ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう   作:ルピーの指輪

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いつも誤字報告や感想をありがとうございます!本当に書く力となってますのでありがたいです!
今回はミス・オールサンデー登場からです。
それでは、よろしくお願いします!


進路はリトルガーデン

「知らないカルガモが乗ってたときには何だと思ったけど、君の友達だったんだね」

 

 カルーが何故かゴーイングメリー号に先に乗っていたので驚いた。でも、カルー可愛いな。

 

「ええ、居なくなったと思ったから焦ったわ……。その、ええーっと……」

 

 ビビは何やら言いたげでモジモジしていた。

 

「あっ、ごめんごめん。ずっと手を握りっぱなしだったね。子供じゃないんだから、もう大丈夫か」

 

「あっ、私は別に……」

 

 私は彼女の手を引いてここまで来ていたので、ずっと握りっぱなしだった手を離した。

 なんか、王女様に失礼なことをしてる気がする。

 

「しかし、あっという間だったな。おれァ、ビビちゃんと旅が出来て嬉しいが」

 

「まっ、試し斬りが出来ただけ良しとしてやるぜ」

 

 サンジとゾロは出航の準備を終えて勇ましい言葉を放っていた。この二人は居るだけで頼りになる。

 

「なァ! 追手ってどれくらい来てんのかなァ?」

 

「1000人くらい来たりして」

 

「あり得るわ。社長の正体の情報はそれだけのことだもん」

 

 ルフィとナミの言葉に返事をするビビ。実際は1000人も動員はされなかったが、Mr.3とミス・ゴールデンウィークは派遣された。

 さらにMr.5とミス・バレンタインとも再び相まみえるだろう。

 

 うーん。私の戦力では果たして悪魔の実の能力者に勝てるだろうか? Mr.3の能力は緋色の弾丸(フレイムスマッシュ)で何とかなるかもしれないが、なるべくルフィに任せて援護に徹しよう。

 

 

「どっちみち、ここからは油断は禁物だね。気を引き締めていこう。既に追手のうちの一人がいる訳だし……」

 

 私は欄干に腰掛けているミス・オールサンデーに話しかけた。

 

「あら、気付いてたの? 気配を消すのは得意なのに」

 

 ミス・オールサンデーは不敵な笑みを浮かべて私を眺めていた。

 

「この一味の狙撃手をやってるんでね。狙った獲物を逃さないように感覚を鍛えてるのさ」

 

 私は彼女の挑発的な態度に対してそう言葉を吐いた。この人もかなり強いな。幼少から賞金首になって生き残ってるだけはある。

 

「ふぅん。なるほど」

 

「あっ、あなたは!? ミス・オールサンデー! なんであなたがここに居るの!」

 

 ビビはミス・オールサンデーの存在に気付き彼女を睨みつける。

 

「さっきそこでMr.8に会ったわよ? ミス・ウェンズデー」

 

「――くっ!? やっぱりあなたがイガラムをっ!」

 

 さらにミス・オールサンデーの言葉でビビはより一層怒りを顕にした。

 

「今度はMr何番のパートナーなの?」

 

Mr.0(ボス)のパートナーよ。この女だけが社長(ボス)の正体を知っていたから、私は彼女を尾行して社長の正体を知ったの」

 

 ナミの質問にビビは答える。そう、ミス・オールサンデーはMr.0――つまりクロコダイルのパートナーだ。

 

「正確には私が尾行させてあげたの。本気でバロックワークスを敵に回して国を救おうとしている王女様があまりにもバカバカしくてね。ふふっ……」

 

 ミス・オールサンデーはビビをバカにするような態度をとった。

 うーん。彼女には彼女なりの理由があることは知っているけど、その言い様はやはりムカッとするなぁ。

 

「へぇ、だったら迂闊にこの船に乗り込んだ君を捕まえれば色々とわかるんじゃないかな? ねぇ、サンジ」

 

「ライアちゃんの言うとおりだ。ビビちゃんには指一本触れさせねェ」

 

 私とサンジは同時にミス・オールサンデーに向かって銃口を向ける。

 

「そういう物騒なもの……、私に向けないでくれる」

 

「うおっ!」

 

