ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう   作:ルピーの指輪

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いつも誤字報告や感想をありがとうございます!
まだまだ稚拙な文章で読みにくいところも多いかもしれませんが、読みやすく楽しめる作品になるように頑張ります。
それではよろしくお願いします!


CP9の実力

「――どうやら、その妙な道具でブルーノの指銃(シガン)嵐脚(ランキャク)を防いだみたいだな……。仕組みはわからんが……」

 

 ルッチは冷静に私の動作を観察しており、ダイアルによって攻撃を防いだことを一目で見抜く。 

 さすがはこの4人の中でズバ抜けた戦闘力を持つ男だ。

 

「肉体を極限まで鍛えた者が使えるという、六式……。実際に使う人を見るのは初めてだけど……。アイスバーグさんも、大変な連中に狙われたもんだ」

 

 私はブルーノの体術を体感してその威力の高さと精度に内心ヒヤリとしていた。

 

「ほう、六式を知っているとは博識じゃないか。ブルーノの技を受けきることが出来るだけでも大したものだと褒めてやろう。だが――! (ソル)ッ――! 指銃(シガン)――!」

 

 ルッチは目の前から消えたかと思うと、一瞬で間合いを詰めて、私の腹を簡単に貫く。

 くそっ、読めていても捌き切れなかった――。

 

「――ッ!? グハッ……!」

 

 かろうじて急所は外れたがダメージが大きくて、私はそのまま床に倒れてしまった。

 

「洞察力は非凡だが、対応できない速さの攻撃には脆い。その身体能力の低さは致命的だ」

 

 ルッチは倒れた私の頭を踏みつけながら、感情の無い無機質な声をかけてきた。

 

「ライア! くそっ! てめェッ!」

 

「人のこと気にしとる場合か。殺しに刃物などいらん」

 

 ゾロが私に気を取られた瞬間、今度はカクが彼に指銃(シガン)による連撃を加える。

 

「――ッ!? ぐっ……!」

 

 ゾロも不意討ちを受けて、あえなく倒れてしまった。

 

「ゾロ!」

 

「……この二人が簡単にやられるなんて」

 

 チョッパーとナミの顔が青ざめてしまう。もう少し何とかなると思ったんだけど……。

 ダイアルで受けるよりも、避ける方を優先すべきだった……。

 

「さて、妙なマネをされる前に殺しておくか」

 

「――確かに、私は君には敵わなかった……、でも……、時間は稼げたぞ……」

 

 ルッチは拳に力を込めて腕を振りあげた。しかし、私は()()()()がこちらに近づいて来ることに気が付いていた。

 

「貴様、何を言って――?」

 

「うおおおおおっ! ロビンはどこだァ!」

 

 ルッチがハッとした表情をしたとき、ルフィが壁を蹴破ってこの部屋に入ってきた。

 

「「ルフィ!」」

 

「ゾロ! ライア! お前らがどうして!?」

 

 ルフィは血を流して倒れている私たちを見て驚いた顔をする。

 これで全員揃ったか……。しかし、ルフィでもルッチの相手は――。

 

「ハァ……、ハァ……、アイスバーグさん! こりゃ、一体どうなってるんですか!?」

 

「パウリー! てめェ、なぜ逃げねェ!?」

 

 さらに怪我を負ったパウリーも部屋に入ってきて思いもよらない展開に目を疑う。

 そりゃあ、尊敬する人が同僚や知り合いに殺されかけている現場に入ってきたらそんな顔になる。

 

「おい! カリファ! ブルーノ! カク! ルッチ! 何でそんな格好をしてやがる!? それじゃまるでお前らが……!?」

 

「パウリー、実はおれたちは政府の諜報部員だ。突然で信じられねェなら、アイスバーグの顔でも――踏んでやろうか?」

 

 パウリーは怒りと悲しみが同居したような形相で怒鳴ると、ルッチは淡々と事実を告げた。

 それは彼にとっては受け入れられないくらいショックな事実だろう。

 

「ふざけんな! もう十分だ! ちくしょう! てめェ! ちゃんと喋れるんじゃねェか! “パイプ・ヒッチ・ナイブズ”ッ!」

 

「――指銃(シガン)

 

 ルッチはパウリーのナイフとロープを利用した技を簡単に避けて、彼の肩を指銃(シガン)で貫いた。

 

