから主導権握りたいんだろうなー。

 

 クロッカスは彼らの言葉に続けて説明をする。偉大なる航路(グランドライン)に流れる特殊な磁気のこと、そして、この島からはそれを利用して7つのルートが選べること、最後にはラフテルという島に通じているということを……。

 

 

「そこで、だ。お前らにこれをやろうと思う!」

 

 クロッカスの説明が一段落して、Mr.9はログポースを私たちにくれると言い出した。

 

「ヘェ、急にそんなこと言い出すなんて何を企んでいるんだ?」

 

 ゾロは最初から彼らを怪しむ。無理もないけど……。

 

「うっ……、Mr.ブシドー……。だから、その代わりに私たちの町であるウィスキーピークを最初の航海に選んで欲しいのよ。それで、私たちは町に帰れるから」

 

 ミス・ウェンズデーは自分たちの目的を告げて取引を持ちかけた。

 

「航路は慎重に選んだ方がいい。ラブーンの件もある。私の記録指針(ログポース)をお前たちにやろう。これで、好きな航路が選べる」

 

 クロッカスが親切心で自らの記録指針(ログポース)を渡そうとした。

 

「おいっ! クソジジイ! 何勝手なこと抜かしてんだ! コラァ!」

「それじゃ、取引出来ないじゃない! 営業妨害よ!」

 

 当然、二人はクロッカスに食って掛かる。帰りたいから必死なのだ。

 

「いいよ。おれたち、こいつらのを貰って冒険するから」

 

「むっ、麦わら……、お前……」

 

 ルフィはそんな中、迷いなく自分の結論を出した。こういうところが彼らしい。

 

 ということで、我々の偉大なる航路(グランドライン)での最初の目的地はウィスキーピークに決まった。

 

 Mr.9とミス・ウェンズデーはガッツポーズしてたけど、この人たちどうするつもりなんだろう?

 正体は私にバレてるし、彼らの強さも知ってるはずだ。まさか、宴会を開いて有耶無耶にしたところを襲ってくるとかベタな手段を使うのか……?

 

 そんなことを思っていると、ミス・ウェンズデーが私にこっそり話しかけてきた。

 

「ライアさん、警戒しないでください。あなたたちには手を出させないように必ず私が説得します……」

 

「えっ? ミス・ウェンズデー?」

 

「ずっと苦しかったけど……。あなたと出会えて良かったです……」

 

 ミス・ウェンズデーはいつもの調子とは違った感じを見せて、私たちには手出ししないと約束をした。

 急に素の表情を見せるんだもん。驚いたな……。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 偉大なる航路(グランドライン)の航海は困難を極めた。

 

 嵐、春一番、氷山、目まぐるしく変わる天候、そして気づいた頃には逆走しているほど気まぐれな海流。

 

 ナミに自信を持って自分の航海術が通用しないと言わしめるほど厄介な航路であった。

 

 それでも、船員が一丸となれば何とかなるもので……。

 

「最初の島が見えてきたな。あれがウィスキーピークか……」

 

 巨大なサボテンが目立つ島……。ウィスキーピークに我々はたどり着いた。

 

「しかしだなぁ、ミス・ウェンズデー、このまま何の成果もなく戻るとなると我々の面子が……」

 

「面子にこだわって、受けた恩を仇で返すほど落ちぶれて良いのかしら? Mr.9、あなただって感謝くらいはしてるでしょう?」

 

「――くっ!? 仕方ねェな……」

 

 ミス・ウェンズデーとMr.9はブツブツと話し合いをしていた。本当に私たちには手を出さないように説得をしているようだ。

 

「おい! お前らに言っておくことがある! ウィスキーピークは賞金稼ぎの町だ! 死にたくなかったら着いたらログが溜まるまで船から出るな! この船にゃ、手を出さねェようにおれが話をつけてやる」

 

 Mr.9はウィスキーピークの秘密をぶっちゃけた。

 これは意外な展開だけど、どうなるんだろう?

 

「嫌だ! おれは冒険がしたいからここに来たんだ! 着いたら冒険するぞ! 野郎ども!」

 

 ルフィは当たり前のように彼の要求をつっぱねる。性格的におとなしくするはずがない。

 

「いや、悪いね。気を使ってもらったのに。だから急いだほうがいいよ」

 

「急ぐ? 何をだ?」

 

「このままだと、君たちの仲間が全滅するってことさ。ルフィたちに喧嘩を売らないように、強く警告した方がいい」

 

 私はMr.9に忠告した。ルフィたちに手を出さぬことこそ身のためだと。

 実際、ゾロ一人に全滅させられてるんだもん。

 

 

 そうこうしている内に私たちの船はウィスキーピークの港にたどり着いた……。

 

 町は活気のあるムードに包まれて、私たちを大歓迎してくれているみたいに見えた。

 なるほど、こうやってグランドラインに来たばかりの海賊を油断させて仕留めているのか……。

 

「なんだー、楽しそうなところじゃんかー!」

 

 ルフィはこの歓迎ムードを素直に受け取った。

 

「そういう手だろ。まったく、おれたちはクールに行かなきゃって、――可愛い子多いじゃねェか! 天国かよ! この島は!」

 

