ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう   作:ルピーの指輪

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いつも誤字報告や感想をありがとうございます!
現実ですと、ラバースーツでエネルくらいの出力の雷撃は防げないのは何となくわかるのですが、ワンピースの世界なら効かないってことにしても良いかなって思いまして、ここは読者様の寛大な心で許してくださいとお願いするところです。
それでは、よろしくお願いします!


海賊ライアVS(ゴッド)・エネル

「さて、(ゴッド)・エネル……。私は前座に過ぎないけれど……、少しは君を楽しませることができればいいな……」

 

 銀色の銃(ミラージュクイーン)を構えながら私はエネルと対峙する。

 本来の実力差は歴然。雷撃が効かないとはいえ明らかに格上との戦いだ。

 集中力を高めねば一瞬で終わる――。

 

「――フンッ! 先ほどは油断したが、銃弾程度――躱せぬ私ではない!」

 

 雷速は目にも留まらぬスピードだ。もっとも視覚は封じられているので、目にも留まらぬ以前に最初から見えてない。

 極限までに高めた集中力は少し先の未来を映し出した。

 

「で、君はそこだろ!」

 

「――ッ!? 私の心網(マントラ)を掻い潜っただと!? ぐはッ――」

 

 エネルが現れる場所を先読みして銃弾を放つ。

 彼は自分に攻撃が当たったことに少なからず驚いていた。

 

「やはりゴム弾では火力不足か――!」

 

 しかし、私はゴム弾の威力の低さに苛ついていた。

 急所に当てても痛がりはするけど倒せる気がしない。

 

「小賢しい! 神の裁き(エルトール)ッ!」

 

 思ったとおり、エネルはすぐに立ち直り雷撃を放ってくる。

 

「だから効かないって!」

 

 もちろん、エネルの攻撃は私には通じない。

 私はすかさず、彼に向かってゴム弾を発射する。

 エネルはすばやくそれを避けた。うーん。やはり、未来を視ないと当てるのは難しいみたいだ。

 

「ぐっ、どうやら本当にその服で雷撃を防げるらしいな……。ならば……、これでどうだ?」

 

 エネルはようやく私のラバースーツが雷撃を防いでいることに納得したらしく、何やら手にしている金の棒を変形させようとしてるみたいだ。

 見えないから何とも言えないが、察するにおそらく槍状にしたと思われる。

 

「へぇ……、そんなこともできるんだ……」

 

「その服さえ突き破れば、お前は無力となるはず……。見たところそこまで硬い材質ではない……」

 

 エネルは冷静にラバースーツに対して分析して持論を展開した。

 はぁ、能力だけのバカなら相手にしやすいのに、すぐにこうやって頭が回るんだもん。

 まったく戦い難いったらありゃしない。

 

「――ふふっ、それはどうかな?」

 

「ヤハハハハッ! 神を謀ろうとしたってそうはいかんぞ。私の心網(マントラ)は嘘を見抜く――」

 

 私は図星をつかれても動じずに平静を装ったが、心を読むことが出来るエネルにはそれが通じずに笑われて終わりだった。

 

「なるほど、駆け引き出来る相手ではないってことか……。いいだろう……。ならば君を寄せ付けなければいい話だ」

 

 とにかく当たらなければどうという話ではない。

 集中力を高めて回避を最優先にして時間を稼げるだけ稼ぐ。

 私の目的は勝つことではなく、ルフィにバトンを繋ぐこと。

 逃げに徹して行動すれば良い。

 

「お前にそれが出来るかな?」

 

 エネルはそう呟くと再び雷の速度でこちらに接近した。

 

「――ッ!? 雷速はやはり伊達じゃない……。ここだッ!」

 

 集中不足で未来は読めず、私は勘を頼りに銃弾を放つ。

 だが、そんな闇雲に放った銃撃が当たるはずもなく、手応えは感じられなかった。

 

「ヤハハハハッ! さっきの身のこなしはやはりまぐれか!? お前の動きも手に取るようにわかるぞ!」

 

「くっ――! 攻撃が当たらない!」

 

 エネルの心網(マントラ)はシュラやサトリよりも精密さを増していて、彼の身体を私の銃撃が捉えるのは至難だった。

 やはり未来視を使わなければまともに当てられない。

 

「ほらほら、どうした? 私を寄せ付けないのではなかったのか?」

 

 そんな私の状況を知っているのかいないのか、それはわからないが、エネルは高速で槍の連撃を私に向かって加えてくる。

 

「ちっ! 速い上に、見聞色も優れている。ちょっと気を抜くと、一巻の終わり――」

 

 情け容赦のないエネルの連続攻撃に私は戦慄していた。

 今のところ何とか躱せているが、これもいつまで続けられるだろうか?

