ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう   作:ルピーの指輪

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いつも誤字報告や感想をありがとうございます!ミキータを残留させてほしいというお声が多かったので驚いています。彼女は愛されキャラですね。
愛されキャラといえば、このトナカイ。今回はチョッパーが登場します。
それではよろしくお願いします。


トニートニー・チョッパー登場

 気が付くと私は暖かい部屋の中でベッドに寝かされていた……。

 ルフィたちは無事に私をDr.くれはの元に連れて行って、治療を頼んでくれたみたいだな……。ありがたい……。

 体も幾分と楽になった気がする……。

 

「助かったのかな……?」

 

「――ッ!?」

 

 私がそう呟くと、側で作業をしていた小柄なトナカイのようなタヌキのような見た目の生き物がビクッと驚いて身を隠そうとした。

 ああ、チョッパーがいる……。知ってたけど、めっちゃ可愛い。抱きしめたい……。

 

「ふふっ……、多分、逆なんじゃないかな?」

 

「――ッ!?」

 

 私はチョッパーの全身を見せつけるようにして、隠れようとする仕草がいじらしくて、笑みがこぼれてしまった。

 

「うん。そっちが正解だね。でも、そんなに怖がらなくたっていいじゃないか。私はか弱い病人だ。何も出来やしないよ」

 

「うっ、うるせェ!あっ、あと、熱は大丈夫か?」

 

 私が彼に声をかけると、チョッパーは警戒心を丸出しにしながら私の体調を聞いてきた。

 

「そうだな。かなり下がった気がする。いい薬を頂けたみたいだ」

 

「あっ、当たり前だ! 特別な薬なんだぞ!」

 

 私は体調が良くなっていることを伝えると、チョッパーは私が頂いた薬は特別だという。

 効果はてきめんだし、思った以上に回復したからもちろんそうなのだろう。

 

「そっか、じゃあその特別な医者にお礼を言わないとね」

 

 私はチョッパーの言葉を受けてそう返した。

 

「――おっ、おい!お前はおれが怖くないのか!?なんで普通に喋ってるんだよ!?」

 

 すると彼は自分のことが怖くないのかと聞いてきた。いや、君よりラパーンとかのほうがよっぽど怖いからね……。

 

「ん? それって、変かな?」

 

「変だ! お前もお前の仲間も変なやつだ!」

 

 チョッパーは私とルフィたちが変だと言いながら、どこかに駆け出して行った。

 ああ、ルフィたちは体力に余裕を残してこの城に辿り着くことが出来たから既にチョッパーとも話をしてるのか……。

 

「うるさいよ! チョッパー!」

 

「あー、行っちゃった……」

 

 途中でガシャンという大きな音が聞こえたから余程焦ってたのだろう。

 チョッパーに注意する声も聞こえる。

 

 そして、その声の主は彼と交代で部屋に入ってきた。

 

 

「ヒーッヒッヒッヒ! 熱は多少引いたようだね。小娘! ハッピーかい!?」

 

 ファンキーな服装をした高齢の女性――Dr.くれは……。

 私の治療をしてすぐにここまで回復させる手腕から察しても凄腕の医者であることに疑いの余地はない。

 

「ああ、天国に行った気分かな。実際には行ったことないけどね」

 

「ヒーッヒッヒ! 面白いね、お前。ん? 37度8分……、なかなか早い回復だ」

 

 私の返事とともに彼女は私の額に指を当てる。体温ってそれだけでわかるのか……。すごいな……。

 

「ああ、やっぱりあなたが医者なんだ」

 

「そうとも。あたしゃ、Dr.くれは。ドクトリーヌと呼びな」

 

 私が当たり前のことを口にすると、彼女はそれを肯定した。

 

「承知した。ドクトリーヌ、素晴らしい治療に感謝するよ。あと――」

 

「若さの秘訣かい?」

 

 私が質問をしようとすると彼女はお決まりのフレーズを出してきた。

 確かに100歳を軽く超えた年齢でその若々しさは気になるけど……。

 

「それも是非とも拝聴したいけど、その前に――私をここに連れてきてくれた3人はどこにいるのかな?」

 

 私は仲間たちの居所を尋ねてみた。体調が悪くなったせいなのか、見聞色の精度がガクンと落ちているみたいなのだ。

 

