ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう   作:ルピーの指輪

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いつも誤字報告や感想をありがとうございます!
今回はタイトルどおりの回です。
それではよろしくお願いします!


火拳のエース

「よし! これから、何が起こっても……。左腕のこれが――仲間の印だッ!!」

 

 私たちは左腕に✕印をつけて、そこに包帯を巻いた。

 仲間が疑わしかったときに、包帯をとって✕印を見せ合えば自分たちの疑いが晴れるという算段だ。

 

 

 アラバスタ近海はオフィサーエージェントの部下である通称ビリオンズの船が多数確認されており、クロコダイルの計画が最終段階であることは間違いないみたいだった。

 

 さて、無事に上陸出来たことだし、まずは――。

 

 

「メーーシーー屋〜〜ッ! メシ屋はどこだァ!」

 

「「ちょっと待てー!!」」

 

 とか考えてると既にルフィは彼方までメシ屋を探して走り出していた。

 ふむ、マイペースというか欲望にまっすぐというか……。

 

「あいつ、敵陣の真っ只中ってことわかってんのか?」

 

 サンジは呆気に取られた顔をしてルフィの後ろ姿を見ていた。

 

「仕方ない。私が彼を探してこよう。彼の気配なら少し離れていても感知できるし……。みんなは旅支度を整えてくれ」

 

「お願いするわ。B・Wのエージェントもいるかもしれないから、なるべく早めに連れ戻して」

 

 私はルフィを見つけて連れ戻すと伝えると、ビビは大きく頷きながらそう言った。

 仲間の位置を感知できる力はこういうとき便利だな……。

 

「うん。わかってるよ。ルフィじゃないけど、食事は済ませておいてくれ。じゃあ――」

 

 私はそう言い残してルフィの後を追った。

 

 

 少し歩くと町並みが顔を出した。

 ここが港町ナノハナか……、見たところのどかな感じだな……。

 

「それにしても暑い……。だが、肌を露出すると紫外線が心配だし……」

 

 そんな独り言をつぶやきながらルフィの気配がする方に向かって歩みを進める。

 

「あとは、これを運んで……。きゃっ、よっととっと……。――あっ、すみません! ありがとうございます」

 

 ルフィの気配が止まったことを感知したとき、目の前で女性が大きな荷物を持ちながら転びそうになっていたので、私は抱きとめた。

 

「大丈夫かい。手伝おうか?」

 

 私はその女性にそう話しかけた。

 あれ? この人って……。

 

「そっそんな。悪いですって――」

 

「あっ――。いつかの海兵さんか……」

 

 お互いが顔を確認すると見知った者同士だということがわかった。

 たしぎ曹長か……。そういえば、スモーカー大佐もこの町にいるんだっけ。

 まずいな。ルフィより先に私がトラブルに足を突っ込んでしまった。何とかしないと……。

 

「まっ、魔物狩りのアイラ! やはりアラバスタ王国にッ! もごもご――」

 

「静かにしたまえ。たしぎ曹長……」

 

 私は即座に彼女の後ろに回り込んで背中に銃口を押し付ける。荷物を手にした彼女は刀を抜くことが出来なかったので背後を取ることは容易だった。

 そして、彼女を階級も含めて呼んでみた。

 

「――ッ!?」

 

 すると、彼女はハッとした表情を浮かべた。

 さて、どうしたものか……。

 

「君が居るのなら、スモーカー大佐もこの国にいるのだな? 大声を出すと撃つ。小声で答えろ……。あと、とりあえず荷物は下に置け。重いだろ?」

 

「そっ、それがどうしたっていうんですか?」

 

 私が静かに低い声で彼女に話しかけると、彼女は荷物を置きながら小さな声でそう返した。

 

「ならば彼には伝えておきたまえ。王下七武海――サー・クロコダイル。彼はこの国を乗っ取ろうとしている」

 

 私はとりあえず今後のためにクロコダイルのことを彼女に話しておいた。

 クロコダイルの処分は海軍にやってもらったほうが何かと都合がいいし……。

 

