ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう   作:ルピーの指輪

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いつも誤字報告や感想をありがとうございます!
今回は丸々1話使ってシュラとの戦いです。
それではよろしくお願いします。


紐の試練

「ゴムゴムのォ! ガトリング!」

 

「スピードはまぁまぁだが……、何発撃とうが無駄だ」

 

 ルフィの連撃がシュラに向かうが彼はいとも簡単にそれを躱す。

 やはり、心網(マントラ)の使い手に攻撃を当てるのは簡単じゃないな。

 

「あらま、完全に動きが読まれてるみたいだね」

 

 私はルフィが果敢に攻めてるにも関わらず一撃も当てられていない様子を見ながら作戦を練っていた。

 

「あっ、あいつ。やっぱり腕が伸びてる……」

 

「ああ、ルフィはゴムゴムの実の能力者なんだ。――えっと、君は足を怪我してるみたいだから、あとでウチの船医に診てもらうといい」

 

 私は少女の疑問に答えて、彼女に足の怪我の治療をあとで受けるように言った。

 

「せっ、青海人は排除しなきゃいけない悪い奴のはずなのに! なんで、あたいを助けた!?」

 

 しかし、少女は私が彼女を助けたことを訝しく思っているらしく、警戒心を露わにしている。

 

「なんでって? 理由とか別に無いさ。私もルフィも何となくで動いてるから」

 

「はァ? お前らバカなのか?」

 

 私もルフィも少女が殺されそうだったから、特に何も考えずに彼女を助けた。

 だから、理由を聞かれても困るだけだった。

 

「ははっ! かもしれないね。思ったより元気そうだ。危険だからしばらく隠れているんだよ」

 

 そして、私は彼女に戦いに巻き込まれないようにしてほしいとお願いした。激しい戦いになるかもしれないと思ったから。

 

「黙れっ! 命令するな! お前ら、早く逃げろよ! あいつエネルのところの神官なんだ。殺されるぞ!」

 

「殺されないし、殺させないよ。私は――」

 

 少女のセリフを背中に受けて私は、銀色の銃(ミラージュクイーン)を構えた。

 

 

「くっそー! あいつ変な力があるぞ! 技が当たらねェ!」

 

「カハハハ! 今度はこちらから行くぞ!」

 

 ルフィの攻撃が一段落ついたとき、今度はシュラが動き出す。炎貝(フレイムダイアル)を仕込んでいる槍をルフィに向かって突き刺そうと。

 

「ルフィ! その槍は燃えるぞ! 気をつけろ!」

 

「よっと、おっ! 本当だ! 燃えてる、燃えてる! 面白ェ武器使うなァ!」

 

 ルフィが槍をぎりぎりで避けると、槍は木に突き刺さり、その木はメラメラと燃えてしまった。

 

「ほーう、よく躱した。そして、お前はよく分かったな。初見でこの槍の力が……」

 

「ルフィ、あいつは君の心の中を読んで攻撃を避けてるんだ。だから、当てるのは結構大変だよ」

 

 シュラの言葉を聞き流して、私はルフィに心網(マントラ)のことを話す。

 

「さっきからスカスカするって思ってた! そっか、やっぱり動きを読んでんのか……!」

 

 ルフィはさすがというか、攻撃が事前に読まれて避けられていることに何となく気付いていたみたいだ。

 

「私が動きを止めてみせる。ルフィはそのタイミングで攻撃をしてくれ」

 

「ん? そうか! じゃっ、任せた!」

 

 選手交代ではないが、同じように攻撃のタイミングが読める私がシュラの動きを止める役を担い、ルフィにそのあとを託した。

 

「なんだ? 今度は青瓢箪みてェなガキが相手か?」

 

 シュラは私が銃口を向けても余裕そうな表情は崩さなかった。

 ルフィよりも弱いことがバレてるんだろうな。

 

「――そらっ!」

 

「ほう、大した早撃ちだ。だが、当たらねェよ」

 

 シュラに放った銃弾は軽く躱されてしまう。まるで、引き金を引くときにはもうどこを狙うかわかっているみたいに。

 

「なるほど、正確に私が撃つ瞬間を読んでいる。――おっと」

 

 そして、シュラもまた、私が攻撃をした瞬間を狙って槍を突き出してきた。

 まぁ、私もそう簡単には当たらないが……。

 

「なっ――!? その動き……、お前も心網(マントラ)を……!?」

 

 シュラはひと目で私も相手の動きが読めることに気付く。

 このあたりはさすがだな……。

 

