ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう   作:ルピーの指輪

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今回からエニエス・ロビーに突入します。
楽しんでいただけると嬉しいです!


いざエニエス・ロビーへ

「ダメ……! 私――やっぱり、あなたに死んで欲しくない――!」

 

「ロビン! どうして……! フランキーがせっかく……」

 

 車両を切り離したまでは良かったが、何と切り離した車両をカリファがムチで捕らえて、ブルーノが引っ張って引き寄せた。

 

 私たちはCP9と戦闘をしようと身構えたが、フランキーが身を挺して第2車両へ飛び込み、第3車両と完全に分断した。

 

 フランキーは自らを犠牲にして私たちを助けてくれたのだ……。

 

 しかし、ロビンは急にハッとした表情をして、CP9のところに戻ると言い出したのである。

 

「ロビンちゃん! バスターコールが何だってんだ! おれたちが絶対に何とかしてやる!」

 

 それを聞いたサンジは彼女を説得しようと声をかける。だが――。

 

「そのバスターコールが問題なのだ」

 

「て、てめェはッ!」

 

 サンジの背後にブルーノが突然現れた。

 

「“嵐脚(ランキャク)”ッ!」

 

「――ぐァッ!」

 

 ブルーノの不意討ちにサンジは背中から血を流して倒れる。

 あの、エアドアはやはり厄介だな……。

 

「さァ帰るぞ……、さもなくば、そこのレディキラーも殺していく」

 

「何だとッ!? やれるもんなら、やってみろ! ――なっ、ロビンッ!」

 

 私がブルーノの言葉に反応して銃を向けようとすると、ロビンが私の体から手を生やして拘束する――。

 

「――クラッチ!」

 

「――かハッ!」

 

 そして、背骨を反り返させ極める関節技によって私は口から泡を吹いて倒れてしまった――。

 

「ごめんなさい……。あなたの言葉……、嬉しかった……。胸が高鳴って、付いていきたいと思ってしまうくらい……。でも、それと同じくらい……、あなたの命が無くなることが怖かった……」

 

 ロビンは悲しそうな声をこぼしながらブルーノの開けたエアドアに入っていく。

 そんな……、どうして……。

 

「キャハハ! バッカじゃないの!?」

 

「ミス・バレンタイン……?」

 

 ミキータが大声でロビンに向かって罵倒すると彼女は意外そうな顔でミキータを見た。

 

「私たちがどういう気持ちでここに来たのか、まったく理解してないわね! あんたはこいつらの何を見てきたのよ! ライアもサンジくんも――それに船長だって! 絶対にあんたを勝手にさせないわ! 待っていなさい!」

 

 ミキータは怒っていた。そして、どこまでも優しい声をロビンに向かってかけていた――。

 

「“嵐脚(ランキャク)”ッ!」

 

「キャッ! くそっ! ホントに覚えてなさいよ!」

 

 ブルーノの嵐脚(ランキャク)によってミキータもまた倒されてしまったが、彼女の目はまだギラギラと輝いて、ロビンの方を向いている。

 

「ロビンちゃん……!」

 

「無駄だ……。ニコ・ロビンは協定を破らない……」

 

 そして、サンジがよろよろと起き上がろうとしていると、ブルーノの暗く低い声が私たちに伝える。ロビンは戻ってこないと……。

 

「なんでそう言える!?」

 

 サンジの問いにブルーノは説明した。ロビンはバスターコールによって滅ぼされた島の生き残りということ……。

 そして、それが大きなトラウマとなっており、仲間にその恐怖が向けられれば、CP9には逆らえなくなるということを……。

 

 

「てめェら、どこまで腐ってやがる! 畜生!!」

 

 サンジの蹴りは虚しく空を切り、ロビンは再びCP9に連れ去られてしまった。

 

 私たちは悔しさを抱えたまま、後続より近づいてくるルフィたちと合流することになった――。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「――というわけで、ロビンちゃんは“CP9”に何やら過去の“根っこ”を掴まれちまってる。別に奪い返せなかった言い訳をしてェんじゃねェが、これから敵地に乗り込んだからといって、ロビンちゃんがおれらに身を委ねてくれるかは、わかんねェ」

 

