ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう   作:ルピーの指輪

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いつも、感想をありがとうございます!
ついにカヤとの別れのときが……。
正直、残念です!でも、シロップ村に留まるわけにはいきませんので先に進みます!


ゴーイングメリー号

 私とルフィたちはカヤの屋敷を目指して歩いている。

 

 それにしても、あのクロを相手に勝てたのは良いけど課題が山積みだった。

 まず、先読みしても銃撃があまりに当たらない。

 それは私の身体能力の無さが原因だ。

 

 引き金を引いて銃弾を放つのにどうしたって時間がかかるし、脳が命令を出して銃口を相手に向ける動作も遅い。

 身体能力が高い相手に攻撃を当てるのは、とっさに危機を察知して避けるのとは難易度が違う。

 要するに、身体能力のある程度高い相手と戦うと、どちらの攻撃も当たらない状態が続きそうなのだ。

 

 クロの敗因は杓死を使ったことだ。あれは超スピードだけど自分の意志がない。

 だから、時間をかけて精神を集中させた時にだけ発動する見聞色の極みである未来視を使って確実に当てることが出来た。

 私は最初からクロに杓死を使わせるまでが勝負だと思っていたのだ。

 

 しかし、杓死と同等の速さと言われる六式使いの(ソル)なんかを使われたら、未来を見る前にやられるか、未来が見えても避けられるかの、どちらかの結果になることが浮き彫りになってしまった。

 

 だからこそ、私は考えなくてはならない。工夫して攻撃を当てる方法を――。

 

「おーい、ライアー。どうしたんだァ? さっきから黙ってて」

 

 首を伸ばしたルフィの顔が逆さまになって目の前に出てきた。

 

「うわっ! ルフィ、君は普通に話しかけられないのかい!?」

 

 私はビクッと少しだけ跳ね上がり、ルフィに抗議する。

 ゴム人間なのは知ってるけど、間近で珍妙な動きをされると死ぬほどびっくりするものだ。

 

「しかし、悪魔の実の能力者なのには驚いたな。私も海には何度も出ているが、初めて見たよ」

 

 私はルフィのほっペを引っ張りながらそう言った。なるほど、面白いくらいに伸びるな……。

 やっぱり、悪魔の実は凄いなぁ。漫画だとバーゲンセールでもやってるみたいに能力者っていたけど、実際、東の海(イーストブルー)では全くと言っていいほど能力者には出くわさなかったんだよねー。

 

 悪魔の実は本当に貴重品なのだ……。

 

 

 そんなことを話してる内に私たちはカヤの屋敷についた。

 

「カヤ、昨日はよく休めたかい? 辛かったらいつでも言うんだよ」

 

 出迎えて、冷たい飲み物まで用意してくれたカヤに私はそう声をかけた。

 

「もう、ライアさんたら、皆さんが見てるのに子供のような扱いをしないで。あのね、ライアさん。私、あの夜からちょっとだけ元気になったの――。私の病気って両親を失った精神的な気落ちが原因だったんだけど、あの時、あなたから元気をもらったから――」

 

「へっ? あの夜って、ああ……」

 

 カヤが言っていることがナニを指しているのか理解した私は顔が熱くなるのを感じていた。

 彼女も自分で言って自分で赤くなっている。

 

「なんだァ? あの夜ってェ? どうして、お前ら、顔が赤いんだァ?」

 

 ルフィが私たちの顔をチラチラ見て不思議そうな声を出したので、私たちはハッとする。

 

「そっそれより、私たちを呼んだのって何かがあったのかな? カヤ……」

 

「えっ、ええ。ライアさんが旅に出ることは知ってたから、プレゼントを内緒で用意してたの。どうせなら、お仲間さんたちにもお見せしようと思って……」

 

 私たちは話題を変えようとドキドキしながら、話していた。

 胸に寂しさを抱えながら。

 

「プレゼント? ライアへのプレゼントが、何で私たちにも関係があるのよ?」

 

 ナミが当然の疑問を口にする。

 カヤには悪いが、彼女のプレゼントには察しがついていた。

 しかし、私へのプレゼントととなると、些か申し訳ない気持ちになってしまう。

 

