ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう   作:ルピーの指輪

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ライアの二つ名に関してもいろいろとご意見を頂けて嬉しいです!
今回からいよいよ、本格的に空島編がスタートします。
それではよろしくお願いします!


空島上陸

「何だ! ここはっ! 真っっっ白っ!」

 

「雲の上! なんでっ?」

 

 辺りを見渡すとまるで天国にでもたどり着いたと錯覚するような白い空間に囲まれていることがわかった。

 

「そりゃ乗るよ、雲だもん」

 

「「いや、乗らねェって……!」」

 

 当然という顔で雲の上に船があることに納得してるルフィにゾロやサンジがツッコミを入れる。

 

 ナミが海流と風を読み、ミキータの能力で最大限まで軽くなった船は猛スピードで空まで飛んでいって積帝雲を突き破り、真っ白な空間にふわりと着地した。

 

 キロキロの実の力で着地のショックは防げたけど……。

 

「――ああ、止めとけば良かった……。空島なんて……」

 

「一気にボロボロになったわね……」

 

 ロビンが指摘したように積帝雲を猛スピードで突き破ったのがまずかったのか、ゴーイングメリー号は所々にヒビが入ったりしていた。

 ここまで、出来るだけ負担をかけないように努力したんだけどなぁ。

 

「キャハッ……、翼は折れちゃったけど、船体自体はまだまだ行けるわよ」

 

 落ち込んでる私を慰めてようと、明るい調子でミキータは私の背中を叩く。本当にミキータが居てくれてよかった。

 彼女が居なかったら、着地のショックも半端なかっただろうし……。

 

「そうだね。無事にみんなでたどり着けたことを喜ぼう。ナミ、記録指針(ログポース)の向きはどうなってる?」

 

 私は気を取り直してナミに指針の示してる方向を質問した。

 

「それがまだ上を指してるのよ」

 

「まだ、積帝雲の中層みたいね……」

 

 ナミの言葉にロビンが頷く。そうか、ここより上にさらに島があるということか……。

 

「ここから、まだ上に行くのか? どうやって……?」

 

「とりあえず、人の気配がする方に進んでみよう」

 

 チョッパーの疑問に私は彼に双眼鏡を手渡しながらそう言った。

 

「ライアちゃん、おれらの他に人が居るのかい?」

 

「うん。向こうの方に人の気配を感じる」

 

 私はサンジの質問に指をさしながら答えた。

 どうやら我々の他にも空島に来た人たちがいるみたいだ。

 

「あっ、本当だ。船がある。って、爆発した――!」

 

 双眼鏡で私が教えた方向を見ていたチョッパーが驚いた声を出した。

 

「なんだって!? こっちに高速で強い気配が接近してくる。みんなっ! 気をつけてくれ!」

 

 その声を聞いた刹那、私は強い力がこちらに近づいて来ることを感じ取った。

 ルフィたちに比べたら大したことはなさそうだが……。

 

 どこかの部族のような仮面をつけた小男が跳び上がり、メリー号の中に入って来ようとした。

 

「排除する……」

 

 謎の男は殺気を漲らせて戦闘態勢をとる。

 

「――やる気らしい」

「上等だ」

「何だ……?」

 

 それに対してサンジ、ゾロ、ルフィの3人が受けて立とうとした――。

 しかし――。

 

「「ぐはっ――」」

 

 なんと、3人はあっという間に倒されてしまう。

 どういうことだ? いや、待てよこの空間の空気は――。

 

「キャハッ、うっそでしょ……。この三人が……」

 

「ちょっと、どうしたの三人とも……」

 

 ミキータとナミは3人が蹂躙されたことが信じられないみたいだった。

 

「多分、急に高いところに来たから空気が薄くて体が慣れてないんだ……。下がってくれ、私の武器なら身体能力はほとんど――」

 

 私の射撃なら集中して当てられさえすれば、なんとかなる。

 小男が跳び上がりバズーカのような武器をこちらに向けていたので、それに対して私も受けて立とうとした。

 

「そこまでだァ!」

 

 だが、私が引き金を引く前に、空飛ぶ馬に乗った騎士が小男を槍で吹き飛ばして我々を助けてくれた。

 

「ウ〜厶、我輩、空の騎士!」

 

 銀色の鎧兜を装備した白い髭を生やした男は自らを“空の騎士”と称す。

 ええーっと、この人って確か……。ここの元神様とかだっけ? 頼りにならない記憶を辿りながら、私は空の騎士の顔を眺めていた。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「1ホイッスル、500万エクストルで助けてやろう」

