ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう 作:ルピーの指輪
気付けば50話を超えて文字の量もかなりの量になっておりますが、長く読んでいただけて感謝しております!
それではよろしくお願いします!
『さァ、取り引きの時間だ! 指名権は勝利チームの
『そうなると、本命は50人の船大工のボス! ソニエか!? はたまた、戦う船大工、ドノバンか!? 本能の赴くまま! お色気船大工、ジーナ姉さんか!?』
『先ほどの戦いを見ていた女性陣はレディキラーの毒牙にかかり! ポルチェちゃんを中心に自分を連れて行けと言わんばかりに手を振ってアピールしてるぞ! しかし、ライアは依然として完全に無視! レディキラーには人の血が流れていないのかァ! まさに冷血!』
1回戦を終えて最初の取り引きが始まった。戦いは終わったというのに、相変わらず司会が私のことを好き勝手言ってくる。
私に向かって手を振って何を企んでいるというのだ?
「もう試合は終わったんだから静かにしてくれないかなァ……」
私はイライラが抑えきれずにいた。海賊として真面目に生きてるつもりなんだけど……。
どうして、ここまで言われるんだ……。
「落ち着け、好きに言わせてりゃあ良いじゃねェか……」
「嫌だ!」
ゾロの適当な言葉に私はムッとして反発する。
「で、そんなことより。どうする? 私は反対よ。得体の知れないやつを船大工にするのは」
「ええーっ! ジーナ姉さんじゃないのォ!」
私の言葉をスルーして、あの中の船大工は嫌だと主張するナミに対してサンジは残念そうな顔を浮かべる。
お色気船大工って……。ちょっと意味がわからない……。
「サンジくんは黙ってて。だから、こういうのはどうかしら? 3戦目に出る向こうの船長を取っちゃえばこっちの2勝は確定するでしょ。それならウチが誰かを失う可能性がなくなるわ」
「ピーナッツ戦法だね。提案したらバッシングの嵐だと思うよ」
ナミの提案に私はツッコミを入れた。
「構わないわよ。そんなこと」
しかし、ナミはそれでも構わないという感じで涼しい顔をする。まぁ、危惧するところは他にもあるけど……。
「でも、航海士さん。そうするとあのオヤビンって人がこっちの仲間になるけどいいの?」
「「あれはいらねェ」」
ロビンがナミにツッコミを入れると、ルフィたちは口を揃えてフォクシーは要らないと声に出した。
フォクシーにそれははっきりと聞こえたらしく、彼は落ち込みいじけていた。
「それに、2回戦で負けてフォクシーが取り返されたら意味ないよ。結局3戦目もやることになるだろ?」
そして、私は1回戦だとピーナッツ戦法は有効ではないと付け加えた。
ゾロたちが敗けるとは思わないけど、意味がなくなる可能性もある。
「そっか。それは考えてなかったわ」
「だったら、海賊旗でいいじゃねェか」
ナミがハッとした顔をすると、ルフィが海賊旗にすれば良いと提案する。
まぁそれでも良いと思うけど……。せっかく勝ったんだし……。
「でも、旗は1つだけだからねぇ。あと2回勝つ可能性もあるから――、そのときに困ると思うし……。司会の人、ちょっといいかい?」
私は司会に話かけた。確認したいことがあったからだ。
『なんだい? レディキラー。うぉっと、銃は向けないでくれブラザー! 平和的にいこう!』
「その名で呼ぶのを今すぐ止めろ! 貰えるものってさ。例えば、物資や金品でも良いのかな?」
レディキラーと呼んでくる司会に我慢できずに、
『もちろんオッケーだ! 金庫の金! 食料品! その他諸々何でもありだぜ! 尚、現金の場合の上限はオヤビンの懸賞金2700万ベリーまでだ! そっちは麦わらの懸賞金の1億ベリーまで!』
