ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう   作:ルピーの指輪

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いつも誤字報告や感想をありがとうございます!
メリー号がどうなるかという様々なご意見を拝見させていただきました。
ライアの決断が受け入れられるか不安ですが、今回のエピソードは今後にも関わってきますので、ぜひご覧になってください!


わがまま

「ンマー! ウチの職人たちをナメてもらっちゃ困る。迅速に、より早く頑丈な船を作り上げるためには、並の身体能力じゃ間に合わねェ」

 

 アイスバーグ曰く、ガレーラカンパニーの船大工は身体能力が豊かな人間が多いとのことだ。

 

「――ところで、おいカリファ」

 

「ええ、調査済みです。“麦わらのルフィ”、“海賊狩りのゾロ”、“レディキラー・ライア”、“ニコ・ロビン”、“運び屋ミキータ”――5人の賞金首を有し、総合賞金額(トータルバウンティ)3億250万ベリー、結成は“東の海(イーストブルー)”、現在8人組の“麦わらの一味”です」

 

 アイスバーグが秘書のカリファに声をかけると、彼女は次々に私たちの情報を彼に伝えた。

 この人もカクと同じくCP9か。カクほどの実力は感じないけど、六式が使えるというのは厄介だ。油断してはならない。

 

「すごいな。かなり詳細まで調べられてる」

 

 私は素直に調査能力に驚いた。ここに来て間もないのに、ロビンやミキータのことまで調べてるなんて……。

 

「そうか、よく来た。おれはこの町のボス! アイスバーグ。そして、このネズミはさっき拾った。名前は――そうだな。“ティラノサウルス”……。エサとカゴを用意せねば」

 

「手配済みです。アイスバーグさん」

 

「ンマー、さすがだな。カリファ」

 

「恐れ入ります」

 

 アイスバーグは自己紹介をして、さっき拾ったネズミの世話をするための道具をカリファに相談していた。

 こうしてみるとCP9は実にこの町に馴染んでいる。恐ろしい連中だ。

 

 彼は忙しい身のはずなのだが、「イヤだ」のひと言で予定をすべてキャンセルした。彼曰くこれくらいのことが出来るくらいの権利者らしい。

 

「なァ、()()があのバーさんが言っていたアレじゃねェ?」

 

「ええ、そうね。そのアレよ」

 

 ルフィたちがコレやアレを言った瞬間にカリファから殺気を感じ取る。

 もっとも本気のものではないが……。とりあえず、私がどのくらい動きについていけるか、参考にならないだろうが試してみよう。

 

「この無礼者! ――えっ!?」

 

 カリファが蹴りを繰り出そうとする瞬間に、私は彼女の膝を手で制して、それを止める。

 うーん。全然本気じゃないから、実力はわからなかったな。

 

「おっと、仲間たちがすまないね。君たちの市長を馬鹿にしようとか、そういった意図はなかったんだよ」

 

 私はとりあえず、ルフィとナミの非礼を彼女に詫びた。

 

「――ッ!? そっ、そうですか……。でも、気を付けてください……」 

 

 私の顔を見たカリファは少しだけ頬を紅潮させて、足を引っ込める。

 この人ってこんなしおらしい感じだったっけ? まぁ、漫画と印象が違うってよくあるからなぁ。

 

「うん。よく言っておくよ。許してくれて、ありがとう」

 

「いっ、いえ。お気になさらずに……」

 

 カリファは私から目を逸らしてアイスバーグの後ろまで下がっていった。

 

「ンマー、こりゃ驚いた。怒ると見境のないカリファがこうもあっさり……」

 

 その様子をアイスバーグは物珍しそうに見て感想を述べる。

 

「キャハハ! こいつの特技みたいなものよ。いつものことだから」

 

 ミキータはアイスバーグに私の特技がどうたら言ってるけど、どういう意味なんだ?

 

「はぁ、毎度、毎度……。あっ、そうだ。とにかく、あなたがアイスバーグさんね。紹介状をあなたに――」

 

 そして、ナミは思い出したようにココロの書いてくれた紹介状をアイスバーグに渡した。

 

 それを見たアイスバーグは紹介状を破いたが、理由はキスマークが不快だっただけで、船を修理すること自体は了承してくれ、工場を案内すると言ってくれた。

 やはり、この人はいい人だ……。

 

 そして――。

 

「それは私たちのお金だよ、触らないでくれ――」

 

「ガフッ……zzzz」

「ゲフッ……zzzz」

 

 私は1億ベリーの入ったカバンに触ろうとした男たちを睡眠弾で撃って眠らせた。

 

