ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう   作:ルピーの指輪

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モックタウン

 

「まだか?ライア」

 

「うん、近付いてはいるけど。まだ見えないね。だけど、もうすぐさ。ここからでも分かるくらいの大きな力の気配をいくつか感じるんだ」

 

 ルフィの言葉に私は返事をする。大きな力の正体はおそらく黒ひげ海賊団だな。

 

「まっ、猿男が縄張りって言ってたくらいだ。そんなに遠くはねェだろ」

 

 ゾロの言うとおりジャヤはマシラが拠点にしている島なのだから近所にあって然るべきなのだ。

 

「ジャヤはきっと春島だな。ポカポカとして気持ちのいい」

 

 ルフィは日向ぼっこしながら機嫌よく笑っていた。

 

「春はいい気候だな。カモメも気持ち良さそうだ。――ってわあああ!! 撃たれた〜〜!」

 

 チョッパーも空を見上げてカモメを見ていたようだが、バタバタとカモメが船の上に落ちてきているのを見て驚愕している。

 

「そのカモメが銃で撃たれた……? ということは、銃弾はこの船の正面の方向から飛んできたことになるな」

 

 私はチョッパーの言葉を聞いて、船の進行方向を双眼鏡で注意深く見てみた。うーん。島はまだ見えないか……。

 

「そうだ。ほら、この銃弾……、角度から見て船の正面からだ」

 

 チョッパーはカモメの死体を観察しながら私にそう申告した。

 殺ったのは十中八九、黒ひげ海賊団の狙撃手だろうな。しかし、とんでもないことをするもんだ。

 

「まだ、見えてもない島から狙撃を? そんなのあなたでも無理でしょ? ライア」

 

「うん。そもそも、この銃の射程じゃ届かないよ。もっとも射程の問題が解決しても()()私じゃ難しいかな」

 

 ナミの質問に私は銀色の銃(ミラージュクイーン)を見せながら答えた。

 本当は出来るって言いたいんだけど……。

 

「キャハッ……、あんたが無理なら無理でしょ」

 

「そんなことはないさ、私よりも凄腕の狙撃手は何人も居るよ。この海には、ね」

 

 ミキータの言葉に私は首を横に振りながら言葉を返す。

 とはいえ、ゾロみたいに世界一とかは目指してないけど、目の前で明らかに自分を上回る技量を見せられると存外ストレスは溜まる。

 Mr.2との戦いで少しだけレベルアップした自覚はあるけど、見聞色をもう少し鍛えないとこの先が思いやられそうだなー。

 

「ちょっと待ちなさいよ。そんなヤバイやつがいる島に行くの?」

 

「わくわくしてきたな! サンジ! これ、焼き鳥にしよう!」

 

 ナミはジャヤに対して嫌な予感がしているみたいだが、ルフィは私の言葉を聞いてニヤリと笑った。

 

 

 

 しばらくすると、観光地のように見える島が肉眼で確認できるようになった。

 

 

「うっは〜〜! いい感じの島が見えるぞ」

 

「キャハハッ! リゾートっぽい島じゃん」

 

「あっ、本当だ。ちょっとゆっくりしたい気分〜〜」

 

 ルフィの言葉にミキータが続き、ナミもさっきの不安な気持ちも忘れてニコリと笑った。

 リゾートと言えばリゾートなんだろうけど、ここって確か……。

 

 

 

「でも、海賊船がたくさん停まってるね。その上、至るところから殺気も感じる」

 

 思ったとおり、ジャヤにあるモックタウンという町の港には多くの海賊船が停泊していた。

 ここは無法者が金をばら撒いて遊んでいくような町みたいだ。

 

「へへっ、面白くなってきたじゃねェか」

 

「楽しそうな場所だな。ここは」

 

 私とルフィとゾロは船を降りて町を散策しようとしていた。

 空島の手がかりをここで見つけなくてはならないからである。

 

「ちょっと、待ちなさい! あなたたち、3人が歩いて騒動を起こさないはずがないわ」

 

 しかし、それにナミが待ったをかける。私たちの監視を名乗り出たのだ。

 

「いや、ルフィとゾロはともかく私も?」

 

 私はまるで私をこの2人と同類みたいな感じで扱おうとしていたので、不満を口にする。

 

「あなたは女絡みとか別の理由よ」

 

「――納得したくないけど、そうなのか?」

 

