ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう   作:ルピーの指輪

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いつも誤字報告や感想をありがとうございます!
ミキータの重さの変化で物理的にどうなるのとか、高校で物理も選択してなかったような作者にはさっぱりなので、ざっくりとした感じでいかせてもらいます。
それでは、よろしくお願いします!


君が大切だから

「し、侵入者だ!」

「たった一人の優男、ネロさんの手を煩わせずとも!」

 

 第4車両のワンゼをミキータに任せて、第3車両に入った私は、またもや政府関係者と思しき男たちと対峙する。

 彼らは銃を私に向けて構えた。

 

「良いのかい? 素人がこんな狭いところで銃なんて使ったら――」

 

「「がハッ!」」

 

 そして、彼らが狭い車両内で一斉に発砲して、互いが互いを傷付ける。

 まったく、大人しくしておけば怪我しないで済むのに……。

 

「ほら、言わんこっちゃない。大人しく寝てたほうが得だよ」

 

 そう言いながら、私は得意の早撃ちで次々と男たちを睡眠弾で眠らせていった。

 さて、これでこの車両に残るのは一人だ……。

 

「ほう、なかなかやるっしょっ! 懸賞金5600万ベリー、レディキラー・ライア」

 

 ミホークに似たファッションの男が私に話しかけてきた。

 この男がここの車両を取り仕切ってるのか……。

 

「黙って味方がやられるところを大人しく見てたけど、それは職務怠慢じゃあないのかい?」

 

「シャウッ! 構わないっしょッ! 雑魚なんか居ない方が集中出来る。むしろおれが殺したいくらいっしょッ!」

 

 私の問いに当然というような口調で答える。

 こいつ……、任務以外はどうでもいいと思っているな……。

 

「そうか。腕に随分と自信がありそうだね。一応、名前を聞いておこう」

 

 私は目の前の腕自慢に名前を尋ねた。

 

「“四式”使い、CP9新入り――“海イタチのネロ”。シャウッ!」

 

 目の前の男はネロと名乗った。CP9の新入り? ああ、そんな人居たっけ……。

 “四式”ということは……、六式のうちの四つしか極めてないってことだよな……。

 

 何が出来て何が出来ないか見極めたいところだ……。

 

「ふーん、“四式”か。じゃあ、君の後ろにいるルッチとは違うんだ」

 

 私は視線をネロの後ろにやって、彼にそう声をかける。

 

「えっ、ルッチさん? ――ぐはっ! 卑怯だぞ! てめェ」

 

 彼はルッチの名に釣られて後ろを振り向いた。

 

「甘いっ……! 海賊を相手に卑怯って……、“正義の殺し屋”が聞いて呆れる」

 

 私はネロの抗議にそう返した。相手をナメてかかるような態度はいただけない。

 

「――くそっ、このおれの強さ見せてやるっしょっ! シャウッ! ――“(ソル)”ッ!」

 

 怒りの形相を浮かべたネロは“(ソル)”による高速移動で接近してきた。

 

「――ッ!? 狭い車両では、素早い動きも制限される! 故に――!」

 

「“嵐脚(ランキャク)”ッ!」

斬撃貝(アックスダイアル)ッ!」

 

 私は見聞色の覇気を集中させて、ネロの“嵐脚(ランキャク)”を左手の手袋に仕込ませた斬撃貝(アックスダイアル)で吸収する。

 ちなみに、右手の手袋には衝撃貝(インパクトダイアル)を仕込んでいる。

 ふぅ、これは2回目だけど上手く行ったな。

 

「――なっ!? なぜ斬れん!?」

 

 ネロは自分の技が消されたことに驚愕していた。

 また、隙が生まれたな……。

 

「――じゃあ、君の“嵐脚(ランキャク)”とやらは返すよ! ほらッ!」

 

「シャウッ――!? お、おれの“嵐脚(ランキャク)”の斬撃がお前の手から――」

 

