ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう 作:ルピーの指輪
前回、やらかしてしまったライアとナミがカリファと戦います。
今回の話はそれだけなのですが、前回の後半と合わせると過去最長の戦闘になってしまいました。
長いですが、エニエス・ロビーでの戦闘のメインなので、よろしくお願いします!
「女心を弄んで、利用する。なるほど、これがレディキラーの手口ッ!――許せない!」
カリファは強い敵意と怒りを見せて、私たちを睨みつける。
あれ? さっきより強さ増してない? ブルーノよりも強くない?
「いや、その、これはナミが……!」
私は意味がないことはわかっていたが、つい、自己弁護しようとした。
しかし、それをナミは許さない。
「そうよ! 泣かせた女は数知れず! 騙されたヤツが悪いってコイツは反省なんかしないんだから!」
「ええーっ!」
なんと、ナミはカリファの言うことを全肯定して、私を完全な悪者にしてしまった。
「くっ、やはり……! もう少しで身も心も奪われてしまうところだったわ……。危なかった……」
カリファは自分の胸を抱きしめながら、身震いしていた。
あれでそんなに危ない感じになってたんだ……。
「諜報機関の人間がそれじゃダメなんじゃないかな?」
「むっ……! ぶ、無礼者! ――“
思わず口走ったセリフがカリファの逆鱗に触れたらしく、彼女は“
「
私は“
「あなた、やっぱりさっきのダメージが!?」
「ブルーノと戦った直後に私と戦おうなんて無謀なのよ。だから、あんな手を使おうとしたんでしょうけど……。私はあなたを許さない!」
カリファは吐き捨てるような口調で許さないと言う意思を表して、“
「ぐあっ……! はぁ、はぁ……、なんかこっちが悪者のような……。ああ、でも私たちが海賊なんだからそれで合ってるか。ははっ……」
「笑ってる場合か! こうなったら、あなたに改良してもらった、この
私が勝手に納得して笑ってると、ナミは先日ミキータの武器と一緒に作って渡した
「ああ、それを使うのか……。出力の調節には気を付けてくれ――」
だから、扱いが非常にデリケートな代物なのだ。
「――
「キャッ! 痛いわねェ! でも、雷雲は出来てる! 行くわよ! サンダーボルト=テンポ!」
カリファの攻撃がナミに命中したが、ナミもいつの間にか雷雲を作っており、
「やった! 大成功!」
雷撃は見事にカリファに直撃して、ナミはガッツポーズして喜んだ。
だが――。
「いや、効いてない……! 君は……、悪魔の実の能力者だね……」
「そう、私は“アワアワの実”を食べた“石鹸人間”!」
泡を纏ったカリファが無傷の状態で出てきた。
あの雷撃を受けて無事とは……。
「雷の電撃をも絶縁するほどの泡を纏うとは……!」
「わぁ、色っぽい! こんな秘書がいたら正直嬉しい! ――って、おっさんか! 私は!」
私が真剣に彼女の防御を分析していたら、ナミはよく分からないテンションで一人ノリツッコミをしていた。
「そして! “
「あんた、バカじゃないの?」
カリファはさらに大量の泡を纏って羊のような格好になり、ナミはそれに悪態をつく。
「ふふっ、見かけに――」
「か、可愛い! 可愛いよ! 羊みたいで!」
そんなカリファの姿がとても可愛らしかったので、つい私は本音をポロッと吐いてしまった。
「えっ? そ、そんなに可愛いかしら? だ、ダメ! 気をしっかりと持たないと!」
「うん! なんか癒やされるな。君を見てると――」
カリファの怒りの表情が少し和らいだ気がするが、それは気のせいみたいだ。
だけど、なんか癒やされるな……。
「――せ、セクハラよ……、そんなの……。また、どうせ騙すんでしょう!?」
「あ、あれ? 何? この空気……」
カリファの様子がおかしくなったのをナミは察して、首を傾げる。
「ごめん。君の心を傷つけるつもりはなかったんだ。確かに君は倒さなきゃならない敵だけど……、さっきみたいなやり方は間違っていたよ……」
私は一応、悪いことをしていた気にはなっていたので、それについては謝っておいた。
