ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう 作:ルピーの指輪
今回は文字通り元ドラム王国を目指す話です。
それではよろしくお願いします!
「いや、まいったね。ちょっと、体がダルいなー、とは思ってたんだけど……。まさか、このタイミングで私が……」
私はナミが感染するはずだった病気に自分が感染してしまったことに驚いていた。ベッドに寝かされながら……。
まぁ、彼女が苦しむよりはいいと思ったけど……。
「黙ってなさい。熱が40度もあるじゃない。ちょっと体がダルいなんてものじゃないわよ。何かの感染症かもしれない」
ナミが真顔で低い声で私に注意する。ここは素直に言うことを聞こう。
「40度? それって辛ェのか?」
「ルフィさん、辛いなんてものじゃないわ。さっきまで立っていたのが不思議なくらいよ」
ルフィの疑問にビビが答える。そういえば、彼は病気になったことないんだったな。
私も40度の熱は出したことないけど……。
「ナミ゛ざん! ライ゛ア゛ぢゃん
サンジは思ったよりも私の体が悪いということを知って、涙ながらに私を心配してくれた。
すごく嬉しい。サンジって優しくていい人だよなー。
「ええいっ、縁起でもないことを言うな! でも、原因がわからなきゃ治療も出来ない……! 私のにわか仕込の医学の知識じゃ、この症状の
ナミは狼狽するサンジを諌めながらも、私の症状から治療法を診断出来ないと嘆いていた。
「肉食ってたら、病気なんて治るだろ!」
「キャハッ……、何言ってんのよ。そんなので治ってたら世の中には医者はいらないじゃない。ていうか、この船に船医は居ないの?」
ルフィの謎理論にミキータが呆れ顔でツッコミを入れ、船医は居ないのかと尋ねる。
「あのね、あの修行バカが医者に見える?」
「質問した私が悪かったわ。どーすんのよ? こいつ、本当にヤバい病気かもしれないわよ」
ナミはそんな彼女の問いに悲しそうな顔をして答えると、ミキータは素直に謝った。
いや、そうなんだけど、ゾロのことをディスってない?
「ミス・バレンタイン、脅かさないで……。でも確かに
それを聞いてビビも顔が青ざめて、首を横に振る。
だんだん私まで怖くなってきたぞ……。
「おいおい、怖いじゃないか。大丈夫だよ、このくらい……」
だから、私はベッドから身を起こしてビビに声をかけた。
「「「ダメよ! 寝てなきゃ!」」」
すると、ビビとナミとミキータが凄い剣幕で私に怒鳴る。
「えっ、あっ、はい……」
私は3人の迫力に負けて布団に潜った。あれ? この人たちこんなに息が合ってたっけ?
「とにかく、早く医者に見せなきゃ」
ナミは焦った表情で私の顔を見ていた。あんなに普段は私と目を合わせようとしないのに……。
「ビビちゃん、アラバスタにはどれくらいで着くんだ? 当然、大きな国だし医者は居るんだろ?」
「わからない……。でも、確実に一週間以上はかかるわ」
そして、それに合わせてサンジがビビに質問をする。ビビも焦りの表情を浮かべながらアラバスタに着くまでの日数はかなりかかる事を伝えた。
「じゃっ! もっと近くの医者を探すぞ!」
「そうね。このままじゃライアさんが……」
そして、ルフィは近くを探そうと意見を出して、ビビもそれに同調しかけていた。でも――。
「ちょっと待つんだ。ナミ、あの新聞記事をビビに見せてやってくれ」
「――ッ!? あなた、そんなことをしたらビビが……」
私はナミにアラバスタの記事が書かれている3日前の新聞を彼女に見せるように頼んだ。しかし、ナミはそれを良しとしないような顔をした。
「だとしても、だ。私を思いやる気持ちは嬉しいけど……。こうなったら、知らせないわけにはいかないだろ?」
しかし、私がもう一度彼女に頼むとナミは気が進まないという表情をしながらもビビに新聞記事を読ませた。
「そっそんな……、革命軍の数がいつの間にか国王軍を上回っていたなんて……。このままじゃ、100万人が無意味に殺し合いをしてしまうことに……」
アラバスタ王国は王国軍の多くが革命軍に寝返って、反乱の鎮圧が難しくなっているという状況になっていた。
これは下手をしたら一気に国が落ちる状況だ。
「私だって命は惜しい。生きて帰る約束もしてるからね。でも、君の国でも大きな数の命のやり取りが行われそうになっているんだ。だから――」
