ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう   作:ルピーの指輪

23 / 89
いつも誤字報告や感想をありがとうございます!ライアに能力者の疑いがかけられていますが、こんな感じでこの先も進めようかと思ってます。
今回はミス・バレンタインがどうするかという話とか、Mr.3ペアとの戦いとかです。
それではよろしくお願いします!


リトルガーデンでの戦い

 

 

「ええーっと、そろそろ良いんじゃないかな? 彼も意識を失ってることだし……」

 

 私は前にルフィにやられた以上にボロボロにされているMr.5が憐れになってきて、彼女らを止めた。

 

「そう? ライアさんがそう言うならやめるけど……」

 

「――まだ足りない気がするわ」

 

 ビビとミス・バレンタインはあれだけボコボコにしておいてまだ物足りないみたいだ。

 何が彼女らの逆鱗に触れたのだろう?

 

「ところで、君には助けられたけどさ。思いっきりB・Wを裏切った感じになってるけど大丈夫なの? というより、なんで敵の私を助けたりしたんだい?」

 

 私はミス・バレンタインが組織を裏切るという行為を行ったことに疑問を呈した。

 あんなことして、大丈夫なのかな? 理由もわからない……。

 

「――なんでって……。そっ、そんなの言えないわ! 裏切り? キャハッ……、あっ、あれ……? どうしよう……」

 

 ミス・バレンタインはようやくハッとした顔になり、そのあと真っ青になった。

 

「要するに何も考えてなかったんだね……。だけど、ありがとう。君のおかげで助かったよ。あっ、もちろんビビも……、ごめんね。私が守らなきゃいけない立場なのに……」

 

 私は助けてもらえたお礼を二人に言った。情けないが、彼女たちが居なければ危なかった。

 

「ぜっ、全然大したことないから! べっ、別にお礼が言われたくてやったわけじゃないし……」

 

「私もライアさんが穢されると思ったから、気付いたら体が勝手に……」

 

 なぜか二人とも焦ったような口調になって頬を赤く染めながらそう言った。

 照れてるのかな? よくわからないが……。

 

「でも、行くところはあるのかい? B・Wは裏切り者を許さないんだろ?」

 

 私はミス・バレンタインの身を案じた。助けてくれた彼女が危険に晒されるのは、どうにも寝覚めのいい話ではない。

 

「――ッ!? だから何なの? キャハハッ! でも、私は何一つ後悔してないわ! どうするかは今から考えるわよ!」

 

 彼女はムッとした顔で不機嫌な声を出した。

 しかし、ログが溜まるのにも一手間なこの島で取り残されるとなると、刺客から逃げることもままならないはずだ。

 

 だから――。

 

「私たちと一緒に来るかい? まぁ、B・Wに追われる立場は変わらないけど、一人よりはマシだと思うよ」

 

 私は彼女を船に誘った。とりあえず、安全が確保されるまでは共に旅をしたほうが何かと良いのかと思ったからだ……。

 

「はァ? 私はさっきまでそっちの王女様を殺そうとしてたのよ。そんなこと許されるはず……」

 

 ミス・バレンタインは馬鹿馬鹿しいと言うように肩をすくめてそう言った。

 

「でも、ライアさんを守ってくれた……。私は反対しないわ。ルフィさんたちが何と言うかわからないけど」

 

 ビビは自分の刺客だった彼女のことを拒まなかった。やはり器が大きい子だ……。

 

「うん、そうだったね。君さえ良ければ船長のルフィにも上手く口利きするよ。ミス・バレンタ――」

 

 私が彼女のことを呼ぼうとしたとき、ミス・バレンタインは口を開く。

 

「ミキータ……。それが私の本名よ――。キャハハッ、あなたたちはきっと後悔するわ。私は決して良い人じゃあないんだから」

 

 ミス・バレンタインは自分の本名を名乗った。へぇ、ミキータっていう名前だったんだこの人……。知らなかった……。

 

「そっか、それじゃあ。よろしく、ミキータ」

 

 私は笑顔を作ってミキータに手を差し出した。

 

「――ううっ……、あなたみたいな男はどんな女にもそういう態度なんでしょ? ずるいわ!」

 

 しかし、ミキータは顔を背けながら手を握ってはくれなかった。

 というか今更だけど、やっぱり、私のこと男だと思ってたんだ……。

 