「お互いに同じように攻撃を読めるとなると、勝敗を分けるのは、それ以外のところになりそうだな」

 

 両方の攻撃が永遠に当たらないということはない。

 読めていても避けられないということはあるのだから。実際、私はMr.2やキャプテン・クロの攻撃を何回も受けている。

 

「だったら勝つのはおれに決まってる。お前みてェなガキとは年季が違うんだッ!」

 

 シュラは自分の方が私よりも身体能力的に優れていると読んで、猛攻を仕掛けてきた。

 読まれていようがお構いなしということか……。

 

「くっ――!? 確かに動きの洗練さでは私が負けてるようだ」

 

 私は何とか回避に全集中力を傾けてシュラの技をやり過ごそうとする。

 しかし、速い上に相棒の鳥が所々で炎を吐いてきて、逃げ場を限定してくるので避けるのも限界になってきた。

 

「ハッ! 弱いクセに粋がるからだッ! 色男は女のケツでも追いかけてりゃいいッ!」

 

 シュラは勝ちを確信した表情で私の急所を容赦なく狙って槍を突き出してきた。

 

「ちょっと、お前は仲間だろ! なんで、助けてやらないんだ!」

 

「ライアは動きが止まるのを待てと言ったんだ。だから、おれは待つ!」

 

 それを見ていた少女の言葉に対してルフィははっきりと私に対する信頼を口にする。

 まいったな。そんな事を言われたら――いつもより余計に頑張っちゃうじゃないか……。

 

「カハハハハッ! おれの動きを止めるだとォ! バカも休み休み言え! これで終わりだッ!」

 

 ルフィの言葉を嘲笑うかのようにシュラは力を込めた一撃を私に放ってきた。

 しかし、必殺の勢いというのはそこにスキが生まれる。

 

「――必殺ッッ! 鉛星ッッッ! ぐっ――、肩が――」

 

 私は左肩を盾にしながらシュラの攻撃を敢えて受けて、その瞬間に引き金を引いた。

 動きが読めてようがこの瞬間だけは関係ない。必ず当たる――。

 

 肩が貫かれ、そして焦がされて激痛が走るが、シュラの脇腹にも風穴が空いた。

 

「――ッ! バカなッ――」

 

「今だァ! ゴムゴムのォォォ!」

 

 シュラは苦悶の表情を浮かべる瞬間をルフィは見逃さない。後方に思いっきり両手を伸ばした彼は、シュラの腹をめがけて掌撃を加えようとした――。

 

「なっ! ぐっ――」

 

「――バズーカッッッ!」

 

 シュラは何とか回避行動を取ろうとするも、ルフィの動きが一瞬早く、彼はまともにルフィの技を受ける結果となった。

 

「ガッあああ!」

 

 血を口から吹き出しながら吹き飛び大きな木に衝突するシュラ。

 巨木に埋もれる彼の様子からルフィの技の威力の高さがうかがい知れる。

 

「一撃を受ける覚悟さえしてれば、刺し違えるくらい訳ない。それと――誰が色男だ! 私は女だ!」

 

 そう、私は元より無傷を諦めていた。シュラが最もスキをみせる瞬間に敢えて攻撃を受けて、一撃を与えてやろうと試みていたのだ。

 

「えっ!? ええっ!? お前、女なのか!? あたいはてっきり……」

 

 シュラに聞かせたつもりのセリフは少女を驚愕させる。

 いや、まぁ慣れてるからいいけどさ……。

 

「あっはっは! 気にすんな! みんな、ライアのこと女だなんて思わねェ!」

 

「時々、君の素直さに傷付くことがあるよ……。サンジは思ってくれたもん」

 

 ルフィは少女に笑顔で話しかけ、私はどちらかというと彼の本音に傷付く。

 

 

 しかし、シュラにはかなりのダメージを与えたと思っていたが、驚いたことに彼は立ち上がった。

 

「ちくしょうッ! はぁ、はぁ……、おれは全知全能の(ゴッド)・エネルに仕える神官! 青海人なんかに負けるわけにはいかねェ! もうじきお前らも知ることになるだろう! 生存率3%――紐の試練の恐怖をなっ! ゲフッ……! お前らに教えてやる。そこから先はおれのテリトリーだ!」

 

 シュラは息を切らせながら、試練とかテリトリーとか言い出していた。

 

「私とルフィの攻撃を受けてまだ動くか……」

 