「ナミさん、それには理由があるのです。お呼びしていて申し訳ありませんが、岬まで歩いて貰えませんか? そろそろ、メリーが準備を終わらせている頃ですから」

 

 

 そんな訳で私たちは岬に向かって歩いて行った。

 

 

 そう、そこにはあの船が停泊していた。

 

 私はこの船の名を知っている――

 

 

「少々古い型ですが、これは私がデザインしました船で、カーヴェル造り、三角帆使用の船尾中央舵方式キャラヴェル、"ゴーイングメリー号"でございます。航海に必要そうなものは全て積んでおります」

 

 にこやかに笑いながら私たちに船の説明をする。

 私の予想どおり、待っていたのは麦わらの一味と大冒険を繰り広げた船――“ゴーイングメリー号”だった。

 

 しかし、生で見ると迫力があるなぁ。いや、そこまで大きくないんだけど、色んな補正がかかって凄い船に見えてしまう。

 

 この子に無茶をさせることが分かっているから少々申し訳ない。なるべく大事に扱おう。

 

「すっげェ! ライアぁ、お前! すっげェもン貰えたなァ!」

 

 ルフィは表情筋をフル活用して、活き活きとした表情で喜びを顕にする。

 

「カヤ、こんな素敵なモノを良いのかい? 正直、驚いてるよ。君は私が海に出ることを嫌がっていると思ったからね」

 

 私はカヤの瞳を見つめながら、そう言った。

 彼女の寂しそうな顔が長い付き合いの私には通じていたから。

 

「もちろん、寂しいわ。体の半分がどこかに行ってしまうくらい……。でもね、それでライアさんを縛り付けるような嫌な女にはなりたくない。だから、待ってます。帰ってくると信じて」

 

 ちょっと困り顔をしながら、カヤは笑顔を作る。目に溜まっている涙を流すのをグッと堪えて……。

 

「――別れの挨拶なんて、さ。もう会えないみたいだから言わないけど、帰ってくるよ、絶対に! 愛してるよ、カヤ! 君を世界中の誰よりも!」

 

 そう言うと私は彼女を思いきり抱きしめた。

 もう、しばらく彼女に会えない。でも、私の心はいつだって君と共にいる。

 

「ライアさん、私もあなたを愛してる! だから! どんなことがあっても生きていて、お願い!」

 

 泣かないって決めてたのに、いつしか2人揃って泣いていた。

 お互い繋がっていた魂が引き裂かれるような感覚に耐えられずに……。

 

 

 

「ということで、船は手に入ったから良かったね」

 

 私はルフィたちに向かってそう言った。

 

「お前、よく何事も無かったって顔で話を戻せるな」

 

「あなたたち、少しは人目ってモノを気にしなさい! こっちがリアクションに困るわよっ!」

 

「にしし、おめェら仲いいなァ! あっはっは!」

 

 抱きしめ合って、泣きながら「愛してる」とか10分くらい言い合っていたが、すっかり彼らのことを忘れていた。

 

 ゾロは気まずそうに顔を背け、ナミは呆れ顔をしており、ルフィは平常運転だった。ルフィは凄いな、さすが海賊王になる男だ。

 

「あはは、ごめんごめん。カヤは大切な人なんだ。やはり、これから別れるとなると、寂しくてね」

 

 私は笑って誤魔化そうと必死だった。だって、カヤに会えないの辛すぎるんだもん。

 

「ライア……、寂しさのあまり私に手は出さないでね……」

 

 ナミは自分の体を守るような仕草をする。人を見境なしみたいに言わないで頂きたい。

 好きになった人が偶々女の子だっただけで、女の子だから好きになった訳じゃないから、その点は誤解しないでほしい。

 

「出さないから、それだけは心配しないでほしい。いくら君が美人で魅力的な女性でも、そんな事はしないよ」

 

「「そういうとこを、直しなさい!」」

 

 私がナミにそう言うと、なぜかカヤまで怒り出して、同時に同じセリフを言ってきた。

 別に思ったことを口に出しただけなんだけどなぁ。

 

 

 そして、出港のときは訪れた――。

 

「ライアさん、私は医者になる! そして、今度会うときはもっと強くなるわ。あなたが私にしてくれたことに応えたいから」

 

 最後にカヤはそう私に宣言をした。

 

