ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう   作:ルピーの指輪

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いつも誤字報告や感想をありがとうございます!
今回でアラバスタ王国編は完結します。
ビビの告白の行方とか、そういったところに注目してみてください。
それではよろしくお願いします。


ビビの冒険

 

「――攫うって、穏やかじゃないね。どうした……? こんなの君らしくないよ」

 

 努めて冷静に、私はゆっくりとビビにそう声をかけた。

 

()()()()? 今、全部正直になっているわ。これ以上ないくらい自分らしく振る舞ってる」

 

 ビビはジッと私を力強い視線を送りながら返事をする。

 私を押し倒すことが自分に正直になった結果というのは何とも大胆だな……。

 

「そうか――。ごめん……、ビビ。君の気持ちにまったく気が付かずにいた……。配慮が足りなかった、と思うよ……」

 

「うん。ライアさんはちっとも気付いてくれなかった。でも良いの。そんなところも好きだから……」

 

 私が謝罪すると、ビビははっきりと私に好意を再び伝える。

 妖しく光る瞳は彼女の表情を艷やかに魅せる。

 

「わかった。君の気持ちはよく伝わったよ。正直……、戸惑ってるけど……。ちゃんと応えようと思う……」

 

「…………」

 

 私はビビの真剣な気持ちを理解して、はっきりと自分の気持ちを伝える覚悟をした。

 

「ビビ、君はとても美しいし、良い子だ。一緒に居て楽しいと言ったのも本当だ……。でも……、君の気持ちには応えられない。ごめん……」

 

 彼女の瞳を見つめて私ははっきりとした声で返事をする。

 

「それは……、私が女だから?」

 

「いや、あえて言うつもりは無かったんだけど……。故郷に恋人がいるんだ。()()を裏切ることは出来ない……」

 

 ビビの言葉を私は否定する。カヤの存在を口にすることによって。

 私が愛しているのは彼女しか居ないのだから……。

 

「――ッ!? じゃあ、ナミさんが言ってた“あの子”って……」

 

「ああ、私の恋人だ……」

 

 前にナミが口に出した“あの子”という言葉をビビは覚えていたみたいだ……。

 

「……そっ、そうよね。ライアさんだもん。ほっとかれるはずないわよね……。なんで、私……、気が付かなかったんだろう――。しかも、()()()だなんて……」

 

「ビビ……」

 

 ビビは特に女性が私の恋人だったことがショックだったらしく、泣きそうな顔をしていた。

 

「でも、嫌だ……。諦めたくない。身も心も全部、あなたのモノになりたい。どうしてもあなたが欲しいの!」

 

 しかし、ビビは私を掴んでいる手の力を更に込める。そして、涙をポタポタと私の頬に落としながら叫びに近い声を上げる。

 

「そこまで、想ってくれて嬉しいけど……、どうしても君の気持ちには応えることはできないんだ。――責任をとる代わりに出来る限り何でも言うことを聞くから、それで勘弁してくれないだろうか……」

 

 自分の意志は曲げられない。しかし、どうやって責任を取るかというとそれはまったく思いつかなかった。

 

「何でも言うことを――?」

 

「私はカヤを裏切れないし、裏切るつもりもない。だけど、君を苦しめた罪は重いと感じている。君が本気ということは痛いくらい伝わった。だから、私に出来ることがあるのなら、なんでも言ってほしい……」

 

 私は声を震わせているビビにゆっくりと自分の意見を伝えた。  

 自分の不徳のせいで彼女を苦しめたことに対する贖罪の気持ちを込めて。

 

「――そこまで、カヤさんという方を愛してるの?」

 

 ビビは言葉を出し、そして唇を強く噛み締める。

 

「安っぽい言い方だけど、世界中の誰よりも……。私は彼女を愛してる」

 

 私はストレートに自分のカヤへの気持ちを伝えた。

 

「世界中の誰よりも……か。カヤさんが羨ましくて堪らないわ。でも、ライアさんが本気だということがわかった――。何でもいいのね?」

 

 ビビはそれを聞いて、何かを決意したような声を出す。

 

「もちろんだ。二言はないよ。嘘つきだけど、君を裏切るようなことは言わない……。って、あっ……、んっ……」

 

 私が彼女の言葉を肯定した瞬間、ビビは私の唇を奪った。柔らかな感触が私の五感を支配する。

 

「――ん、はぁ……、んっ……」

 