 

「スピードは並のクセにフラフラとよく躱す……。認めてやろう。心網(マントラ)だけは一級品だよ。お前は……」

 

 エネルからのありがたいお言葉を頂くも、その時には既に彼の槍は私の目前に迫っていた。

 

「ふぅ……、体術は苦手なのだが――」

 

「――何ッ!」

 

 私は何とか槍を躱してエネルの腕を掴み、そのまま彼の力を利用して投げ飛ばした。

 

「合気道……。昔、通信教育でやってて良かったよ……」

 

 前世で暇つぶしにと通信教育で習っていた合気道。

 転生してからも時折、思い出しては稽古を独学で積んでいたが、射撃で決着をつけたり、接近戦を避けていたので使うことはほとんどなかった。

 これを使うってことは要するに余裕がないということなのである。

 

「訳のわからん事を……!」

 

「しかし……、2度目はなかなか上手く決まらないか……」

 

 銃撃だけでしか攻撃していないことが上手く働いて先ほどの奇襲は上手くいったが、さすがに掴まれることを警戒したエネルを捉えることは難しかった。

 

 そんな雑念が頭を過った瞬間を見逃すエネルではない。

 

「ヤハハハハッ! そこだッ! 油断したな!」

 

「ぐっ……! しまった――!」

 

 エネルの槍は私の顔を掠る。ラバースーツは破れて顔が完全に露出してしまった。

 

「やはり、脆かったな……。これで、私の勝ちだ! 神に逆らった罪は――重いぞッ!」 

 

 勝ち誇った顔をしたエネルは右腕を雷に変化させる。

 

「まだまだ! 私は負けてない!」

 

 私はせめて少しでも彼にダメージを与えようとゴム弾を、彼の額に撃ち込んだ。

 

「ぐっ――! 無駄な抵抗はやめろ! 神の裁き(エルトール)ッ!」

 

 弾丸が額に当たったエネルは苦悶の表情を浮かべたが、それでもお構いなしに、私に向かって雷撃を放った。

 思ったより時間が稼げなかったか……。無念だ……。

 

「――ッ!? ん?」

 

 私は観念していたが、雷撃を受けることはなかった。

 なぜなら、攻撃を受ける瞬間に何者かが私を抱きかかえて雷撃を回避したからだ。

 

「ふぅ、無事かい? ライアちゃん……」

 

「サンジ……。ありがとう……。助かったよ」

 

 助けてくれたのはサンジだった。そうか、みんなが来てくれたのか……。私はサンジ以外にもこちらに来ている気配を感じて状況を理解した。

 アイサは確か心網(マントラ)が使えた。彼女がここに導いたのだろう。

 

「お前は何者だ?」

 

 エネルは私を救い出したサンジを見据えて声をかける。

 

「恋の騎士だ!」

 

「なるほど、バカなのだな……」

 

 サンジの大真面目な返答を彼は辛辣な言葉で返して、顔を他の所に向ける。

 

「エネル! 貴様! 我輩の部下を! 神隊をどうしたァ!」  

 

 ガン・フォールは何かを聞いてきたらしく、怒りの表情を剥き出しにしてエネルに迫っていた。

 

「ガン・フォールも来たか……。随分と遅い到着だな。お前の部下はなかなか使えたぞ。どうしたかなど、どうでも良いことだ。直に皆、同じ運命を辿るのだから……」

 

「悪魔めッ!」

 

 エネルは暗にガン・フォールの部下を始末したことを示した。

 ガン・フォールの顔はさらに怒りに歪む。

 

「ライア! あんた、どうしたの? その格好……。大変よ! エネルが、この島ごと消滅させるって! マジでヤバイみたいだから、早く逃げなきゃって……、私はそれを伝えに……」

 

 ウェイバーに乗ってきたナミが私に声をかけた。

 やはりこの格好って変だよね……。

 

 彼女はこの国がエネルによって消されることを知ったみたいだ。

 そしてエネルの恐ろしさも知っているようだった。

 

