ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう 作:ルピーの指輪
アラバスタ王国編もクライマックス。
それではよろしくお願いします!
「とにかく、優先すべきは爆弾の処理だな……」
爆弾が爆発してしまえばクロコダイルを倒せても元も子もない。
「しかしライアちゃん、こんだけの人数が暴れ回ってる中で爆弾を探し出すのは並大抵じゃないぜ」
サンジが現実的な問題を口にする。しかし、それに関しては問題ない。なぜなら、私は爆弾の設置場所を知っているからだ。
「いや、爆弾の在処なら目星はついてるよ。ここに来る前に時計台が見えたんだ。あそこなら、見通しもいいし、爆弾を撃ち出すにはうってつけだ。おそらくそこにある」
私は時計台に爆弾があるという話を予測という形で伝えた。
「そういうことか。ならとっとと時計台に行くぞ」
「待ちなさいよ。あんな高いところ簡単には登れないわ。時間もおそらく10分あるかないかだし……」
ゾロが動こうとするが、ナミがそれを制止する。
「キャハッ……、船長がいればジャンプで行けないこともないんだけど」
ミキータとルフィのコンビネーションなら、確かに何とかなりそうだな。しかし、あそこに行くのに最もうってつけの人物は――。
「わっ、私が行こう……。すまない。ビビ様だけでなく、宮殿まで守っていただき――」
ペルがよろよろと立ち上がり、私たちに頭を下げようとする。
そう、飛行能力を有するペルの力こそ今一番必要な力だ。
「まだ、終わってないよ。守るのは、宮殿じゃなくて国なんだろう? ミキータ、一緒に来てもらえるかい?」
私は彼の言葉を遮り話しだした。そして、ミキータの力もあれば心強い……。
「なんか作戦があるのね。ここまで来たら最後まで付き合ったげるわよ」
「ありがとう。じゃあ、ペル。私たちを乗せて行ってくれ」
ミキータがいつになく真剣な顔をして頷くのを確認した私はペルに声をかける。
「わかった。しかし、私が人のことを言える立場ではないが君も重傷だ。なぜそこまでして動くことができる?」
「仲間を助けるのに理由なんか要らないよ。うちの船長がそんな人だから、私たちも自然と感化されたのかもしれないね」
ペルの疑問に私はそう答えた。ルフィが仲間のために命を懸ける姿を私を含めてみんなが見ている。
だからこそ、私たちもそれに付いていこうと思うし、そうありたいと思うのだ。
「私も短い間に甘くなったものだわ。あんたらの船長はイカれてる。でも、それも悪くないって思ったもの……」
ミキータもルフィの無鉄砲とも思える行動に多少影響されたみたいだ。
「ビビ様が君たちを信頼した理由がわかったよ。アラバスタ護衛隊の名にかけて、必ず君たちを時計台まで届けよう」
「よろしく頼む。空を飛べる君がいるなら確実に爆弾は処理できる」
ペルは嬉しそうに微笑み、私たちを乗せて時計台へ飛び立った――。
時計台に近づいた私は2人の人間の気配を感じた。
それは、爆弾を撃ち出す任務を請け負っているMr.7とミス・ファザーズデーペアの気配だ。
こちらに向かって銃を向けているな――。
いいだろう、
「アジャスト! “ゲロゲロ銃”! 邪魔はさせないの! ゲーロゲロ!」
「ペル、右に旋回! 必殺ッッ! 鉛星ッッッ!」
私はミス・ファザーズデーが引き金を引く瞬間を見極めてペルに指示を出す。
そして、その瞬間にミス・ファザーズデーの利き腕を撃ち抜いた。
「ゲロッ!? ぎゃアアア!」
ミス・ファザーズデーは銃を落として、膝をついた。
「この距離で移動しながらだというのに、なんて狙撃精度だ!?」
ペルが回避行動をとっているスキに狙撃を成功させたので、彼は驚いた口調だった。
「ミス・ファザーズデー? オホホホ! まぐれ当たりは一度きりってスンポーだね。アジャスト! ――ぐはぁッ!」
そして、続けざまにMr.7も狙撃して無力化させる。
さすがに銃撃戦では負けたくない。
「その怪我でも、狙撃に関してはとんでもないわね……。Mr.7も名のあるスナイパーなんだけど……」
「これだけが取り柄だからね」
ミキータの感心したような声に対して、私はそう答えた。
よし、時計台の中へ入るぞ……。
時計台の中には大砲と砲弾として巨大な爆弾が設置されていた。
「キャハッ……、このでっかい爆弾、時限式なんだけど」
爆弾をいち早く確認したミキータは焦ったような声を出した。
やはり、時限式だったか……。
「何ッ!? クロコダイルのヤツ……。どこまで悪辣なんだ……。こうなったら、私が……」
「早まるんじゃない。あれを外に運び出すなんて真似したら君の命が無事で済むはずがないだろう」
ペルが自分を犠牲にして砲弾を運ぼうとしたので、私はそれを止める。
漫画だと、この人が爆弾の爆発と共に死んだと見せかけて生きていたけど、この世界でも同じようになるとは限らない。
「だが、もうこれしか方法は……」
ペルが困った顔をしてそう言ったが方法はある。
「ミキータ、君ならこの巨大な大砲ごと持って行けるだろ? 爆弾が爆発する瞬間に最高地点になるように私が砲撃をする」
「キャハハッ! 最っ高じゃない。もしもタイミングをミスしたら仲良くお陀仏ってわけね」
私が作戦を話すと、ミキータは何故か喜んだ顔をしていた。うーん、彼女のツボがわからない……。
「すまない。君の力にはいつも助けられてる」
「バカ……。今さらよ、そんなの。あなたが望むなら私は――」
私が彼女に謝罪すると、ミキータはボソリと聞き取れないくらいの声で何かを呟きながら大砲を持ち上げた。
キロキロの実の能力って何気に凄くないか?