 ビビは少しだけ唇を離したかと思うと、今度は最初よりも激しく唇を押し付けてきた。

 まるで私のすべてを奪おうとするように、彼女から感じる温かな感触と柑橘系の香りのせいで、頭の中が真っ白になりそうだった。

 

「はぁ……、はぁ……、ビビ……?」

 

 私はビビとキスをしてしまった。多分私は、信じられないというような表情をしていたと思う。

 

「振られちゃったから、海賊っぽいことをしたの。あなたの想い出の一部を無理やり奪ったわ……。忘れてほしくないから」

 

 妖艶に微笑みながらビビは私の頬に両手を撫でるように這わせる。

 

「そんなことを――、んっ……、んんっ……」

 

 それを聞いた私が言葉を発しようとしたとき、ビビは再び私と唇を重ねた。

 今度は何度か軽く口づけをして、そして最後に私の唇を甘噛みするように激しく――。

 

「――んはぁっ、んんっ……」

 

 彼女の舌が私の下の歯に当たるのを感じる。

 ビビは興奮しているのか、喘ぎに近いような声を上げていた。

 

「――ぷはぁ……、はぁ……、確かに何をしても良いとは言ったけど……」

 

 私はビビの顔が離れたのを確認して、彼女に言葉をかけた。

 

「――はぁ、はぁ……、これで……、私のことを忘れないでいてくれる……?」

 

 ビビは今さら顔を真っ赤にして、瞳を潤ませながら私に確認するようにそう言った。

 

「……忘れるわけないさ。今日のことは多分一生忘れられないと思うよ……」

 

 どう考えてもこんな体験は記憶に刻まれて離れなくなると思う。

 

「でも、故郷の恋人さんにもこのことを正直に話すのね……」

 

「うん。カヤには誠実でいたいから偽りなく話すさ」

 

 ビビはすべてを見透かしたようなセリフを聞いて私はそれに頷く。

 カヤには今日のことも話すだろう。すごく怒られるだろうけど――。

 

「もしそれで、ライアさんが振られたら――。ううん、何でもない……」

 

 ビビは私の言葉を聞いて何かを小さな声でつぶやくと、首を振って微笑んだ。

 

「私のことを許してくれるのか?」

 

「許すも何も、私が勝手に好きになって舞い上がってただけだから。でも……、ファーストキスがライアさんで嬉しかった」

 

 私の質問にビビは笑いながらそう答える。何というか、こんなファーストキスで良かったのだろうか?

 

「――積極的というか、何というか……。でも、よく考えたら犯罪組織に潜入するくらいだもんなー」

 

 そう、この子はB・Wに王女という身分ながら飛び込んでスパイをするような子だ。

 彼女は私が思っている以上に直情的だったのかもしれない。

 

「ねぇ、ライアさん。もしも恋人が居なかったら……。もしも、私と先に会っていたら――」

 

「もしものことは、わからないさ。でも、君は誰が見ても魅力的だし、美しい。だから、私なんかよりも素晴らしい人間と巡り合える」

 

 私はビビが言いたいことを察してそれに答える。

 彼女にはいい人をキチンと見つけてほしいと思う。その気持ちは偽善なのかもしれないけど……。でも、本気でそう思ったから、それを口に出した。

 

「もう、意地悪なんだから……。嘘でも夢を持たせてくれれば良いのに」

 

 しかし、ビビは頬を膨らませながらそう言った。夢を持たせるって……。そんなの残酷じゃないか……。

 

「ごめん。じゃあそろそろルフィたちの所に行こう。君も迷っているんだろ? 私たちと来るかどうか。君のことを攫うことは出来ないけど……。来てくれるなら、歓迎するよ」

 

「うん……。もう一度考えてみる」

 

 私は立ち上がりビビの頭を軽く撫でて声をかけると、彼女は静かに頷いてそう声を出した。

 

 

 

 

 ビビと共にルフィたちがいる部屋に入ると、ちょうどMr.2から電伝虫に連絡が入ってきたところだった。

 彼は私たちの船を奪い移動させたと言ってきたのだ。

 ああ、そういう流れで彼に助けてもらったんだったっけ。私はこの辺の流れをすっかり忘れていた。

 

 彼から船を受け取るためにはアルバーナの西側にあるサンドラ河に行かなくてはならない。

 

 それを聞いたビビは私たちにどうしたら良いかと尋ねてきた。

 