「何か不平等な気もするけど良いだろう」
人の価値を金で換算するって意味なんだろうけど、どうも釈然としないな……。
しかし、こっちは黄金が奪われる可能性も出てきたか……。
まぁ、向こうの口ぶりだとモノよりも人を選ぶだろうけど……。
「だったら、とりあえず食料品にしとく? お金は換金すれば困らないだけありそうだし」
「そりゃありがてェ。そろそろ、冷蔵庫の中身が心許なかったんだ。このバカが盗み食いしたせいでな。さすがはナミさんとライアちゃんだ」
ナミが食料品を手に入れることを提案すると、サンジはニコリと笑って喜んだ。
ルフィはサンジの鉄壁のガードを掻い潜るからなぁ……。
「まっ、あっちの船は大きいからウチの冷蔵庫いっぱいにしてもそんなに痛くないだろう」
フォクシー海賊団と私たちは人数が10倍以上離れている。
食料品は豊富にあることが予想されるので、我々が持って行ったところで全然ダメージはないだろう。
それくらいが丁度いいと私は思う。変に恨まれても面倒だから。
「肉かァ! いいな、それも! んじゃあ、貰うものは肉で!」
「バカ野郎! 酒もだ!」
「お前ら二人とも大バカ野郎だ! 野菜も魚もバランス良くに決まってるだろうが! お前らはともかくレディの食事には気を遣うんだぞ!」
サンジはルフィとゾロにツッコミを入れて、一味を代表して受け取る食料品を選別することとなった。
てなわけで、1回戦の戦利品は食料品を受け取るということで落ち着いた。
続く2回戦のグロッキーリングは、漫画ではチョッパー不在で挑んでも勝った試合だ。
そんな相手に負けるはずもなく――。
『デービーバックファイト! 無敵のチームグロッキーモンスターズをくだし! ゲームを制したのはな〜〜んと! 麦わらチーム! 大勝利!!』
ゾロたちは相次ぐ妨害行為を乗り越えて勝利を掴んだ。
うーん。やっぱり強いなァゾロとサンジは……。で、チョッパーは可愛い。
『さァて、今度は勝利チームの船長! モンキー・D・ルフィは誰を選ぶのか!? さっきは食料だったが、見たところ腹も膨れている! くぅ〜〜! この選択の瞬間がゾクゾクするぜェ!』
司会はテンションを上げて次こそ人が選ばれるのでは、と煽っていた。
だが、私たちの頭にそんな選択はない。
「たったの2700万ベリーでもないよりはマシよね」
「ルフィ、とりあえず現金にしといてくれ。次の島あたりで美味いものでも買おう」
ナミは金額にケチをつけていたが、2700万ベリーって結構な大金だと思うよ。
アーロン倒しても届かない賞金だし……。
「金かァ。あんま興味ねェな。まっ、いいか」
ルフィは少しつまらなそうな顔をしていたが、現金と交換する方向に納得してくれた。
現金を受け取った私たちが迎えるのは3回戦だ。
こちらサイドはルフィが出て、向こうはフォクシーが出ることとなる。
「ホイホイホイ! いいか、お前ら……。3回戦の“コンバット”。おれに勝つのは不可能だと言っておく」
「何をー! おれがお前に敗けるかァ!」
フォクシーは不敵に笑い、ルフィを挑発したものだから、彼はムッとした顔で言い返した。
「フェッフェッ……! ケンカとゲームは違うんだぜ」
「面白い。だったら、こちらもゲームとして戦おう。ルフィ、私がセコンドについてもいいかい?」
何かを企む顔をしていたフォクシーを見て、私はルフィのセコンドに立候補する。
「おう! いいぞ! セコンドって何か、わかんねェけど」
ルフィは私がセコンドにつくことを了承した。よし、これがゲームでケンカではなく何でもアリというのなら、私からもエンターテイメントをプレゼントしようじゃないか。
“コンバット”のバトルフィールドは、連中の怪しい大砲によって、フォクシー海賊団の船を中心とした直径100mの円の中に決まった。
