ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう   作:ルピーの指輪

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いつも誤字報告や感想をありがとうございます!
気付いたらウォーターセブン編も終わり、前半の海が終盤にさしかかってました。
今回の後半からスリラーバーク編に突入します。



スリラーバーク編
サウザンドサニー号


「フランキー! 船! ありがとう!! 最高の船だ!! 大切にする!! このパンツ返してほしけりゃ、おれたちの仲間になれ!!」

 

 私たちの船長は決して頭がおかしくなったのではない。

 そして、私たちの目の前の人物は決して変態ではない……。多分……。

 

 ルフィがフランキーのパンツを片手に彼を勧誘している。

 そして、フランキーはパンツを奪われたので、大事なモノをオープンにして仁王立ちしていた。

 

 こんな状況になったのには理由がある。

 フランキー一家はフランキーに私たちの仲間になるように説得をしたらしい。

 しかし、フランキーは義務感からそれを拒否した。

 だから、彼らはフランキーのパンツを強奪して、逃げることで無理やり私たちの前に引きずり出したのだ。

 

 うーん。男の人の考えが分からん。ただ、チョッパーにフランキーのパンツを咥えさせたのには、抗議だけしておいた。

 チョッパーにも口に入れてはならないモノがあると言うことをキチンと言い聞かせた。

 

 

「バカ言え! パンツ取ったくらいで簡単に仲間に出来ると思うなよ! ――なんのその……、男は裸百貫の……、波に向かって立つ獅子であれ!」

 

 だが、フランキーはパンツが無くても平気みたいで、見せつけるようにいつものポーズを取る。

 

「あいつ……、なんて気が強ェんだ! 甘かった! 男の中の男だ!!」

 

 ルフィはその姿を見て称賛の声を贈っていた。うん、全っ然理解できない……。

 

「ただのド変態でしょ!」

「いくら私でも笑えないわ……」

 

 そんな中、ナミとミキータは普通にドン引きしていた。

 

「手荒で良ければ手を貸しましょうか?」

 

「ん?」

 

 ここで動いたのはロビンだった。彼女は文字通りの手荒な行動に出たのである。

 

二輪咲き(ドスフルール)……。――クラップ!」

 

 ロビンはフランキーの下半身に手を生やして、彼の2つのアレを握り締めた。

 

「ホデュアーーーーー! アアアアアっ!!」

 

 フランキーは死にそうな顔をして絶叫した。

 それは、聞くだけで同情出来るような声だった。

 

「ちょっと、ロビン!」

「潰れるぞ! ロビーーン! いてててて!」

 

 これには私たちも度肝を抜かれる。いやいや、何で普通にギュッと出来るの? 

 抵抗なく出来るところが凄い。私は撃つことは出来てもそれはさすがに無理だ……。

 というか、男性陣のリアクションを見ると、私がエネルやスパンダムにやったことって結構酷いことだったんだな……。

 

 どれくらい痛いのかは一生分からないと思うけど……、ちょっと可哀想……。

 

「ロビン! 男のまま仲間にしたいんだよ! 取んなよ!」

「そういう問題かい……?」

 

 ルフィの言い分に私はついツッコミを入れてしまう。

 

「“宝”を目前にした海賊に“手を引け”と言うのなら、それなりの理由を言って貰わなきゃ、引き下がれないわよ……」

 

 ロビンはフランキーに仲間にならない理由を言うように促した。

 

「だからおれはこの島に居たいんだよ、お前らには感謝しきれねェくらいに感謝してるし、一緒に行ってやりてェが、おれにはここでやらなきゃならねぇ事がある。だからおれの“夢の船”を贈ったんだ」

 

 フランキーはこの島にいる義務があるとロビンの問いに答えた。

 

「待てフランキー、こいつはお前の“夢の船”にはなってないはずだ」

 

 しかし、アイスバーグはフランキーの言葉に反論する。

 

 フランキーは少年時代、自分にとっての”最高の船”が完成したら、船大工としてそれに乗り込み、その運命の日を見届けることが夢だと語っていたらしい。

 