 ビビの質問に対して、地図とにらめっこしていたナミが答える。

 

「今夜王宮を発って、サンドラ河で船を奪い返したら、明日の昼12時ちょうどに「東の港」に1度だけ船をよせる。その一瞬だけが船に乗るチャンス。その時は歓迎するわ、海賊だけどね!」

 

 つまりビビに与えられた猶予は約12時間。

 その間に彼女は自らの進退を決めなくてはならない。

 

 ルフィは絶対に来いよ、とは言ってたけど……。私はやはり彼女は残るべきだと思っていた――。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 超カルガモ隊のおかげで我々はサンドラ河に最速でたどり着いた。

 

「あちしがこの船を移動させてなかったら、海軍に確実にやられていたわよ! 今、この島は海軍船で完全にフーサよ! 封鎖っ! スワン一匹も逃げられない!」

 

 Mr.2と再会した私たちは彼からこの島周辺の状況を聞いた。

 どうやらスモーカーが近海の海軍を集めたらしい。海軍を利用したのはミスだったかな?

 

「こんな状況だからこそ! つどえ! 友情の名の下に! 力を合わせて頑張りましょ〜〜う!」

 

 Mr.2は共に協力しあって窮地を脱しようと提案した。

 

「「うおおおおっ!」」

 

 ルフィもチョッパーも乗り気になって返事をする。

 

「キャハハっ! 友情ねぇ……」

 

「あら、ミス・バレンタイン。元オフィサーエージェント同士のよしみじゃなーい。仲良くしましょ〜う」

 

 ヘラっと笑うミキータに対して、Mr.2は手を差し出した。

 

「はぁ、あんたと争っても何の得もしないし。戦わないようにしとくわよ」

 

 ミキータは差し出された手を握って、共闘して海軍の包囲網を掻い潜ることとなった。

 

 

 海軍の包囲は思ったよりも厳重だった。

 八隻の海軍の船に囲まれた私は大砲を使って、船から放たれる鉄槍を撃ち落とす作業をしていた。

 

 

「ちっ、鉄の槍か……。厄介だね。私が一気に相手の陣営に穴を開ける。全速力でそのスキを突くぞ! ――くらえっ!!」

 

 私は海軍の船がもっとも密集している地点を狙って砲撃をした。

 

「おっ、マストを折って一気に3隻沈めるたァやるじゃねェか。やっぱ、狙撃の腕はすげェな」

 

 ゾロがニヤリと笑って私の砲撃を褒めてくれた。

 

「すっごいじゃなーい。さすがは同志ねい!」

 

「誰が同志だ! とにかく、このまま――!」

 

 私はMr.2にツッコミを入れてこのまま何とか包囲網を突破しようと考えた。

 

 しかし、海軍もそれをなかなか許してくれない。

 黒檻のヒナ――海軍本部の大佐の船がこちらに近付いてきた。

 

 くっ、このままじゃ、ビビを迎えに行けないじゃないか。私はいつの間にか、彼女にもう一度会うために必死になっていることに気付いた。

 

 そんな中、事情を聞いたMr.2が涙をながしながら決意した顔を私たちに見せた。

 

「いいか野郎ども及び麦ちゃんチーム……、あちしの言うことをよォく、聞きねい!」

 

 なんと、彼は自ら囮になると志願した。そして、彼はそれを実行する。

 

 私たちに成りすまして、黒檻のヒナをおびき寄せたのだ。

 

 

「Mr.2……、君から受けた恩は決して忘れない……。確かに君は――友情にアツいヤツだった……!」

 

「ボンちゃん! 俺たち! お前らのこと! 絶っっ対に忘れねェがらな゛ァ!!」

 

 私たちは彼の勇姿を見送りビビを迎えに行くために船を全速力で進ませた。

 

 

 

 東の港に着いたとき、拡声器によって、王国中に響き渡るビビの声が聞こえた。

 

『少しだけ……、冒険をしました――』

 

 彼女のスピーチは私たちとの冒険を指すような言葉だった。

 しかし、徐々に漫画とは異なる方向に進んでいった。

 

『――そして、初めて人のことを好きになり、見事に失恋してしまいました――』

 

 そう、ビビは私とのことまで話しだしたのだ……。

 これ、王国の人がみんな聞いているんだよね?