「あいつ! 空に!」

 

 私とルフィが彼の様子を見ていると、彼は鳥の背中に乗って空中に飛び上がった。

 

「カハハハハッ! このフサに乗った空中戦こそおれの真骨頂だ! お前らのまぐれ当たりは二度とないと思え!」

 

 少し休んだからなのか、シュラは再び元気になり、私たちに襲いかかってくる。

 フサという鳥に存分に火を吹かさせながら……。

 

 ルフィはそんなシュラに木の枝に腕を伸ばしたりして回避行動を取りつつ、素早く攻撃を加え、何とか対抗していた。

 

「ちっ、思ったよりも体が動かねェ」

 

「さっきより鈍くなったみたいだな」

 

 シュラのダメージはやはり小さくなかったようでルフィの怒涛のラッシュは少しずつ彼の体を捉えていった。

 

「うるせェ!」

 

 しかし、シュラはルフィの攻撃を読んだ上でカウンターの要領で槍を繰り出し、彼の腕を突き刺す。

 ルフィの傷口は燃え上がり、彼は苦痛に顔を歪める。

 

「あっちィ! こんにゃろう!」

 

 ルフィはダメージに面食らいながらも腕を再び伸ばして、シュラへの攻撃をやめなかった。

 

「伸びたところで的が増えるだけだッ!」

 

「――蒼色の超弾(フリーザーブレット)ッ!」

 

 シュラはルフィに再び攻撃を加えようとしたが、その間に集中力を高めていた私がそれを許さなかった。

 

「なッ! 心網(マントラ)でおれの攻撃の瞬間を読んで――! くっ、腕が凍って――」

 

 彼の腕を掠めた冷気を繰り出す弾丸の効果により、シュラの右腕が凍りつく。

 

「また、スキが出来たな! ゴムゴムのォォォ! うげっ!? 腕が動かねェ! いや、身体も動かねェ!」

 

 それを好機と読んだルフィだったが、何かに縛られたように全身が動かなくなったようだ。

 

「ルフィ! うっ――! 体がっ!」

 

 ルフィの異変を察知した私の体も止まる。

 

「カハッ! これぞ摩訶不思議! 紐の試練――!! ここまで手こずらせたことは褒めてやる。だがここまでだ! フサ!」

 

「ゴォォォォ!」

 

 シュラは勝ち誇った顔をしてフサに命令すると、フサはシュラの凍った右腕に向かって炎を吐いた。

 

「熱いな……。だが、凍った腕は完全に溶けた! まずは厄介なお前からだ!」

 

 シュラは槍を構えて、そして私に向かって突き刺そうと特攻してきた。

 

「ライアァ!」

 

「――瑠璃色の超弾(スパイダーブレット)ッ!」

 

 シュラが槍を突き出そうとしたその刹那、私は素早く彼めがけて粘着性の網が飛び出す銃弾を放った。

 

「うわッ! なんだこれは! おっ、お前は動けねェんじゃ――」

 

 シュラの体には見事に粘着性の網が絡まり、その上それが自分の仕掛けた見えない細い糸に貼り付いてしまって、空中で動きを拘束される。

 

「――ルフィ! 今助ける! はっ――」

 

 そして、私は銀色の銃(ミラージュクイーン)の銃口に刀剣を取り付けて、ルフィを拘束してるであろう糸を切り裂く。

 

「――おっ!? 動けるようになった!」

 

 ルフィは拘束から解放されて、動けるようになった。

 

「相手が動けないと思ったらすぐに油断して、心網(マントラ)とやらを怠るんだもん。まァ、そのおかげで助かったけどね――」

 

 そう、シュラは私が罠にかかったと思った瞬間から目に見えて油断していた。

 そして、私の動きを読むことも疎かにして、突撃してきたのだ。

 

「じゃあお前は最初から……!?」

 

 シュラは罠がバレた上にそれを利用されて騙されたことに気が付き愕然とする。

 

「今度こそ覚悟しろよ!?」

 

 ルフィはニヤリと笑って、先程よりも長く後方に腕を伸ばす。

 

「ちょっ、ちょっと待て! くっ、ベタベタした網が雲紐にくっついて動けねェ……!」 

 

 彼の技の威力を身を以て実感したばかりのシュラは恐怖に顔を引きつらせて、もがいていた。

 

「ゴムゴムのォォォ! バズーカッッッ!」

 

「ぐはァァァッ! こ、このおれがっ……、青海人なんか……、に……」

 