「秘密を知ったからには生かす理由はない」

 

「やめろ! お前ェ! ゴムゴムのォォォォ! ガトリングッ!」

 

 そして、パウリーにトドメを刺そうとするルッチに向かってルフィは連打を浴びせるが――。

 

「――鉄塊(テッカイ)!」

 

「全然、効かねェ!」

 

 鉄塊(テッカイ)を使用したルッチには全く攻撃が通じず、ルフィは焦りの表情を浮かべた。

 

「うっとうしい……。(ソル)……! 指銃(シガン)!」

 

 そして、ルッチはルフィに目にも留まらぬ攻撃を加える。

 

「ぐへぇッ!」

 

 やはりルッチは強く、ルフィをも簡単にあしらってしまった。

 ルフィの攻撃がまるで通用しないなんて……。

 

 パウリーを助けたルフィに対して、ルッチは疑問を呈するが、彼はルッチたちが裏切者だということを確かめて、アイスバーグの暗殺者たちを倒すことをパウリーと約束したと答える。

 

 そして――。

 

「ロビン! 何で、こんな奴らと一緒に居るんだ!? 出て行きたきゃ理由をちゃんと言え!」

 

 ルフィはロビンに出て行きたい理由を話すように大声で促した。

 

「私の願いを叶えるためよ! あなたたちと居たら決して叶わない願いを! ――それを成し遂げる為ならば! どんな犠牲も厭わない!」

 

 ロビンは固い意志を私たちに見せる。彼女は恐怖している。私たちを失うことを――。

 だから、世界政府に屈して話を聞いているのだ。

 私は悔しかった。弱くてロビンの信頼を勝ち取れないことが……。

 知っていても防げない無力さが……。

 

「気は確かか!? ニコ・ロビン! お前、自分が何を――!? ぶはっ――」

 

「黙ってなさい! 誰にも邪魔はさせない! それに、あなたに何か言われる筋合いはないわ!」

 

 アイスバーグがロビンを非難するような一言をかけようとするが、ロビンはハナハナの実の力でその口を封じる。

 

「おい! 何やってんだ! お前、本気かよ!?」

 

 ルフィはそんなロビンを見て悲しそうな声を出した。

 

 

 

「悪いがもうお前らにもここにも完全に興味がない。直に、すべての証拠を隠滅するためにここは炎に包まれ焼け落ちる。君たちは罪を被って焼け死ぬというわけだ」

 

 ルッチたち曰く、証拠隠滅のために放火をしてすべてを燃やし尽くす算段らしい。

 そして、火の手が上がるまでは後2分。

 

「最後に面白いものを見せてやろう」

 

 そう言ったルッチは、巨大な豹のような姿に変身した。

“ネコネコの実、モデル(レオパルド)”――これがルッチの能力であり、迫撃においてはゾオン系こそが最強だと自負した。

 

 その力は本物で、嵐脚(ランキャク)一発で建物を半壊させると、またたく間の内にルフィとゾロを蹂躙して彼らを吹き飛ばした。

 

 このままだと、私たちもトドメを刺されて――。

 こうなったら……。私はカバンから1つのダイアルを取り出した。

 

「さて、あとはお前たちだが……。ん? この匂いは……、ガスか!?」

 

 ルッチは鼻も利くらしく、私が匂貝(フレイバーダイアル)から放ったニオイを敏感に察知した。

 

「ルフィたちの敵討ちだ! こうなったら、お前らだけでも! 道連れにしてやる!」

 

 私はマッチを片手にルッチに向かって凄んだ。

 

「ライア!? あなた! 何を考えてるの!?」

 

 後ろに立っているナミは驚いた声を出して、私の肩を揺らす。

 

「――チッ! イカれてる……! 自殺なら勝手にしろ。 ブルーノッ!」

 

 ルッチがブルーノに指示を出すと、彼はドアドアの実の能力で壁にドアを作ってそこからCP9たちは出ていった。

 

「ふぅ、逃げてくれたか……」

 

「ふぅ……、じゃないわよ! ガスなんか使ったら――」

 

「使ってないよ。匂貝(フレイバーダイアル)を使って似たような香りを付けた気体を出しただけだ。引火の可能性はほとんどない。だけど、急いで脱出しなきゃな。ナミはアイスバーグさんと、パウリーの縄を解いてやってくれ。私はチョッパーを助ける」

 