「ナミ。君の目の前に居るのがそのエネルなんだけど……」

 

「いやああああっ!」

 

 私がすぐそばにエネルがいることをナミに伝えると彼女は絶叫する。危険を承知で来てくれたと思ったけど、やはり怖いものは怖いか……。

 

「今さら遅いって……。ん? アイサ……」

 

 ウェイバーからアイサが出てきて走って倒れている仲間に駆け寄っていく。

 

「ワイパー! ゲンボウ! ブラハム! みんな……!」

 

 アイサはボロボロになって倒れているワイパーたちを信じられないという表情で見ていた。

 

「アイサ! あんた、無事だったんだね!」

 

「ラキ……!」

 

 ラキがアイサに気付いて彼女に近付く。これで意識がある人が全員ここに集まったということになる。

 

「ヤハハッ! また雑魚どもが増えたか……! だが、何人増えたとて、同じこと――! 神の恐ろしさを思い知るが良い!」

 

 エネルは人数などものともしない。彼なら私たち全員を倒すなど造作もないことだろう。

 この状況を一変させるためには――。

 

「くっ、まだか………。ルフィ……!」

 

 私は焦りながら、大蛇と戦うゾロたちの様子を見た。

 

「キャハッ! 一万キロフルスイングッ!」

 

「うおおおおっ! 刻蹄・(ロゼオ)ッ!」

 

「――百花繚乱(シエンフルール)――クラッチ!」

 

百八煩悩鳳(ひゃくはちぽんどほう)ッ!!」

 

「ジュララアアアアアッッッッ! ゲボオオオオッッッッッ!!!」

 

 4人の必殺技を腹に受けた大蛇は顔を歪めて叫びながら口から大量に様々なモノを吐き出していった。

 いろいろ溜め込んだんだなぁ……。

 

 その中に――。

 

「やっと出られたぞォ〜〜!!!」

 

 ルフィが大蛇の口から飛び出してきた。よしっ! 間に合ってくれたか!

 

「ルフィ! あいつがエネルだッ! ぶっ飛ばしてくれッ!」

 

 私はエネルを指さして彼に率直にやって欲しいことを伝える。

 

「ライア! うはっ、面白い格好だなァ! よーし、任せろ! ゴムゴムのォォォ――!」

 

 ルフィは瞬時に状況を理解してエネルに向かって走り出す。

 後方に向かって腕を伸ばしながら。

 

「なんだ? 何かと思えば超人(パラミシア)か……。つまらん……。こんなやつがお前たちの切り札だったとは――。神の裁き(エルトール)ッ!」

 

 エネルは凄まじい雷撃を放った。雷撃は遺跡に巨大な穴を開けるほどの威力だったが、ルフィにはまったく効かずにそのままエネルに突っ込んで行く。

 

「――バズーカッッッ!!」

 

 ルフィの渾身の一撃がエネルの腹に突き刺さる。

 エネルもまさか自分が攻撃を受けると思ってなかったのだろう。完全に油断しきっていた。

 

「ぶべほっ……! きっ、貴様……、なぜ!? こうなったら……! 1億V(ボルト)――放電(ヴァーリー)!」

 

 エネルは驚愕しながらも、ルフィに触れて今までに無いほどの巨大な雷撃を直接叩き込んだ。

 1億V(ボルト)って、もはやスケールが凄すぎてよくわからん。

 

「――ん?」

 

「――ッ!!!!?」

 

 当然というか、わかっていたことだが、ルフィは無傷だった。

 そして、エネルの顔はみるみる歪みあ然とした表情に姿を変える。

 なんというか、既視感があるな……。私が女だと伝えたときのビビってこんな顔をしてたような……。

 

「あー、さっきはこんな顔をしてたんだ……」

 

「ライアちゃん、どうなってやがる? エネルってやつの、あの雷撃はすげェ威力に見えたが……。ルフィに通じてねェみてェだ」

 

 私がエネルの顔の感想を漏らしていると、サンジはルフィがエネルを圧倒していることに疑問を呈した。

 

「うん。そうなんだけどね……。ルフィだけは別なんだ。ゴム人間である、彼だけは……」

 

「ゴム人間? まさか……、そんな奴が……! ヤハハハハっ、もうよい……!」

 