 サンジは海列車での顛末をルフィたちに説明した。

 ロビンの闇は思ったよりも深かった。私では彼女の闇を振り払うことは出来ないのか……。

 

「んなこと、知るかァ! 絶対に許さん! ――ロビンめーっ!」

 

 サンジの説明を聞いたルフィは何故かロビンに向かって怒りを顕にする。

 

「何でよッ!」

 

「そうじゃねェか! 何で、おれたちが助けるのを嫌がるんだ!」

 

 ルフィの言葉にツッコミを入れるナミに対して、彼はロビンのことが理解できないというようなことを言った。

 

「そ、それは、私たちのことを考えて苦しんで――」

 

「そんなことは関係ねェ! ロビンはこのままだと殺される! 死にてェわけがねェんだから助けるんだ!」

 

 ナミはルフィの迫力に押され気味だったが、話はシンプルだ。

 私たちのやることは変わらない。何としてでもロビンを助ける。それだけだ――。

 

 

「ちょっと、お前らこれを見ろ。これから作戦を話すぞ」

 

 線路の整備で“エニエス・ロビー”に入ったことのあるパウリーが地図を描いてくれ、これからのついての話し合いが始まる。

 

 “エニエス・ロビー”は海に開いた巨大な滝の上にある。

 そして、“正門”から“正義の門”までの直線でロビンとフランキーを取り返さないとならないらしい。

 “司法の塔”の背後にある“正義の門”を通り過ぎてしまったら、手出しは出来ない状況になるようだ。

 

 そして、決まった作戦はこんな感じだ。

 最初に、ガレーラカンパニーの船大工たちとフランキー一家が乗り込んで、“正門”と、“本島前門”をこじあける。

 

 そして私たちは、“ロケットマン”で5分待機した後に“ロケットマン”ごと本島に突っ込み中に入る。

 

「“CP9”を倒せるのは麦わらさんたちだけだ。他の敵には構わないで先に進んで“CP9”だけに集中してくれ!」

 

 敵は数千人はいる。そして、こちらは60人ちょっと……。

 ならば、頭を潰すのが定石。だから、彼らは私たちにCP9に集中すべきだと言った。

 

「ああ、わかった!!」

 

 ルフィは彼らの立てた作戦を聞いて力強く頷く。

 さァ、いよいよ正義の門が見えてきたぞ。

 

 

 

「――えっ? なんか、ルフィ先に行っちゃったみたいなんだけど……」

 

 チョッパーのルフィは何処だという一言を聞いて、私が気配を探ると彼は一足先にエニエス・ロビーに入っているみたいだった。

 

「無駄だった……」

「あいつ、“わかった”って言ってたぞ」

「キャハハ、船長らしいわね〜。5分なんて待てないに決まってるじゃない」

「ああ、確実にムリだったな」

 

 ナミたちはルフィだから仕方ないみたいな雰囲気を醸し出していた……。

 勘が鋭いから、こういうノリも正解のパターンは多いんだけど……。

 やっぱり1人にするのは心配だな。ルフィはこっちの切り札なんだし、ルッチと戦うまでは出来るだけ温存したい。

 

「ルフィ1人だと心配だ。私も彼を追いかけるとしよう。ミキータ! 魔法少女(マジシャンガール)モードの()()()を使おう」

 

 私はミキータと共にルフィを追うことにした。

 完成版(パーフェクト)キロキロパウンドの魔法少女(マジシャンガール)モードは二人乗りを想定している。

 私が後ろで(ダイアル)を使うことで、さらに速度を高めることが出来るのだ。それを、ターボ機能と私は名付けた。

 

「仕方ないわね。まぁ、()()を使えば船長に追いつけると思うけど……」

 

 ミキータは完成版(パーフェクト)キロキロパウンドを取り出して、ニコリと微笑む。

 

「ライア、おれにも獲物を残しとけよ!」

 

 ゾロはそんな様子を見て、背中を遠慮なくバシッと叩いた。

 

「ええ〜っ! ライアの姉さんまで行っちまうんですか〜!!」

 

 すると、フランキー一家の代表みたいな男がびっくりした顔で私に声をかける。

 いや、なんていうか、その……。

 

「姉さんって……。照れる……」

 

 私は“姉さん”って言葉の響きが気に入ってついつい、そんなことを口走ってしまった。

 