 そう、私はもちろんヤケになって道連れにしようなんて思ってない。

 何とかしてCP9を遠ざけたかっただけだ。これからみんなで脱出するために――。

 

「あなた、ペテン師みたいになってきたわね」

 

「力が足りないんだ。生き残るためには何でもするさ。とにかく急ごう」

 

 私たちは手早く脱出の準備を整え、窓の外で待機していたミキータの乗っている気球に乗って燃え上がるガレーラカンパニーの本社から脱出した。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「まずは……、ンマー、申し訳なかった……。お前たちに妙な濡れ衣をきせた。誤解は後でといておく……」

 

 無事に安全なところに気球は着地して、チョッパーの応急処置を終えたアイスバーグは、私たちにまずは謝罪をした。

 

 そして、彼は語る。ロビンがなぜ私たちの元から居なくなろうとしたのか……。

 

 それはCP9が私たち“麦わらの一味”に対してバスターコールをかける権利が与えられたからだった。

 バスターコールとは、海軍“本部”中将5人と軍艦10隻を緊急招集してすべてを消し去る強硬手段。

 

 それを聞いたロビンは世界政府に捕まることを選んだ。たとえ、古代兵器が復活して世界中の人間が危機に陥ることになったとしても、私たち仲間の命を優先したのである。

 そう、私たち7人を無事に出航させることこそ、ロビンのどうしてもやりたいことだったのだ。

 

「――おれの方の兵器の設計図が奪われそうな今……、あの女を責める権利はねェが……!」

 

 ロビンの真相を話したアイスバーグは顔を歪めて悔しそうな表情をした。

 

「はぁ……、良かった。ロビンはじゃあ、私たちを裏切ったんじゃなかったんだ」

 

 その話を聞いてナミはホッとした表情をして、喜ぶ。

 

「おれたちを嫌いになったんじゃなかったんだな!」

 

 そして、チョッパーもロビンの真意を知って嬉しそうな顔をする。

 

「キャハハ……、何よ! カッコつけすぎじゃない。気に入らないわね!」

 

 ミキータは悪態をつきながらも顔はほころんでいた。

 

「なら、やる事は1つだ! さっきは不覚をとったが……!」

 

 私は立ち上がり、拳を握って動けることを確認すると、顔を2回軽く叩いた。よし、まだ私は戦える。

 

「ええ、早くみんなに伝えましょ。もう迷わない。助けても良いんだってわかったときのあいつらの力に限度なんてないんだから!」

 

 ナミは元気を取り戻し、私の背中を叩く。

 

「そうだね。ルフィとゾロの大まかな場所なら分かる。どういうわけか彼らは動けないみたいだ。この町の地図に印をつけるから、ナミとチョッパーは彼らと合流してくれ」

 

 私はナミに地図を見せながら、ルフィたちとの合流を頼んだ。

 ここからは別行動をする。なぜなら、CP9はまだ――。

 

「えっ? あなたとミキータはどうするの?」

 

「ロビンとフランキーを連行して海列車に乗ろうとしているCP9を追う。どうやら、サンジも海列車の駅の側にいるみたいなんだ」

 

 ナミの質問に私は答えた。

 そう、CP9はまだ出発していない。私はミキータと共にサンジと合流して海列車に侵入するつもりでいた。

 

「フランキーって、あんたが新しい船を作るように頼んだ男でしょ? キャハハ……、なんで、そいつも捕まってるの?」

 

 フランキーの名前を出すとミキータは不思議そうな顔をする。そういや、彼女はフランキーのことは何も知らなかったな……。

 

「おっ、お前ら、フランキーに船を!? いや、そんなことはどうでもいい。フランキーは古代兵器の設計図を持っているんだ。奴らに奪われたら世界は――!」

 

 フランキーが船を作る話を聞いてアイスバーグは驚いた顔をしたが、それよりも古代兵器の設計図の方を気にしていた。

 

「大丈夫だよ。アイスバーグさん。ロビンもフランキーも取り返す! 必ずね」

 

「あら、ライア。フランキーって奴もそんなに大事なの?」

 

 私がアイスバーグに声をかけると、ナミは素直な疑問を口にする。

 

「うん。船の代金、2億ベリー前金で払っちゃったし……」

 

「…………えっ?」

 