私は本音ではカヤとの約束もやりたい事もあるので助かりたかった。しかし、この事実を内緒にすることは不義理だと感じてしまい、できなかった。
ビビには悩ませることになる。私はそう思っていたのだが、しかし、彼女の決断は一瞬だった。
「でも、私には……、ライアさんが必要なの……! 国を救うために……、絶対に力を貸してほしいと思ってる! だからッ! 医者を探しましょう! 一刻も早くライアさんに体を治してもらって、それからアラバスタ王国へ!」
ビビは躊躇わずに自分の国を救うのに私が必要だと言ってくれた。
だから、私の治療を先にしようとも……。彼女の思いやりは私の胸にとても響いた。
「にしし、当たり前だ! ライアはウチの狙撃手なんだ! 死ぬのはおれが嫌だ!」
ルフィは笑顔で彼女の意見を支持した。
「ビビちゃん! おれァ惚れ直したぜ!」
「キャハッ……! コイツを見捨てるとか言ったら私があんたを埋めるとこだったわ」
「あんたもお人好しよね。でも、ありがとう。このバカに早く元気になって貰いましょう。キザなセリフが聞けないのも寂しいしね」
それに合わせてサンジとミキータとナミも私の治療を先回しにすることを喜んでくれた。
みんな、いい人たちだ……。まったく、こんな私のために……。
「基本的な病人食は任せとけ! しかし、この病状……、昼間はもちろん夜中だって誰かが看病する必要があるな」
「「「じゃあ、私が!」」」
サンジが夜通しの看病の必要性を説くと、またナミとビビとミキータが同時に声を出した。
なんか、すごい圧力を感じるんだけど……。
「いや、そんなに気を遣って貰わなくても……、寝てれば大丈夫だし」
私はそれは如何にも申し訳ないと思って彼女らにそこまでしなくて良いと言ったのだが、聞く耳を持ってくれない。
「ライアとは私が一番長く旅をしてるわ。彼女のことも一番よく知ってるし……」
ナミは胸を張って私の頭を撫でながら自分が看病すると主張した。
「ナミさんが航海士として神経をすり減らしていることはわかってる。クルーの命に関わる大事な仕事だもの。睡眠はしっかりとった方がいいわ。だから私が――」
ビビはナミの航海での仕事量を気遣った。確かに彼女は海の上では人一倍働いている。でも、なんでビビは私の右手を握っているんだろう。
「キャハハッ、そういうあんただって国のことで頭がいっぱいでしょう? ここは何の憂いもない私が看ててあげるわ!」
そして、ミキータはビビは国の心配事も多いだろうから心に負担のない自分が看病をすると主張した。私の左手を握りながら……。
別にそんな言い争いみたいにしなくても良いのに……。
「「――ッ!?」」
しかし3人はなぜか対抗心を燃やしていた。今までにない迫力を醸し出しながら……。
「なぁ、サンジ! あいつら、なんで喧嘩してんだ!?」
「黙ってろ! くぅ〜、何か見ちゃいけねェと思えば思うほど新しい何かが目覚めようとしてる気がするぜ!」
そして、それを見守るルフィとなぜか興奮気味の口調のサンジ。
いや、これはどうやって収拾をつけるつもりなの?
結局、順番で看病するという方向で収まるまで、実に1時間近くかかった。
その間に大型のサイクロンが来たりして割と大変だったみたいだ。
彼女たちが甲斐甲斐しく看病してくれたのはもちろん嬉しかったのだが、寝間着に着替えるのを手伝うときにビビとミキータが私の体を見て「本当に女なのよねぇ」と何とも言えない表情で呟いていたので、少し悲しかった。
翌日……、妙な胸騒ぎがして目が覚めると、船がとんでもなく揺れた。
そして、間もなく大量の人間が船に乗り込んでくる気配を感じた。
うーん。おそらく、元ドラム王国の国王であるワポルが率いるブリキング海賊団がやって来たのだと思われるが……。
彼はバクバクの実の能力者で……、ん? バクバクの実……?
私は猛烈に嫌なことを思い出して、未完成の新しい武器である、マスケット銃――
「ちょっと、ライアさん! 何を!?」
急に私が動いたことに驚いたビビが慌てて私を追いかけてきた。
「おれたちはドラム王国に行きたいのだが――」
ナイフを食べているワポルを私は見つけて、メリー号が食べられるシーンを思い出す。
熱で意識が朦朧とするが、メリー号だけは命を懸けても守るっ!