 私が斬撃貝(アックスダイアル)から斬撃を繰り出すと、ネロは腹を切り裂かれ苦悶の表情を顕にした。

 これだけ表情に出てると、逆に演技なのではと邪推してしまいそうだ。

 

「驚いてる暇はないよ!!」

 

「くっ、“紙絵(カミエ)”」

 

 私はさらに彼に向かって弾丸を放つが彼はゆらゆらとした動きでそれを躱した。

 これは、“紙絵(カミエ)”という回避技だ……。

 

「ゆらゆらと避けるね……。これは当てにくいな……。だが……!」

 

「む、無駄っしょっ! このおれの紙絵(カミエ)は完璧な技。当てることなど出来ん! シャウッ!」

 

 絶え間なく銃弾を撃ち続けると、彼は少しだけ焦りの表情を浮かべ、かなりギリギリで弾丸を躱し、殴りかかってきた。

 うーむ……。これはおそらく……。

 

「――鉛玉を律儀に躱すところを見ると、どうやら、“鉄塊(テッカイ)”は出来ないようだね。となると、残る1つは“月歩(ゲッポウ)”か“指銃(シガン)”だけど……。普通に殴ってきたところを見ると“月歩(ゲッポウ)”じゃないかと予想してる」

 

「ううっ、き、貴様! なぜ……!?」

 

 

 私がネロの拳を躱して持論を展開すると、彼は素直に正解だと口にする。

 

「空を歩くことが出来るって凄いけど、車両内(ここ)ではあまり意味がないよね? それなら実質“三式”使いだな。そして、“嵐脚(ランキャク)”も封じられると――これはもう、“二式”かな?」

 

 そして、さらにわざとらしく彼を煽るようなことをつぶやいてみた。

 挑発に乗ってくれれば良いけど……。

 

「うるせェ! お前のその手が追いつかなかったら、“嵐脚(ランキャク)”は通じるっしょッ! そんなペテンなんかに引っかからん! “(ソル)”ッ!」

 

 ネロは私の言葉を聞いて、顔を赤くして怒り出し、“(ソル)”を使って狭い空間を縦横無尽に駆け巡り撹乱しようとしてきた。

 

「ふははははっ! やはりこの速度にはついていけないみたいっしょっ! “嵐脚(ランキャク)”ッ!」

 

「ぐハッ――!」

 

 そして、ネロは“嵐脚(ランキャク)”を放ち私の体は斬り刻まれる。

 やっぱり、かなり痛いな。まともに技を食らうと……。

 

「ほら見ろ! ――ッ!? 何だこりゃあ!」

 

 上機嫌そうに口角を吊り上げるネロだったが、自分の体が粘着性の網で捕らえられていることに気付いて絶叫した。

 一撃を受ける覚悟さえ出来れば、相手に当てることなんてわけがない。

 ルッチが相手ならその一撃で終わりだから無理だけど……。

 

瑠璃色の銃弾(スパイダーブレット)……。攻撃しながら、紙絵(カミエ)は使えないだろ? 人間、使えないって言われたら使おうって頑張ろうとしてみるものさ。君は“嵐脚(ランキャク)”を使ったんじゃない。使()()()()()んだ。来ると分かっている攻撃なんて、カウンターを狙えと言っているようなものだよ」

 

 私はネロが“嵐脚(ランキャク)”で勝負をかけてくるように誘導した。

 より確実に彼の動きを限定するために。

 

 そして、ネロの両膝を銃弾で撃ち抜く。余計なことをさせないために。

 

「シャウッ――! あっ、足がァ!」

 

 彼は叫び声を上げながらもがいて苦しそうな声を出す。

 

「“嵐脚(ランキャク)”で網を切ろうなんてさせないさ。君が鉄塊(テッカイ)を使えれば、この鉛玉も効かなかったかもしれないね。――必殺ッッッ! 鉛星ッッッ!」

 

「――ッ!?」

 