「お前が今この島でやっているのは“償い”だ。あの日、トムさんが連行された事を自分のせいだと、お前は悔いている。だがトムさんはあの日すでにお前を許し、道を示していた! トムさんが許しても、おれがお前を許しても何も変わらない……。もういい加減に! 自分を許してやれよ、フランキー!! もうてめェの夢に生きていいだろ!?」

 

 フランキーが裏町で過激な行動をしているのは、トムの愛した”水の街”を守り抜くという罪滅ぼしだったことを、アイスバーグは知っていた。

 

「旅の荷物です、アニキ! おれ達バカだから、ねぇ頭振り絞って一生懸命考えたんですっ! 少しぐらい考えたらダメですか!? おれ達みたいなゴロツキを拾ってくれた”大恩人”の――あんたの幸せも考えたらダメですか!?」

 

 フランキー一家のザンバイは涙を流しながらアイスバーグの言葉に続けて彼に対する気持ちを伝えた。

 

 それがフランキーの心を打ったのだろう。彼は自分が居なくても大丈夫なのか、弟分たちに確認して覚悟を決めた顔付きになる。

 

 そんな中、ゾロとサンジがガープの軍艦がこちらに向かっていると、焦った顔付きで戻ってきた。

 

「さァ乗れよフランキー! おれの船に!!」

 

 ルフィはフランキーにパンツを投げ返して、船に乗れと命令する。

 

「生意気言うんじゃねェよ、大工の一人もいねェとは船が不憫だ。仕方ねェ! 世話してやるよ! おめェらの船の“船大工”! このフランキーが請け負った!! ちょっと行ってくらァ!!!」

 

 威勢よく私たちの仲間になると宣言したフランキーは堂々と船に乗り込んできた。

 うーん。仲間になってくれたのは嬉しいけど――。

 

「頼むからパンツをはいてくれ……」

 

 私は彼に一刻も早くその状態をやめるように懇願した……。

 この船に関しては心配は無用になったな……。

 

 

 私たちはフランキーを乗せて出航する。

 そして、それから間もなくしてガープの船はこちらに近づき攻撃を開始してきた。

 

 

 

「“サウザンドサニー号”!」

 

 アイスバーグの“千の海”を“太陽”のように陽気に乗り越えて欲しいという願いが込められた、この名前を私たちはとても気に入った。

 ていうか、今まで気にしてなかったけどルフィたちのネーミングセンスってちょっと酷い……。

 自分たちの技には格好いい名前をつけるクセに……。

 

「じいーちゃーん! コビーーっ! 今からおれたちは逃げるから! また会おう!!」

 

 帆を畳み、サニー号の切り札を出す準備を整えたとき、ルフィはガープとコビーに別れを告げた。

 ガープには挑発にしか聞こえてないみたいだけど……。

 

 ガープは怒って超巨大な鉄球をこちらに投げつけようとしてくる――。あれがぶつかったら、早速サニー号が破損するんだけど……。

 あの人、本当に容赦ない人じゃん。

 

「急いだ方がいい。あの鉄球はいくら私でも撃ち落とせない……」

 

「キャハッ! それじゃ、この船の重量(ウエイト)を1キロにしたわよ!」

 

 私が切り札の発動を急かすとミキータがサニー号の重さを1キログラムに落とした。

 そして――。

 

「――風・来(クー・ド)バースト!!」

 

 サニー号から噴射されたのは噴射(ジェットダイアル)も真っ青なくらいの勢いの風――。

 先日のロケットマン以上の高さまでサニー号は勢いよく飛び立って行った。

 

 えっ? これはちょっと尋常じゃないくらいの高さなんだけど……。

 1キロのウエイトだと、こんなに飛距離が伸びるんだな……。

 

「コーラ樽を三つも消費しちまうが、1キロ――いや、レモンの姉ちゃんの助けがありゃあ、この通り何キロも先に飛んでいける! この船はおれが魂を込めて造った最強の船だ! 破損したらおれが完璧に直してやる! 船や兵器の事は何でもおれを頼れ! 今日からコイツがお前らの船だ!!」

 

 フランキーは船のことに関しては全面的に任せろと、ドンと胸を張って宣言した。

 兵器については今度彼に色々と相談してみよう……。

 

「「おおーーーっ!」」

 

 私たちは頼りになる仲間と船を手に入れた喜びを噛み締めて新たな航海へと発進した。

 

 次の目的地は“魚人島”……。うむ……、ここから歴史はどう動くのかな?