「き、気にしてないわ……。じゃあ可愛いと言ってくれたのは本心なのね……?」
「ちょっと、今から戦うんじゃ?」
変な質問をするカリファにナミは呟くようにツッコミを入れる。
「えっと、まぁ本心だけど――」
「良かった……。嬉しいわ――」
私がカリファの問いかけに答えた刹那――彼女の人差し指は私の胸を貫いていた――。
「――ぐはぁッ……」
「ライア? えっ、うそ……!」
私の胸から鮮血が吹き出し、ナミは青ざめたような表情でこちらを見ていた。
「――痛かったかしら? ごめんなさい……。でも、決めたの。あなたを……、持って帰るわ。串刺しにしてキレイなオブジェにするの……。ふふっ……。 ――“ゴールデン
カリファは血まみれの私を背中から優しく抱きしめながら恐ろしいことをささやき……、私の全身に泡を付着させた。
「あうう……、力が抜けて……」
全身がツルツルで丸みを帯びた状態になった私は立っていることが出来なくなって、その場に倒れた。
「うふふ……、キレイになったわ。どこに飾ろうかしら?」
カリファはそんな私を満足そうに眺める。
「趣味の悪いこと、言ってんじゃないわよ!」
「“
そんなカリファに対してナミは雷を帯電した
「くッ!」
「トドメよ! “
「“
カリファがナミにトドメを刺そうと攻撃を繰り出したが、それは空を切る結果になった。
「に、偽物ッ!? 何!? どういうこと!?」
「こっち、こっち!」
「このッ! くっ……! 焦れったい! 私の愛憎の力を爆発させてあげるわ! 羊雲・
そんなナミに怒りを向けたカリファは大量の泡を津波のように繰り出して、すべてを飲み込もうとする。
「“サイクロン=テンポ”ッ!」
「風で吹き飛ばすというのは考えたわね! でも、まだまだ! 溢れ出す泡の力! 羊雲・
ナミは見事に泡の津波の一部を風で吹き飛ばすことに成功し、そこから脱出しようとしたが、カリファは体中から無差別に泡を吹き出し続けて結局ナミを捕らえてしまった。
「部屋が――泡で溢れる!? くっ……!」
「あはははっ! もっと、もっと溢れ出しなさい! とぉーってもいい気分よ!」
高笑いするカリファからは絶えずに泡が吹き出しており、部屋の中は泡だらけになる。
「ち、力が……」
「あらら、君もお揃いになっちゃったね……」
ナミも私と同様に全身がツルツルになってしまい、体の起伏もなくなり、私の隣に倒れてしまった。
「相変わらず、呑気な顔して……。あなたが1番ピンチなのよ? あの人、あなたをオブジェにして持って帰るって言ってるんだから」
「1番ピンチも何も……、この戦いで負けたら全員死ぬ。それを怖がっても、何も生まれないだろ?」
ナミはムッとしたような口調で私がピンチだというが、そんなのは関係ない。
どっちみち敗けたらその時点でアウトなんだから、今やるべきことはそれじゃない。
「何か手はあるのね?」
「どうやら、この泡に触れると脱力状態になり、力が抜けるらしい……。その上、体中がツルツルで、立ち上がることもままならない」
ナミは私が作戦を立てていたことを理解して話を聞こうとしてくれたので、私はまずはこの泡の性質について彼女に話した。
「うん。さっきから力を入れても全然ダメ……」
「体中を覆っている泡が原因なら、それを洗い流せば動けるはずなんだ。その証拠に血によって泡が洗い流された肩の一部分だけは他の箇所よりも力が入る」
そして、この泡を流すことが出来れば元通り動けることを話した。
状況を逆転させるには、まともに動けなくては話にならない。
「そっか、水を浴びれば……。でも、こんな体じゃどうしようも……。それに一面泡だらけだから、洗い流しても直ぐに泡まみれになっちゃうんじゃない?」
ナミは納得しかけたが、カリファが絶え間なく泡を大量に放出出来ていることに触れて、直ぐに元通りになるのではと、指摘した。
確かに今のカリファは普通じゃない。多分、漫画ではあんなに泡を大量に放出出来なかったはずだ……。
「そうだね。ちょっと雨を降らせるくらいじゃ足りないと思う……。だからこそ、時間が欲しい……。カリファを足止めして、すべてを吹き飛ばすんだ。君と私で……」