 するとナミは私が女性関係のトラブルを起こすというようなこと言ってきた。

 先日のビビのこともあったので、私は反論したかったができなかった。

 

「ワタクシはこの町では決して喧嘩をしないと誓います」

 

「よし! ゾロもいいわね!?」

 

「あー、わかったよ」

 

 そしてルフィとゾロに喧嘩禁止の誓いをさせて、私たちは町の散策へと向かった。

 

 町を歩いてすぐに病気で死にかけてそうな男が落馬した。

 その男を助けると、ルフィは男からりんごをもらってそれを食べる。

 その瞬間である……。後方から爆発音が聞こえた。どうやらりんごを食べた者が爆発したらしい。 

 そう、この病弱そうな男は意味もなくルフィを殺そうとしたのだ。確か、こいつも黒ひげの一味の一人だった気がする。

 

 あと、建物の屋根で暴れてる“チャンピオン”とか言うやつも……。

 

 

「殺気立った町だと思ってたけど、やはり強い奴の気配が1つや2つじゃないな」

 

 ルフィがりんごを食べてからしばらくして、私はそうこぼした。

 

「そっかァ! で、どこに居るんだ? 強い奴」

 

「そうだな。例えば……」

 

 私の発言に反応したルフィの質問に答えようと口を開くとポカリと頭を殴られた。

 

「バカライア! トラブルの種を蒔こうとすな! さっき、意味もなく殺されかけたのよ!」

 

 ナミは怒りの形相で私の言葉を封じた。すまない。うっかりしてた……。

 

「ちっ、つまんねェ……」

 

「あんた、今、舌打ちしたでしょ!」

 

 さらに私が黙ったことでゾロが舌うちをすると、ナミはゾロの頭もポカリと叩いた。

 

 そんな感じで適当にぶらついていると、いつの間にかきれいなリゾートっぽいところにたどり着いた。おおっ、ここは素敵な場所じゃないか。

 

「あっ、あの。と……、当、『トロピカルホテル』は只今ベラミー様御一行の貸し切りとなっておりまして……」

 

 私たちが辺りを見渡していたら、支配人風の男が謎のフェイントをしながら近づいてくる。

 

「ホテル? ホテルなのか、ここは……」

 

「ベラミー様に見つかっては大変です。どうかすぐにお引き取りを!」

 

 ゾロの言葉に男は答えず、とにかく出ていってほしいみたいな態度をとった。

 

 

「オイ! どうした? どこの馬の骨だ? その小汚ねェやつらは」

 

 男が我々に声をかけた直後、長髪の男がサングラスをかけた女を引き連れて大声を出しながら、こちらに近づいてきた。

 

「さっ、サーキース様!? こっこれは――」

 

「言い訳はいいから、早く追い出して。いくら払ってここを貸し切りにしてると思ってんの?」

 

 支配人風の男がしどろもどろになっていると、今度は女が彼に向かって文句を言っていた。

 多額の金を払って貸し切りか。それは悪いことをしたな……。

 サーキースって確かベラミーのところの副船長か何かだっけ?

 

「そうか、いやすまない。不快な気持ちにさせるつもりはなかったんだ。すぐに出ていこう」

 

 私は文句を言っていた女に謝罪して、立ち去ろうとする。

 

「――あっ、えっと……。待って! すっ、少しくらいなら良いわよ……」

 

 だが、なぜか女は頬を桃色に染めて、サーキースに絡めていた腕を離してモジモジしだした。

 

「オイ! 何をいきなり言ってやがるリリー!」 

 

 サーキースはリリーが急に態度を翻したことに対してツッコミを入れた。

 

「なんだ、お前ら割と良い奴らじゃねェか」

 

「んじゃ、遠慮なく」 

 

 ルフィとゾロはリリーのセリフを受けて本当にのんびりしようとする。

 

「ったく。あなたが来るとこうなるから……」

 

 そして、ナミはジト目で私を見ながら首を横に振った。えっ? 私のせいなの?