 ナミに2億ベリーを支払った話をすると彼女は絶句した。

 なんか、目が点になっているな……。でも、必要なことだったんだ。最強の船を作るのに……。

 

「キャハハッ! じゃあ、フランキーって奴が死んじゃったら2億ベリー、丸損ねー」

 

「――ライア! 絶対に! ロビンと2億ベリー、じゃなかった! そのフランキーって奴も取り返せるように頑張りなさい! 私たちも後から必ず追いかける!」

 

 ミキータの笑い声と共にナミは私の肩をグラグラと揺らしながら、私を激励する。

 もちろん、エニエス・ロビーに行く前に決着をつけるつもりだ。

 

「任せてくれ! 行くぞ! ミキータ! アイスバーグさん、ヤガラを貸してくれ!」

 

「ああ、そいつは構わねェ……。パウリー! こいつらに一番速いヤガラを出してくれ!」

 

 アイスバーグはパウリーにヤガラというボートを引く海獣を出すように指示を出した。

 

「とっとと()()()を連れて帰りましょう!」

 

 ミキータが初めて()()()を名前で呼んだことを妙に嬉しく感じながら、私は海列車の駅に向かった。ガレーラカンパニーに借りたヤガラを走らせて……。

 

 

 

 

『アクア・ラグナ接近中につき、予定を繰り上げ、まもなく出航します』

 

「クソ……、もう出ちまうのか……」

 

 海列車の出航が近付くアナウンスを聞いて焦った顔をしていたサンジを私とミキータが見つけた。

 

「サンジ! よかった、間に合ったよ」

 

「ライアちゃんに、ミキータちゃんじゃないか。他のみんなは!?」

 

 私がサンジに声をかけると、彼は当然他のみんなの心配をする。

 説明はしたいけど、今優先することは――。

 

「話は後にしましょう。とにかく、手遅れになる前に海列車に!」

 

「おっ、おう。わかった。とにかく、おれたちでロビンちゃんを追いかければいいんだな。じゃあ、ナミさんたちにコイツを残しておこう」

 

 ミキータがサンジを急かすと、彼は手紙と子電伝虫を残して私たちと共に海列車に向かおうと足を向けた。

 

「小型の電伝虫か。さすがに準備がいい。よし、もう最終便が出る。行こう!」

 

 私たちは出航ギリギリで最後尾の外に乗り込み、海列車は出航した。

 何とか、間に合った。しかし、問題はここからだ……。

 

 

 

「しかし、ここはめちゃめちゃ濡れるなァ。一服も出来ねェや」

 

 サンジは嵐の中でタバコに火をつけようとしたが上手くいかないみたいだ。

 

「どうやって潜入する? 中にいるヤツって、結構強いんでしょう?」

 

「ここから、奥に向かうにつれて強い奴が待ち構えてるみたいだ。そうだな――」

 

 私はロビンがいる最前の車両までの道筋に待ち構えてる戦力を分析した。

 なるほど、CP9以外にも曲者が乗っているみたいだ。

 

 しかし、どうしようかと思案する時間はなかった。

 最後尾の車両に入るための扉が突然開いたのだ。

 

「――いやァ、外は凄い嵐……」

 

「「あっ!」」

 

 政府関係者っぽいスーツの男と私たちの目が合ってしまう。

 

「1万キロフルスイング!」

「――必殺ッッ! 爆風彗星ッッ!」

首肉(コリエ)シュートォ!」

 

 その刹那、私たちは同時に必殺技をその男に繰り出した。

 

「ブはァ!!!」

 

 男は何人かを巻き添えにしながら、信じられない勢いで吹き飛んでいった。

 ちょっと過剰防衛だったような気がする。

 

「「誰だ! 貴様ら!」」

 

 当然、車両内の政府関係者の連中に気付かれて、一斉に連中はこちらに銃を向けた。

 

「あーあ、やっちゃった」

「キャハッ、やっちゃったわね」

「やっちまったもんは、仕方ねェ……、レディたち、下がってな。こいつらはおれが」

 

 サンジは私たちを後ろに下げて、美味そうにタバコを吸って煙を吐く――。

 海列車での戦いが開始された――。

 

 




多少強引でしたが、海列車にもサンジと共に乗っていきます。
しかし、エニエス・ロビーに行かなくてはならないので、どうしても原作からそこまで逸脱出来ないところがこのあたりの難しいところですね。
何とか退屈な展開にならないように努力します。

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