ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう 作:ルピーの指輪
ここから、CP9との戦いが本格化してきます。
それではよろしくお願いします!
「…………」
「おい、お前、何とか――」
私たちの呼び掛けに対してロビンは無言で俯いたままだった。
フランキーが何やら気まずそうな顔をしてロビンに何かを話すよう促す。
「このタコ海賊団! 粋がったところで何も変わらん事を思い知れ! 殺し屋集団“CP9”の強さ然り、“正義の門”の重さ然り、何より今のおれには“バスターコール”をかける権限がある! ニコ・ロビン、20年前にお前の故郷を消し去った力だ! “オハラ”という文字は、翌年の地図から消えてたっけなァ!!」
スパンダムは私たちを挑発するかの如く罵倒してきた。
そして、“バスターコール”をかけることも出来ることを誇らしげに語る。
この男は思っていた以上にクズ野郎だな……。CP9の面々も少し引いてるように見えるぞ……。
「やめなさい! それだけは! それを押せば何が起こるかわかってるの!? 地図の上から人間が確認できる? あなた達が世界をそんな目で見てるから、あんな非道な事ができるのよ!! バスターコールをかければ、エニエス・ロビーごとあなた達も吹き飛ぶわよ……!」
スパンダムの言葉を聞いたロビンは彼を激しく非難し、バスターコールを発動させればこの場所ごと消えてなくなると忠告した。
「何をバカなことを! 味方に消し飛ばされてたまるかァ! 何言ってんだてめェは!?」
スパンダムはそんなロビンの忠告を歯牙にもかけない様子だった。
しかし、バスターコールをこの男が今かけたら本当にそうなる。何とか対策を考えなくては――。
「20年前、私から全てを奪い、大勢の人達の人生を狂わせたたった一度の攻撃が“バスターコール”――!! その攻撃が、やっと見つけた気を許せる仲間達に向けられた……。私があなた達と一緒にいたいと望めば望む程、私の運命があなた達に牙をむく! 私には海をどこまで進んでも、振り払えない巨大な敵がいる! 私の敵は「世界」とその「闇」だから! 青キジの時も――今回も、もう二度もあなた達を巻き込んだ……! これが永遠に続けば、どんなに気のいいあなた達だって、いつか私を重荷に思う! いつか私を裏切って捨てるに決まってる! それが一番怖いの! ――だから助けに来て欲しくもなかった! いつか落とす命なら、私は今、ここで死にたい!」
ロビンの悲痛な叫びは泣き声にも聞こえた。
彼女を取り巻く環境は想像を絶している――。まさしく闇そのものなのだろう。
死にたいと言う彼女の悲哀を含むその表情は見ていられないほど痛々しかった――。
「ワハハハハ! そりゃそーだ! お前を抱えて邪魔だと思わんバカはいねーよ! あの
スバンダムが嘲り笑いながら、“司法の塔”の屋上にはためく旗を指さして、世界がロビンのことを追っていると言い放つ。
「ロビンの敵はよくわかった。ライア!」
「ん?」
ルフィはスパンダムの話を聞いて、何がロビンの敵になっているか理解したと言い、私に声をかけた。
「あの旗を撃ち抜け」
ルフィの指示はもちろん世界政府の旗を撃ち抜くこと。世界政府の象徴を撃つというのはつまり――世界に対する宣戦布告である。
まぁ、そんなことはどうでもいいんだけど――。
「うん。わかった――」
ルフィの言葉に返事をしたとき、私は既に旗を
「――えっ?」
「いつの間に――」
ロビンとフランキーは燃え上がる世界政府の旗を見て驚いた顔をしていた。
「――何を見てやがる? ん? はぁァァァ!? バカな!? 海賊達がァーーー!! “世界政府”に宣戦布告しやがったァーーー!! 正気か貴様ら!? “世界政府”を敵に回して、生きてられると思うなよォ!!!」
スパンダムは世界政府の象徴が燃え上がっている様子に少し遅れて気が付いて、大袈裟なリアクションをとる。
世界政府が敵に回る? そんなこと大した話じゃない。
もっと大切なことが私たちにはあるんだ。
「望むところだァーーーーーーーっ!!!」
ルフィはそんなスパンダムに対して喧嘩上等の姿勢を見せる。
私たちの船長はこういう男だ。だから、みんなして付いていくんだ。
「ロビン! まだお前の口から聞いてねェ! “生きたい”と言えェ!!」
「…………」
ルフィはロビンの気持ちをもう一度確かめる。
彼女は涙を流しながら、その言葉を噛み締めているように見えた。