 ミス・オールサンデーの発した言葉と共にサンジは投げ飛ばされた。

 そして、私は彼女の腕が私の右腕に生えてきたのを察知してその手を掴んだ。

 

 

「なるほど、面白い。きれいな手をしてるじゃあないか。ミス・オールサンデー……。この能力……、何の実の能力かな?」

 

 私は左手で彼女の手のひらを撫でながら、そう言葉を吐いた。

 恐ろしいな、この能力。近距離で戦うと私じゃ絶対に勝てそうにない。

 

「――ッ!? 驚いたわ……。さっきの立ち振る舞いといい、なかなか面白い坊やじゃない。ちょっと気に入っちゃった」

 

 ミス・オールサンデーは少しだけハッとした表情をして妖艶に微笑んだ。

 そして、彼女は私の両肩から手を生やして、私の髪の毛を撫でてきた。くっ……。今のは気付いてもどうしようも出来なかった……!

 

「坊やじゃない! 私は女だっ!」

 

「あら、もっと驚いちゃった。ますます面白い子ね」

 

 ミス・オールサンデーはそのまま私の襟を掴んで放り投げる。

 

「うわっ!」

 

「ライア! 大丈夫か!?」

 

 投げ飛ばされた私はルフィに抱きとめられて事なきを得た。ふぅ、びっくりした。やっぱり近距離じゃ勝ち目がないや……。

 

「よく見ればキレイなお姉さん!」

 

 そして、サンジはようやく彼女の顔をしっかりと見たのか、いつもどおりの反応をした。

 

「あなたが麦わらの船長ね。モンキー・D・ルフィ」

 

 ミス・オールサンデーは能力を使ってルフィの帽子を自分の方に投げてそれを掴む。

 

「――ッ!? お前を敵だと見切ったぞ! 帽子返せ! コノヤローッ!」

 

 ルフィはそれに対して激怒して怒鳴るが彼女は動じることなく微笑んでいた。

 

「不運ね、B・Wを敵に回したあなたたちも、頼みの綱がこんな少数海賊という王女も……。そして何よりの不運はあなたたちの行き先、リトルガーデン。あなたたちは、私たちに手を下されるまでもなく全滅するわ。クロコダイルの姿を見ることはおろか、アラバスタ王国にも辿り着かないで……」

 

 ミス・オールサンデーは言いたい放題だった。確かにリトルガーデンは巨人とか恐竜とか居て恐ろしいところだったけど、他に何があったっけ?

 

「知るかコノヤロー! 帽子を返せっ!」

 

「ふふっ、この永久指針(エターナルポース)をあげるわ。行き先はアラバスタ王国のひとつ前の何もない島。うちの社員も知らない航路だから、追手も来ない」

 

 怒るルフィを無視してミス・オールサンデーはビビに永久指針(エターナルポース)を投げる。

 

「何? あいつ良いやつなの?」

 

「罠だろ、どうせ」

 

 ナミの言葉にゾロはそう返す。

 

「どうかしら……?」

 

 ミス・オールサンデーは不敵に笑って二人の言葉を受け流す。

 

「――くっ、どうしたら……」 

 

 ビビは真剣な表情で悩んでいるみたいだ。

 ミス・オールサンデーは信用できる相手じゃないが、安全な航路という言葉は彼女には魅力的に聞こえるだろう。

 

「悩む必要は無いさ。そうだろ? ルフィ」

 

「ああ、そんなことどっちでもいい!」

 

 私が彼に声をかけるとルフィはビビの手元にある永久指針(エターナルポース)を握りつぶした。

 

「アホか! お前ーっ! あいつが良いやつだったらどうすんのよ!?」

 

 ナミはそんなルフィを蹴り飛ばした。

 割と本気で蹴飛ばしてるけど、「もしかしたら良いやつかも」で行動するのも危ないよ。

 

「この船の進路をお前が決めるなよ!」

 

 ルフィはハッキリとミス・オールサンデーに自分の意志を伝えた。

 彼には駆け引きなんてものは通用しないんだろうなー。

 

「という訳さ、ミス・オールサンデー……。君は私たちを不運と断じているけど、私はそうは思わない。次は君に再び出会えた幸運に感謝するつもりでいるよ」

 

「そう……、それならあなたのその口説き文句が聞ける日を楽しみにしておこうかしら……。ふふっ……」

 

