ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう 作:ルピーの指輪
それでは、よろしくお願いします!
「クロコダイルは計画を開始したというような口ぶりだった。今ごろ反乱軍たちはアルバーナへ向かっているはずだ……。止められる可能性があるとすればビビ、君が反乱軍より早くアルバーナに着くこと……」
私はビビに現在の状況を教えた。そして、反乱軍を止めるためには早くアルバーナに着く必要があることも。
クロコダイルの計画は一応、漫画通りには進んでいる。
ルフィが彼に勝てていれば、あとはビビをアルバーナに送ってコーザと引き合わせるだけだが……。
「そんなの……、今から歩いていたら、とても間に合わない……」
ビビは私の話を聞いて、顔を青くした。
そう、アルバーナはナノハナやカトレアほどではないがここからそれなりに距離がある。
「うん。だからこそ移動手段を考えなくてはならない。例えば、速く大きな動物を上手く利用するとか……」
「ライアちゃん、まさかチョッパーに頼んで交渉するとかそういう作戦か?」
サンジは動物という言葉を聞いてそんなことを質問してきた。
「友達になれそうなヤツなら何とか出来るけど、そんなヤツばかりじゃないぞ」
そして、それを聞いたチョッパーが首を振りながら難しそうな顔をしていた。
「いや、もう少しだけ現実的な作戦がある。リトルガーデンでの出来事を思い出してほしい。ミス・ゴールデンウィーク……。彼女たちを乗せた恐竜が居ただろ? あれを利用出来ないかと考えている」
私はミス・ゴールデンウィークの乗っていたプテラノドンでアルバーナに行く計画を立てていた。
「ミス・ゴールデンウィークって、それこそどこに居るのかわからないじゃない」
「そうでもないのさ。ミス・ゴールデンウィークとMr.3はあのテーブルクロスの下に居る! どうやったのか知らないが、さっきから気配を感じるようになったんだ」
ビビの疑問に私は答える。
そう、意識を取り戻してサンジの顔をみたのと同時に私はある気配がこの部屋にあることを感じ取った。
クロコダイルと対峙したときには感じられなかった気配だ。
「おれもさっきから、アレの下から急に匂いがして驚いた。何か居るのは間違いないぞ」
チョッパーも鼻をクンクンしながらテーブルを見ている。
「この下にって、ちょっとライアちゃん。下ろしても平気かい?」
「ああ、大丈夫だ」
サンジが抱えていた私を下ろす。うむ……。反射的に体を捻ったおかげでそこまで酷い怪我にはならなかったみたいだ。
激痛で気を失ったけど、チョッパーの打ってくれた痛み止めが効いて動く分には問題ない。
「じゃあ、引っ剥がすぞ」
「その必要はないわ。カラーズトラップ――隠密の紫……。ジッとしてれば誰もその存在に気付かない……」
サンジがテーブルクロスを剥がそうとしたとき、ミス・ゴールデンウィークがMr.3とともに出てきた。
「水が欲しい……」
Mr.3はミイラのように体中から水分が抜けてカサカサになっていた。
「私たちはMr.0に頭を下げて、挽回の機会を貰おうとしたの。でも――」
ミス・ゴールデンウィークによると、クロコダイルは失敗して帰ってきた彼女らを許さなかったらしい。
Mr.5はこうなることを予期してスパイダーズカフェに行ったところで離脱したのだそうだ。
クロコダイルがMr.3の水分を吸い取って殺そうとしたところで、ミス・ゴールデンウィークはカラーズトラップによって身を隠しながら、Mr.3を救出。
そのまま、外にも出れずにここにずっと身を潜めていたそうだ。
「ふむ、Mr.3が殺されかけたところを救出したが、外に逃げられぬまま、そこに隠れていたのか……」
「やっと逃げられると思ったけど、外には海軍。Mr.0の計画を止めようとしてるあなたたちと交渉しようと思ってたの。アルバーナに早く行きたいのはわかってるわ」
ここまでの成り行きを話して、ミス・ゴールデンウィークは私たちにここから出ることを手伝ってほしいと交渉してきた。