「あっ! ミス・バレンタイン……。ライアさんは男じゃなくって女の子よ」

 

 ビビが私が言い難そうにしているのを察して代わりに私の性別をミキータに教えた。

 

「――キャハハハハッ! ミス・ウェンズデー! やっぱり私に殺されかけたことを根に持ってるってわけね! そんなバレバレの嘘を誰が信じるって言うのよ!」

 

 ミキータは大声で笑いながら私が女だということを信じてくれなかった。随分と頑なだな……。

 

「いや、ビビの言うとおり私は女だよ。ああ、気にしないでくれ。よく間違えられるから、慣れてるんだ」

 

 私は努めて冷静さを失わないようにして、彼女に自分の性別を伝える。やはり、少しだけ悲しい……。

 

「キャッ……ハッ……、まっマジ……?」

 

 ミキータはB・Wを裏切ったことを認識したとき以上に顔を青くした。

 

「えっと、そんなにギョッとした顔をしないでくれないか……?」

 

 あまりに彼女がショックを受けていたような表情をしていた。

 

「――だったら、本当に私ってバカみたいじゃない……!」

 

 吐き捨てるようにミキータはそう言った。

 私が女でそんなにショックなのか?

 

「あなたはバカじゃないわよ。ミス・バレンタイン……。私はそれでも構わないと思えたりしてる……」

 

 いや、ビビも大げさ過ぎるだろ! 何かに妥協してるような言い方だな。

 

「ミス・ウェンズデー、やっぱりあんたも……。まぁいいわ。とにかく、後から厄介者みたいに言わないでよ。忠告はしたんだから」

 

 ミキータはようやく落ち着きを取り戻してくれた。

 

「ああ、それは約束するさ。それじゃあ、一緒に付いてきてくれ」

 

 私は彼女の言葉に対して頷いて、付いてくるように促した。

 

 ゾロたちは大丈夫だろうか? まぁ、簡単に負けるはずがないと思うけど……。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「お茶がうめェな」

 

「ああ、なんでだろうな。ゾロ……」

 

 ゾロとサンジが仲良く並んでお茶を飲んでいる。

 

「ちょっと、あんたたちッ! なにを呑気にお茶を飲んでるのッ! 今のうちに巨人から逃げるわよ! 早く逃げましょう……、ぐすッ……。なんで、こんなに悲しいのよ……」

 

 そして、それを見ながらひたすら泣いているナミ……。

 これはカラーズトラップとかいう能力のせいだな……。

 ちっ、ミス・ゴールデンウィークは戦闘をするタイプじゃないから、ゾロたちは油断して彼女の術中にハマったのか……。

 

「よくやったガネ! ミス・ゴールデンウィーク! 戦って厄介な者は戦意を削いでしまえば良いのだ! こうやって、拘束すれば、あとはどんなに強かろうが関係ないガネ!」

 

 そして、ちょうど彼らの元に私たちが着いたとき、Mr.3はゾロたちを蝋を使って拘束していた。

 

「お前がMr.3か! みんなを返してもらうぞ!」

 

 私は大声で彼にそう呼びかけた。正直、今の私では彼に勝てる気はしないが、何とかスキを見てゾロたちを助け出さなくては……。

 

「なっ!? 初対面でなぜ私がMr.3だと見抜いたのカネ!? これほどの切れ者がこの一味にいるとは思わなかったガネ!」

 

「いや、見ればモロバレだろ?」

 

 ガーンとショックを受けた顔をしているMr.3。これはボケているのだろうか?

 

「Mr.5とミス・バレンタインはしくじったのカネ? まったく、役にたたん奴らだ。まぁいい。お前らくらいなら正面からでも問題ないガネ」

 

 Mr.3はやれやれという表情で私と向かい合った。まったく、腹の立つ言い草だ。

 

「嘗めるなッ! 緋色の弾丸(フレイムスマッシュ)ッ!」

 

 私は彼に狙いをつけて、炎の弾丸を撃ち出した。

 

「ほう、炎の弾丸とは面倒だガネ……」

 

「ライアさん! どこを狙って?」

 

 しかし、腕組みをしているMr.3とはまったく別の方向に私は弾丸を撃っていた。

 

「カラーズトラップ……、闘牛の赤……」

 