「あの、サー・クロコダイルが? そんな戯言を……。あっ、あなた何者なんですか? 海賊なんじゃ……」

 

「理由あって立場は明かせない。察して欲しいとしか……。しかし目指す正義は君と同じだとは言っておこう。同じ女性として君には期待してるよ」

 

 彼女はクロコダイルが国を乗っ取ろうとしている荒唐無稽な話は信じられないみたいだった。

 なので、私は適当なことを言って誤魔化すことに決める。

 とりあえず、味方っぽいことでも言ってみるか。偉そうな感じを出して……。

 

「正義は同じ……。まさか……、諜報――」

 

「しーっ……。そこまでだ。たしぎ曹長。それ以上、喋ることは許されない。わかるね」

 

 私は彼女の唇に人差し指を当てて言葉を止める。

 諜報とかを明言すると色々とツッコまれて面倒そうだし……。

 

「あっ……」

 

 私の指が彼女の唇に当たると、たしぎは頬を赤くして息を呑むような仕草をした。

 

「私の言葉が信じられないなら、犯罪組織バロックワークスとサー・クロコダイルの関係性を調べると良い。この国には既に何人ものエージェントが侵入している。ミスターのあとに数字が付いたコードネームを持つ怪しいやつを見かけたりしなかったか?」

 

「たっ、確かにMr.11と名乗る怪しい人を先日捕まえました」

 

 たしぎは私の言葉に思い当たる節があるような言葉を出した。

 あー、フロンティアエージェントの一人を捕まえたんだっけ。

 

「なるほど、やはり彼は優秀だな。スモーカーくんにはまた君を通して情報を伝える。しかし彼は敵を作りやすいタイプだからな……。君がしっかりフォローしておいてくれたまえ。頼むよ……、うん。いい目だね君は……」

 

「顔が近っ……、きゃっ……」

 

 私は適当なキャラクター設定を作ったことを後悔していたが、もうこれで押し通すしかないと思って、銃を構えながら彼女の正面に立ち顔を近づけた。

 

「危ない。気を付けなきゃダメだよ。君の体は民衆を守る大事な体なんだら」

 

「ひゃっ、ひゃい。すみません……」 

 

 腰から砕け落ちそうになったたしぎを片手で支えながら私はゆっくりと諭すように声をかける。

 彼女の殺気は既に消えて、惚けたような顔をしていた。どうやら、敵だとは認識してないみたいだ……。

 

「では、スモーカーくんによろしく。おっと、敬礼は結構だよ。私は海賊だからねぇ」

 

「はっ、はい」

 

 なので、私はそのまま彼女に手を振ってその場を去った。

 あくまでも堂々と毅然に……。焦りを悟らせないようにして……。

 

 

 

「ふぅ、なんとか――」

 

「誤魔化せたってか? すげェな。どうやって海兵を黙らせた?」

 

 私が独り言を再び呟こうとしたとき、背後にとても強い人間の気配がした。

 この気配……、確実にルフィよりも強い……。誰だ……。

 

「私の背後に立つとはいい度胸じゃないか――」

 

「おっと、待て待て! おれはお前に喧嘩を売りに来たわけじゃねェ。ちょっと、人探しをしてるんだ。この手配書のこれ……、お前だろ?」

 

 私は即座に振り向いて引き金を引こうとすると、オレンジ色の帽子をかぶった、そばかすが特徴的な男が慌てた顔をして、ルフィの手配書の隅っこに映ってる私を指差した。

 この男は……。まさしく……。

 

「――きっ君は。まさか……。ポートガス・D・エース……!? 白ひげ海賊団の2番隊隊長の……」

 

「へぇ、おれのことを知ってんのかい?」

 

 私がルフィの兄であるエースの名を呼ぶと、彼はそれを肯定した。やっぱりそうか。まさかルフィより先に彼と遭遇するなんて……。

 

 そもそも、この人の処刑が発端なんだよな。頂上戦争って……。

 だから、あまり会いたい人ではなかった。情が移るとやり難くなるから……。

 