「ああ、あいつらならお前の治療がひと息つくまでずーっと起きて見守っていたからね。今は疲れて隣の部屋で眠ってるよ」

 

「なら、良かった。みんな元気なら何よりだ……」

 

 私は彼女の言葉を受けてホッとした。まぁ、ルフィたちなら大丈夫かとは思っていたが……。

 

 

「お前の首元……、後で見てみな。原因はここにある……」

 

 Dr.くれはことドクトリーヌが言うには私の首元にケスチアという有毒のダニに刺された形跡があるという。

 

 この毒に含まれる細菌は5日間、体内に潜伏して人を苦しめて、死に至らしめるそうだ。

 やはりリトルガーデンで刺されていたのか。本来は露出度の高いナミの方が刺されていたはずなんだけど……。首元じゃ仕方ない……。

 

「100年前に絶滅したのか……。なるほど、あの島ならそういう生物がいても不思議じゃないな」

 

「おや、心当たりがあるなんて、やんちゃな娘だねぇ」

 

 私がなるほど、という表情をしているとドクトリーヌは呆れたような声を出していた。

 

「ところでドクトリーヌ。質問なんだけど、私はあとどれくらいで良くなる?」

 

 そして、私は最も気になっていた完治までの時間を質問した。

 既にかなり動けるくらいには良くなっている。明日にでも動きたい気持ちはある。

 

「ん? そうだねぇ。お前は回復が早いみたいだけど、3日は大人しくしてな」

 

 彼女の返答は私が思っているよりも長かった。まぁ、病気を嘗めるなと言うことなのだろうが……。

 

「なるほど。何とか早めに出来ないかな? 明日とか。――ぐっ!」

 

「馬鹿言うんじゃないよ。あたしの前から患者が消えるのはね……、()()()()()()だ!」

 

 私がちょっとした我が儘を口にすると、ドクトリーヌは馬乗りになってメスを首元に近づけてきた。

 あー、どうやら気分を害するような言い方をしてしまったらしい。

 

「そっか。ドクトリーヌ……、あなたの優しさは十分に伝わったよ……。私の態度が良くなかった」

 

「――ッ!? まったく、道理で女二人のお前を見る目がピンク色な訳だ! 治療のついでに目玉をくり抜いてやれば良かったよ」

 

 私がドクトリーヌの言葉を真剣に受け止めて返事をすると、彼女は吐き捨てるようにそんなことを言い出した。

 ビビとミキータの目がどうかしているのだろうか?

 

 

 

「ぎゃあああッ!!」

 

 そんな折に、チョッパーの叫び声が部屋の外から響き渡っていた。

 

「見つけたぞォォッ! トナカイの化物ォォォッ! おれたちの仲間になれ!」

 

 ルフィがさっそくチョッパーに目をつけて仲間にしようと勧誘しているらしい。

 

「ルフィさん! 待ちなさい! そんなに強引に追いかけたらトニーくんが怖がるでしょ!」

 

「キャハハッ! 面白いトナカイもいるものね〜!」

 

 ルフィを追いかけているのか、ビビとミキータの声が聞こえる。

 

「おや、もう起きたのかい。お前の仲間たちは……。騒がしいったらありゃしないね。そういえば、お前たち海賊やってるんだって?」

 

「ええ。ドクトリーヌもルフィに勧誘されたりしたんじゃないかな?」

 

 ドクトリーヌの言葉に私はそう返事をする。

 

「はんっ! 礼儀のなってないガキだったんでね。蹴飛ばしてやったよ」

 

 多分、「ばあさん」とか言って怒らせたんだろうな。ルフィが何を言ったのか私は容易に想像が出来た。

 

「ははっ、ウチの船長が失礼したみたいだね。さっきの、チョッパーくんだっけ? 彼は駄目なのかい? 連れて行っては……」

 

「ヒーッヒッヒッヒ! お前たちは揃いも揃って物好きだねぇ。いいよ。持って行きたきゃ持って行きな」

 

 私がチョッパーを海に連れて行っても良いのかどうか尋ねると、彼女は意外とあっさりオッケーしてくれた。

 

「それはありがたい。私たちは船医が欲しかったからね。助かるよ」

 

 なので、私は彼女の許しを素直に喜んだ。

 