 2度もルフィの必殺の一撃をまともに腹に受けたシュラは大量の血を口から吐き出して、そのまま腹を押さえて気絶する。宙ぶらりんになりながら……。

 ふぅ、やっと勝てたか……。

 

「バカ正直に“紐の試練”なんて言うんだから、相手を拘束するようなトラップくらい警戒するさ。おそらく見えない糸のようなものを無数に張り巡らせて、ルフィを動けなくさせたんだろう。動き回れば知らず知らずのうちに糸によって拘束――というわけだ」

 

 本当は漫画で知ってただけだけど、もしかしてエネルがこの様子を盗聴しているかもしれないので、ワザと説明的な口調でシュラの罠を見破った理由を話した。

 

「おおっ! 道理で動けなくなったと思ったぞ! よく気づいたなァ! でも、ライアも動けなくなったんじゃねェのか?」

 

 それを聞いたルフィは納得した顔をしたが、同時に気になったことを質問してきた。

 

「あれは演技だよ。彼がテリトリーだと言った場所に入ってから体をあまり動かさなかったから、私の体には動けなくなるほどの糸は絡みついてなかったんだ」

 

 そう、紐の試練と聞いてから私は必要最低限にしか動かなかった。

 しかし、糸をまったく体に付けないのも不自然だと思い、体の動きが緩く制限される程度にはワザと絡ませておいた。

 

「そして君が動けなくなった瞬間に私も動けないフリをした。だから彼は自分の罠に私もかかったんだと思い込んで勝利を確信してしまった。それがこの男の敗因だよ」

 

「ライアは嘘が上手いなァ。おれも騙されちまったぞ」

 

 ルフィは私の説明を聞いて感心したような声を出した。

 

「なんか、嘘が上手いってあまり褒められた気がしないな……。さて……」

 

 私は木陰から私たちの戦いをずっと見ていた少女に声をかけようとした。

 

「なっ、なんだ? あっ、あたいをどうしようってんだ!?」

 

 私が彼女の方を向くと少女はビクリとする。

 

「お前、こっちまで追いかけて来てたのか?」

 

「そっ、そんなのあたいの勝手だろ!」

 

 ルフィも彼女に気付いて声をかけると、彼女は顔を背けながら大きな声を出した。

 

「足を庇ってるところを見ると、捻挫の可能性もあるな。ほら、治療してあげるからメリー号においで」

 

 私は少女の足の様子を見て歩くのもキツイだろうと察して、彼女を抱きかかえた。

 

「ばっ、バカ! やめろ! はっ、恥ずかしいじゃないか」

 

 少女は顔を歪めて、私の肩の辺りをポカポカ叩いてくる。

 

「子供が大人を頼るのは恥ずかしいことじゃないよ。別に恩が売りたいんじゃない。中途半端に助けたくないだけなんだ」

 

「ついでに飯でも食ってくか? サンジの飯はうめェぞ!」

 

 私とルフィはそれでもお構いなしで、彼女に声をかけつつメリー号へと足を進めた。

 

「それは、いいな。サンジも可愛い女の子の為なら張り切ってくれそうだ」

 

 多分、サンジはコニスやこの子に特別な弁当を作るだろうな。彼の料理は美味しいだけじゃなくて見た目も美しいのだ。

 

「可愛いって――。あっ、あたいのこと?」

 

「おや、熱もあるみたいだな。顔が真っ赤だ」

 

 私の言葉を聞いた少女は顔から湯気が出そうなくらいに赤くなっていた。

 もしかして、傷口から菌が入って変な炎症でも起こしたかな?

 

「うっうるさい! 離せ! バカ!」

 

 しかし、熱がある割には元気そうな彼女はさっきよりも激しく私を叩いてきた。ただ、恥ずかしいだけだったか……。よかった。

 

 そして、エネルからさらなる刺客でも送られるか心配したが、そんなトラブルはなく、私たちは無事にメリー号に戻ったのである。

 

 戻りがけに聞いたのだが、少女の名はアイサ。

 やはり、ゲリラと呼ばれるアッパーヤードの原住民――シャンディアの1人だった。

 

 私たちがこの子を保護したことは、シャンディアと我々の関係性に大きく影響することに、まだ私は気が付いていない――。

 




最初にアイサを保護したことにより、空島編はちょっと変わった方向に進みそうです。
見聞色同士の戦いって表現が難しいですね。お互いに読み合いになるところが……。
もっと描写力を付けなくてはと実感しました。

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