「もちろんだ。ウチの船長のライバルのところの幹部くらいはチェックしてるさ。これでも元賞金稼ぎなんでね」

 

 私は後学のために四皇とその幹部の手配書には一通りチェックを入れていたので、この言葉には嘘はない。

 彼の懸賞金は5億5千万ベリーだったかな? 当たり前だけど、この辺の海賊とはランクが違う。

 

「だっはっはっ! ルフィはオヤジのライバルってか。流石はあいつの仲間だ面白ェ」

 

「私は冗談を言ったつもりはないよ。彼は海賊王になる男だ」

 

 私は笑われてイラッとしたので、はっきりとルフィは海賊の頂点に立つ男だと明言した。

 

「冗談じゃねェこたァ、目を見りゃあわかる。笑ったのはそういう理由じゃねェんだ。なんつーか嬉しかったのさ」

 

 エースは笑った理由は私の勘違いだと話す。そして、私のセリフが嬉しかったとも。

 

「嬉しい? そういえば、君はどうして私に絡んできた? 海兵を煙に巻いたことが理由じゃないんだろ?」

 

「おっと、いけねェ。お前さん、その反応だとドラムで伝言を聞いたわけじゃなさそうだな」

 

 エースが私に話しかけてきた理由を質問すると、彼はドラムで何かしらの伝言を頼んだようなことをつぶやいた。

 

「伝言……。ふむ、ドラム王国()()()場所には行ったが心当たりはないね。言動から察するとルフィの知り合いみたいだが……」

 

 私は彼にそう伝えた。ルフィとの関係性を話すように促しながら……。

 

「ああ、おれはルフィの兄貴だ。お前、絶対に弟の世話を焼いてるだろ? なんとなく想像がつく」

 

 ニヤリと笑いながらエースはルフィの兄だということを告げた。世話を焼いてるといえば、現在進行形で焼いてる。

 

「へぇ、あの火拳のエースがルフィの兄か……。それはびっくりだ」

 

「そう言ってるようには見えねェぜ」

 

 私のリアクションが薄かったからなのか彼は興味深そうな顔をして私の表情を見ていた。

 

「すまないね。あまり感情を表に出さないタイプなんだ。要するにルフィに会いたいんだろ?」

 

「ああ、案内してもらえると助かる」

 

 彼の要望を察して問いかけると、エースは頷いてルフィのところに連れて行くように頼んできた。

 まぁ、それは構わないんだけど……。

 

「案内する必要はないさ。ルフィはもうすぐこっちに来る。ほら」

 

 私はルフィが猛スピードでこちらに向かってくることを察知していた。

 案の定、ルフィは私が指差した方向から走ってこっちに来ていた。

 

「おっ、本当だ。よう、元気そうじゃねェか。久しぶりだな。ル――」

 

 エースは嬉しそうに笑って彼に向かって手を振ったが、ルフィは思いきり無視してそれを横切ってしまう。

 

「うぉおおおおお!」

「待てェ! 麦わらァ!」

 

 それもそのはず、逃げるルフィを鬼のような形相をしたスモーカーが追いかけていたのだ。

 

「…………」

 

「あー、スモーカー大佐だったか。知ってる気配だったから何かに追われてるとは思ったけど」

 

「ったく。世話が焼ける弟だ」

 

 エースはやれやれというような口調でつぶやき、信じられない速度で2人を追いかけて行った。

 なるほど、メラメラの実の力だけではなく、本人の力も相当だな……。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 それから、エースはスモーカーを足止めしてくれた。

 なので、私はルフィの首根っこを掴んで船に戻って行った。あーあ、ご飯食べそこねたなー。

 

 そして、船に戻った私たちは急いで出航する。カルーにビビの書いた手紙を託して――。

 彼は有能だから、きっと任務を果たすだろう。水をがぶ飲みしてたけど……。

 

「なんで、ライアちゃんはおれの買ってきた踊り子の服を着てくれないんだい?」

 

「絶対に似合わないだろ? というか、こういうのはナミたちみたいな色々と持ってる可愛い子が着るから良いんじゃないかな?」

 

 サンジが私に踊り子の衣装を着せようとしてきたので拒否した。

 だって、あの3人の横であんな格好したくない。明らかに私だけ貧相だし……。

 

「私はこういうゆったりしたやつで良いんだよ。武器も隠せるしね……」

 

 私はサンジやゾロと似たような格好の服を自分で購入していたのでそれを着た。

 なぜか、ナミやビビやミキータはホッとした表情をしていた。どういうこと?