「なっ、キロキロの実の能力というのは、これほど巨大な大砲の重さもコントロール出来るのか……」
「ちょっと、失礼するわよ」
ペルも私と同様、ミキータの力にあ然としていると、彼女は大砲を抱えてペルの背中に乗った。
「なるべく高い位置まで行ってほしい」
「承知した」
私もペルの背中に乗って、彼に出来るだけ高度を上げるようにお願いした。
「すまない。この辺が限界だ……」
「これぐらいなら、爆発の影響が地上にまで及ぶことはほとんどないはずだ」
地上からかなり高い位置まで舞い上がったペルの背中の上で私は砲弾を撃ち出す準備をした。
「撃ち出した瞬間に私たちの重さを1万キロにコントロールする。爆風からの影響を抑えられるはずよ」
ミキータは気を利かせてそう言ってくれた。やはり、彼女は機転が利く。
「わかった。何から何まで済まない……。よしっ! 砲撃を開始する!」
私は時限爆弾の爆発する時間と砲弾の打ち上がる高さを計算して、導火線に火をつけて爆弾を空中に撃ち出した。
「――一万キロプロテクト!」
ミキータが全体の重量を最大に変化させ、爆風に吹き飛ばされないように防御する。
「ぐっ――さすがに爆風がッ!」
もの凄い爆風を感じるが、一万キロの重量の私たちはビクともしない。
「だけど……、上手く行ったわね……。あとは、船長があのサー・クロコダイルに勝てるかだけど……」
ミキータは遠い目をしながらルフィとクロコダイルの勝負のことを口にした。
「ルフィなら、勝つさ……。彼は負けない。負けるはずがないんだ」
「だといいけど……。って、あれは――」
私がルフィの勝利は確実だと口にすると、ミキータが驚いた顔をして指をさした。
「くっ、クロコダイル? なんてことだ――。あの男が王下七武海の一角を本当に落としたというのか」
ミキータが指さした方向には文字通りぶっ飛ばされたクロコダイルがいた。
やはり、勝ったか……。信じてたよ……。
「ほらね……、ルフィは勝った……、だろ……」
「ちょっと、あんた大丈夫!?」
私がふらつくと、ミキータは心配そうな声を出す。
「大丈夫さ。せっかく戦いが終わるんだ。最後まで見届けるよ」
そうだ。ここまで頑張ったのだから、この国に平和が戻る瞬間まで意識は保ちたい。
いつも気絶してばかりだし……。
「戦いが終わるか……。ビビ様が奮闘してるとはいえ……。ん? まさか、雨が……」
「奇跡が起こると、人の意識は一瞬でも1つになる。そうなれば――」
「キャハ……、ずいぶんと静かになったわね……」
雨が降った。この国は渇いていた。
そこに天から恵みが降り注いだのだ。
あれだけ激しく争っていた人々はその一瞬に静まり返った――。
これが千載一遇の好機となったのである。
「あそこに居るのはイガラムさん……それにチャカも……」
「ふぅ……。ようやく終わったか……」
ペルの言葉を聞いて、私はこの国の動乱にピリオドが打たれたことを察した。
「悔やむことも当然――やりきれぬ思いも当然。失ったものは大きく、得たものはない。が、これは前進である! 戦った相手が誰であろうとも、戦いは起こり、今終わったのだ! 過去を無きものになど、誰にもできはしない! ――この戦争の上に立ち! 生きてみせよ! アラバスタ王国よ!!」
アラバスタ王国の国王であるコブラは、クロコダイルの陰謀により踊らされて反乱を起こした者たちにそう声をかけた。
国というものは人がつくる。確かに壊れたモノ、失ったモノは多いけど……。民衆の意識は確実に前を向いた。
だからとて、この惨劇の上で前進だとはっきりと宣言できる為政者がこの世界に一体何人いるだろうか――。
「お疲れ様。よく、頑張ったね。ビビ」
「ライアさん! あはっ! 無事で良かった!」
ペルがビビの近くに着陸して、私とミキータを下ろすと、ビビが笑顔を見せて私に飛び付いてきた。
「わっ、どうしたんだい? 国が無事で嬉しいのはわかるけど」
ギューッと抱きしめてくるビビの勢いに少しだけ私はびっくりする。