「キャハッ、そんなにコレが欲しいのぉ? 好きになさい」

 

「ぐわっ! 潰される!」

「化物だ! 逃げろっ!」

 

 そして、ミキータが両手に持ってるカバンを引き剥がそうとした男たちは、体重を1万キロに増やした彼女にカバンごと潰されそうになり――荒くれ者たちは乗ってきた船に戻り逃げ出した。

 彼らはフランキーの子分か……。確か、漫画では奪った金を使って宝樹アダムを買ったんだよな。

 金を回してやる必要はあるかもしれないな。

 

「フランキーは甘く見るな」

 

 アイスバーグは我々にそう忠告する。まぁ、半分サイボーグだし、腕っぷしもさっきの連中とは比較にならないんだろう。

 

 1番ドックに入った私たちはパウリーとロブ・ルッチを紹介された。

 ロブ・ルッチはカク以上に無駄のない体つきと高い戦闘力を秘めているように感じた。

 やはり、思っていたとおり恐ろしい男みたいだ……。

 

 

 そして、しばらく見学したあと、船の査定を終えたカクが戻ってきた。

 

 

「目に見えない損傷がかなりあったが、まァ普通に航海するくらいには直せるじゃろう。それにしても――かなり無茶な航海をしてきたみたいじゃな」

 

「そっかァ!よかった。なァ、ライア!」

 

 カクの言葉にルフィは笑いながら私の背中をバシバシ叩く。

 ふぅ、とりあえずよかった。だけど――。

 

「あっああ……、そうだね。あのさ、気になったんだけど、《普通に航海》って、どの程度なんだい?」

 

「キャハッ、確かに空に行って落ちるなんて普通じゃないもん。」

 

 私の言葉にミキータが頷く。そう、ここから先の海で普通の航海などできるのだろうか。

 

「難しいことを聞くのぉ。はっきり言おう。この先も偉大なる航路(グランドライン)での航海を続けるのなら、この船を直すよりも新しい船を購入することを勧めるぞ。この船はわしらが直しても新品同様の状態に戻すことは出来ん。船の寿命を少しだけ伸ばすので精一杯じゃ」

 

 カクははっきりと別の船の購入を勧めてきた。

 彼はCP9だけど、仕事は真面目にやってくれてるのだろうから、この意見は正しいのだろう。

 

「それでどれくらい航海出来るものなんだい?」

 

「急ぎで直しても、偉大なる航路(グランドライン)の中間地点と言われるシャボンティ諸島辺りまで行けるじゃろう。じゃが、その先……、“新世界”と呼ばれる後半の海――そこから先の航海には間違いなく耐えられん。下手すれば沈没もあり得る。そもそも、この船自体が偉大なる航路(グランドライン)の航海に向いとらんのじゃ」

 

 カクは新世界と呼ばれる海の航海はメリー号では間違いなく無理だと断言する。

 薄々そのことには気付いていた。メリー号が傷つく度に私はその事実を突きつけられて胸が痛かった。

 

「そっか。そんときゃ、そん時で考えりゃいい。とりあえず、この船を直し――」

「ルフィ、ちょっと待ってくれ! 一度メリー号に戻って話し合おう。大事な話がしたいんだ!」

 

 私は大声でルフィの言葉を遮った。このとき、私は決心する。仲間たちにわがままを言うことを――。

 

「ライア? どうしたの? 急に大声を出して。あなたが一番メリー号を直したいと思っているんじゃないの?」

 

 ナミは修理を止める私の言葉を聞いて不思議そうな顔をした。

 そりゃあそうだ。私がメリー号を猫可愛がりしてることはみんな知っているんだもん。

 

 とにかく、アイスバーグには修理は保留にしてもらって予算の見積もりだけ先にしてもらうことにした。

 

 そして、私たちはメリー号に戻った。

 

 

 メリー号には買い出しに行ったサンジと、ロビンと一緒に出かけたが途中ではぐれたと言って戻ってきたチョッパー、そして船番をしていたゾロが居た。

 

「ロビンがまだ戻ってない、か……。彼女には後で話すとして、単刀直入に私の意見を言おう。私はメリー号を降り、新しい船を購入して先に進むべきだと思う……」

 

「「はァ!?」」

 

 メリー号を降りるという私の意見にみんなは信じられないという顔をする。

 私だってこんなことは言いたくない。でも、私が言わなくちゃならない。

 他の人からこの意見を聞きたくはなかったから。

 

「ちょっと待ってくれライアちゃん。メリー号は君の宝なんだろ? それなのに君が乗り換えるって言うのは――」

 