 フランキー歓迎の宴の最中、私はこれから起こるであろう可能性について色々と思考を張り巡らせていた。

 

 もし、この先の未来が漫画通りに進んだとして、今の私が……、あの頂上戦争で生き残ることが出来るだろうか?

 

「どうしたの? 何か考え事?」

 

 グラスを両手に持ったロビンが私に声をかけて、1つを私に手渡してくれた。

 

「ああ、ちょっとね。もっと強くならなきゃって思っていたまでさ」

 

 私はひと口それを飲んで、彼女の質問に答えた。

 世界中からヤバい連中が集まる場所で生き残る力が私は欲しい。

 

「あなたは強いわ。その証拠に9600万ベリーも賞金が懸けられてるじゃない」

 

「あれは過大評価だよ。戦闘力ならゾロやサンジはもちろん、君にだって敵わないかもしれない」

 

 ロビンは私の賞金額に触れるが、彼女の言葉に私は首を振った。

 この一味の中でも私の戦闘力はロビンと同じくらいか少しだけ劣ると考えている。

 

「うふふ……、そういうところは若いのね。いつも大人びて見えてたから、ホッとしたわ」

 

 私の答えを聞いたロビンはニッコリ笑って私の頭を撫でながら子供扱いしてきた。

 そんなに軽薄な意見だったかな?

 

「やれやれ、珍しく年上をアピールするじゃないか。じゃあ人生の先輩とやらのアドバイスを頂こうかな?」

 

「あら、簡単なことよ。強さというのは多様な種類があるの。あなたにはあなただけの“強さ”がある。それを信じなさい」

 

 私がロビンに助言を求めると彼女は“強さ”には様々なタイプがあると言ったきた。

 うーん。私だけの強さか……。

 

「キャハハ! それって“女たらし”の力?」

 

「えーっ! そりゃないよー!」

 

 そんな私とロビンの会話に酔っ払ったミキータがいつもよりも陽気に笑って、変なことを言ってきたので私は彼女に抗議した。

 そんな力なんてないし、あっても役に立たないじゃん。

 

「そうね。それもあるわ……。責任……、取ってね……」

 

 するとロビンは悪戯っぽく笑い。意味深なことを呟いてきた。

 せ、責任? それってどういう――。

 

 私がそれを尋ねようと口を開くと、彼女はハナハナの実の力を使って口を塞いでくる。

 まったく、敵わないなー。ロビンには……。

 

 真っ昼間から始まった宴会は夜遅くまで続いた。

 その最中も、サニー号は力強く私たちを次の冒険に連れて行ってくれていた――。

 

 次はおそらくスリラーバーク……。そして、ブルックが仲間になるはず……。

 彼はどんな人だろうなー。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「ヨホホホホ! ハイどうもみなさん、ごきげんよう! 私この度、この船でご厄介になる事になりました“死んで骨だけブルック”です! どうぞよろしく!!」

 

「「ふざけんな! なんだこいつは!」」

 

 こんな人だった――。

 

 私たちの目の前でアフロのガイコツ男が自己紹介している。

 みんな唖然としてるな……。彼がブルックか……。

 

 王下七武海――ゲッコー・モリアの罠であろう“流し樽”を拾ったルフィがそれを開けると、中から赤い光が飛び出した。

 

 それから私たちはココロから聞いた“魔の三角地帯(フロリアン・トライアングル)”とやらに迷い込み、幽霊船と遭遇。

 

 わくわくが止まらないルフィはナミとサンジを引き連れて幽霊船に冒険に出かける。

 そして、中で出会ったブルックを仲間に勧誘して戻ってきたのである。

 

「やァブルック。ライアだ。よろしく」

 

「おっと、こちらも美しいお嬢さんだ。ヨホホ! よろしくお願いします! あと、パンツ見せてもらっても良いですか?」

 

 ブルックは私の手を握って挨拶をした。“美しいお嬢さん”って照れる……。

 

「えっ? でも、私のはナミやミキータみたいに可愛い下着じゃないしなぁ」

 

「キャハッ! バカ! あんた、なんであの奇っ怪なのを簡単に受け入れてんのよ! というか、恥じらうポイントおかしいわよ!」

 