ルールは敵を円から外に出せば勝ちになるというシンプルなものである。
多分、あの中にフォクシーが有利になる仕掛けが沢山あるのだろう。
なぜなら、フィールド内の武器、兵器などの全ての物が利用可能だからだ。
『ライン設置完了! お待たせ致しましたァ! 本日のメ〜〜インイベントッ! “コンバット”! ま〜〜もなくゴングだよ〜〜ッ!』
『まずはレフトコーナー! 来るもの拒まず! “コンバット”無敗伝説920勝! 全てのゲームに勝つ男! 我らがオヤビン! “銀ギツネのフォクシー”!』
レフトコーナーからフォクシーがガッツポーズしながら登場する。
『次にライトコーナー! 懸賞金1億ベリーの男! 通称“麦わら”! モンキー・D・ルフィ〜〜!』
ライトコーナーからルフィが登場。後ろにはセコンドの私が控えている。
「こんなにカッコよくしてもらってありがとな! ライア!」
「メタリックカラーはパンチ力を増大させるからね。まるでロボットのような銀色の光沢は気に入ったかい?」
私はルフィの全身に銀色のボディペイントを施した。
さらに、シルバーのマントを装備させてみた。
「すっげェ気に入った! うおおおおッ!」
ルフィは銀ピカになった自分の体が気に入ったらしくテンションを上げていた。
“コンバット”はグローブを着用とのことだったので、ついでにグローブも銀色に塗装しておいた。
仲間たちというと、チョッパー以外には概ね不評で私には何をしているんだという視線が集中する。
いや、これには理由があるから……。
『デービーバックファイト! 運命の第3回戦! 始まるよ〜〜!!』
そして、ついに“コンバット”が開始された――。
「いくぜ! ノロノロビームッ!」
「――ッ!?」
フォクシーからルフィに向かってノロノロビームが発射され、ルフィは何が起こったのか分からずにキョトンとした顔をする。
「フェッフェッフェッ! 鈍くなったな! これは挨拶代わりだ! 九尾ラッシュ!」
フォクシーはルフィに向かって連撃を加えようとする。
「ゴムゴムのォォォ! ガトリングッッ!!」
だが、ルフィはいつもどおりのスピードでフォクシーに凄まじい威力の連打を加えた。
「――ブェップッッ! グハッ――!」
九尾ラッシュは押し切られ、ルフィの連打は激しく彼の体に突き刺さり、フォクシーは大ダメージを受ける。
そう、ルフィにボディペイントを施したのはノロノロビーム対策だ。
光沢のあるシルバーのボディがノロノロビームを反射させて無効化したのだ。
「くっ、外れてしまっていたか!? フェッフェッ……、もう一度だ! 至近距離から、ノロノロビームッ!」
「ゴムゴムのォォォ!
ルフィはノロノロビームを受けながらも突進してフォクシーをぶん殴った。
「ぐぎゃああああッッッ! ――バッバカな……!」
フォクシーは床に叩きつけられて唖然とした表情でルフィを眺める。エネルの雷撃が通じなかった時みたいな表情だなぁ……。
『おおーっとこれはどういうことかァ! オヤビンの必殺! ノロノロビームが効いてないぞォ! オヤビン、口を大きく開けて愕然とした表情だァ!』
「くっ、クソッ! のっ、ノロノロ――」
「ルフィ! マントでビームを防げ!」
フォクシーがノロノロビームを懲りずに放とうとしたので、私はルフィに指示を出す。
「マント? ――こうか?」
「ビーム!」
ルフィはマントを翻して、ビームから身を守るような動作をすると、ノロノロビームは鏡のような光沢のあるマントによって反射され、フォクシーに向かって跳ね返っていった。
よって、フォクシーの動きが30秒間スローモーションになる――。
「なんだ? 急にゆっくりな動きをして? まっ、いいか! ゴムゴムのォォォ!