「言うとる場合か! はぁ、せいぜいあのバカを抑止しなさい」

 

 ナミは私の額を小突いてルフィを抑えるように指示を出してきた。

 うーん。ルフィの抑止ねぇ……。

 

「キャハハ、ナミちゃん。この子、結構喧嘩っ早いの知ってるでしょ?」

 

 私の心を覗き見したのか分からないが、ミキータは私もやる気満々だということをナミに伝えた。

 とりあえず、出来るだけ彼を援護しておきたいところだ……。

 

「うおおっ! それが空飛ぶハンマーか! かっこいいなァ!」

 

 チョッパーが海列車の外でミキータと私を乗せて浮いているハンマーを見て、興奮気味の声を出す。

 

 

「チョッパーちゃんも後で乗せてあげるわね!」

 

「じゃあ、行ってくる。――衝撃(インパクト)ッ!!」

 

 そして、私が水面に腕を当てて、衝撃貝(インパクトダイアル)を発動させ、さらに風貝(ブレスダイアル)を併用すると、ミキータの完成版(パーフェクト)キロキロパウンドは猛スピードでエニエス・ロビーの“正門”を超えて中に侵入し、さらに“本島前門”を空から簡単に飛び越えた――。

 

 

 

「おう! ライア! ミキータ! すっげェカッコいい乗り物じゃねェか!」

 

「まったく。1人で突っ走るんだもん。困った船長だ」

 

 とんでもない人数に取り囲まれたルフィの元に私とミキータは降り立った。

 この人数を1人で相手にするつもりだったのか? いや、漫画だと相手にしたんだっけ?

 

「ははっ……、おい、“麦わらのルフィ”、そして“レディキラー・ライア”、“運び屋ミキータ”……、お前ら、たったの3人だけか?」

 

「エニエス・ロビーの兵力は1万だぞ!」

 

 こちらの人数が少ないと見ると口々に兵士たちは私たちを嘲った。

 これだけの人数差があったら、余裕な態度も取るか……。

 

「ねぇ、ライア……。わ、私たち、ヤバイところに入ってきたんじゃない? キャハッ……」

 

 あまりの人数の多さにミキータは声を震わせる。確かに普通なら勝ち目のない戦いだろうな……。

 

「道を開けろ!!」

 

「言っても聞かないなら、まかり通らせてもらうだけだ……!」

 

 ルフィは臨戦態勢を整えて、私も武器を用意する。

 

「うおおおおっ!」

 

「うわぁ!」

「ぎゃっ!」

「げフッ!」

 

 ルフィが次々と兵士たちを蹴散らしながら、走っていく。

 

「さて、もうちょっと高度を上げようか? ミキータ」

 

「キャハハ、任せなさい! それっ!」

 

 私はミキータに高く上がるように指示を出して、空中から兵士たちを眺める。

 

「さて、エニエス・ロビーの皆さん……、空中からの狙撃にお気をつけください……!」

 

 そして、空から得意の早撃ちで次々と兵士たちを倒していった。

 

「がハッ!」

「――そっ、空から! うぶッ!」

「うゲッ!」

 

 兵士たちは空中に意識が削がれて、ルフィに対する注意が散漫になる。

 

「ゴムゴムのォォォォ! 暴風雨(ストーム)ッッッ!!」

 

「「ぐぁァァァァ!!」」

 

 まさに、一騎当千の如き力を発揮するルフィは瞬く間に100人規模で兵士たちを蹴散らす。

 もちろん、敵の数はとんでもない数なのだが、このような立ち振る舞いをされては、彼らの士気も上がらない。

 まさにルフィのペースに呑まれてしまっているのである。

 

「さて、上からだとこういう事も出来るぞ……。――必殺ッッッ! 火薬流星群ッッ!!」

 

「「ぎゃあああああっ!!」」

 

 私は大量の火薬玉を兵士たちに向かって落として、敵の人数を減らしていった。

 このまま、空を移動できれば楽なんだけど……。

 

「――ッ!? ライア! そろそろ内蔵されてる、風貝(ブレスダイアル)のエネルギー残量が……」

 

 しばらく空中から攻撃しながらルフィの援護をしていると、ミキータがキロキロパウンドに内蔵した風貝(ブレスダイアル)の風が切れかけていると伝えてくれた。

 