いや、たくさん人がいる中でちょっと恥ずかしいような……。
「――ちょっと、私も無事なんだけど」
ミキータが不機嫌そうな顔をして呟いた。
「ビビ様、国王様も見ておられます。あまり、そのう。激しいスキンシップは如何なものかと……」
「王女様! いくら国の恩人とはいえ、気軽に男性に抱きついてはなりませんぞ」
ペルとイガラムはそんなビビを諌めていた。というか、イガラムに至っては私のことを男だと認識してたし、もの凄い殺気を私に放っている。
「まぁ、待て。イガラム……。ビビも年頃の娘……。この国は彼らによって救われた――。恋心の1つや2つ……」
そして、国王のコブラは優しい表情でイガラムを宥めていた。いや、海賊に恋しちゃまずいでしょ。
それ以前に――。
「ちょっと、待ってくれ。私は女だ! 血が足りないから、あまり叫びたくないが……」
「「ええっー!」」
私が性別を告げると、周りの人間が一斉に驚く。コブラも先ほどの威厳が吹き飛ぶくらいの驚きようだ。
「恩着せがましいことは言いたくないんだけど……。なんで、国一つ助けてこんな仕打ちを……」
私は少しだけ悲しくなって愚痴をこぼした。
「まぁ、それはそれで、アリだが。逆に……」
コブラの表情は一転して威厳のある顔つきでそんなことを言っている。アリってどういうこと?
「ナシに決まってます! 王家が滅びますよ! 何を真顔で仰ってるんですか!」
イガラムはそんなコブラにツッコミを入れている様子だった。
「ほっ……良かった……」
「あんた、マジでホッとしてるでしょ?」
コブラの反応を見ていたビビは何故か安心しきった顔をして、ミキータは呆れた顔をしてツッコミを入れていた。
◇ ◇ ◇ ◇
それから3日が過ぎようとしていた。
ルフィはよほど激闘だったのか、ずっと眠り続けていた。
さすがに彼の弱点を突くために私が彼に持たせた“ヌメヌメボール”を使っても、クロコダイルを倒すのは骨が折れたか……。
“ヌメヌメボール”は強く握ると拳が水で覆われるという単純な仕掛けのアイテムであり、対クロコダイル用に私が用意したものである。
まぁ、漫画だと2回負けてるし、その分の経験を補ったと考えれば妥当か……。
「ライアさん、おはよう!」
私が宮殿から外に出ようとしたときにビビから声をかけられた。
「おはよう。悪いね。宮殿でお世話になっちゃって」
「もう。当たり前でしょう。みんなは国を救ってくれた恩人なんだから」
ビビは宮殿で私たち全員がまとめて面倒を見てもらっていることを当然だと言う。
それでも、海賊を匿うリスクは高いので申し訳ないと思っている。
「そうか……。で、そのう……。君はどうして手を握っているんだい?」
クロコダイルを倒した日から、ビビのスキンシップが激しくなったような気がする。
ナミやミキータには普通の態度なんだけど……何故か私にだけ……。
よく、抱きつかれたり腕を組まれたりして、イガラムにそれを見られる度に注意をされていた。
そして、コブラはなぜか嬉しそうな顔をして頷いていた。“尊い”とか言ってたけど何なんだろう。
「あっ……。これは、えっと。別に深い意味はないの。そっ、外に用事があるんでしょ? 行ってらっしゃい」
ビビは無意識にやっているのか、ハッとした表情をして顔を赤らめて話題を変えた。
深い意味はないのか。それならいいけど……。
私は目的の場所に向けて歩いていった。
「やぁ、たしぎ曹長。先日はどうも」
「――私たちは何も出来ませんでした。あなたたちが全部終わらせたから……」
私は電伝虫でたしぎから呼び出され、人目に付かない場所で2人で会っていた。
スモーカーの気配を感じたら逃げようと思ってたけど、本当に誰もいないみたいだな。
「そんなことはないさ。海軍があのタイミングでクロコダイルの確保に動いてくれたから、彼は焦って動きが雑になり――そして最後には崩れた。自分の功績を卑下する必要はない」
私はふてくされたような表情の彼女にそう言った。
