ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう 作:ルピーの指輪
今回からアラバスタ王国編がいよいよ本番に突入します。
それではよろしくお願いします!
「うるせェ! 行こう!」
ルフィは漫画さながらの強引な勧誘でチョッパーを誘う。
さかのぼること数時間前、ワポルたちを倒したとロープウェイでやってきたドルトンに報告した。その際に、ゾロとサンジとナミと合流した。
どうやら、下でもひと悶着あったみたいだったが、ワポルの部下はゾロとサンジによって一瞬で片付けられたそうだ。
私はベッドに逆戻りしたが、ドクトリーヌに武器庫の鍵を渡すと治療費を負けてくれた。
退院に関しても口では認めなかったが、彼女の独り言は暗にこっそりと城を出ろと言っているように感じた。
というわけで、残るはチョッパーの勧誘のみとなったが、彼の心の傷は大きい。
私たちと多少は打ち解けたが、オッケーの返事はなかなか得られなかった。
そんなやり取りをする中で彼は自分のコンプレックスを大声で晒す。トナカイで青っ鼻のバケモノだと……。
チョッパーも本当は海に出たいけど、自分という存在に自信がないから一歩前に出ることが出来ないでいたのだ。
ルフィのあの強引な一言はそんな彼の抱えるしがらみとか怖れとかそういったものを一瞬で破壊した。
こうして、私たちはチョッパーを仲間に引き入れることに成功したのである。
ドクトリーヌからの手荒い別れを背に我々はチョッパーと共に船へとソリで向かった。
まぁ、その向かう道中でドクトリーヌの計らいでヒルルクが長年研究していたというピンク色の雪を降らせることで作られた“ヒルルクの桜”を見ることが出来たわけだが……。
これが幻想的でそれは美しい光景だったんだ。
チョッパーはソリを止めてしばらく泣いていた。それで、いいと思う。あの桜には彼の故郷の両親ともいうべき存在である――ヒルルクとくれはの想いが詰まっているのだから――。
そして、私たちはアラバスタ王国に向かって出航をした――。
さて、新しい仲間が入ってきたのだ。こんな夜にすることと言ったら決まっている。この出会いを祝した宴である。
私たちは“ヒルルクの桜”を見ながら酒を飲んでいた。
「いやぁ、絶景だね。君は幸せ者だよ。チョッパー……」
「えっ――?」
私がちょこんと座って“ヒルルクの桜”を眺めているチョッパーに話しかけると彼はポカンと口を開けて私を見た。
「だって、そうだろ? あの素晴らしい景色は君のためのモノだ。君も大切な人からの愛情を感じ取ったから泣いてたんじゃないかい?」
「うん……。おれは一人じゃなかった」
私が彼に理由を話すと素直にチョッパーは頷いた。
やっぱり、ぬいぐるみみたいで可愛いな……。
「ふふっ、これからは一人の時間が欲しくなるかもしれないよ――」
「ライア? それはどういう――」
そして、私は彼に教える。これからは果てしなく賑やかな人たちに囲まれることになり、孤独を感じる時間など無くなってしまうということを……。
「おーい! チョッパー! ライア! 一緒に騒ぐぞ! コノヤロー!」
「よしっ! 騒ぐかッ!!」
ルフィが私とチョッパーに声をかけてきたので私は手を上げて高らかに宣言をした。
酒の席ではハメを多少は外さないとね……。
「おおっ! ライアちゃん、何をするつもりだ?」
「あり得ないモノマネシリーズ! もしも、ゾロが床屋さんだったら――」
サンジの言葉に続いて、私は得意のモノマネ芸を始めた。ゾロのモノマネを――である。
「あははっ! 似てる!」
ナミは手を叩いて笑ってくれた。
「斬るぞ! てめェ! バカにしやがって!」
ゾロは私がモノマネで彼を弄ったので、刀を抜いて威嚇してくる。
まぁ、殺気はなかったけど……。
「斬るぞってところ、そっくりじゃねェか。マリモ野郎」
「んだと! コラァ! おめェはつまみでも作ってろ!」
「なんだと蹴り倒すぞ! オラァ!」
サンジはニヤニヤ笑ってゾロを挑発すると、いつの間にかそっちと喧嘩になってしまった。
「キャハハッ! なんで、あんたのペットは凍ってたわけ?」
「笑い事じゃないわ! ミス・バレンタイン! でも、どうしてなの? カルー」
船の近くで凍っていたカルーを見て笑うミキータと心配をするビビ。
最初はゾロと船番してたはずなんだけど……。
「足でも滑らせたんだろ? ドジな奴だ」
ゾロはニヤリと笑いながら、震えているカルーを見ていた。
「クエクエ――クエ〜」
カルーは苦しそうな声を上げる。
「ゾロってやつが川で泳いで居なくなったと思ったから、助けようとしたら凍ったんだって」
「あんたのせいじゃない!」
そんなカルーの言葉をチョッパーが訳すと、ナミがゾロにツッコミを入れる。
そういえば彼は動物の言葉がわかるんだった。人間以外の動物って共通語を使ってるのかな?