「我々が移動手段を欲してるのを知っているなら頼む手間が省けるよ」
利害が一致してることを悟った私はミス・ゴールデンウィークの交渉に乗ることに躊躇はなかった。
「だったら、おれたちについてきな。レディを縛るのは趣味じゃねェが、今回ばかりは仕方ねェ」
私はミス・ゴールデンウィークの言葉を聞いて頷く。
そして、サンジには何かいい手があるみたいで、縄を取り出してミス・ゴールデンウィークとMr.3、そして私を縛った。
「おっと、まだ海賊が紛れ込んでいたか! ご苦労! 連れて行け!」
「了解〜♪」
サンジは海賊を連行するフリをして私たちをあっさり外に出した。
「なるほど、連行中に見せかけて連れ出すとは考えたね」
私たちはカジノを出てレインベースの外の砂漠まで足を進めている。
「まァな。ライアちゃんにばかり頭を使わせてられねェだろ?」
サンジはニヤリと笑って頭を指さした。こういうときは彼が一番頼りになる。
「無事に外に出したんだ。約束は守ってもらうぞ」
「もちろん。取り引きで嘘はつかない」
私がミス・ゴールデンウィークに確認すると彼女はこくんと頷いた。
「それよりも……、みっ、水を早く……」
「しょうがないやつだなー。コノヤロー」
チョッパーは脱水症状どころじゃないくらいカラカラになっているMr.3を見兼ねて水を手渡す。
Mr.3は物凄い勢いでそれを飲み干した。
「ふぅ……。生き返ったガネ〜ッ! そして、ビビ王女は頂く! ミス・ゴールデンウィーク、ここまでよくやったガネ!」
Mr.3は水を飲み干した瞬間に蝋をビビに向かって伸ばして、彼女の喉元に蝋で作った刃物を突き付けた。
「Mr.3! お前!」
しまった。まさか、水を飲み干してすぐに裏切るとは……。私は自分の無能さ加減に苛ついた。
「こうなったら、王女を人質にして逃げ切ってやるガネ。ミス・ゴールデンウィーク、早く逃げる準備を……」
「カラーズトラップ――和みの緑……」
Mr.3がビビを人質にして逃げようとしたとき、ミス・ゴールデンウィークはMr.3に向かってカラーズトラップを使った。
「お茶が上手いガネ〜! あれ? 王女は……」
Mr.3はビビを手放して、座ってお茶を飲み始めた。
「てめェ! 自分が何やったか分かってんだろうな!
そんなMr.3をサンジが許すはずもなく、彼の蹴り技がMr.3の腹を突き上げるように決まる。
Mr.3は体力をよほど消耗していたからなのか、その一撃で倒れてしまった。
「Mr.3……、嘘はダメよ。じゃあ、外に連れ出してもらえたことだし、約束を守るわ。ピィー」
ミス・ゴールデンウィークは顔色一つ変えずに、そうMr.3に言い放ち……、そして口笛を吹いた。
「すげェ! 恐竜だ!」
チョッパーは興奮気味にプテラノドンを見る。
「よしっ、これなら! 何とか間に合いそうだ!」
私はプテラノドンの速度を見てアルバーナに間に合う確信が出来た。
「トニーくん、言葉は通じそう?」
「おう、任せとけって言ってるぞ」
ビビはチョッパーにプテラノドンと会話が出来るか確認すると、彼はコミュニケーションが取れていると返事をした。
「じゃあ、この恐竜は連れて行くよ?」
「好きにするといいわ。結局、この国を手に入れたとしても私の願う理想郷には程遠いもの」
ミス・ゴールデンウィークはプテラノドンを好きに使え言ってくれた。
彼女の目的が何なのか結局わからなかったが、助けられたな……。
「そっか。また、縁があったら会おう。ありがとう、ミス・ゴールデンウィーク」
「これあげる……」
「また、せんべい……」
私がミス・ゴールデンウィークにお礼を言うと彼女はリトルガーデンのときのようにせんべいを手渡してきた。
「ライアさん、行きましょう」
ビビはプテラノドンの上から手を差し出して、私はその手を掴んだ。
そして、私たち4人を乗せたプテラノドンは砂漠を飛び立って行った。
◇ ◇ ◇ ◇