 最後のトドメに私がネロの腹を撃ち抜くと、彼は白目をむいて気絶した。

 もっと広い空間で戦っていたら苦戦したかもしれない。例えば車両の上とかだったら、“月歩(ゲッポウ)”も使えただろうし……。

 

 さて、これで第2車両へと行きたいところだが、流石にCP9が何人もいるところに飛び込むのもなぁ……。

 

「――やはり上から行くか……」

 

 私は窓から車両の上までよじ登り、第2車両を通り越して第1車両に向かった。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「そ、狙撃手さん! どうして!? なんでここに居るの?」

 

 ロビンが乗ってる座席の窓を叩くと、心底驚いた顔の彼女が窓を開けてくれた。

 声が微かに震えていたのは、あんな別れ方をしたからだろうか?

 

「君を助けに来たに決まってるだろ? 事情はアイスバーグさんに聞いたよ。さぁ、ここから急いで抜け出そう。ルフィたちもこっちに向かってるんだ」

 

 私はここに来た経緯を手短に話す。ロビンの正面に座って……。

 

「そう……。やっぱり、あの人も生きていたのね。……帰って! 私は別に助けて欲しくなんて――」

 

 ロビンは徐々に興奮して声を大きくしていったので、私は彼女の唇に指を当てて言葉を遮った。

 

「しっ――、静かに……。隣の車両の連中に気付かれると厄介だ……。ロビン、君の意志は知ってるよ。だけど、私は君に居て欲しいんだ。どんな事情があってもね」

 

 私は彼女が様々な覚悟をして政府に捕まったことを知っている。そして、生きることを諦めたことも……。

 だけど、私は認めたくなかった。彼女が犠牲になろうとしていることを……。

 

「――ッ!?」

 

「大丈夫だよ。みんな世界を敵に回す覚悟は出来ている。それで君が帰ってきてくれるんだったら――安いものだ」

 

 まっすぐに彼女を見て、私はルフィたちも同じ覚悟でこちらに向かっていることを話す。

 誰一人として、このまま彼女を1人にしようとなんて思っていない。

 

「みんなは分かってないのよ。この世界の闇の恐ろしさを……。“バスターコール”の恐怖を……」

 

 しかし、ロビンは首を横に振る。私たちは何も分かっていないと言いながら……。

 

()()が君の心を縛っているんだね……。わかった……」

 

「――狙撃手さん?」

 

 私がロビンの言葉に頷いて立ち上がると、彼女は不思議そうな顔をした。

 

「じゃあ、少しだけ待ってて。君の心を縛ってる連中を全部倒す。そうすれば、君は解放されるだろう?」

 

 ロビンの心をここまで壊した連中がだんだん許せなくなり、私は闘争心を燃やす。

 なんで、彼女がこんな顔をさせられなきゃいけないんだ。

 

「ば、馬鹿なことを! CP9を相手にするつもりなの!? さっき見たでしょ? 彼らの力を……」

 

 ロビンはそんな私の手を掴んで、ちょっと前にボコボコにやられた相手に挑むのはあり得ないというようなことを言ってきた。

 それは正論だ。私はルッチには手も足も出ずにやられてるし、他のCP9にだって敵うかどうかわからない。

 

「私は物分かりが悪いんだ。――そういえば、前に私の手のことを褒めてくれたけど、私もロビンの手は好きだよ。ひんやりしてるけど、温かさが伝わるような不思議な手だね……」

 

 ロビンに握られた手から伝わるのは彼女の優しさ――。

 私は体温の低い彼女から伝わる温かさを感じていた。

 

「――そんなこと、今言うことじゃ……」

 

 すると、ロビンは少しだけ掴む手の力を緩めた。

 

「君が大切なのさ……」

 

 私は彼女の目をしっかりと見つめて、両手でロビンの右手を握りしめてそう伝えた。

 

「――ッ!?」

 

 するとロビンの頬が少しだけ紅潮して彼女は目を逸らす。

 ちょっと気持ちを伝えるのに失敗しちゃったかな?