 

「待てや! コラァ! 誰が居て良いって――」

 

「あなた、そんな貧弱そうな海賊団辞めてうちに来ない?」

 

 サーキースの怒鳴り声を遮ってリリーは私をベラミー海賊団に勧誘してきた。

 まぁ、百歩譲って勧誘するのはいいけれど……。

 

「よく知りもしないで、貧弱とは失礼だと思わないのかな?」

 

「ごっ、ごめんなさい。気を悪くしちゃったかしら? ほっ、本当にごめんなさい……」

 

 私がムッとした声で彼女を咎めると、リリーはしおらしい態度で頭を下げて謝ってくる。

 意外と素直な人だな……。

 

「ざけんな! リリー! てめェ! おれの目の前で男口説くたァ、いい度胸じゃねェか。しかも媚びるような態度取りやがって!」

 

 するとサーキースは短剣を抜いて、リリーに突きつけようとした――。

 まったく、無粋な男だ……。ビッグナイフとかいう二つ名だったはずだから、おそらくあれは本来の武器じゃないな……。

 

「仲間にそんなもん向けるなよ。私で良かったら喧嘩を買うぞ? 言っとくけど、脅しでこいつは向けてないからな」

 

「――なっ、てめェ! いつの間に!?」

 

 私はサーキースの殺気がリリーに向いた瞬間に彼の喉元に銀色の銃(ミラージュクイーン)の銃口を突きつける。

 

「――わっ、私のために……」

 

 リリーはサーキースが怖かったのか、尻もちをついて私を見上げていた。

 

「喧嘩するなって言ったでしょう! さっさと行くわよ! まったく!」

 

 すると、そのやり取りを見ていたナミは私の腕を強引に引っ張ってこの場を離れようとする。

 そういえば、そんな約束したような……。

 

「ずいぶんと腕上げたじゃねェか。ライア。今度手合わせしようぜ」

 

「あっはっは、おれより先に喧嘩しそうだったな」

 

 そして、ゾロとルフィは上機嫌そうに笑いながら私の顔を見ていた。

 まさか、私が最初に手を出そうとするなんて……。もう少しクールにならなきゃいけないなぁ。反省しようっと。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 トロピカルホテルとやらを出た私たちは情報収集のために酒場を訪れた。

 酒場のマスター曰くここの島のログは4日なのだそうだ。

 

 そんなことを話してる最中に、ルフィが髭面の巨漢と言い争いを始める。

 奴が黒ひげ……。マーシャル・D・ティーチか……。

 エースの処刑のきっかけを作った男で、2年後には白ひげに代わって四皇と呼ばれるヤミヤミの実の能力者……。

 

 なるほど、他の連中とは明らかに異質……。異形と言ってもいい得体のしれなさを感じる。

 

「おめェ海賊か……? 懸賞金はいくらだ!?」

 

「3000万!」

 

「3000万!? お前が!? そんなわけあるか! 嘘つけ!」

 

「嘘なんかつくかァ! 本当だ!」

 

 ルフィの懸賞金の額に難癖をつけるティーチ。

 まぁ、これは少なすぎるという意味みたいだが……。実際はルフィには現在1億ベリーの賞金が懸けられてるから、彼の見る目は確かだ。

 

 

 そんな争いもティーチがチェリーパイを受け取ったことで終わりとなった。

 しかし、まだ争いの火種はやってくる。さっき因縁をつけてきたサーキースとリリーの船の船長であるベラミーがやってきたのだ。

 

 

「“麦わら”を被った海賊と“銀髪”の海賊はいるか?」

 

 あら、ルフィだけじゃなくて、私もご指名か……。

 さっき、サーキースとちょっと争ったからかな?

 

「お前が3千万の首で、お前がうちのサーキースに上等な口を利いた野郎か?」

 

 ベラミーは私とルフィをヘラヘラとした表情で見下すような顔付きで覗き込んできた。

 

「何だ?」

 

「ふぅ、いい加減言い飽きたんだけど、私は――」

 

 ルフィに続き私がベラミーに性別を告げようとすると――。

 強い殺気を伴った攻撃が私に向かってくる気配を感じた――。

 

「見つけたぜ! 銀髪のクソ野郎! おれの屈辱を100倍にして返してやるっ! 大刃斬(ビッグチョップ)

 

 ククリ刀のようなものでサーキースが回転しながら斬りかかってくる。

 

「――まったくもって……。イライラするよ……」

 

「ガハッ――」

 

 私は油断しきって突撃してきたサーキースの斬撃を躱して、鉛玉と睡眠弾を連続して撃ち込む。

 

「ルフィやゾロじゃなくって。トラブルの種を蒔いたのが私だという事実がね……」

 

 大の字になって寝転ぶサーキースを見下ろして、私はそうつぶやいた。

 思ったよりも私って喧嘩っ早いみたいだ。知らないうちに凶暴って噂を流されてたけど、こういう事の積み重ねなのかもしれない。

 