私はカリファの足止めさえ出来れば状況を打破できると話した。
「――ライア……、それは……!? うん。わかったわ! 私に良い考えがある」
ナミは私の案がどんなものか話さずともわかったらしい。
そして、カリファの足止めについて考えがあると、また悪い笑みを浮かべる。
「ふぅ、またその顔か……。さっき、その良い考えとやらのせいでカリファがあんな風になったというのに……」
「もー、根に持つんだから。大丈夫よ。一瞬、私たちが動けるようになればカリファは沈黙する」
私の愚痴に対してナミは自信満々の態度でそう返した。
「ふむ、そんなに自信満々なら信じるよ。どのみち、この体じゃあどうにもならないし……」
ナミがここまで言うのなら是非もない。どのみち彼女の作戦に乗っかるしかないと思った私はナミを信じることにした。
「相談は終わった? 正直言ってあなたたちには感謝してるのよ。私って今までこんなに怒ったこともなければ、憎んだこともなかった。怒りや憎しみが爆発するとこォんなに強くなれるなんて知らなかったわ……」
カリファは急激な能力のパワーアップに興奮してるみたいだ。
確かに悪魔の実の能力は鍛えれば汎用性が増すから、能力者になりたてのカリファの能力は漫画ではそんなに強い方じゃなかった。
でも――。
「
一度に繰り出せる泡の量、その出力はかつて対峙した敵をも凌駕しており、カリファは厄介な敵へと変貌している。
「泡で埋め尽くしてやる! メガヒット
今度は足元から四方に泡を噴射して、部屋を泡のプールに変えようとしてきた。
「くっ、このままだと泡で溺れてしまう……」
どんどん室内の泡のかさは増してきて、私たちは半分泡に浸かった状態になっている。
「でも、何とか……、あいつが余裕ぶっこいてくれたおかげで、何とかクラウディ=テンポで雲を大きくすることが出来たわ。これに
ナミはそんな中、冷静に雨雲を作っており、雨を降らせる準備をしていた。泡のせいで最低限しか体も動かせないのによくやってくれた――。
「無駄な抵抗よ! “
「――痛ッ! でも――天候は“雨”よ……! “レイン=テンポ”!」
カリファの“
よし、何とか復活出来た――。
「あらあら、涙ぐましいわね……。こんな雨で泡を洗い流したところで意味はないわ……! ドラゴン
カリファは私たちの復活を鼻で笑って、とんでもない大きさの泡の龍を作り出し、こちらに放とうとした。
「ライア! 立ち上がって、ここに来なさい」
「あ、ああ。わかった……。でも、何を?」
ナミは私に指定の場所に立つように指示したので、私はそれに従う。
「カリファ! これから、あなたを夢の世界に招待するわ!」
「何を訳のわからないことを! 私を怒らせたことを悔やむがいい! な、何? こ、これは……!?」
ナミが
「これは、蜃気楼? それも私の姿を映した……」
そう、ナミが繰り出したのは4つの私の姿をした蜃気楼――。
カリファは顔を赤らめてキョロキョロ周りを見ていた。
「名付けて! “逆ハーレム=テンポ”!」
「いやいや、どういう意味だい?」
ナミの言っている意味がわからなかった私は彼女にツッコミを入れた。
「…………ぼーっ」
「早くこの隙に
「わかってる。どこを狙えば良いのかな?」
確かにカリファはどういう訳か惚けた顔をして動かなくなっていた。
だから、私たちは次なる作戦行動に移ることにした。
「そこと、あそこと、そして、向こうよ……」
「了解!」
ナミの指示にしたがって私は特殊な弾丸を放ち、さらに
「――はっ! 私としたことが、幻になんてだらしない顔を!? もう許さない! ドラゴン
作戦の準備が終わったとき、カリファはようやく意識を取り戻して、私たちに向かって巨大な泡の龍を放ってきた。
でも、もう遅い。作戦は完了した――。
「「天候は“暴風雨”! “ストーム=テンポ”!!」」
私とナミは声を揃えて、大技の名前を言い放つ。
ナミが
「な、何ッ! どうなってるの!? きゃあッ」
巨大な泡の龍は四散して、カリファは爆風によって大きく吹き飛ばされる。
「お、思ったよりも風が強い……! あっ……!」