 途中までクールに決めていたサンジの目がハートマークになったことがわかるくらいだらしなくなる。

 

「ライアを含めて3バカね」

 

「えっ? 私ってあっちの括りなの?」

 

 ナミの言葉が私の心に深く突きささった。不本意どころじゃないよ……。

 

 

 私たち5人は上陸した。ルフィが冒険に出ると言っているので当然だ。

 しぶしぶ、Mr.9とミス・ウェンズデーも降りてくる。

 

「いら゛っ……、マーマーマーマーマ〜♪ いらっしゃい、私の名前はイガラッポイ。ここはもてなしが誇りの町です。あなた方の旅の話をぜひ聞かせてください。宴を用意――」

 

「ちょっと良いかしら? イガラッポイ……」

 

 イガラッポイ、彼はMr.8にしてアラバスタ王国の護衛隊長……。

 彼のセリフを遮るようにして、ミス・ウェンズデーは彼を少し離れたところに連れていき密談を開始する。

 

 彼はチラッと私を睨んだような気がした。気のせいだと思うけど……。

 

 

「うーむ。わかった。麦わら一味の3000万は正直惜しいが……。――ぐはぁぁぁぁッ!」

 

 イガラッポイが何やらそんなことを呟いていると……。

 彼の体が――突然爆発した。

 

 これって……、まさかボムボムの実の能力!?

 

「人が突然爆発した? どういうこと?」

 

「きっ、貴様! どういうつもりだ! Mr.5! まさか、任務失敗したおれたちを消しに来たか!?」

 

 ナミの疑問と同時にMr.9が叫び声を上げる。やはり彼らが来ていたか。こちらも漫画よりもかなり早いな……。

 

「はっ! フロンティアエージェントのてめェごときを消しに誰がこんなところまで来るかよ! おれらがここに来た理由。それは社長が『おれの秘密を知られた』と言ったからだ。そして調べていくと、ある王国の要人がバロックワークスに潜りこんでいることがわかった――」

 

 サングラスをかけたワカメみたいな髪型をした男、Mr.5と、帽子をかぶった金髪のショートヘアの女、ミス・バレンタインが建物の屋根の上に立っていた。

 

 彼の存在に気づいた、イガラッポイは立ち上がり、ロールしている髪から散弾銃を彼らに向かって繰り出した。

 

「お逃げください!」

 

 彼はミス・ウェンズデーに大声でそう告げた。

 

 おそらくMr.9も含めて誰もがこの展開についていけてないだろう。

 

 ルフィたちは呆然として事態を眺めていたのである。

 

「誰が逃がすか! 罪人の名は、アラバスタ王国護衛隊長イガラム! そしてアラバスタ王国王女、ネフェルタリ・ビビ――! お前たち二人を、バロックワークス社長の名の下に抹殺する!」

 

 鼻くそをほじりながらそんなセリフを吐くMr.5を尻目にミス・ウェンズデーいや、アラバスタ王国の王女であるビビは走って逃げようとした。

 

鼻空想砲(ノーズファンシーキャノン)ッ!」

 

 彼から爆弾となった鼻くそが放たれる――。

 もっと、色々と能力の使い道あっただろうに……。

 

 爆炎がウィスキーピークの港で巻き上がる。

 

「――あれ? 当たったと思ったのに……?」

 

「こうやって、君を庇うのは二回目だね。怪我はない?」

 

 私はMr.5の爆弾が彼女を捉えるギリギリで、あのときのように彼女を突き飛ばした。

 

 チュウのときみたいに大怪我は負わなかったけど――。足を捻ったみたいだ。

 

「キャハハッ! 庇って倒れちゃうなんて間抜けね! 死ぬがいいわ! 私のキロキロの実の能力で! 1万キロプレス!」

 

 ビビを庇って転けた私を最初に潰そうとしたのか、ミス・バレンタインが自らの体重を1万キログラムに増大させて落下してきた。

 

 私は避けることが出来ずに彼女を睨むことしか出来なかった……。くっ、こんなところで終わるのか……。

 

 彼女がとてつもない勢いで私の背中に落下してきた――。

 

 あれ? どういうことだ……?

 

「――すっごく軽いんだけど……? 1万キロ?」

 

 どういうわけか、私の背中には子猫くらいの重量しか乗っていなかった。

 力の調節を間違ったのかな?

 

「…………」

 

「…………」

 

 ほんの一瞬だが沈黙が辺りを支配した。誰一人としてひとことも発しない……。

 

 そして――。

 

「えっと、キャハッ……、ちょっとダイエット中?」

 

 ウィスキーピークでついに私たちはバロックワークスと衝突することとなった――。

 

 

 




原作よりも長く居たバロックワークス組が今さら騙し討ちをするとは思えなかったので、今回は展開を色々とすっ飛ばしてしまいました。
原作の100人斬りからのルフィVSゾロとかすっごく好きなんですけどねー。
ゾロの懸賞金にも関わるかなとか思ったんですけど、ここは深く考えずに金額は原作と同じにする予定です。
次回はウィスキーピークでの戦いからスタートです。

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