 だけど――。

 

「寂しいことをしないでよ。君が私たちのために命を張ったのと同じで、私たちだって君のためなら命くらい幾らでも張れるんだ」

 

 私は元よりここにいるサンジもミキータも、こっちに向かっているルフィもゾロもナミもチョッパーも……、みんな彼女の為なら命懸けで戦う。

 

「でも、私は――」

「おっと、タイムオーバーか。そろそろ行かなきゃな」

 

 私は第2車両にサンジたちが全員たどり着いたことを感知した。

 

「本当に彼らと戦うつもり? 何のために私が……」

 

「うーん。じゃあとりあえず、君を掻っ攫ってからにするか……」

 

 ロビンがしょんぼりしたような顔をするので、私は意を決して彼女を抱きかかえた。

 

「えっ? キャッ!」

 

「あははっ、可愛い声も出すんだね。初めて聞いたよ」

 

 いきなり抱きかかえられたロビンのリアクションが新鮮で私はついつい笑ってしまう。

 

「――バカなことを言ってないで……。降ろしなさい!」

 

 

 途中で役人風の男を蹴り倒して、私達は第2車両に入った。

 

「うぉっ! ロビンちゃん! さすがライアちゃんだ。きっちり救出してたか!」

 

 何やらすでにルッチとひと悶着していたらしいサンジがニコリと笑ってこちらを見る。

 

「なんだ、そっちにも侵入者が居たのか? いい加減、諦めたらどうだ? そいつらには話したが、お前が抱えてる女は死んだほうがいい女だぞ」

 

 ルッチも私に気付いてそんな言葉をかけてきた。

 この男の言葉はいちいち人を苛つかせる……。

 

「うるせェ! まだ言うか! クソがッ!」

 

「サンジ、とりあえずこいつらをぶっ倒して、さっさと帰ろう」

 

 私とサンジは殺気をルッチに向ける。仲間を侮辱されて、私たちも黙ってるわけにはいかない。

 

「ふん、先ほどの戦いで力の差を感じられないほど鈍いやつだとは、な。悪いがおれたちに銃弾は効かない……!」

 

「そいつは、どうかな?」

 

 銃口を向けても余裕の表情を崩さないルッチに向かって私は引き金を引いた。

 銃口はその瞬間床に向けていたが……。

 

 すると、辺り一面が煙に覆われる。

 

「――なっ、煙玉か! 狡い手を!?」

 

 第2車両は濃い煙に覆われて、CP9たちの視界が奪われる。

 私はその瞬間に第2車両から第3車両まで一直線に駆け抜ける。

 

「先ほどの戦いで私が狡い手を使うような奴だって分からなかったのかい? 鈍いね〜、ロブ・ルッチくん」

 

「「よっしゃー!」」

 

 私がルッチに対してそう言葉をかけると、サンジとフランキーは喜びの声を上げる。

 とりあえず、ここで無駄に戦うよりは、ルフィたちと合流してこいつらを叩いたほうが勝算はあるだろう。

 

 さっきまで戦う気満々だったけど、結局理を優先してしまったな……。まぁ、感情的になって動いてもロクなことがないから、仕方ない……。

 

「――くっ!」

 

「キャハハッ! じゃあ作戦通りに車両を切り離すわよ〜!」

 

 悔しがるルッチの声を聞きながら、ミキータが第3車両を切り離し、我々はロビンを奪還した――。

 

 ロビンがこのまま大人しく私たちに付いてきてくれれば良いけど……。

 腕の中にいる彼女を見ながら、私は今後の動きを考えていた――。

 




ネロは車両の上で戦った方が強いタイプなので、ライアが圧勝したからといって、フランキーより上の実力とかそういう感じにはなりません。
というわけで、いよいよエニエス・ロビーが近づいてきました。
ここから、盛り上げられるように頑張ります!

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