「そっか。優しい君にはピッタリだね。楽しみにしてるよ。――あれ? そのコインは……」

 

 カヤの右手には、先日、私が射抜いて穴を空けたコインがあった。

 

「これは私のお守り。あなたが頑張って、努力して、強くなった証拠だから、これを見て私も頑張るの!」

 

 そう彼女は言うと大事そうにコインを握りしめた。私は彼女がこれまでにない強い意志を見せてくれたことが堪らなく嬉しかった。

 

「じゃあ、私もお守りを貰おうかな」

 

 私はカヤの顔を見ながらそう言った。

 

「えっ、私はそんなの用意……んっ……」

 

 彼女の顔を両手で撫でるように触りながら私は彼女の唇を奪った。

 

「んっ……、はぁ……、もうライアさんたら、いきなりなんだから……」

 

 頰を紅潮させながらカヤは俯き私に抗議する。

 

「海賊になったからね。一番最初に一番奪いたいものを奪ったまでさ」

 

「――絶対に浮気したらダメよ。ぐすっ……、行ってらっしゃい」

 

 そして、真っ直ぐに私を見て彼女は送り出してくれた。ありがとう、必ずここに戻ってくるからね……。

 

 

 麦わらの一味を乗せたゴーイングメリー号はシロップ村を出発した――。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「できたぞ! 海賊旗! あっはっはっは!」

 

 ドンと、自信満々の顔をしてルフィは自らがデザインした海賊旗を私たちに見せてくる。

 

 いやはや、これは中々前衛的だなぁ。

 

 ゾロもナミもあからさまに嫌そうな顔をしている。私もちょっと個性的すぎて嫌かなぁ……?

 

「ルフィ、面白そうなことをしてるじゃあないか。どれ、私も一つ描いてみよう」

 

「おう、いいぞォ! どっちがうめェか勝負しよう!」

 

 ルフィはニコリと笑って私に筆を貸してくれた。

 

 

「――よし、こんなものでどうだろうか?」

 

 私は前世で見たデザインを出来るだけ思い出して麦わらの一味のトレードマークの海賊旗を描いてみた。

 

「うん、すっごく上手!」

「ほう、やるじゃねェか!」

 

 ナミとゾロは内心ホッとしたのか、やたらと私の描いた海賊旗を褒めてくれた。

 

「うォォォ! かっけェ! よし、ライア! 今度はこっちだ!」

 

 ルフィも素直にクオリティの差を認めてくれて、今度は帆に大きく同じマークを描くように急かしてきた。

 

 というわけで、ゴーイングメリー号は見事に海賊船となり、長い航海に出かけたのであった。

 

 

「なぁ、ライア。大砲をちょっと使ってみてくれよ」

 

 海賊旗の次は大砲に興味が行ったルフィ。まったくもって落ち着きがない。

 まぁ、テンションが上がるのもわかるけど。

 

「いいよ。一回、試運転がてら使ってみよう」

 

 彼の熱意に押されて私は大砲を使うことを承諾した。そういえば、この流れって……。誰か名前は忘れたけど犠牲になったような……。

 

「へぇ、銃以外もイケるのか興味がある。おれも見せてもらおうか」

 

「そうね。もしも、海戦になったらあなたが頼りだもん」

 

 私の大砲での狙撃の腕を確かめるべく、ゾロとナミがマジマジと見つめてくる。やだ、照れちゃう……。

 

「船長命令じゃあ仕方ない。大砲は扱ったことないから大したことは出来ないかもしれないが……」

 

 私は敵襲とかではないので、十分に集中して――大砲の砲弾を放ったッ――。

 

 轟音と共にすぐ手前の海中に砲弾が沈み、大きな水しぶきを上げる。

 

「――あら、銃撃は凄いけど、こっちは失敗?」

「まぁ、気にするな、ライア。失敗するときも――。――ッ!? 何だ!? これは――」

 

「さっ、魚だァ! 魚が空から降って来たぞォ!」

 

 船内に降ってくる魚たちを見て、ルフィたちは驚きの声を上げていた。これは、食料不足の時に使えるな。

 

「その辺に魚群の気配を感じたからね。狙ってみた」

 

「おっ、お前、魚の気配までわかるのかよッ!」

 