「よし、少しは温存しておこう。私たちも地上で戦うとしようか」

 

 ということで、私とミキータはルフィの側に降りて地上で戦うことにした。

 

「キャハッ……! じゃあ、私もそろそろ暴れるわよ! 1万キロフルスイング・(ファイア)ッッ!」

 

「「うげえええええっ!」」

 

 ミキータは完成版(パーフェクト)キロキロパウンドで近くの兵士を吹き飛ばしながら、炎をさらに撒き散らす。

 近距離と中距離攻撃を同時に出来るのはこういう状況だと強いな――。

 

 私たち3人は司法の塔を目指して敵を蹂躙しながら前へと進んでいった。

 

「ルフィ! “司法の塔”はあの“裁判所”の先だ!」

 

「行き止まりみてェだけど、登ってみっか!」

 

「キャハッ! じゃあ私の出番ね! あのくらいの高さならジャンプ出来るわ!」

 

 ルフィが風船のように膨らんで、ミキータが重量を増やして彼をジャンプ台代わりにして私を背負って大ジャンプする。

 すかさずルフィが腕を伸ばして、ミキータがその手を掴み3人揃って“裁判所”の屋上に舞い上がった。

 

 

「あれが、最後の建物だな」

 

「でも、道はないわね」

 

「――ッ!? 敵の気配だ……!」

 

 ルフィとミキータは“司法の塔”を見据え、私は敵の気配を感知する。

 この突然出てくるような気配は奴しかいない……。

 

空気開扉(エアドア)……」

 

「あっ、お前はハトのやつと一緒にいた……」

 

 何もない空間からドアが開き、中からブルーノが出てきたので、ルフィはそれに反応した。

 

「“世界政府”始まって以来の前代未聞だぞ。ここまで海賊たちが踏み込んできたことは――」

 

「ブルーノ……」

 

 何やら大袈裟なことを曰うブルーノを見て私は迷う……。

 ルフィが戦えば、おそらく“ギア(セカンド)”を使ってブルーノに勝つだろう。

 

 だが、あの技は体力をかなり消費する技だったはず。

 故にルッチと戦うのにあたってこれはかなりのマイナス要素なのではと私は考えた――。

 

 だからといって、ギアを使わないでくれと言うのも変な話になる。 

 そういった点を含めて私は悩んでいるのである。

 

「いつまで、暴れる気だ?」

 

「「死ぬまで!」」

 

 ブルーノの問いかけに、私とルフィは同時に答えた。

 無論、私は止まるつもりはない。ロビンを助けるまで……。

 

「キャハッ……、息ぴったりなんだから……」

 

 そんな私たちを見てミキータは小さな声でツッコミを入れた。

 

「お前らはまだ気付いてないようだな。これが“()()()()()()”の大犯罪ということに――」

 

「ああ、そういうのはいいよ。世界政府に喧嘩を売ったとか、どうでもいい話をするんだろ?」

 

 ブルーノがまだ何かベラベラとしゃべりそうだったので、私はそれを遮った。

 世界政府がどうとか、大犯罪がどうとか、そんなことは関係ないから――。

 

「レディキラー……、あの女に振られたにも関わらず随分と御執心みたいだな……。あんな、不吉な女などさっさと捨てて――。――ッ!?」

 

 ロビンを貶めるような口を利くブルーノに向かって私は発砲する。

 銃弾は彼の頬を微かに掠めて彼を傷つける。

 彼は信じられないという表情で頬を流れる血を触って見ていた。

 

「その薄汚い口を閉じな。ブルーノ……。ルフィ、ここは譲ってくれないか? ブルーノ(あのおとこ)は私が倒す――! あの程度の敵、君が出る幕じゃない!」

 

 私はブルーノを自分一人で倒す決心を固めた。

 ネロとは違う本当のCP9……。だけど、ヤツは私の越えるべき壁だ――。

 

 集中力をいつも以上に高めながら、銀色の銃(ミラージュクイーン)を構え直し、私は強敵と対峙した――。

 




ライアとブルーノが戦い、ルフィがギア2を出す機会がルッチ戦にお預けになりました。
なので、次回はライアとブルーノの戦いからスタートです。

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