「ナミ! 掴まれ!」
その風はナミも私も吹き飛ばそうとしてきたので、私は強力な吸盤の付いた手袋を使って壁に右手を貼り付けて、ナミの手を左手で掴み、彼女を抱き寄せた。
「ライア! えっと、その……」
「私を離すんじゃないぞ。そのまましがみついていろ!」
ナミはどういう訳か、私の腕の中で顔を赤らめていたが、そんなことを気にはしていられない。
自分たちの放った技で吹き飛ばされるなんて、間抜けな話にはしたくない。
「うん……。あ、ありがと……」
ナミは小さな声で礼を言って、私をギュッと抱きしめてきた。
いや、そこまで強くしがみつかなくても、大丈夫だと思うけど――。
そして、私たちは何とか暴風雨をやり過ごすことが出来た。
「それにしても……、酷い有様だ……。何もかもが流されて……。あれ? カリファは?」
「あっ! さっき飛ばされてそこの窓を突き破って下に落ちちゃってたわ!」
部屋の中の惨状を見て、私は室内にカリファが居ないことを指摘すると、ナミは彼女が窓を割って外まで吹き飛ばされたと言ってきた。
「な、なんだって!? そこの下は海じゃないか! 早く助けないと、鍵が!」
「えっ!? ライア!?」
私はロープで自分の体を結んで、下の海に向かって飛び込もうとした。
「大丈夫! 命綱つけてるから!」
「そういう問題じゃ……!」
ナミは何か言いたげだったが、時は一刻を争う。
私は海に向かってダイブした。
「う〜〜ん! スーパー!」
「た、助かったよ。フランキー……」
フクロウを倒したという、フランキーがちょうどこちらを通りかかってくれたので、彼にロープを引っ張ってもらって、カリファとともに私は引き上げられた。
「良いってことよ! それにしても随分と派手に争いやがったみてェだな! カリファがまさかこんなに強かったなんて知らなかったぜ……!」
「いや、それは……」
フランキーは部屋の有様を見て、激戦だったのだと感じ取ったのだろう。
しかし、激戦になった理由が間抜けすぎるので、私はあまりそれには触れたくなかった。
「うっ……、うん……。――はっ!? 私は海で溺れていたはず……!? ――そ、そうだ! レディキラー、お前はなぜ私を助けた!?」
カリファは意識を取り戻したみたいだが、戦意はなくなっており、私に自分を助けた理由を聞いてきた。
「そんなの当たり前だろ! 大切なモノを無くす訳にはいかないじゃないか!」
私はロビンを助けるために必要な鍵を無くす訳にはいかなかったので、そう答えた。
「えっ――大切? そこまで私を――!? あ、あなたを殺そうとしたのに……、どうして?」
「そんなこと君を助けた理由と何も関係ないよ。どうしても必要なんだ。私には、ね……」
そりゃあ、カリファには殺されかけたけど、そんなのロビンを助けることと何も関係ない……。
「――ッ!? ま、敗けたわ……。心も何もかも奪われてしまった……。はぁ……、こんな気持ちになるのも――初めてよ……」
カリファは観念した表情で敗けを認めてくれた。
よし、再戦なんてしなくて良いんだな……。
「そ、そうか。敗けを認めるなら遠慮なく……」
「そうね。私たちには時間が無いもの……」
私とナミはカリファの隠してる鍵を彼女の体から見つけ出そうと動き出す。
「えっ!? いきなり、そんな!? あ!
そ、そこはダメ……! ーー―ーッ!?」
「や、やべェ……! な、何かに目覚めちまいそうだぜ……!」
私とナミが手荒い身体検査をしていると、側でその様子を見ていたフランキーがサムズアップのポーズを取りながら、どういう訳か興奮気味になっていた――。
大きなトラブルは起きたが、何とかカリファの持っている鍵を手に入れた。フランキーも鍵を持っているので、残す鍵はあと3つ。
今のところバスターコールはまだかかってないけれど……。
私は少しだけ焦りを感じながらも他の仲間の様子を見に行くためにこの部屋から出ていった――。
ロビン! 必ず君を助けるからな!
カリファを強くしすぎたせいで色々と大変でした。
最後はライアらしい締め方が出来たと思います。
フランキーは良いものが見られて羨ましい……。