「へぇ、君は医術に加えて動物の言葉がわかるんだね」
「凄いわ! トニーくん!」
「褒められても嬉しくないぞ〜。コノヤロー」
私とビビがチョッパーを褒めると彼は盆踊りのようなリズムをとって嬉しさを全面に出す。
何、この子……。抱きしめたい……。
「キャハハッ! チョッパーちゃん。全身から嬉しそうじゃない」
「嬉しくないって言ってるだろ〜」
そんなチョッパーのほっぺをツンツンしながらミキータは笑ってた。
「ところで、ライア。医術ってどういう事?」
「ああ、それはね――」
私はチョッパーについて簡単に紹介をした。彼がドクトリーヌから医術を習い、私の体を診てもらっていることも含めて。
「何ィ! チョッパー、お前……、医者なのか!?」
ルフィは今さらのようにそれに驚く。
あれ? ルフィって、それを知らないんだっけ?
「逆にルフィさんはなんでトニーくんをあんなに頑張って勧誘してたの?」
熱心にチョッパーを勧誘していたルフィを見ていたビビは当然の疑問をルフィに投げかけた。
「七段変形の面白トナカイだからッ!」
「諦めなさい。ミス・ウェンズデー……。この船長の思考を読むなんてことは……。私はとっくに諦めたわ。あの人はノリと本能で生きてるのよ」
ドヤ顔でそう言い放つルフィに絶句するビビ。
それに対してミキータは彼女の肩を叩いて核心に迫るようなセリフを吐いた。一緒に戦ったからなのか、ルフィの本質をよくわかってる。
「ははっ、ミキータちゃんもこいつに慣れてきたってか。どうだい? もう一杯」
「キャハッ! 気が利くわね、コックくん。頂いちゃうわ」
そんなミキータを見ていたサンジは笑顔を見せながら空いた彼女のジョッキに酒を注いでいた。
チョッパーもミキータも上手く馴染んで良かった……。
「しまった! おれ、医療道具を忘れてきた」
「ああ、これだろ? ドクトリーヌのことだ。全部お見通しだったんだよ。これはソリに置いてあったんだ」
その後、しばらくしてチョッパーが青ざめた顔をして忘れ物の存在に気が付いたみたいなので、私はソリから持ってきた彼の医療道具を見せる。
「そっか。ドクトリーヌ……」
チョッパーはドクトリーヌの気遣いに気が付いて遠い目をしていた……。
彼女は優しくて気高くて――素晴らしい女性だったなぁ……。私もあんな歳の重ね方をしたいものだ。
「おーい! ライア! もう一回モノマネやってくれ!」
「おれもやりたい! ゾロってやつのモノマネ! 教えてくれ」
「やるな! 斬るぞ!」
ルフィが私にモノマネのおかわりを要求すると、チョッパーがやり方を教えてとせがんできた。
するとゾロは不機嫌そうにツッコミを入れる。
「なるほど、そういう斬るぞのパターンもあるわけだ」
「お前もいい加減に……」
私が次のネタに出来そうだと頷いてると、ゾロは再び刀を抜いた。
うん。彼で遊ぶのはこのくらいにしておこう。
「まぁまぁ、飲みの席くらい許してくれよ。良いじゃないか。ウケたんだから。それはそうと……。そろそろ改めて乾杯しないか?」
私はゾロを宥めて、もう一度乾杯をしようと提案した。
「おおう! いいぞ! やれやれ!」
「よし、今日は新しい仲間に“船医”チョッパーが! そして、先日は命の恩人であるミキータも仲間になった! 2人の乗船を祝して――新しい仲間に! 乾杯!」
ルフィの景気のいい後押しを受けて私が大きな声で乾杯の音頭をとった。
「「カンパーイ!」」
ジョッキを掲げて笑い合う私たち……。このなんでもない安い酒を飲む瞬間が冒険している中で一番楽しいときかもしれない。
「おれ、こんなに楽しいの………、初めてだ!」
「キャハハ……。こんなのも……、悪くないわね……」
チョッパーもミキータも満面の笑みを浮かべながら宴を楽しんでいた。
この宴は翌日の早朝まで続く……。ふわぁ……、寝不足だよ……、まったく……。