ブリキング海賊団の連中に気付かれないように、私はワポルに向けて新兵器、
そして――。
「小腹が減ったな」
メリー号を食べようと大口を開けるワポルの腹を私は狙って引き金を引く。
「
命中した瞬間にすべてを吹き飛ばす突風が繰り出される強力な弾丸がワポルにクリーンヒットする。
「へぼッ!? ぎゃァァァァァッ!」
ワポルは叫び声とともに遥か彼方に吹き飛ばされる。
やっぱり、未完成だから銃口が砕けちゃったな……。今度……、修理しなきゃ……。ワポルが海に落ちるのを見守りながら、私は茹だった頭でそんなことを考えていた。
「えっ、ワポル様……?」
「「ワポル様ァァァ!!」」
ワポルの部下たちは突然の事態を飲み込めずにいたみたいだが、海に彼が落ちたことを認識すると慌てふためいて自分たちの船に戻っていった。
「よかった……、船は……、ぶっ……、無事か……」
私は外の寒気を認識して、熱がグングン上がっているのを感じていた。
「らっ、ライアちゃん!? なんて、無茶しやがったんだ! あんな連中おれたちが……」
「そうよ、いきなり走り出すんだもん。びっくりしたわ」
私の元に駆けつけたサンジとビビが青ざめた顔をして私を抱えようとした。
「ごめん……、でも……、この船だけは私の手で守り……、たかった……か――」
私は最後まで言葉を言い切れないまま意識が遠くに行ってしまった。
◇ ◇ ◇ ◇
「体温が……、42度!? こっ、これ以上体温が上がると死んでしまうぞ……」
聞き覚えのない声で意識が戻り、薄っすら目を開けると見知らぬ家の見知らぬベッドで私は寝ていた。どうやら、元ドラム王国に着いたらしい。
あの大柄な男はおそらくドルトンという男だろうな。漫画で見た感じそのままだ。
「へぇ、私の体温も……、随分と……、頑張っちゃってるんだね……はぁ、はぁ……。どうりで体が重いわけだ……、うっ……」
私は彼の言葉を聞いた感想をもらした。
「あなた、気付いて第一声がそれ? まったく、無茶して。船のために死んだらあの子だって悲しむでしょ!」
「「あの子……?」」
ナミは私がワポルを撃ったことを咎めた。カヤのことを持ち出して。
ビビとミキータは「あの子」という言葉に反応している。
「ははっ……、反論……、出来ないよ。はぁ、はぁ……、君の言うとおりだ。ナミ……」
私は彼女の言ったとおりだと思った。確かにバカなことをして死んでしまったら、死ぬなというカヤとの約束を破ることになる。
「わかったら、黙ってなさい」
ナミは体力を無駄に消費しないように喋るなと言った。彼女の言うことを聞かなきゃな……。
その後、ドルトンはこの国にいるという唯一の医者について話し始めた。
魔女と呼ばれるその医者、まぁ、Dr.くれはのことだが、彼女は非常に高い雪山の上にある城に住んでいる。
そして、彼女は気まぐれに山を降りるからいつ来るのか、わからないのだそうだ。
そっか、だから漫画だと雪山をルフィがナミを担いで登っていったんだよな。
ドルトンは次に彼女が山を降りるのを待つべきだと言っていた。
しかし、ルフィは……。
「おーい、ライア! 山登らなきゃ医者居ねェみてェだから、山を登るぞ」
ルフィはやはり私と山を登ると言ってきた。彼ならそう言うだろう。そして、それが唯一の私が助かる道なのだ。
「バカなの!? ライアが山を登れるわけないでしょ!」
「ああ、おぶってくから、大丈夫だ」
ナミはルフィに反論するが、彼は譲らない。
「常人よりも6度も体温上がってるんだぞ。ライアちゃんの体力が保つわけねェ」
「そうよ、あんな断崖絶壁! 登れるわけないわ!」
サンジもビビも私を登山させることに否定的だ。
しかし、これ以上、時間をかけるとアラバスタ王国がより深刻な事態に陥ることになる。
「ああ、頼むよルフィ。はぁ、はぁ……、山の上まで連れて行ってくれ」
「おう! 任せろ!」
私とルフィはタッチして笑いあった。やはり、私の船長は頼りになる。絶対に何とかしてくれるって思わせてくれる。
「ちょっと待ちなさい! キャハッ……、運ぶんだったら私に任せると良いわ。これでも
ミキータは私を運ぶのは自分の役目だと言ってきた。
確かにキロキロの実は運搬用の能力だとは思うけど……。道中が大変なんじゃなかったっけ。
「わかったッ! 運ぶのは任せた! でも、おれも付いてくぞ!」
ルフィはあっさりミキータに私の運搬役を任せた。まぁ、ルフィが自由に動ければ戦闘になっても大丈夫か。
「ルフィさん! 私も付いていってもいい!?」
ルフィとミキータと私で登山することに決まりかけていたその時、ビビが突然自分も付いていきたいと言い出した。
「ビビ……、君は危険だから……」
「ライアさんは2度も私を助けてくれた! 今度は私が少しでも助けるために役に立ちたいの! 待ってなんかいられない!」
私はもちろん過酷な道を彼女が歩むことを止めようとしたが、ビビの決意は固そうだった。
「よしっ! 良いぞ!」
ルフィはそんな彼女の気持ちを汲んだのか、あっさりと許可を出す。
というわけで、雪山を越えてDr.くれはの城を目指すのは、私に加えてルフィとミキータ、そしてビビの4人――。
私たちはナミとサンジに見送られながら過酷な山登りに挑戦することとなった。
ライアが病気になることにより、女性陣の静かな争いが勃発し、登山メンバーも変わってしまいました。
さらに今回はワポルの暴食を防ぐためにライアの新兵器ミラージュクイーンが初登場。未完成なので壊れてしまったのですが、威力が格段にアップした上に近距離戦もこなせる仕様になってます。
この辺のことは正式に装備するアラバスタ王国編の後半でもう一度説明します。