「ばっ、バカな!? サーキースさんは3800万ベリーの賞金首だぞ! たかが、3000万の船長の部下が……!」

 

「ハッハハハッ! 黙ってな! 今のは油断してかかっていったサーキースが悪ィ! なるほど、リリーがこいつに惚れたのもわかる。合格だ“新時代”への船員(クルー)に加えてやってもいい」

 

 裸にジャケットなのに暑苦しいニット帽を被るという妙なファッションの男が驚いた声を出しているのを、制したベラミーは私に訳のわからない勧誘をしてきた。

 

「言ってることがよくわからん。私たちは空島に行くんだ。君たちには付き合う暇なんかないんだよ」

 

 私は早く話を終わらせて帰りたかったので、手短に目的を話す。

 

 すると辺りがシーンと静まり返った。

 

「空島?」

 

「「ぎゃっはっはっはっ!」」

 

「「ハッハッハッハ!」」

 

 私の空島というワードは酒場中の笑いをかっさらう結果になってしまった。

 あー、思い出した。こいつらそういう奴らだった。

 

 ベラミーはひとしきり笑ったあとに空島とか、黄金郷とか、ワンピースとか、そういう夢を追いかけるのはバカだと言ってきた。

 

「そういう夢追いのバカを見ると虫唾が走るんだッ! サーキースを倒したお前は見どころがあると思ったが……、見込み違いだったな!」

 

 酒瓶をもってベラミーは私の頭を殴ろうとする。

 

「はぁ……、えっ!? ――るっ、ルフィ!?」

 

 私がベラミーを撃とうとすると、ルフィが私を突き飛ばして、酒瓶を自分の頭で受けた。

 私を庇った訳じゃなさそうだな……。

 

「ライア……、ゾロ……、この喧嘩は絶対に買うな!!」

 

 ルフィはムッとした表情で私とゾロに無茶ぶりをする。

 まぁ、船長命令なら従うほかないか。彼には彼の流儀ってものがあるんだろうし……。

 

 私はサーキースを撃ったから、ベラミーは主に私を狙うのだろうと思った。

 しかし、なぜか分からないけどやたらとリリーとかベラミー海賊団の女たちが私を庇ってきて、思いの外仲間想いのベラミーは首を傾げながらも私を攻撃して来なかった。

 リリーたちは、なんか、サーキースをやっつけたところがカッコよかったとか言ってたけど、よくわからん。

 

 すごく気まずい。原因を作った私が無傷でルフィとゾロが血まみれって……。罪悪感が半端ない……。

 

 なんだか、妙な雰囲気になってベラミーもシラケたのか、酒場を出ていけと早々に我々に対して言ってきたので、さっさと立ち去ることにした。

 

 

 帰り際にティーチにこの喧嘩はお前らの勝ちだとか、言われたけど私はただ恥ずかしかった。

 よく分からないけど、こういうのってボコボコにされても手を出さないから、カッコいいのであって、私は思いっきり手を出した上で無傷なんだから、めちゃめちゃかっこ悪いような気がしてならなかった。

 

「人の夢は!終わらねぇ!そうだろ!?」

 

 ティーチはそんな私の心情も知らず、大声でそう主張をしていた。

 

「ゼハハハハッ! 行けるといいな、空島へ!」

 

 彼は私たちを激励してチェリーパイを噛っていた。

 マーシャル・D・ティーチ……、こいつはこいつで自分の美学みたいなものがあるんだろう。

 とりあえず、今はこいつらと戦うようなことにならなくてラッキーだった――。

 

 結局、何も空島のヒントを得ることが出来ずに我々はメリー号に戻ることとなった。

 今日は反省する点が多い。なんせ、私は何の役にも立たないどころか迷惑すらかけてるのだから――。

 

 意気消沈してメリー号に戻ると、ロビンが何食わぬ顔をして、「モンブラン・クリケット」という男の情報を仕入れてきていた。

 そうだった、そうだった。この人が昔の冒険家か何かの子孫で空島に行く方法を知っているんだった。

 というわけで、私たちはモンブラン・クリケットという男に会うために船を出した。

 やっぱり、忘れてることが多いなぁ……。




反省したと言いつつも、相変わらずのライアでした。
次回あたりから徐々に原作と違う展開をお見せ出来ればと思ってます。

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