「――だがね。一筋縄じゃいかないよ。あいつの心は大きな傷を負っている。それは、医者(あたし)でも治せない大きな傷さ……」

 

 ドクトリーヌは話した。チョッパーが鼻が青いという理由で親からも仲間からも疎んじられていたと……。

 そして、ヒトヒトの実を食べていよいよ群れから追い出され、だからといって人にも受け入れてもらえずに、ずっと一人で暮らすことになってしまったのだとも……。

 

「お前たちにあいつの心が癒せるかい?」

 

 ドクトリーヌはチョッパーのことを真剣に想っているのだろう。彼女も彼女なりに彼の心を何とかしてあげようと思っているのかもしれない。

 

「さぁ? どうだろう……。ウチの船長は人たらしだけど、トナカイがその範疇なのかどうかイマイチ謎だからね……」

 

 我が船長、モンキー・D・ルフィは人から好かれる才能がある。だからこそ、行く先々で彼は敵以上に味方を作っていく。

 基本的に彼は無欲だ。打算が出来ないという訳ではないが、感覚を大事にする人間だ。

 ルフィの凄いところは理屈を抜きにして相手と衝突することで、いつの間にか懐に入り込むことができる所である。

 

「ヒーッヒッヒッヒ! そうかい。お前たちの船には人たらしと女たらしが同居してるんだねぇ」

 

「はぁ?」

 

 ドクトリーヌは私の話を聞くと機嫌良さそうに笑って、よくわからないことを言ってきた。

 ルフィは女たらしには見えないけどなぁ。

 

「さて、やかましい連中をそろそろ黙らせて来ようかね」

 

 そして、さっきから外で大騒ぎしている主にルフィを止めるために部屋の外へと出ていった。

 

 

「それにしてもすごいな……、ドクトリーヌは……。もうほとんどダルさを感じない」

 

 私は体の調子を確かめるように動かしながらそう呟いた。

 

「駄目だぞ。まだ、体を動かしちゃ」

 

「そうなのかい? 随分と良くなった気がするんだが……」

 

 ちょっと立ち上がろうとしてみたらチョッパーが部屋に入ってきて私を止めた。

 うーむ。まだ動いてはいけないらしい。

 

「ドクトリーヌの薬はよく効くから、熱はすぐに引くんだ。でも、ケスチアの細菌は体の中にまだ残っている」

 

 チョッパーが私に現在の病状を伝えてくれる。

 

「ふむ。なるほどね。チョッパーくん、だっけ? ありがとう。君が私の看病をしてくれたんだろう?」

 

「うっ、うるせェ! 人間にお礼なんて言われても嬉しくないんだぞ! コノヤロー! 大人しく寝てろ!」

 

 私は彼が看病してくれていたことを察してお礼を言うとチョッパーは嬉しそうな仕草をしながら悪態をついてきた。

 そんなところが堪らなく可愛いと思う……。

 

「はははっ、承知したよ。チョッパーくん。あと、ウチの船長が少しばかり強引に勧誘して済まないね」

 

 私はルフィが追いかけ回していることを彼に謝った。もちろん、ルフィには悪気は無いのだろうが、怖がらせたかもしれないし……。

 

「おっお前ら、本当に海賊なのか? 海賊だから、誰もおれを怖がらないのか?」

 

「うーん。海賊なのは本当だ。あと、君の場合はその、怖いというより可愛いってタイプだからなー」

 

 私はチョッパーの問いについ本音で答えてしまった。

 

「可愛い……? ばっ、バカにすんな!」

 

 案の定、彼は不機嫌な顔をして怒り出す。

 

「別にバカにしてるわけじゃないさ。しかし、気分を害したのなら謝ろう。君の話はドクトリーヌから聞いたよ……」

 

「ドクトリーヌが……?」

 

 私は彼に謝罪をして、ドクトリーヌの名を出すとチョッパーは彼女の名に反応する。

 

「君が受けた迫害や、君の感じた孤独がどれほどだったのか、分かるなんてことは私には言えない。だけど、私たちで良かったら――君の仲間になろう。だから……、一緒に海へ出ないか?」

 

 私は自分なりに言葉を選んで彼を勧誘した。

 彼が歩んできた過去の痛みや苦しみは想像もつかない。しかし、未来は共有できる。孤独を癒やすことくらいは出来るはずだ。

 