 ミス・ゴールデンウィークが赤色の絵の具を使って的を作り、暗示にかかった私はそちらを狙っていたのだ。

 絵の具は炎で消えたけど、また新しく描き足されている……。

 戦闘力はないけど、なんて能力だ……。

 

「フハハハッ! ミス・ゴールデンウィークの恐ろしさを理解したカネ!? キャンドルロック!」

 

「――ッ!? そう簡単には当たらないよ!」

 

 Mr.3は勝ち誇った顔をして蝋を投げつけて、私を拘束しようとしてきた。

 私は攻撃の軌道を読んで、それを躱す。

 

「なかなか素早い奴だ! しかし、いつまで逃げ切れるカネ!?」

 

 Mr.3は次から次へと私に向かって蝋を投げつけてきた。

 確かに捕まるのは時間の問題かも……。

 

「このっ!」

 

 私は何度か鉛の弾丸をMr.3に向かって撃つが、カラーズトラップは強力で全部闘牛の赤を狙ってしまっていた。

 暗示というのはすごいな……。しかし、もうすぐ――。

 

「どこを狙っているのカネ? そろそろ観念したらどうカネ?」

 

 Mr.3は機嫌の良い笑みを浮かべて挑発してくる。

 

「くっ……!? ビビ! 敵の狙いは君だッ! 君だけでも逃げてくれ! ルフィの元へ!」

 

 私がビビにそんな指示を出すと彼女は頷いてカルーを走らせて行った。

 

「私がそれを黙って見てると思うのカネ? キャンドルロック!」

 

 Mr.3は今度はカルーに向かって蝋を放つ。

 彼の足を封じるつもりのようだ。

 

緋色の弾丸(フレイムスマッシュ)ッ!」

 

 私は炎の弾丸でそれを溶かして相殺した。

 

「――なッ!? ミス・ゴールデンウィーク!? カラーズトラップはどうしたのカネ?」

 

 Mr.3はようやく驚いた表情を見せた。そう、こっちにはもう一人仲間が居たのだ。

 

「キャハッ――! ミス・ゴールデンウィークなら、ここよ!」

 

 ミキータが闘牛の赤を消した上で、ミス・ゴールデンウィークを羽交い締めして捕まえていた。

 

「血迷ったのカネ? ミス・バレンタイン!? ちっ、裏切り者の粛清まで仕事をせにゃならなくなったガネ! まぁいい! まずはお前を殺るガネ! キャンドルチャンピオン!」

 

 Mr.3は怒りを顕にしながら、蝋で自らの体を覆う鎧を形成した。

 

「あれは、かつて4200万ベリーの賞金首を倒したという――Mr.3の最高の美術!」

 

 ミキータはキャンドルチャンピオンを知っているみたいで、汗を額から流しながら焦りの表情を浮かべる。

 

「フハハハッ! 多少動きが素早いくらいじゃどうしようもないガネ! どうした? もう、炎は使わないのカネ? もしかして……弾切れなのカネ?」

 

「ご明察――もうあの弾丸は一発も残ってないんだ」

 

 私が炎の弾丸を使わなくなったことを直ぐに察知した彼はニヤリと笑った。

 特殊な弾丸は量産が難しいからちょっとずつしか補充が出来ない。

 最近はこれから必須になる()()()()ばかり作っていたし……。

 

「そりゃあ不運だガネ! やはり、勝負というのは切り札を最後までとっておいた者が勝つのだ! チャンプファイトッ! 『おらが畑』!」

 

「――ぐはぁッ!」

 

 Mr.3の強力かつ素早い連撃が私を捉えて、私は吹き飛ばされてしまう。

 全身に針が刺さったみたいに痛い……。

 

「さすがに疲れてたのカネ? こちらの動きが読めても避けられなかったら意味がないガネ!」

 

 彼は勝ちを確信したような表情でよろよろと立ち上がった私を見ていた。

 

 しかし、そのときだ――。

 

「ライアさん! 準備が終わったわ!」

 

 ビビが私に向かって大声で叫んだ。

 

「フハハハッ! まだ逃げてなかったのカネ!? 今さら何をしようと無駄だ!」

 

 Mr.3はそんなビビを一瞥もせずに私を攻撃しようとしてきた。

 

「ビビッ! 何度もすまない……! 必殺ッッ――火炎星ッッッ!!」

 

 私はとっておいた最後の炎の弾丸をゾロたちに向けて放った。

 