実際、そのおかげでかなり楽をさせてもらえた部分がある。
「スモーカーさんが言ってました。海軍には海賊になったフリをして諜報活動を行う機密部隊があるって噂を聞いたことがあると……」
「そうなんだ。へぇ、それは面白い風聞だね」
たしぎから聞いた話は確か本当だった気がする。あれは大変そうな仕事だ……。
「だからといって、海賊である限り誰であろうと心を許すな、とも言われました」
「当然だね……。だったら、私を捕まえるかい?」
たしぎのセリフに私は頷いた。
そうかもしれないから、という理由で海賊を捕らえることを躊躇するなんて、スモーカーは許すはずないよな。
「今はやめておきます。しかし、もうじきあなたにも懸賞金がかかると聞きました。ロロノア・ゾロと共に……」
「ちょっと待ってくれ。ルフィとゾロはともかく、2人よりも圧倒的に戦闘力が劣る私になぜ懸賞金が!?」
たしぎはこの場は見逃すと言ったが、それよりも聞き逃せないのが、私に懸賞金がかかるという話だ。
なにそれ? 面倒くさい……。
「お忘れですか? 懸賞金はその人物の危険度を表しているだけです。単純に強ければ高いということではありません。あなたは巧みな誘導であのクロコダイルの計画を崩した。海軍まで利用して……。上層部はそれを危険視したみたいです」
なるほど、調子に乗って海軍を利用したのが気に食わなかったのか……。
そりゃあ、海賊に踊らされたんじゃ面子が潰されたも同然だもんな。
「そっか。教えてくれてありがとう。敵だから頑張ってとは言えないけど――いつか、自分の正義が貫けるくらい強くなるといい。そしたら、そんな顔をせずに済むのだから……」
「――ッ!? 悔しくて仕方ないんです。力がない自分が。何も出来なかった自分が……」
私がたしぎに声をかけると彼女は顔を歪ませて、無力を嘆いていた。
あのとき、動乱の中で海軍の姿も確認したけど、プライドが傷つけられる何かがあったのだろうか?
「何も出来なかったなんてことはないよ。クロコダイルを捕まえたのは君たちだ。これは
とはいえ、私たちじゃどうにも出来ないことをやってくれるんだから、海軍はアラバスタ王国にとってありがたい存在である。
私たちなんて基本的に倒したらそれで終わりだし……。
「あなたは一体何者――」
「しっー。それは知らない方がお互いのためだよ。うん。目に少しだけ力が戻ったみたいだね。君はその方が美しい」
私はたしぎの唇に指を当ててそれ以上の詮索をやめさせる。
これ以上話すとボロが出そうだからだ。
「うっ、うっ――ッ! かっ、からかわないで下さい! 本気にしたらどうするんですか?」
「からかってなんか無いさ。真剣に正義を貫こうとしている君は良い
ゾロから刀を奪おうと意気込んでいた彼女は凛々しかったし、気迫もすごかったので、私はそれを伝えた。
「………………はっ! えっ、えっと、とにかく伝えることは伝えました。そして、この電伝虫はお返しします。スモーカーさんが二度と利用されるのは嫌だから突き返せと言ってましたので」
「ふーん。彼らしいな。じゃあ、縁があったらまた会おう」
たしぎは数秒間ボーッとしていたかと思えば、急に電伝虫を手渡して、プイとそっぽを向いた。
私はそれを受け取り宮殿に戻った。
宮殿に戻ると、ちょうどルフィが目を覚ましたと連絡を受ける。
彼が目を覚ましたということは……。この国から出航するのは今夜あたりになりそうだな……。
このときの私は何もわかってなかった。いつか、ナミが私に言った“責任”という言葉の重さを――。
まさかビビがそこまで私のことを――。
ライアに懸賞金かけるかどうか迷ったんですけど、ウォーターセブン編が終わるまで待てなかったので、つい……。
ルフィVSクロコダイル戦は全カット。原作よりも盛り上がりも欠けそうでしたし、ライアは爆弾の処理をしてましたからやむを得ずです。
次回でおそらくアラバスタ王国編は終了となります。
百合を全面に押し出せるように頑張ります!