 私とミス・オールサンデーの視線が交錯する。

 彼女は機嫌良さそうに笑って去って行った。

 

 

 

「さて、飯だ、飯だ! サンジ、朝飯にしよう!」

 

 ミス・オールサンデーが去ってから開口一番、ルフィはサンジに朝食を要求する。

 

「おう、さっきの町からたっぷり食材持ってきたから、ビビちゃんの歓迎も兼ねて力のつくもんを作ろう!」

 

 ウィスキーピークでログが溜まるのを待っているときにたっぷり補給をしたので食料には余裕が出来た。

 

「ふわァ。眠ィ……。ライア、飯が出来たら起こしてくれ」

 

「ん? わかったけど、君は相変わらずよく寝るな」

 

 ゾロは眠たそうな顔をして私にひと眠りすることを伝える。

 

「あれ? どうしたの? ボーッとして」

 

 ナミはポカンとした顔で我々を見ているビビに話しかけた。

 

「前から思ってたけど、この海賊団ってずっと自然体だなって」

 

 ビビはあまりにも我々の緊張感がないとでも言っているようだった。

 

「そうよね〜。どいつもこいつも……。まぁ、やらなきゃならない時は真剣なんだけど」

 

 ナミの言うとおり、きちんとしなきゃ死ぬような場面では皆ちゃんと動くし、よく働く。

 

「そういうビビだって、もっと自然体になって良いんだよ。あんまり張り詰めてたら、いつか折れちゃうだろ?」

 

「私も? でも難しい……、状況が状況だし……」

 

 私の言葉にビビは深刻そうな顔をして眉をひそめる。

 

「ほら、こうやってニコって笑って。うん、いい顔だ」

 

「…………」

 

 私は彼女の両頬を摘んで口角を無理やり上げて笑顔を作ろうとしたら、ビビは顔を真っ赤にして黙ってしまった。

 どうやら、また無礼なことをして怒らせてしまったみたいだ……。

 

「あなたはスキあらば人を口説くクセどうにかしなさい! ちょっと、ビビ! あなた、大丈夫?」

 

 ナミに尻を蹴られて強烈なツッコミを入れられる。

 そして、彼女は放心状態のビビの体を揺らしていた。

 

「はっ――。えっええ、大丈夫。あっ、あの、ライアさん!」

 

 ビビはハッとした状況で返事をして、私に少しだけ大きな声で声をかけた。

 

「ん? どうした? 急に改まって……」

 

「わっ、私、ライアさんが……。――ごっ、ごめんなさい。やっぱり何でもない!」

 

 私が彼女の顔を見ると、ビビはブンブンと頭を振って何でもないと言った。ふむ、国が心配で精神が不安定なのかもしれないな。

 

 

「あなた、どうせ責任取れないんだから……、本当に気を付けなさいよ。じゃないと――」

 

「ん? ナミ、君もいきなりどうしたんだ?」

 

 私はナミがボソリと呟いたのに反応した。

 

「はぁ……、ビビに同情してんのよ……。まぁ、良いか。国の心配で気落ちするよりは……」

 

「ナミさーん、ライアちゃーん、ビビちゃーん、ついでに野郎共! 飯が出来たぞー!」

 

 ナミは意味深なことを言っていたようだが、サンジの声にかき消されて、我々は朝食を頂いた。

 

 

 グランドラインの2回目の航海はそれほど荒れなかった。ビビが言うには最初の航海は7本の磁気の影響であれほど天候が荒れ狂ったみたいだ。

 

 いや、そういう細かいところは覚えてないからな。

 漫画を読んでたのってすっごく昔だし……。これでも、よく覚えてる方だと思う。

 

 ――ということで、リトルガーデンに我々は無事に辿り着くことが出来た。

 

 

 

 

 

「冒険のニオイがする! サンジ! 弁当!」

 

 鬱蒼としたジャングルに太古の植物を彷彿とさせる見慣れない風景、そして不気味な物音……。

 このリトルガーデンの如何にもな雰囲気がルフィにはたまらなかったらしい。

 率直に彼の状態を伝えるなら、彼はイキイキしていた。

 