 

 

「で、ルフィの兄貴ってのはどうだったんだ?」

 

「強いね。私たちの中の誰よりも」

 

 ゾロがエースの印象を聞いてきたのでその問いに対して端的に答えた。

 強い、というのは本当に第一印象だった。

 

「ほう」

 

「ルフィよりも強いって言うの?」

 

「キャハハッ、そりゃあ、とんでもない化物ね」

 

 私の、誰よりも強いという言葉には男女で反応がキレイに分かれた。

 ゾロはわかりやすい反応だ。

 

「だっはっは、エースには1回も勝ったことねェからな。だけど、ライア! 今やったらおれが勝つぞ!」

 

 ルフィはそれでも私の言葉を笑って受け流し、それでも勝つと宣言する。

 そんなこと言ってると後ろから――。

 

「お前が……、誰に勝てるって?」

 

「エ〜〜〜ス〜〜っ!!」

 

 ルフィを叩き落とすかのように船に飛び移ってきたエース。

 ルフィは彼の顔を見るなり大声で彼の名を呼んだ。

 

 エースと再会したルフィは本当に嬉しそうにしている。

 

 彼は黒ひげを追ってグランドラインを逆走していたのだという。仲間を殺した落とし前をつけさせるために。

 

 そして、ルフィに会いに来た目的は彼にビブルカードを渡すため。

 この白い紙切れが相手の居場所を示すアイテムっていうことなんてノーヒントでわかるわけない。

 

 まぁ、彼は敢えて黙ってたんだろうけど……。それがわかるくらいの位置まで進まないと意味を成さないだろうし。

 

 

「できの悪い弟を持つと……。兄貴は心配なんだ。おめェらもこいつには手ェ焼くだろうが……。よろしく頼むよ」

 

 エースは私たちにルフィのことを託すような言葉をかけてきた。

 義理堅い人なんだろうな。そして、ルフィを大切に想っている。

 

「エース……、もう行くのか?」

 

「ああ、ここに来たのはさっきも言ったがついでだからな」

 

 ルフィはエースが立ち去ろうとしているのを見て、声をかけると、エースは頷いて船を動かそうとした。

 

「じゃあ、私から一言いいかい?」

 

「おっ、ルフィの世話焼き係か? どうした?」

 

 私は彼からルフィを任せるというような言葉を受けたからなのか、つい口が動いてしまった。

 

「あまり生き急がない方がいい。ルフィの為にも生きることを諦めないでくれ……。まぁ、深い意味はないけど、覚えててくれたら嬉しいな」

 

 何故なのか分からないが、そんな言葉が出てしまった。

 未来のようなモノを知っている罪悪感からなのかそれとも……。

 このとき、私は頂上戦争など起きなくても良いから彼に生きて欲しいと思ってしまったのだ……。

 

 甘い……。非情になれないクセに保守的だなんて、半端者だ私は――。

 

「はっはっはっ! やっぱ、おもしれェ奴だな。お前……。まっ、覚えといてやるよ。次に会うときまでな」

 

 そんな私の冷たくなった心を知っているのか知らないのか、彼は笑った。

 その笑い声は朗らかで非常に心地よい響きだった。

 

「ルフィ! 次に会うときは――海賊の高みだ」

 

 エースは最後に弟にそう言い残して、去っていった。

 海賊の高みか……。今の私たちではとても届かないな……。

 

 この戦いで私も成長しなくては……。この先、果てしなくエスカレートしていく死闘を生き残るために――。

 




ライアが適当なノリをたしぎに見せたせいで、変な勘違いをされてしまいました。
あと、頂上戦争の原因となるエースに対しても彼女は思うところはあるみたいです。
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