空の上から探索すると、すぐにナミとゾロとミキータを発見することが出来た。
どうやら、海軍やB・Wとひと悶着あったみたいで3人とも岩場の陰で身を潜めて休んでいた。
仲間と合流を果たした私たちはルフィを探した。
ルフィはすぐに見つかったが、クロコダイルと戦うことは叶わなかったらしい。
時間を少しでも取られることを嫌がった彼は、ルフィが戦闘を仕掛けようとするのを見るなり砂嵐を起こして、彼を吹き飛ばしてしまったのだ。
私が必要以上に彼を焦らせたせいだな……。まさか勝負すらしてくれないとは……。
「あいつは勝負から逃げた! 許せねェ!」
ルフィは怒りの表情を浮かべていた。
「すまない。ルフィ……。私が彼を挑発しすぎた。その上、警戒心も煽ってしまった……」
ルフィの相手をしなかったのは、私が彼の弱点を突いたことも原因だろう。
水を使って戦いを挑まれたら負けはしなくても時間を取られる可能性がある……。おそらくクロコダイルが気にした点はそこにあるのだと思う。
「とにかく急ごう。ミキータが居る限り重量制限はないはずだし……」
「でもさすがに7人はスペースの関係で厳しいんじゃ」
私の言葉にビビがツッコミを入れる。確かに厳しいどころじゃないな。4人でもチョッパーは私の腕の中に居たし……。
「ビビ様! ご無事で何よりです!」
そんな中、大きな鳥が私たちの近くに着地したかと思えば人間の姿になった。
「ペルっ! あなた来てくれたのね……!」
現れたのはアラバスタ王国の最強の戦士と呼ばれているトリトリの実の能力者ペル。
どうやら彼はレインベースに偵察に出て戻る途中に私たちの姿を発見したらしいのだ。
「――なるほど、事情は分かりました。ビビ様! 私にお乗り下さい……。アルバーナまで最速でお届け致しましょう」
ペルは形態変化をしながら、ビビを背中に乗せようとした。
「待って、ペル。ミス・バレンタイン……、お願いがあるんだけど……」
「キャハッ! これなら
ミキータはビビの言葉から何を言いたいのか察してニヤリと笑った。
こうして私たちはペルとプテラノドンに分かれて乗ることでアルバーナの王宮まで飛んで行くことが出来たのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
王宮は既にクロコダイルが荒らしたからなのか、兵士たちが多く倒れていた。
「おお、ビビ。よくぞ、戻って来てくれた。賊が侵入したが、何とか撃退することが出来た」
宮殿の中庭でビビを迎えたのは、この国の王であるコブラだった。
漫画ではクロコダイルに捕まっていたはずだけど……。
「お父様! よかった、無事だったのね! 早く、この動乱を止めなくては!」
「そうだな。お前には危険を承知で頼みたいことがあるのだよ。こちらに来なさい」
コブラはビビを手招きして近くに来るように促した。
そして、彼女もそれに従ってコブラに向かって歩き出した。
「ビビ様! 行ってはなりません! この王宮は既に奴らが――! ゲハッ――」
ビビが一歩足を踏み出したとき、目の前の扉が開き血塗れの男出てきて彼女を止めようとする。
しかし、背中を何者かに斬られたみたいで、倒れてしまった。
「チャカ!」
「まだ生きてやがったか」
ビビが血塗れの男の名を叫んだとき、坊主頭の男――Mr.1が扉から出てきた。
「キャハッ! Mr.1……!」
「ということは……」
Mr.1の存在に気が付いた私はコブラの顔を睨みつける。
「あらァ! バレっちったら、仕方ないわねェ」
コブラの顔はMr.2に変化してビビに向かって襲いかかる。
「やらせないよ!」
私は
「いつかのオナベちゃんじゃなぁい!」
Mr.2はニヤニヤと笑みを浮かべて戦闘態勢を作った。
「まったく、Mr.0もたかが小娘一人を殺すために慎重すぎだね。“シン”だね。いや、“シッ”だよ!」
「フォー」
さらにMr.4とミス・メリークリスマスも城の中から出てきた。
クロコダイルは宮殿の中にオフィサーエージェントを侵入させていたのか!?