「宝だからだよ。サンジ……。仮に修理したとしてもゴーイング・メリー号はこの先の航海でそう遠くない未来に壊れる。それが私には耐えられそうにないんだ――」

 

 サンジの台詞に私は答える。

 メリー号でこの先を航海したら、絶対にそう遠くない将来――限界がくる。

 壊れて再起不能になるメリー号は見たくないというのが本音だ。

 しかも、そのとき都合よく新しい船が手に入る状況にあるとも限らないのだ。

 

「あの大工が色々言ったから? メリー号じゃ、後半の海は航海出来ないとか……」

 

「うん。薄々、私も思ってたんだ。メリー号の限界を……。船を守ってきて、ここまで致命傷を避けてきてはいたが、いつまでもそれが続かないってことを……」

 

 ナミの言うとおり、プロの意見を聞いて私は決心を固めた。

 今までなるべく考えないようにしていたメリー号の限界を確信したことも大きかった。

 

「この船が死んじゃうのが怖くなったのね。確かに、そりゃ、あんたは耐えられそうにないわ」

 

 ミキータはいつもよりも神妙そうな顔をして頷く。

 

「船長、どうなんだ? ライアはこう言ってるが」

 

「おれは船大工じゃねェから、メリー号が壊れちまうかどうかわからねェ。けど、一番メリー号を大事にしてるライアがダメだって言うんだ。だったら、新しい船を探すしかねェだろ?」

 

 ルフィからはいつもの陽気さが消えて、俯きながら、静かに声を出した。

 私の言ったことを理解してくれた上で、自分の感情を殺しているように見えて……、切なかった。

 彼のことだから、怒って反対すると思ったんだけど――。

 

「ルフィ……、君もこの子のことが好きなのは知ってる。じゃないと、そんな顔はしないだろ?」

 

 私は怒鳴られるよりも辛かった。彼がメリー号を愛して、心から仲間だと思って航海していることを知っていたから。

 ルフィからは涙は見えなかったが、心の中で泣いているのは、歯を食いしばる彼の表情から感じ取ることはできた。

 

「――ッ!?」

 

「船長としちゃあ正しい判断だ。船はおれたち全員の生命に関わる。意地張って無理させて、全滅なんてこともあるだろうからな。むしろ、ライアから船の買い替えを言い出したことに驚いたぜ」

 

 ルフィの船長としての決断をゾロは評価する。

 彼は知っている。船に何かあったら、私たちがいくら強かろうと関係ない。

 一味の全滅という事態を回避するには、メリー号に無理はさせないことが最善だということを。

 

「なァ、メリー号はどうなるんだ?」

 

「普通は焼却処分したりするわね」

 

「もっ、燃やすのか?」

 

 チョッパーの言葉にミキータが答えると、彼は青ざめた顔をした。

 確かに燃やして処分したり、解体屋に部品として引き取ってもらったりするけど――。

 

「ごめん。チョッパー。もう少しだけ話に付き合ってほしい……。ここからは完全に私の我儘なんだけど……」

 

 私にはもう一つ話があった。これは本当に自分勝手な意見だから受け入れられないと思うが……。

 

「我儘? あなたが我儘なんて言うの? 珍しいわね」

 

「キャハッ、何なのよ。言ってみなさい……」

 

 ナミとミキータは興味深そうに私を見ていた。

 うう、言いづらいな……。

 

「お金を貸してほしい! ちゃんと、返済はする。借用書も書くから……」

 

 私は仲間たちに借金の申し入れをした。

 私のやりたい事にはお金がかかるのだ。

 

「――金を貸せって、変なことを言うな。ライアちゃんが1番金を持ってるじゃねェか」

 

「違うでしょ、サンジくん。この子が言いたいのは、こっちの5億ベリーのことよ。船を買ったあとに、私たちがこれを分配するから――。それを自分のために使わせてくれって言ってるの」

 

 サンジの言葉を聞いたナミは私の意図することを察して訂正した。

 そう、私が使いたいのはみんなに分配するはずのお金の一部だ。

 

「大金が要るってこと? キャハッ、何に一体使うのよ?」

 

「メリー号を修理したい!」

 

 ミキータの問いに私は率直に答える。

 メリー号の修繕こそ私の我儘だ。

 

「「えっ!?」」

 

 予想したとおり、みんなは訳がわからないというような顔になった。

 そりゃ、そうだよね。さっき船を買い変える話をしたんだから。

 

「おい! さっき、お前が船を乗り換えるって言ったんだぞ! メリー号を直してどうすんだよ!」

 

 ゾロは怪訝そうな顔をして大きな声を出す。

 