「――ッ!?」
ルフィは不思議そうな顔をしながらも容赦なくフォクシーの顔面にめがけて拳を叩き込む。
「ん? ぶっ飛ばねェな……」
「「…………」」
しかし、ノロノロビームが効いている間はフォクシーはスローモーションの動きになるので、その場に踏みとどまる。
まぁ、それもあと5秒くらいだけど――。
「――ンぎゃあああああああッ!!!」
そして、ノロノロビームの効果が切れ、フォクシーは場外まで吹き飛ばされて海の中に落ちてしまった。
ノロノロビームに固執したおかげで思ったよりあっさりと倒したな。
『オヤビンの無敗伝説、ここに敗れる! ゲームを制したのはなんとォ! 麦わらのルフィ! そして、デービーバックファイトはこれにて全試合が終了〜〜!』
司会の実況によって、ルフィたちの戦いと、デービーバックファイトの終わりが告げられる。
結局、私たちはフォクシー海賊団に全勝した。
「ちっ、どうやっておれのノロノロビームを破りやがった?」
「だから何だよ? ノロノロビームって」
体のペイントを洗い落として着替えたルフィはフォクシーの質問にそう答えた。
ルフィはノロノロビームのことを知らない。彼がビームを使うところを見ていないから……。
「ルフィは何も知らないよ。君がノロノロの実の能力者だってこと。光線は鏡で反射される。だったら、銀色のボディにすればあるいは無効化できるかもって考えたのさ」
「てめェの仕業か! あのとき何にも見てないフリして観察してやがったな! 完敗だ! いい試合だったぜ! ブラザーたち!」
私がフォクシーに種明かしをする。フォクシーは感心したような口調で頷き、私に向かって手を差し出した。
「フォクシー……」
私はフォクシーの手を掴む。
「――でやッ! 苦し紛れ! 一本背負い!」
「私の腕を迂闊に掴まないことだ! ハッ!」
「ブハッ――」
フォクシーは私を投げようとしたが、逆に合気道の技で投げ飛ばしてやる。
まったく油断もスキもないやつだ。
「ライア様! カッコいい! やっぱり私を連れて行ってほしいわぁ」
「ちょっと、くっつかないでくれるかい?」
「いやん。そういうクールなところが素敵!」
ポルチェはどこまで本気か分からないが、最後まで船に乗りたそうな顔をしていた。
「キャハハ、いくら鈍いあんたでもそろそろ自覚出来たんじゃない?」
「ライアがそんな簡単な奴ならあなたはここには居ないわよ」
ミキータとナミはそんな私を見て何やら話していた。何を自覚すれば良いのか本当にわからない……。
『最後の取り引きだァ! 今回の指名権も勝利チームの船長“麦わら”ッ! 食料、現金ときて、何を望む!』
「海賊旗をくれ!」
そして、司会に最後の取り引きを持ちかけられたルフィは海賊旗と即答する。
「まさか、迷わずにおれたちの誇りを選ぶとは!」
というわけで、ルフィはフォクシー海賊団からシンボルを奪った。
まぁ、帆まで取っちゃうと航海が出来ないと彼は慈悲をかけたから、ルフィがシンボルマークを上書きして返したけど……。
さて、とりあえず竹馬の男に声でもかけて、この島からおさらば――。ん? なんだこれは……。
「みんなッ! 早く逃げるぞ! 船に乗るんだ!」
私は凄まじい気配を察知して、みんなに逃げるように伝えた――。
このプレッシャーは間違いなく
そうだった。この島にはあの男が来るんだった――。完全に忘れてた……。
「キャハッ! どうしたの? そんなに慌てて」
「おいおい、逃げろって穏やかじゃねェな……」
ミキータとゾロが私の言葉に反応するも、状況が掴めてないみたいだ。
「とにかく、やばいヤツが近くまで来てるんだ――。早くしないと! 下手すれば全滅――」
「――あららら、見聞色が使えるのか。こりゃ驚いた」
私のセリフが言い終わる前に、現れたのはその大きな力の持ち主――。
「誰だ? おめェ?」
「――ッ!? はぁ、はぁ……」
ルフィが突然現れた背の高い男に声をかけた瞬間にロビンは憔悴しきった顔をして尻もちをついた。
「ロビン?」
「どうした? ロビンちゃん」
その様子を見て、ナミとサンジが心配そうな顔をして彼女を見る。
「よう、いい女になったな。ニコ・ロビン」
現れたのは海軍本部大将“青キジ”――海軍の最高戦力と言われている男のうちの1人だ――。
彼がその気になったら、間違いなく私たちは全滅する。
私はいずれ対峙する予定の最高戦力を初めて目の当たりにして腰が抜けそうになってしまっていた――。
この男は間違いなく、化物の中の化物だ――。
こんなのが3人も居るところに飛び込もうとするなんて――命がいくつあっても足りないじゃないか……。
銀色に塗ったらノロノロビームが防げるかなんて分からないですが、この作品ではそういうことにしておきます。
青キジが登場して、頂上戦争をこれまで以上に意識するようになったライアです。
次回は青キジと対峙する一味とそれからって感じになりそうですね。