今まで彼女はどこでも生きることを否定され続けていたから。
「あとは君が自分に正直になるだけだ! 私は君にこの手を伸ばし続ける!!」
手をロビンに向かって差し出しながら、私は彼女に自分の想いを伝える。
私だけじゃない。みんな彼女に手を伸ばしているんだ。
「――生ぎたい!!」
“生きたい”――その四文字はロビンにとって大きな前進だったのかもしない。
失うことを恐れて、誰も信じられなくなった彼女は最後の最後で勇気を出して私たちを信じることを選んでくれた。
だったら、私たちがすることは1つだ――。
この戦いに絶対に勝つ! それだけだ――。
「行くぞッ!」
ルフィが力強く言葉を吐いたとき、裁判所と司法の塔を繋ぐ跳ね橋が下り始めた。
さァ、戦闘開始だ――。
◇ ◇ ◇ ◇
「もしお前らが先を急いだりしたら、こんな鍵、海に捨てちゃうぞ! チャパパパ」
ココロが動かした“ロケットマン”に飛び乗って命からがら司法の塔に突入した私たちはフランキーと合流した。
そんな私たちの前に現れたのはCP9の1人、フクロウ……。
彼によるとロビンを拘束している海楼石の手錠の鍵はルッチ以外の5人のCP9の内の誰かが持っているのだという。
彼らの持っている5本の鍵の内の1本が本物なのだそうだ。
そして、CP9を無視してロビンの奪還を急いだりしたら、海に鍵を投げ捨てると彼は私たちを脅してきたのである。
「ルフィ、お前はとにかくハト男をブッ飛ばせ! ルフィを除いておれたちは7人。――ここに5人いるCP9から5本の鍵を手に入れて、ルフィを追う」
サンジは瞬時にこの状況から出来る最善手を考え、私たちにこれからするべき行動を伝える。
この判断力の早さは素晴らしい。
「ロビンが正義の門に連れて行かれる前にすべてを終わらせなくてはならないな。タイムロスは出来ない……」
私はサンジの意見に頷きながら、時間があまりないことを強調した。
「敗けは許されねェ!」
ゾロはだからこそ敗北だけはしてはならないと言う。
そのとおり、負ければそれだけ時間を浪費してしまう。
「「絶対に勝つ!」」
私たちは勝利を誓い合って走った。
ルフィはルッチに向かって一直線に進み、フランキーはコーラを補充すると言って、それを探しに先に私たちと別れた。
そして、残った私たちは――。
「うーん。そっちと、あっちに特に強い気配を感じる……。あとの3人はブルーノと似たりよったりの実力だな……」
私はカクとジャブラの居る方向を指さして、それとなく伝えた。
「「強い奴の気配?」」
するとゾロとサンジが同時に私の言葉に反応する。
「おもしれェ! おれはあっちに行くぞ」
「けっ、張り切って負けんじゃねェぞマリモ頭! じゃあおれはそっちに――」
ゾロとサンジはそれぞれカクとジャブラのいる方向へと駆け出す。
「ちょっと、ライア! 弱い気配はどっちなのよ!」
そんな私を見て今度はナミが妙な質問をしてきた。
いや、弱い気配って……。
「はぁ? 弱い気配なんてないよ。みんな強いって。CP9なんだよ?」
私はナミの質問に真剣な顔をして答える。
CP9は強い上に全員が悪魔の実の能力者。故に弱者などいない。
「ちょっとでも実力が下の奴とかいるでしょ?」
「まァ、強いていえば……、こっち側のカリファかなァ――?」
それでも、引き下がらないナミに対して私は1番実力が劣っていると感じたカリファの名前を出した。
ただ、力が小さいからと言って弱いとは限らないのがこの世界の常識。油断だけはしてはならない。
「あの秘書だった奴ね。――そうだ。良いこと考えた――」
「ん?」
ナミはカリファの名前を聞いて悪い笑みを浮かべた。何か背筋がゾクッとしたぞ……。
「じゃあ、私とあなたはこっちよ」
そして、ナミは私の手をグイッと引っ張ってカリファのいる方向に向かおうとする。
「わ、私もなのかい?」
「そりゃ、そうよ。その体で強い奴と戦えないでしょう?」
彼女はブルーノ戦での負傷を理由に2人で行動することを提案してきた。
まァ、確かにこの状態でCP9を1人で倒すのは難しそうだけど……。
「キャハッ……、仕方ないわね。だったら、私はこの地下に行ってみるわ」
「おれは向こうにいくぞ!」
ミキータとチョッパーも各々が動く方向を決めて、私たちは分散した。
「あら? この部屋にはあなた達が来たのね……」
ナミと私はカリファが待ち受けている部屋にたどり着いた。
カリファは確かアワアワの実の能力者だったな。泡で包まれると力が抜ける上に上手く動けなくなるんだったっけ?