 ミキータがブルックを指さしながら、強めの拒絶をした。

 やっぱり、ガイコツは受け入れにくいか……。ルフィとロビン以外はドン引きしてるもんなー。

 

「私は彼はいい人だと思うなァ」

 

「あんたの性別を当てたから? なんか頭が痛くなってきたわ……」

 

 私のつぶやきにミキータは肩をすくめてやれやれというポーズをとる。だって、嬉しかったんだもん。

 この一味だとサンジ以来初めて女の子扱いしてくれたし……。

 

「おめェら、何のために付いていった!? こういう暴走を止めるためだろうが!」

 

 ゾロはサンジとナミがルフィを止めなかったことを割と本気で叱っていた。

 

「「面目ねェ……」」

 

 普段はゾロに言い返すサンジが素直に頭を下げている。

 これはかなりやらかしたと思っているということだ……。

 あれ? こんなにブルックの第一印象って悪かったっけ? このままだと、仲間にしないなんてことも……。

 

 こうなったら――。

 

「まぁ、立ち話もアレだしご飯でも食べていくかい? ウチの自慢のダイニング案内するよ!」

 

「おめェは真面目そうな顔してんのに、クレイジーだな……。まァ、スーパーなおれが造ったキッチンを見せてェ気持ちは分かるが」

 

 私がブルックを食事に誘うと隣に立っていたフランキーがギョッとした顔をする。

 とりあえず、交流して彼の人となりを知ってもらえれば何とかなるかもしれない。

 

「おっ、飯かァ! 腹減ったしいいな! サンジー、飯作ってくれ!」

 

「ヨホホ! それでは遠慮なく!」

 

 こうして私たちはブルックと共に食事をすることとなった。

 上手く打ち解けられれば良いけど……。

 

 

 

「今日はなんて素敵な日なんでしょう! 人に会えた! この霧の深い暗い海で、たった一人舵のきかない大きな船にただ揺られてさ迷うこと数十年! 私、本っっ当に淋しかったんですよ! 淋しくて怖くて! 死にたかった! 長生きはするものですね! 私にとってあなた達は“喜び”です! ヨホホホホ!」

 

 食事が一段落すると、ブルックは自らがヨミヨミの実の能力者の元海賊で仲間が全滅してから何十年もの間、孤独に耐えていたことを明かした。

 私なら精神が死んでしまう……。というか、この人は重い過去を持つ人が多いワンピースの世界でも悲惨なキャラクターで1番を争えるかもしれない……。

 

「あなたが私を仲間に誘ってくれて……、嬉しかったです。どうもありがとう。だけど断らねばなりません。私は影を奪われ、太陽の下で生きてはいけません。私はここに残り、影を取り返せる“奇跡”の日を待つことにします! ヨホホホホ!」

 

 そして、影が何者かに奪われて日光の下に行くと死んでしまう身体となったことを明かしたブルックは仲間になる件を固辞する。

 ルフィと私は奪い返すと説得したのだが、人の良い彼は首を縦に振らなかった。

 

 そうこうする間にスリラーバークが顔を出し、ブルックは上陸せずに脱出するようにと忠告して海を走って去って行った。

 

「さて、ブルックはああ言ったけど……。ここを放っておくなんて……、出来ないよね?」

 

「そうか! ライアも冒険に行きたいか! しょうがねェやつだなァ!」

 

 ルフィはスリラーバークをニコニコしながら眺めて、私の肩を組んだ。

 

「バカなの! 2人とも!! こんなにヤバそうで何なのか分からない島、あいつの言うとおり――」

 

「キャハハ……、無駄よ、ナミちゃん。ライアはともかく、あの状態の船長は止められない……」

 

 青ざめた顔をするナミにミキータは苦笑いしながら観念するように忠告する。

 実際、ここの人たちはブルックを含めてかなり悲惨な状況だったし、放置するのは可哀想なんだもん。

 

 スリラーバークの冒険が始まった――。

 




サニー号の飛距離がミキータ有りだと、とんでもないことになりました。キロキロの実がチートすぎる……。
スリラーバーク編はライア視点だと引き伸ばし所が少ないので結構早く終わりそうです。

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