私は漫画とは違う動きをしているクロコダイルに戦慄していた。
「ここで王女を殺しておけば、反乱は止まらない。
ミス・ダブルフィンガーまで出てきて、オフィサーエージェントは勢揃いしたことになる。
クロコダイルは既に“プルトン”を手に入れるために“ポーネグリフ”の在処までコブラを案内させてるみたいだな。
やはり、彼は漫画よりも焦って動いてるらしい。
「とにかく、クロコダイルは国王と共にどこかに行ったというわけだな。――ルフィ!」
私が彼女の言葉から状況を確認したところで、ルフィは宮殿から猛スピードで出ていった。
「そのクロコダイルって奴を探して、今度こそぶっ飛ばしてくる!」
彼はクロコダイルを探すと言い残してこの場から姿を消したのである。
「ビビ様! 早くお乗り下さい。奴らの狙いはあなたです! ――ガハッ!」
それを見ていたペルは再び鳥型に姿を変えてビビを乗せて避難させようとしたが、体中から手が生えてきて関節技を決められて倒れてしまう。
この能力は……。
「空を飛ぶ能力者なんて居たのね。余計な邪魔をされるところだったわ」
「ペル! ――くっ、ミス・オールサンデー!」
中庭に続く門の上で腰掛けているミス・オールサンデーをビビは睨みつける。
「のんびりしてる暇はないわよ。あと30分くらいで、あの宮殿広場から半径5キロ圏内は爆弾によって吹き飛ばされるようにしているの……。ふふっ……。私たちに構っている暇はあるのかしらね。これで、コブラ王も素直になってくれたわ」
ミス・オールサンデーは大きな爆弾の存在を仄めかした。
やはり、爆弾は仕掛けていたか……。
「なんてこった。あの野郎ここまで周到に手を回してやがったのか……!」
「なぁに、30分もある。おれたちでこいつら全員ぶっ倒して、ビビが反乱を止める。それでいいじゃねェか」
サンジは焦りを口にして、ゾロは殺気を高めた。
しかし、ゾロの言うとおりだな。こっちも戦力は揃っている。早く連中を倒して、爆弾を処理すれば何とか……。
「あら、強気ね……。あなたたちの勇姿も見ていたいけど……。私も忙しいから」
ミス・オールサンデーはこの場から姿を消した。おそらく、クロコダイルの元へと向かったのだろう。
「ビビ! 君は幼馴染とやらを早く探せ! チョッパー! 君も付いていってやってくれ。ビビを守るんだ」
私はビビとチョッパーに指示を出す。チョッパーなら、いざというとき彼女の治療も出来るし心強いからだ。
「行かせないよ! “イッ”だよ! Mr.4」
そのやり取りを見ていた、ミス・メリークリスマスはモグモグの実の能力で地中に入って、土の中からビビの足を掴んだ。
「フォー!」
そのスキを突いてMr.4が巨大なバットをビビの頭に向かって振った。
「うっ動けない! ――あれ?」
Mr.4のバットはビビには届かなかった。なぜなら、途中で受け止められたからである。
受け止めたのは、ゾロでもサンジでもなく――。
「キャハハッ!
ミキータは巨大なハンマーを片手に持ってMr.4のバットを受け止めていた。
「てめェは裏切り者のミス・バレンタイン。馬鹿な、Mr.4のバットをなぜ止められる?」
ミス・メリークリスマスは驚愕の表情でミキータを見ていた。
「これが私の新しい武器“キロキロパウンド”――。悪いけど、私のハンマーの重さは
“キロキロパウンド”は折りたたみ式の巨大ハンマーである。
故にミス・バレンタインが使わないと丈夫なだけで重さは非常に軽い、殺傷能力が皆無の武器だ。
デカデカとハンマーに書かれている
「ちっ……」
ミキータの10トンのハンマーに威圧された、ミス・メリークリスマスは苦虫を噛み潰したような顔をしてビビから手を離した。
「ビビ! おれの背中に乗れッ!」
「トニーくん。その必要はないわ。カルー!」
チョッパーの声かけに首を横に振ったビビはカルーを呼んだ。
「クェー!」
すると、どこからともなくカルーが走ってきて、ビビはカルーに跨った。
「コーザの元へ行ってくる。みんな、後はお願い!」
「「任せとけ!」」
カルーに乗ったビビの声に私たちは同時に返事をして、彼女とチョッパーを見送った。
こうして、私たち麦わらの一味とB・Wのオフィサーエージェントとの最後の戦いがスタートしたのである――。
思った以上に展開が早くなってしまいました。
クロコダイルの性格を考えると、一刻も早くプルトンを手に入れなきゃって急ぐと思うんですよね……。
ミキータの新武器の“キロキロパウンド”は原作でウソップがMr.4に使用した“ウソップパウンド”とほとんど同じ仕組みの武器です。ミキータが使うと嘘表記も本当になりますが……。
厳密に言えばミキータの重量も含めて10トンなので、表記に関しては嘘といえば嘘になりますね。
ということで、アラバスタ王国編は一気に佳境です。
ライアはMr.2ボンクレーと戦います!