「――ッ!? バカ言うな! にっ人間がトナカイの仲間になれるか! それに、おれはバケモノなんだぞ。二本足で歩くし、――青っ鼻だ――」

 

 チョッパーは私から背を向けて、人間はトナカイの仲間になれないと言ってきた。

 気持ちはわかる。だから、私は――。

 

「仲間にはなれるよ。それは間違いないさ。大事なのは見かけじゃない。心なんだよ。チョッパーくん……」

 

 チョッパーが言葉を言い終える前に私は彼の忠告も忘れて立ち上がり、しゃがんで彼を後ろから抱きしめた。

 

「おっお前……。本当におれを……」

 

 チョッパーが私の顔を見ようと振り返ったとき、ミキータとビビが部屋に入ってきた。

 

「キャハハッ……、あんたも物好きね。ついに人だけじゃなくてトナカイにも手を出したの。てか、元気そうじゃない。安心したわ」

 

「羨ましい……、じゃなかった。ライアさんも、トニーくんを仲間にって考えてるの? でも良かった。ライアさんにもしものことがあったら私……」

 

 彼女らは私の回復した姿を見て安心してくれたみたいだ。かなり心配をかけていたようだな……。

 

「やぁ、随分と心配かけたね。何とかこの子を口説こうとしてるんだけど……。難しいものだね。ナンパというやつは。私にはハードルが高い」

 

 私は上手くチョッパーを勧誘できないことを自嘲気味に彼女らに話した。

 

「ミス・ウェンズデー。まだ、こいつには熱の影響があるみたいよ」

 

「落ち着いて、ミス・バレンタイン。こういうところも含めてライアさんだから」

 

 すると2人はなぜかやれやれと言うような口調で顔を見合わせていた。

 なんか、短い間にこの二人は結構仲良くなってるみたいに見えるな。

 

「おっ、お前らもおれを仲間にしようとするこいつらを止めなくて良いのかよ! バケモノ相手にこんなことしてるんだぞ」

 

 チョッパーはそんな彼女たちを見て、私やルフィを止めなくて良いのか確認する。

 ああ、私とルフィが勝手に暴走してると捉えているのか……。

 

「バケモノって。キャハハッ……、私もそうだけど、バケモノ具合で言ったらあの船長の方が断然上でしょう」

 

 ミス・バレンタインは自分やルフィが悪魔の実の能力者であることを言っているのだろう。

 まぁ、確かに特にルフィはバケモノと言えばそうだよなー。

 

「ライアさんやルフィさんもそうだけど、他のみんなもトニーくんを怖がったりしないと思うわ」

 

 ビビも他のクルーたちもチョッパーを怖がらないと断言した。

 それは間違いないと思う。

 

「お前ら絶対に変だ! おれなんか……! おれなんか……! ――あれ? くんくん……、こっ、このにおいは……、ワポル!!」

 

 チョッパーはそんな私たちをおかしい奴らだと叫ぶ。

 そして、何かの気配を察知したからなのか、四足歩行の形態に変化してスルリと私の腕から飛び出して行ってしまった。

 

「おっと、どこに行くんだい?」

 

「ドクトリーヌ!」

 

 私が声をかけても振り返りもせずに彼はドクトリーヌの名を呼び走り出す。

 

 彼はワポルの名を呟いていた。

 おそらく、ワポルたちがここに来たのを察知したのだろう。

 

 うーむ。ルフィなら負けないとは思うけど……。

 

「ちょっと、ライアさん。何をしてるの?」

 

「キャハッ……、あんた……、その体調で戦いでもするつもり……?」

 

「まぁ、素晴らしい治療のお礼くらいはしようと思ってね」

 

 私は緋色の銃(フレアエンジェル)を取り出して、戦闘の準備を行った。

 

 この国を巡るワポルたちとの戦いが始まろうとしていた――。

 




今回はあまりお話が進みませんでしたね。
ただ、ヒルルクの下りは回想なので全部カットになりますから、割と早く元ドラム王国編は終わるのではと見込んでいます。
ライアが大人しく寝てたら戦闘シーンも全部カットになってしまうので、Dr.くれはにこっ酷く叱られて貰いましょう。

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