 ゾロはギョッとしたような表情で私を見た。

 

「うん、集中すれば、生きものだけじゃなくて、植物や物質の気配もわかるよ」

 

「やっぱり、これって超能力なんじゃない?」

 

 ナミはビチビチと動いている魚たちを眺めながらそんなことを言う。

 

「どうかな? 誰でも使える技術だと私は思ってるけどね。ルフィやゾロだって、そのうち出来るようになると思うよ」

 

「へぇ、おもしれェ……。誰でも使える技術か……」

 

 ナミの言葉に返事をしたら、ゾロは目をギラつかせながらニヤリと笑った。

 ちょっとは、いい刺激になったかな? 残念ながら、私も理論的なことが分からないから口で説明は出来ないけど、彼らのセンスなら見て真似られそうだ。

 

 そんなふうに、私が質問に答えていると、ルフィがトントンと、私の肩を叩いてきた、

 

「じゃあさ、次はあれを狙ってくれよ」

 

 ルフィは孤島にある岩を狙うように指示を出した。

 私は孤島から2人の人間の気配を感じた。1人の気配はかなり弱っている。

 そうだった、確か壊血病にかかって死にそうな人が居たんだった。

 

「構わないけど、あそこには人がいるみたいだ。2人ほど、ね。しかも1人は死にかけてる……」

 

 私がそう言うと、ルフィはあの孤島に船を近づけるように指示を出した。

 

 

 孤島に居たのはゾロの知り合いの賞金稼ぎ、ジョニーとヨサク……。居たな、こんな人たち……。賞金稼ぎやってたけど、一回も出会わなかった。

 

 ヨサクが壊血病で倒れていたので、ライムを絞って飲ませると、すぐに彼は回復した。

 ん〜、どう考えてもそんなに直ぐに元気になるはずないんだけど……。あっ、倒れた……。

 

 

「申し遅れました。おれの名はジョニー!」

 

「あっしはヨサク! ゾロのアニキとはかつての賞金稼ぎの同志! どうぞお見知りおきを!」

 

 サングラスをかけた黒髪の男、ジョニーと、変な額あてと、短パンにコートという独特のセンスの男、ヨサクが私たちに自己紹介した。

 

 

「それにしても、壊血病に限らず日々の体調は食べ物に依存するからね。ヨサクのことは私たちにも他人事じゃないんだよ」

 

 私は海上レストラン、『バラティエ』に向かう方向に話を持っていこうとした。

 

「確かに、だが、おれは料理なんざできねェ。ライア、お前は器用そうだから出来るんじゃねェのか?」

 

 ゾロは私にそんな質問を投げかけた。

 

「いや、まったく出来ないわけじゃないが、素人の域は出ないよ。長い船旅に限られた食材。これをバランス良く配分するのは、やっぱりプロの料理人じゃなきゃ」

 

「お金取って、私がやってもいいって言おうと思ったけど、そこまでは無理ねぇ」

 

 私がゾロの質問に答えると、ナミが首を横に振ってそう言った。

 

「そっか〜! コックかー! そうだよなァ! コックが居れば毎日うめェもンが食えるもんなァ!」

 

 ルフィはコックの加入に興味を持ったみたいだ。よし、この流れなら。

 

「なるほど、コックをお探しなら、海上レストラン『バラティエ』はどうですかい? 確かこの近くの海域にあるはずですぜ」

 

 上手いこと、ジョニーがそんなセリフを言ってくれたおかげでルフィが乗り気になり、私たちは海上レストラン『バラティエ』に行くこととなった。

 

 『バラティエ』には次の仲間のサンジが居る。仲良くなれるか不安だけど、早く会ってみたいなぁ。

 そんなことを考えてると、ゾロがジョニーに何事かを耳打ちされて、殺気を漲らせていた。

 

 そうだよね。『バラティエ』では彼が――。

 

 麦わらの一味の次の目的地は海上レストラン『バラティエ』……。私の冒険が始まった――。




百合展開の霊圧が……、消えたッ……だとッ!? でも、復活させたいです。
浮気はさせませんけど、ライアのイケメン設定は思う存分暴れさせたいと思います!
次回はいよいよ、コックの王子様の登場です!

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