 

 空の騎士は自らを傭兵だと話していた。この辺にはゲリラがいるらしく、よく空の戦いを知らない冒険者がよく危険な目にあってるらしい。

 

「エクストルというのは、こっちの通貨の単位かい?」

 

 私はとりあえず気になることを質問した。情報を出来るだけ仕入れたかったからだ。

 

「なっ、何を言っておるおぬしら……、ハイウエストの頂から来たのだろう? ここまでに島の1つや2つ通ってきたのではないか?」

 

 空の騎士は怪訝な顔をしていた。あっ、そうか。私たちが利用した、突き上げる海流(ノックアップストリーム)で空に行く方法って無茶な行き方なんだっけ……。

 

 

「なんと、あのバケモノ海流を使ってきたのか! そんな度胸の持ち主がまだ居たとは……」

 

「普通のルートじゃなかったのね、やっぱり……」

 

「キャハハッ! よく考えたらナミちゃんが居なかったら、全員今ごろ死んでるもんね〜」

 

 空の騎士の呆れ顔にナミが普通の方法ではなかったと気付き、ミキータはヘラヘラと笑いながら核心をつく。

 

「あれは、0か100の賭けみたいな方法だ。他のやり方では全員無事に着くなどは無理だっただろう。なるほど、なかなかの度胸と実力のある冒険者だと見受けた」

 

 空の騎士曰く他の行き方だと必ず何割か脱落者が出てしまうらしい。

 逆に突き上げる海流(ノックアップストリーム)は全滅か全員生還かの2択のギャンブルということみたいだ。

 

「1ホイッスルとは一度この笛を吹くこと。さすれば我輩、天より助けに参上する。本来、空の通貨500万エクストル頂戴するが、1ホイッスルはプレゼントしよう」

 

 彼は自分を呼び出すための笛を我々にプレゼントしてくれた。それは頼りになって嬉しいんだけど――。

 

「あのさ、サービスはうれしいんだけど、500万エクストルって、何ベリーになるんだい?」

 

 私は空島の通貨のレートについて空の騎士に尋ねる。これは重要な情報だった気がする。

 

「ああ、そうだった。おぬしら、青海から来たばかりだったな。確か1ベリーが1万エクストルのはずだ」

 

「1回500ベリーってこと!? それって、とっても安いじゃない」

 

「うむ。格安であろう! 我輩にも生活があるのでな、これ以上は負からんぞ!」

 

 ナミが素早く計算して感想を口にすると、空の騎士は満足そうに頷いて立ち去ろうとした。

 

「我が名はガン・フォール! そして、こやつは相棒のピエール!」

 

 “空の騎士”ガン・フォールは名を名乗り、相棒のピエールに乗って去っていった。

 ピエールはウマウマの実を食べたトリらしく、ペガサスのようだった。

 

 

「ねぇ、狙撃手さん。レートはわかったけど、上への行き方は聞けなかったわね」

 

「あっ……、忘れてた」

 

 ロビンに指摘されて私は一番大事なことを聞き忘れたことに気が付いた。

 どうも、うっかりが多いな……。

 

「適当に進めば、なんとかなるだろ」

 

 ゾロは彼らしい言葉を述べたが、それも楽しそうだということで私たちはとりあえず気になるところに移動することにした。

 滝のような雲があるところをチョッパーが発見して、そこに行ってみようという話になったのだ。

 

 途中、盛り上がった固い雲が障害物になって、それを躱しながら動いたりしたが、特にトラブルもなく、滝のように流れる雲がある場所にたどり着いた。

 

「“天国の門”か……」

 

「天国かァ! 楽しそうだ!」

 

 当然のようにルフィは興奮して、天国の門にメリー号は入って行った。

 

「上層に行くなら1人10億エクストル払っていきなさい。それが法律……」

 

「10億エクストルってことは、10万ベリーね……。あの、私たちはベリーしか持ってないんだけど……」

 

 天国の門で待ち構えていた老婆は私たちに入国料を請求してきた。

 ベリー換算で1人10万ベリー。払えない金額ではない。

 しかし、問題は我々が空島の通貨を持ってないことだ。ナミもそこを気にしてるらしい。

 

「通っていいよ。別に払わなくても」

 

「キャハハッ! 変なこと言うわね。だったら、なんであんたはそこにいるの?」

 

 老婆は払わなくてもいいというセリフにミキータは笑いながら彼女の居る意味を尋ねた。

 