「まさか、あなたもメリー号と一緒に――」

 

「はァ!? それはダメだぞ! お前はおれたちの狙撃手なんだから。それはおれが許さねェ!」

 

 ナミが何やら勘違いをして、ルフィがそれを止めようとする。

 多分、私がメリー号と一緒に一味を抜けると思ったんだろうな。

 

「大丈夫だよ。私は君の仲間を辞めたりしないさ。ただ、メリー号を直して、きちんと信頼できる人に保管してもらって――いつか引き取りに来るつもりなんだ。私の故郷の……、シロップ村にメリー号を里帰りさせるために」

 

 私は自分の意図を話した。カヤが私にプレゼントしてくれたメリー号。

 私はどれだけ時間がかかってもこの子も生まれ故郷まで帰してやりたい。

 それがこの子に出来る恩返しだと思ったから――。

 

 もちろん、ここからシロップ村に戻るのも難しい航海だとは思うが、とりあえずアラバスタ王国までの永久指針(エターナルポース)は持っているし、あの国には双子岬までの永久指針(エターナルポース)が普通に売っていた。

 おそらく、ここに来るよりは随分と楽なはずだ。

 航海術もナミには全く及ばないがそれなりには心得がある。

 

「そっか。東の海(イーストブルー)の故郷にこのメリー号と帰りたいのね」

 

「うん。じゃないとカヤに“ただいま”って言えないと思ってさ。だけど、これは私の我儘だから、一味の金から出すわけには――」

 

 ナミの言葉に私は答える。だけど、メリー号と共に故郷に戻りたいなんて言うのは私の我儘だ。

 だから――。

 

 

 

「持ってけよ。好きなだけ――船長命令だ! 誰にも文句は言わせねェ!」

 

 ルフィは札束の入ったカバンを次々と目の前に置いて、勇ましい顔をして大声を出した。

 有無を言わせないような気迫がビリビリと私に伝わる。

 

「ルフィ……、君は――」

 

 私はルフィの顔を見る。彼はどこまでも澄んだ力強い黒い瞳で私をまっすぐに見つめていた。

 

「おれたちを見くびるな! 世話になったメリー号(なかま)に恩返ししてェのは、みんな同じだ!」

 

 ルフィはメリー号に恩返ししたいと宣言した。

 

「ここまで、おれたちを無事に運んでくれたんだ。そいつァ金には代えられないだろ?」

 

 ゾロもニヤリと笑い、ルフィに同意する。

 

「そうよ。ここまで私たちを運んでくれたんだもん。出来るだけキレイにしてもらって里帰りして貰いましょう」

 

 ナミは私の肩を叩いて可愛らしく笑顔を作った。

 

「くぅ〜〜っ! ライアちゃん、健気だなァ! おれァ、また惚れ直しちまった!」

 

 サンジは拳を握りしめて大げさなことを言う。

 

「メリー号と別れるのは辛いけど。おれも元気でいて欲しいぞ」

 

 チョッパーは私の膝の上に乗って、医者らしくメリー号を気遣ってくれた。

 

「キャハハッ! あんたらしいわね。お金なんて、また稼げばいいわ。それよか、あんたのやりたいことの方が大事なんだから」

 

 ミキータはいつも通り陽気に笑って私のやりたいことを尊重する。

 

「――みんな……、あっ、ありがとう……。ぐすっ……。だい……すきだ……」

 

 気付いたときには頬を涙が通過していた。仲間たちの温かい言葉に私は涙を堪えることが出来なかったのだ。

 

 本当に私はいい仲間に恵まれた――。

 

「へへっ、ライアちゃんに告白されちまったな」

 

「言ってろ、アホコック」

 

 そんな私を見て上機嫌そうな仲間たち――。彼らには返しきれない恩が出来てしまった――。

 

「じゃあ、探すか! 新しい船を!」

 

「うん! 私もちょっと心当たりがあるからあたってみるよ」

 

 ルフィの言葉に私は頷く。そして、決心をする。

 何が何でも最高の船を手に入れようと――。

 

 そのために私はフランキーに会うことにした――。

 




ルフィとライアの喧嘩とかも最初は考えたんですけど、この作品のこの二人ってどう考えてもそんな雰囲気にはなりそうに無いんですよね。
ということで、ライアがアラバスタ王国やシロップ村などをメリー号で再び訪れる里帰り編をやります。
まぁ、タイミングはあそこしかないのでバレバレだと思いますが……。
ビビはそこで再登場します。このあたりは完全にオリジナルエピソードでやるつもりなので、ご期待ください!
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