 危険な香りがするから、船でログが溜まるまで待とうと言うナミの言葉を尻目にルフィは冒険がしたいと張り切って、サンジに海賊弁当を要求したのだ。

 

「――ねェ! 私も一緒に行っていい?」

 

「あんたまで、何言うの!?」

 

 唐突にルフィの冒険に付いていきたいと声に出したビビにナミがツッコミを入れる。

 

「色々と考えてしまうから、気晴らしに。大丈夫よ。カルーも居るし」

 

 ビビは気分転換をしようと思ってるみたいだ。ふーむ。なるほど。

 

「――ッ!? ――――!!!?」

 

「この子は言葉が通じなくてもわかるくらいの驚きを見せてるね……。よし、私も行こう。君たちだけじゃ、どうも心配だ。構わないだろ?」

 

 私はルフィたちに同行することにした。多分、トラブルが起こるとしたらこっちだし……。

 

「おう! ビビもライアも来い来い!」

 

「んじゃ、ビビちゃんとライアちゃんに愛妻弁当を」

 

 サンジは私とビビの分の弁当、そしてカルーのドリンクを用意してくれて、出発の準備が完了だ。

 

 

「よし! 行くぞォ!」

 

「じゃあ、船は頼んだよ!」

 

 私たちはゴーイングメリー号から降りて冒険に出発した。

 

 

 

「これ、アンモナイトによく似てる……」

 

「うん、そしてあれは恐竜によく似てるね……。というか、そのものだねー」

 

 ビビがアンモナイトっぽい生き物を眺めている頃、私は巨大な生き物に目を奪われていた。

 

「うはァ! 恐竜!?」

 

 ルフィは恐竜を見て目を輝かせている。

 

「まさか、ここは太古の島!」

 

「なるほど、生命の進化から取り残された島というわけか。いやはや、グランドラインとはとことん常識外れだ」

 

 私は実物の恐竜やアンモナイトを見てつくづくと実感した。やはり実際見ると知っていても驚くものだ。

 

「ところでルフィさんは?」

 

「ああ、ルフィならあそこさ」

 

 ビビの言葉に反応して私はルフィの居る位置を指差す。

 

「すっげェ!」

 

「恐竜に飛びついてる!? ライアさん、止めないの?」

 

 恐竜の背中に当然のように乗っかってるルフィに驚愕しながらビビは私にそんなことを言う。

 

「うん。無駄なことってあまりしたくないからね。ルフィなら、大丈夫さ。ああ見えてしっかり――」

 

「たっ食べられてんじゃないのよー!」

 

 私の言葉が言い終わらないうちにルフィは恐竜にパクっと食べられてしまった。

 

 しかし、その刹那――。

 

「「――ッ!?」」

 

 ズバンと一閃――恐竜の首が胴体から切り離される……。

 そして、ルフィは大きな手の上に落ちていった。

 

「――ゲギャギャギャギャ! 活きの良い人間だな! 久しぶりの客人だ!」

 

 このリトルガーデンに住む二人の巨人族の一人。青鬼のドリーがルフィを助けてくれたのだ。

 

「うっは〜! でっけェなーっ! 人間か!?」

 

「巨人族だね……。なんて迫力だ」

 

「初めて見た……」

 

 私たちはその圧倒的な存在感に唖然としながら口々に感想を漏らした。

 

「ゲギャギャギャギャ! 我こそはエルバフ最強の戦士ドリーだ! ()()()()をうちに招待しよう!」

 

 そして、ドリーは機嫌良さそうに大笑いしながら、私たちをもてなすと言ってくれた。

 やっぱり、いい人そうだな。

 

「見つかってた」

 

「みたいだね。でも、悪い人じゃなさそうだよ」

 

 私たちは巨人族のドリーの住処へと案内されることとなった。

 さて、私はここから、どういう立ち振る舞いをすればよいか……。

 




ミス・オールサンデー、つまりロビンは今までと毛色を変えてみました。進行上の都合もありますけど、向こうから主導権を握って迫ってくる偶には良いかなと思いまして……。
リトルガーデン編はどう考えてもヌルゲーっぽくなりそうなので、何とか面白い展開に出来るように頑張ります!
あと、ライアはリトルガーデンのログが溜まるまで1年という設定を見事に忘れてます。こういうところが彼女の抜けてるところなんです。




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