「あたしは門番や衛兵じゃない。お前たちの意志を聞くだけ。もちろん、通らなくてもいい」

 

「じゃあ、金がねェけど、行く――」

「待つんだ! ルフィ!」

 

 老婆の怪しい答えが私の記憶を呼び覚まし、ルフィの言葉を遮った。

 ここで入国料を払ってもどうせトラブルになりそうだが、これ以上メリー号を危険に晒したくはない。

 違法入国者にならなければ、しばらく動き方を考える時間はできるはずだ。

 

「ご婦人、ここに80万ベリーある。青海の通貨だが、これを通行料として払うことは可能かい?」

 

 私は自分の鞄から札束を取り出して、彼女に差し出した。

 

「ふーむ。本来は空島の通貨が望ましいが……。お兄さんは男前だから、サービスして、あたしが換金しといてやろう」

 

 老婆は札の数を確認しながら、私にそう返した。いや、サービスはいいんだけどさぁ……。

 

「ちょっと、私は――。もごもご」

 

「キャハハ、ありがとう。サービスしてくれて」

 

 私が老婆に物申そうとすると、ミキータが慌てて私の口を塞いできた。

 まさか、有耶無耶にしたほうが得だと判断したのか……。

 

「悪いわね、ライア。奢ってもらって」

 

 そして、ナミは奢りということを強調しながら私にウィンクした。

 まぁ、奢りは別に良いんだけど……。

 

「白海名物、“特急エビ”……」

 

「うわあっ! 動き出した!」

 

 そんなやり取りをしていると、老婆が札を数え終えたのか、雲の下から巨大なエビが現れて、せっせとメリー号を上まで運んで行った。

 

 そして、我々はあっという間に空島に辿り着いたのだった。

 まるで夢のような世界だな。きれいだし、何というか……、幻想的だ。クリケットの言うロマンって意味がよくわかる。

 漫画と違って違法入国者にもならなかったし、方針を考えつくまでのんびりするのも悪くない……。

 

 

「は〜〜っ! ここは何だ! 冒険のにおいがプンプンすんぞ! 早く行こう!」

 

「――えっ? あっ、ちょっとルフィ、それにチョッパーも!」

 

 ルフィとチョッパーはいち早く船から降りて雲の上を走り出した。なんか、違法入国じゃなくても、のんびり出来ない気がする……。

 

 というより、こんな風景を見てテンションが上がらない方が難しいみたいで、ナミやミキータ、そして彼女らを追いかけてサンジまで、船から飛び出して、雲のビーチを楽しもうとしていた。

 

「あなたたちは?」

 

「ん? 行くよ。ライアもそうだろ?」

 

 そんな様子を並んで窺っていたゾロと私にロビンが話しかける。

 ゾロは返事をしながら私の方を見た。

 

「もちろんさ。空島を冒険なんて貴重な体験だろ?」

 

 私はゾロに続いて答える。空島なんていう、現実離れしたものに興味がないはずがない。

 

「そう。航海や上陸が……、冒険だなんて、考えもしなかった」

 

 ロビンは少し微笑みながら遠い目をしていた。

 彼女の人生は闇に潜むも同然のものだった。

 だから、こうやって無邪気に知らない土地を渡り歩くことを楽しむなんてことはなかったんだろう。

 

「そっか。だったら、これから徐々に病みつきになるかもしれないね。みんなの影響を受けて……。さぁ、私たちも向かおう」

 

 私はロビンの手を握って、メリー号から飛び出した。

 

「――ッ!? ふふっ、狙撃手さんは手の肌もきれいだし触り心地が良いのね。先にこっちに病みつきになっちゃいそう」

 

 彼女は驚いた顔をしたかと思うと、すぐに笑いながらそんなことを行ってきた。

 なんか、親指で私の指を撫でてるんだけど……。

 

「――おいおい、変なこと言わないでくれよ……」

 

 私はそうつぶやいてルフィたちの元に近づいた。

 

 目に見える風景すべてが新鮮だなぁ。花も木の実も何もかも初めて見る。

 

「スー、スー」

 

「うわぁ! 可愛いなぁ!」

 

 特に私の目を奪ったのは白くてふわふわしたキツネのような生き物だ。

 堪らず私は白いキツネをしゃがんで撫でてしまった。

 

「お前って意外と動物好きだよな……」

 

 白いキツネを撫でて、撫でて、ついには抱きしめてしまってる私を見ながらゾロはそんなことを言う。

 

「意外って、普段の私をどういう目で見てるんだ? ――ん? この音は……」

 

 私がゾロにツッコミを入れた直後、耳に届いたのはきれいなハープの音。 

 

 演奏しているのは――。

 

「天使だ!」

 

 サンジがそう答えるのも無理はないかもしれない。

 確かにハープを持っていたのは、天使のような見た目の女の子だった。確か、この子はコニスという名前だったかな?