「――ッ!? しまったッ! 蝋と絵の具が消えて――!? おっお前、弾切れだとさっき……」

 

 Mr.3が驚愕した表情で私を見る。

 ビビには予め、ブロギーに渡した酒をまんべんなく彼らを拘束している蝋に塗りたくるように指示を出していたのだ。

 

「うん。嘘つきなんだ。私は……。それに――切り札を最後までとっておいた方が勝つんだろ?」

 

 私が本当に弾切れを起こしたのならそれを正直に話すわけないじゃないか。

 

「くッ!? フハハハッ! だが弱小海賊団の雑兵ごとき私一人でも十分倒せるガネ」

 

 しかし、本気なのか虚勢なのかわからないが、彼はやる気に満ちた表情に戻ると、シャドーボクシングのような動作をしながらそんなことを言い出した。

 

「ほう、クソメガネ、言うじゃねェか。てめェ、ライアちゃんを殴ってタダで済むと思ってるのか?」

 

「どけ、アホコック! こいつはおれの獲物だ!」

 

 そこにストレスが溜まって苛ついた表情のコックと剣士がやってきた。

 すべてを貫くような凶暴な殺気と共に――。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「鬼――斬りッッ!」

 

羊肉(ムートン)ショットッ!」

 

 ゾロとサンジの必殺技が決まってMr.3は倒される。

 

 キャンドルチャンピオンは強いと思ったんだけど、サンジは私の戦いを見ていて、酒をMr.3にかけたかと思うと、タバコを投げつけてあっさり溶かしてしまった。

 

 生身の彼がゾロとサンジを同時に相手をして敵うわけがなく……。

 Mr.3は文字通り瞬殺されてしまった。

 

 まぁ、ちょうどドリーとブロギーの戦いも終わったみたいだから、こっちに彼が戻ってきたら更に詰んでいたと思うけど……。

 

 さて、あとはMr.0……、つまりクロコダイルからの連絡をMr.3の隠れ家で受けるだけだ……。

 

「ミキータ! 君に頼みがある!」

 

「ひゃいっ! わっ、私に頼み? 何かしら?」

 

 私はミキータにMr.3の隠れ家の場所を聞こうとした。

 

「ちょっと、待って。そういえば、この人って敵じゃなかった? なんで、味方みたいなことをしてたの?」

 

 ナミがごもっともな疑問を口にするが、今は答える時間がない。

 どのタイミングでクロコダイルが連絡を取るのかわからないから、なるべく早く隠れ家にたどり着きたいのだ。

 

「ミキータ、とにかく、こっちに来て」

 

「あっ……、手を……、キャハッ……」

 

 私は彼女の手を握って走り出した。ミキータは疲れているのか、俯いて顔を赤くしていた。

 

 

「Mr.3が拠点にしていた場所? なんで、あんたが隠れ家のこと知ってるの?」

 

「あっ、ああ。隠れ家かどうかはわからないが、私がMr.0なら必ずビビたちを仕留めたかどうか直ぐに確かめると思うんだ。だけど、Mr.3は電伝虫を持ってなかったからね。連絡を受ける拠点みたいな場所があると読んだわけさ」

 

 漫画で読んだから知っていると、言える訳もなく、私は思いつきをベラベラと話した。

 

「キャハハッ、よく見てるのね……。もう少し先に彼がドルドルの実の能力で作ったキャンドルハウスがあるわ。こっちよ……」

 

 ミキータは納得したという表情で、私をキャンドルハウスまで案内してくれた。

 

 よし、あとはクロコダイルからの連絡を受けるだけだな……。私はキャンドルハウスのドアを開けた。

 

 あれ――? なんか話し声が聞こえるぞ……。

 

 

『おれが指令を出してから随分と日が経つぞ、どうなってやがるMr.3!?』

 

「おれはMr.3じゃねェ!」

 

『何ッ! 貴様ッ! 誰だッ!』

 

「おれはルフィ! 海賊王になる男だッ!」

 

 電伝虫に向かって大声で叫ぶルフィ……。

 私の頭の中は真っ白になった――。




Mr.3とルフィが戦わなかったので、インペルダウン編でこの辺りの影響はありそうですね。この辺もしっかり練ってストーリーに組み込みたいです。

ミス・ゴールデンウィークとライアを絡ませるの忘れてたので、次回に回します!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。