「カリファ! 鍵を渡してもらおうか! さもなくば――!」
私はさっそく
しかし、ナミがいきなり私を小突いてきた。
「ライア! あなた、その体で戦いなんて無理よ!」
「痛っ……! うっ……! ナミ?」
ナミは痛がる私の肩を組んで、耳元に口をあてがった。
「どうしたの? 戦わないのかしら? それとも仲間割れ?」
カリファは私とナミがモタモタしている状況を見て、不思議そうな顔をしている。
「――今から、この紙に書いている通りの行動を取りながら、このセリフをカリファに向かって言ってきなさい……」
「な、なんで? こんな恥ずかしいことを……?」
ナミはこっそり私にメモを手渡して、指示どおりに動くように伝えてきた。
えっ? 何の意味があって、そんなことを?
「ロビンを助けるためよ。ていうか、いつも言ってることとそんなに変わらないじゃない。さぁ、早く……」
「うう……、わかったけど……。こんなこと言って何になるんだ?」
ナミがあまりに自信満々な態度だったので、私は渋々彼女に従うことにした。
こんなことして、大丈夫なのかな?
「あなたがブルーノを倒したみたいね。驚いたわ。海賊が六式使いを倒すなん――」
「そんなことより、君と見つめ合っていたいのだが……。いいかな?」
私はカリファに近づいて、まずは彼女の目を真っ直ぐに見つめてメモに書いてあるとおりのセリフを言った。
「――ッ!? 何を急に! せ、セクハラですッ!」
するとカリファは顔を赤らめながら、目線を逸らす。
おかしいな。本当に攻撃してこない。なぜだ?
「率直に言うよ。君が欲しい。私のモノになってくれ。カリファ」
さらに彼女に近づきながら私はメモにあったセリフを言う。
彼女との距離はもう目と鼻の先――というか、私が近づくたびに彼女が引き下がるから、カリファは壁を背にして目の前に私がいるという状況になっていた。
「あ、あなた正気なの? さっきまで仲間を取り返そうとしていたじゃない……」
「――良いじゃないか。そんなことはどうでも。照れてるのかい?」
顔を真っ赤にしてたじろいでいるカリファの後ろの壁に右手を押し当てて、私は彼女に顔を近づけた。
ふむ、これはどういう状況なのだ? 何かすごく悪いことをしているような気がするぞ……。
「な、何のつもり……? ふざけるのもいい加減に――。むっ……」
「なんだ、強気な人だと思っていたけど、可愛いところもあるじゃないか。見かけと違って意外と
左手の人差し指でカリファの唇を塞ぎながら私は彼女にそう声をかける。
どういう訳か分からないが、彼女はそのまま固まってしまった。
「じゃあ、まずはその唇を貰おうか……。さァ、目を閉じて……」
私は左手で彼女の顎を触りながら、目を閉じるように命じる。そんなことを言って本当に敵を目の前にして目を閉じるヤツが――。
「――えっ? ――んっ……」
あれ? 本当に目を閉じたぞ? 何これ? ナミが催眠術でも使っているのか?
私の頭の中には“?”がいっぱいになっていた。
「いい子だ。へぇ、髪もきれいに手入れしてるんだね。触り心地がいい。肌もきれいだね」
「…………そ、そんなとこ。触らないで……。は、恥ずかしい……」
右手で髪を撫でながら、徐々に背中に手を回し、彼女の持っている鍵を探す。うーん。手探りだから見つけにくい……。
それを察したのか、ナミもこちらに来て一緒に鍵を探す。
「目を開けちゃダメだよ。ほら、ジッとしてて」
「んっ……、くすぐったいわ……」
私は目を閉じることを強制しながら、何とか鍵を見つけようとするけど見つからない。
ナミもカリファの体中を弄りながら、鍵を見つけようとしているが、成果は芳しくないようだ。
「す、すごい。まるで手が4本あるみたい……」
いや、本当に4本の手で触っているんだけど……。この人天然なのかなァ?
というより、なんで目を開けないんだ? めちゃめちゃ不審な状況だぞ……。
それにしても見つからないな。あと、探してないところと言ったら――。
「――ちょっと……、どこよ! もう! じれったいわね!」
「おい! ナミ! さすがに
ナミがイライラを顕にしながら、カリファの✕✕✕の中を探そうとしたので、私は大声でそれを止めようとした。
そ、そんな恥ずかしいところを躊躇いなく探そうとするなんて――。
「「あっ……!」」
そして、私とナミは大声を出したことをお互いに意識して顔を見合わせて沈黙した。
「…………騙したの?」
さすがにカリファも異変に気付いて私とナミを凄い形相で睨みつけてきた。
やっぱり、こんな方法で何とかなるわけないじゃないか!
まさに一触即発……。私とナミはカリファと戦闘を開始した――。
書き終わって読み返してみると色々と酷い……。
カリファが原作よりも5割増くらいアホっぽくなってしまいました。これはライアの能力の結果なのかもしれません。
ということで、カリファ戦の決着は次回に持ち越しです。