 

「へそ!!」

 

 よくわからない、おそらくハワイのアロハー的な感じの挨拶をするコニスは微笑みながら固いフルーツと悪戦苦闘しているルフィに近づいてきた。

 

 コニスはこのスカイピアの住人でルフィが青海から来たと言うと、優しく困ったことがあったら力になると言ってくれた。

 ルフィはフルーツに穴を開けてもらってご満悦みたいだ。どうやら、フルーツの果汁はとっても美味しいらしい。

 後で私も飲もうっと……。

 

「ああ、君の視線で心が火傷を――」

 

「サンジくん、邪魔……。あの、知りたいことがたくさんあるのよ。とにかく、ここは不思議だらけで」

 

 ナミはいつものサンジの肩をグイッと掴んで、コニスにいろいろと聞きたいことがあると言った。

 私も聞きたい。特に空島にしかない、“ダイアル”っていう不思議な貝には興味がある。

 漫画のウソップはあれでナミと自分の武器を強化してたし、私もそれに倣いたいと思っている。

 

「はい、なんでも聞いてください」

 

「ナミ、私もいろいろと把握したい。一緒に話を聞いても良いかな?」

 

 快く了承したコニスを見て、私はナミに声をかけた。

 

「それは構わないけど、あなたが来ると――」

 

「――はっ! ええっと、あっ! その子、私の友達なんです」

 

 ナミが少し嫌そうな顔をしたのと同時に、コニスは恥ずかしそうに頬を赤らめて私が抱いている白いキツネを指さした。

 ああ、この子はコニスのペットだったのか。

 

「ああ、この白いキツネは君の友達なんだね。可愛いね」

 

「そっ、そんな可愛いだなんて」

 

 私がコニスに声をかけると、彼女はますます顔を赤くして照れていた。ペットを褒められて嬉しいのかな?

 

「いや、すっごく可愛いよ。もう、思わず抱きしめて撫で回したくなるくらい」

 

「――だっ、抱きしめるのですか!? でっ、出会ったばかりで抱きしめるなんて……、青海の方は大胆なんですね……」

 

 コニスは私がこの子に対して素直な感想を述べると、びっくりした表情をして両手で口元を隠して伏し目がちにそう言った。

 動物にそういうスキンシップをするのは、空島ではまずいのか……。それは知らなかった……。

 

「ああ、ごめん。つい可愛くてこの子抱き締めちゃったんだけど、駄目だったかな?」

 

 私は白いキツネをコニスに渡しながら、そう尋ねた。

 

「えっ? あっ、この子の……」

 

「もう質問してもいいかしら? ったく、あなたが来るとこうなると思ったわ」

 

「キャハハ、レディキラーだもんね〜」

 

 コニスが何かに気付いた顔をすると、ナミとミキータは私を後ろに引っ張って下げた。

 レディキラーって言われても、私は何もしてないと思いたいけど、違うのか?

 

「コニスさん! へそ!」

 

「ええ、へそ! 父上!」

 

 そんな話をしていると、コニスの父親がスクーターのような乗り物に乗ってこちらに近づいて来た。

 

「あれは、何? 乗り物?」

 

「おおっ! よく見りゃかっこいいな、あれ!」

 

 ナミとルフィは興味深そうにコニスの父親の乗り物に目を奪われていた。

 確かあれって、ルフィが沈没船から持ち帰ったモノの中にあった気がする。

 

 スクーターのような乗り物は“ウェイバー”というもので、やはり“ダイアル”を動力にしてるらしい。

 

 そして、コニスの父親のパガヤもまた親切な方で、彼の誘いもあり、二人の家で食事をご馳走になることになった。

 

 空島の冒険はのんびりとした雰囲気の中で始まった――。

 




お金を払って入国したので違法入国にはなりませんでした。ここは大きく展開に作用するポイントになりそうです。
コニスのライアに対するリアクションはいつもどおり。ナミはもう慣れたって感じになってしまってます。
ダイアルを使って武器を強化しないとCP9の相手はきついと思うので、空島編はライアの強化イベントとしても重要です。

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