◇ ◇ ◇ ◇
「つまりクロコダイルは
翌日の昼時、みんなで雑談をしている中でクロコダイルのアラバスタ王国での評判の話題となった。
どうやら彼は民衆のヒーローとして捉えられているようだ。
「ええ、国を襲う海賊を追い払ってくれるから……。民衆からするとありがたい存在なの」
ビビは悔しそうな顔をして私の言葉を肯定した。
「しかし、その英雄様がアラバスタを乗っ取ろうとしていることは、みんなは思ってもいねェんだろうなァ」
「とにかく、そのクロコダイルってやつをぶっ飛ばせばいいんだろ!」
サンジの言葉に続いてルフィが拳を握りしめてそう言った。まぁ、ざっくり纏めるとそうなんだけど……。
「ちょっと待って。キャハッ……、えっ、
ミキータの顔がみるみる青ざめていって、驚きの声を上げた。
そういえば、言ってなかったな。Mr.0と電伝虫で会話したりしてたから知ってるものだと思ってた。
「あなた、何を今さらなことを言ってるの?」
「キャハハ、あんたたちイカれてると思ったけど、よくボスの正体を知ってアラバスタに向おうとか思えたわね……」
ナミの言葉にミキータは苦笑いを浮かべながらそんなことを言う。
まぁ、普通は七武海に喧嘩を売ろうとか思わないよな。この人数で……。
「ミス・バレンタイン。もしこのままアラバスタ王国へ行くのが――」
「行くわよ。どうせ逃げられやしないんだし……。まっ、私の場合は自業自得なんだから、ケジメくらいはつけるわ」
ビビはミキータとかなり親しくなっていたから、彼女に気を遣おうとしたのだろう。
しかし、ビビがセリフを言い終わる前に出たのはミキータの覚悟である。
「あっ、ありがとう。これからはオフィサーエージェントとの戦いになるはずだから、あなたがいるととても助かるわ」
「戦力としてはあまり期待しないでね。Mr.4以上のエージェントには正直勝てる気がしないから……」
ミキータはビビの言葉に静かにそう付け加えて神妙な顔をしていた。
オフィサーエージェントの彼女はよく知っているのだろう。Mr.4以上のエージェントの誇る高い戦闘力を……。
「ミキータ……」
私はそんなに彼女の横顔を眺めていた。Mr.4以上のエージェントか……。
それからさらに時が流れて、ドラム王国を出て5日後のことだ。私たちは食材不足という問題に直面していた。
魚群とか、なかなか遭遇しないものだね……。
釣りをしても昨日までノーヒット。うーん。困った……。
そんなわけで、今日は釣りを一休みしてミキータと部屋で一緒にある作業をしていた。
「ちょっとルフィたちを手伝って来るよ」
「わかった。あとは私一人でもできるわ。そもそも、私のための作業だし……」
私は自分の作業が一段落ついたので、ルフィたちの様子を見にデッキへと向かった。
「オカマが釣れた〜!」
私がデッキに足を踏み入れたとき、ルフィが高らかにMr.2を釣り上げていた……。うわぁ……、なんか、すごい光景だな。
漫画と同じく色々と濃いキャラクターの彼を見ながら、私の脳みそはフル回転していた。
彼をどうすべきか……。Mr.2だということを暗に伝えてここで片付けるという手もあるけど……。どうしよう……。
しかし、後々のことを考えるとそれも悪手のような気がするんだ。
なんせ、ここでルフィとMr.2が友人になっておくことが今後の展開で大きく作用することになる。
少なくとも、漫画ではMr.2は2回ルフィを救っている。
アラバスタ王国脱出とインペルダウンからの脱出だ。
おそらく、ここで彼を叩いたらルフィとの友情は芽生えないだろう。
どちらが正しいのか分からないが、ここは静観したほうがいいか……。
「おーい! ライアー! オカマが海に落っこちちまった。助けてやってくれねェか?」
ルフィは再び海に落下したMr.2を助けるように私に要求した。