 私がサンジにその答えを教えると、エネルはゴムという言葉にハッとした顔をした。

 そして、この場から去ってしまった。

 

「きっ、消えた……!?」

 

「いや、おそらく今すぐこの島を消し去ることにしたんだ。そうしたら、私たち全員を葬れる……」

 

 サンジがエネルの気配がなくなったことに目を丸くし、私が彼の狙いを推測する。

 おそらく彼が向かって行ったのは――。

 

「ああ、なるほどォ! あいつ、頭いいなァ!」 

 

 ルフィがポンと手を叩いて感心したような声を出した。

 

「んな、呑気なこと言うてる場合か! 早く逃げないと!」

 

 ナミがルフィの頭を叩いて逃げるように促す。

 

「どこに?」

 

「えっ、それは――えっと……」

 

 私はそんな彼女に逃げ場について尋ねると、ナミは困ったような顔をした。

 

「ライア……、教えろよ。あいつの居場所。わかるんだろ?」

 

 そして、ルフィは真面目な顔をしてエネルの場所を私に尋ねる。

 なんやかんや言っても私たちの船長はやるべきことがわかっている。

 そう、私たちがやることは逃げることじゃない。

 

「もちろんだ。急いで追いかけよう!」

 

 私は着替えるときに落としていた荷物から幾つか必要なモノを取り出して、ルフィと共にエネルを追いかけた。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

MAX(マックス)2億V(ボルト)放電(ヴァーリー)ッ!!」

 

 エネルは凄まじい電気エネルギーを放出して金色に輝いていた。

 

「私を限りない大地(フェアリーヴァース)に導く方舟“マクシム”――! 浮上せよ!」

 

 彼が居たのは空を飛ぶ方舟――“マクシム”の船内。動力部に当たるところだった。

 やはりこのマクシムから島全体を攻撃して空島を落とすつもりだったか……。

 

「それが君の目的か……!? エネル!」

 

 私はルフィと共にマクシムに乗り込み、エネルに声をかけた。

 

「青海人ども! そうか、お前は心網(マントラ)が使えたな……。私の居場所を察知したというわけだな」

 

 エネルは自らの居場所がバレた理由を冷静に分析して頷いた。

 

「逃げるなら、この島に手を出すな!」

 

「手を出すな? それはお前が決めることではない。そもそも、不自然なのだ。空に人が住むなどということは。神としてあるべきところに戻す。それだけだ」

 

 ルフィの主張に対してエネルは持論を述べる。空に人が住むのは不自然だから、地上に落とすと――。

 とんでもなく、理不尽極まりないやつだ……。

 

「この飛行船で君は本当にスカイピアを滅ぼすつもりみたいだね」

 

「無論だ。神は嘘など吐かん。ようやく国の愚民どもが気付いたようだが、この短い時間でどれほど逃げられるか見物だな」

 

 エネルは当然という口調で残酷なことを言う。人間たちの命のことを実際に何とも思っていないのだろう。

 

「ならば……。ここで君を倒す! もう一度、これを使って!」

 

 私は鞄に入れておいた予備のゴム製のマスクを被り、全身をゴムで再び覆った。

 

「ヤハハハッ! 神を倒すだと? 口を慎め! お前らが何者なのか知らんが、大言壮語を吐くものではない! たとえゴムとやらを使っても、私は倒せん!」

 

 エネルはそれでも余裕の表情を崩さず、自分が負けるなんてあり得ないと口にした。

 

「倒せるぞ。おれは海賊王になる男だ。そしてライアはその船員(クルー)……。おれたちは、お前なんかに負けたりしねェ」

 

 ルフィははっきりと宣言した。エネルを倒せると……。

 未来の海賊王の船員(クルー)か……。悪くない響きだ――。

 

「カイゾク王……、なんだそれは?」

 

「世界の偉大な海の王だ!!」

 

「ご立派だな――。決着をつけようじゃあないか、この空で……!!」

 

 空中に浮かぶ方舟“マクシム”……。

 

 ルフィと私は、(ゴッド)・エネルと最後の戦いを開始した――。

 

 




やはり、ラバースーツはそんなに役に立ちませんでした。一撃入れられたら終わりですから、タイマンだと脆いのです。
そして、破れた顔の部分をマスクを被ることで補って、ライアは再びマニアックな格好でルフィと共にエネルに挑みます。
よって、次回は空島の最終決戦となりますね〜。

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