 

「ビビ……」

 

 私は昨日の夜のことを思い出して、気付けば人差し指で唇をなぞっていた。

 

『でも、やっぱりまだ、私はあなたのことを! 愛してる! だから、一緒には行けません! きっと辛くなるから!』

 

「あなた、あの子のことを……」

 

「想像にお任せするよ……」

 

 ビビの言葉でナミは敏感に何があったのか察して、私の顔を見た。

 

『――私はここに残るけど……! いつかまた会えたら! 仲間と呼んでくれますか……!?』

 

「あっ……、むぐっ」

 

 最後のビビの問いかけにルフィは答えようとしたが、ナミは彼の口を塞ぐ。

 

「海軍がビビに気付いている……」

 

「私たち海賊との関わりが公になると、彼女は“罪人”にされてしまうかもしれない……」

 

「このまま……、黙って別れるのが彼女のためよ……」

 

 私たちは口々にルフィに対して現状を告げた。

 私は確かにスモーカーに王国とつながってると匂わせたことを言ったことはあるが、あんなのは海賊の戯言と捨て置ける。

 

 しかし、今、海軍の目の前で彼女の言葉に反応をすると流石に言い訳はできない。

 

 だから……、私たちは――。

 

 

「これから何が起こっても、左腕のこれが……、仲間の印――か」

 

 私たち7人は左腕の✕印を掲げながら、彼女の元から去る――。

 

 これは――私たちだけに通じるサインだから――。

 

 さようなら、ビビ――。最後の君の質問に答えられなくてごめん。

 そうだね。もしも、君と先に会っていたら私は――。

 

 

 淡い想い出を胸に秘めて、私は次の冒険に視線を向けていた。

 別れというのは、思ったよりも痛いんだな――。

 

 

 

「なァに? キャハッ……、ビビのこと振ったの後悔してんの?」  

 

 ミキータがボーッとアラバスタ王国の方向を眺めている私に声をかけてきた。

 別に……、後悔はしてないんだけど……。

 

「まさか……。彼女は私なんかよりも、よほどいい人と出会うことになるさ」

 

「それはどうかしら?」

 

 私が彼女の言葉に返事をすると、ミキータは懐疑的な表情で私を見つめていた。

 

「ていうか、ミキータ。君はこのままウチの船員(クルー)になっていいのかい? もう刺客に狙われることはないんだぞ」

 

「そうね。でも、思ったよりもあんたらと居るのが楽しくなっちゃったから……」

 

 私は彼女に我々と共にいる利害関係がなくなったことを伝える。

 

 しかし、彼女は麦わらの一味に愛着みたいなのが芽生えたらしく、このまま共に旅をするつもりらしい。

 

 まぁ、特にルフィがミキータのことを気に入ってるからな。完全に仲間として扱ってるし、合体技とか出来て、すごく嬉しかったみたいだし……。

 一緒に旅を続けることは誰も反対しないだろう。

 

「そっか……」

 

「キャハハ……、軽くなることくらいが取り柄の私だけど、寂しさくらいは紛らわせてあげるわよ」

 

 私が短く返事をすると彼女は肩を組んで慰めるような言葉をかけてきた。

 

「ありがとう。でも、しばらくこの気持ちも大切にしときたいかな」

 

「はぁ、あんたがそんな奴だから。あの子も――」

 

 私は彼女の好意に対してそう答えると、ミキータはため息をついて私を呆れ顔で見ていた。

 

 しばらくしてルフィはミキータを海賊団の“伝令役”に任命する。

 ずっと彼女の役割についてそれなりに真面目に考えてたらしく、フットワークが軽いことに目をつけて任命したらしい。

 

 そして、ミキータの役職も決まったころ、ビビが居なくなった寂しさを忘れられない私たちはもう一人の仲間と出会うこととなった――。

 

 

 




積極的なビビを書いてると止まらなくなってしまって、やり過ぎた感もありましたが、ライアに忘れられない想い出を刻んでいきました。
振られてしまったビビは残念ながらアラバスタ王国に残るという結果に……。
そして、アラバスタ王国編の終わりにビビと仲良くなって護衛団入りする予定だった、ミキータが何か知らない内に船に乗っててびっくり。
ということで、書いてる内にドンドン愛着が湧いてしまったミキータは麦わらの一味に“伝令役”として正式に加入しました。
ムードメーカー的な存在になってほしいと思ってます。こうなったら最後まで連れていきますとも。
身勝手にも前言を撤回してしまって申し訳ありません。
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