あー、サンジは昼飯の準備、ゾロは二度寝中か……。
順番的に私になるよね……。ナミがあの奇怪な生き物を助けようとするはずないし……。
私は若干気が進まなかったが、Mr.2を海から助け出した。
「いやー、ホントにスワンスワン。こんなイケーメンな海賊さァんに救ってもらえるなんて、あちし超ラッキー。この御恩は一生忘れません。あと、温かいスープをくれないかしら?」
Mr.2はお礼と厚かましい要求を口にした。
「「ねェよ!」」
「あと、私は女だ。最初に言っておくが」
みんなは空腹で気が立っていたので口を揃えてツッコミを入れた。そして、私は面倒なので自分の性別を付け加えた。
「あらァ! 残念、ご同業の人〜? 大丈夫。オカマもオナベも仲間よ! ナ・カ・マ! 食っちゃったりしないわ〜! チュッ♡」
「誰がオナベだ! 撃ち落とすぞ!」
Mr.2に同業扱いされて、私は思わずキレて銃を抜いてしまった。
どういう発想をしたら、そんな発想になるんだ……。
「ライアがキレた……。珍しいわね……」
そんな私をナミが物珍しそうに見つめていた。
「お前、泳げねェのか?」
「そうよう。あちしは悪魔の実を食べたの。そうだ。お近づきの印に余興代わりに見せたげるわ」
Mr.2はルフィの言葉を受けてマネマネの実の能力を披露する。これは右手で触れた者の姿とまったく同じ姿に変身する能力である。
その上、メモリー機能付きで何人もの人間の姿に化けることができる。
この能力は使いようによってはとても便利な能力だ。
Mr.2は私の姿にも化けてしまった。なんか同じ顔があると気味が悪いな。
「おー、ライアもそっくりじゃねェか! あははっ! 面白ェな。それでなんかやってみてくれよ!」
「いいわよ〜! じゃあこういうのはドゥーかしら?」
「どっ、どうしたの? こっちを見て」
ノリがいいMr.2がルフィのリクエストに答えようと、ナミに近づいて行った。
何をしようとしてるのだろう。
ナミも不安そうな表情をしている。
「おい、お前……。オレの女になれよ……」
「はぅぅ……」
ナミは顔を真っ赤にして、立ちくらみを起こしたようにフラフラになった。
「ん? ナミの顔がすげェ赤くなってっぞ!」
ルフィは面白そうにナミの顔を見ていた。
「ほら、お前も目一杯愛してやるぜ――。ベッドでな……」
「へっ? あっ、ベッドで愛してって……」
ビビはMr.2にそう言われて足から崩れ落ちそうになった。
なんだ? あのオカマは何がしたいんだ?
「おっおい、ビビ! しっかりするんだ。というか、私の姿で変なことを言わないでくれ!」
私はビビに駆け寄って、彼女を支えながらMr.2に苦情を言った。
「どーうだったあ? あちしの
そんなことはどこ吹く風のように彼は笑い飛ばして、ルフィと肩を組んで楽しそうに踊っていた。
まぁ、こういう感じでルフィとMr.2は仲良くなったが、彼の正体は簡単にバレた。
迎えに来た彼の部下が“Mr.2ボンクレー”とはっきりコードネームで呼んだからだ。
正直言ってビビはその前から気付いても良いくらいの情報は持っていたんだけど……。
彼のことに気付かなかったビビは落ち込んでいたが、私はもっと質が悪い……。自分勝手な理由をつけて彼を見送ったのだから……。
特にナミはMr.2に触れられたことを懸念した。仲間が信じられなくなると……。
そして、その打開策を口にしたのはゾロだった。
「むしろ、ここでヤツに出会えたことをラッキーだと思うべきだ。対策が打てるだろ」
ゾロが自信満々な声を出して対策を話しだした。
アラバスタ王国に間もなく到着するというときだった――。
ライアに会ったボンちゃんの反応の正解は
そして、彼はライアの顔を手に入れました。これも色々と影響が出てきそうです。
次回はいよいよ、アラバスタ王国に突入!
あの人気キャラクターも登場します!