ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう 作:ルピーの指輪
今回でスリラーバーク編は終了です。
それではよろしくお願いします!
「さて、あいつにそろそろ引導をくれてやろうじゃないか」
「手伝うぜ……、ライア。ハァハァ……、ルフィに何が起こったのか知らねェが、十分な追い込みだ……」
私とゾロはお互いの武器を構えてオーズと対峙する。
「あと一撃加えられれば! あいつを倒せる!」
ルフィも何とか立ち上がり、ロビンとブルックに頼み事をして上に飛ぶ算段をまとめているようだ。
「し、信じられねェ。コイツら微塵も諦めてねェ……!」
ローラたち、影を奪われた被害者たちはいち早くこの場から離れて避難を開始した。
「天候は“雨”! “レイン・テンポ”!!」
ナミが雨を降らせてオーズをずぶ濡れにする。
「キャハハ! 回すわよォォ!」
「発射! 特大冷蔵庫の超低音冷気砲!」
フランキーが即興で作った冷気砲でオーズの半身を凍らせた。
「ゾロ! オーズの腹を引かせて!」
「任せろ! 三刀流! 奥義! 三千世界!」
チョッパーの指示でオーズをゾロが切り裂き、彼の腹を引かせることに成功する。
「今だな! 行くぞ!」
サンジはオーズに巨大な鎖を巻き付けて、それを巻き上げることで彼を直立させた。
「人間の背骨は本来S字になっている事で衝撃を緩和する。それが真っ直ぐに伸びきると衝撃は逃げ場をなくして全てのダメージを受け止めることとなる! オーズの背骨を一直線に伸ばすんだ!」
チョッパー曰く、今のオーズの状態は全身にダメージが行き渡る状態にあるということみたいだ。
「特大バズーカを食らえ!」
ルフィが“ギア3”を発動して、オーズにトドメをさそうと空から降ってくる。
しかし、オーズもゴムゴムのバズーカのポーズを取っており、これを迎撃しようとしていた。
よし、援護するぞ!!
「――必殺ッッッ!
オーズの右腕のもっとも損傷の激しい部分に、私は内部破壊を行うことが出来る弾丸を飛ばして命中させる。
「あ、あれ? 右腕が上がらない……!?」
オーズの右腕の骨が砕けて、彼は腕を動かせずにいた……。
よし、今だ! ルフィ!
「ゴムゴムのォォォォ!
ルフィの強烈な一撃がオーズの顔面に命中し、その衝撃は彼の背骨を粉砕する。
この攻撃によって、オーズの体は完全に破壊された。
「「やった〜〜〜!!」」
見守っていたローラたち被害者の会は歓声を上げて喜んでいた。
しかし、まだ終わっていない。中にいるモリアが依然として無事だからである。
「航海を続けてもてめェらの力量じゃ死ぬだけだ……。“新世界”には遠く及ばねェ! 筋のいい部下が揃っているようだが全て失う! なぜだかわかるか? おれは体験から答えを出した。名を馳せた有能な部下をなぜおれは失ったのか……。仲間なんざ、“生きている”から失うんだ! 全員初めから死んでるゾンビなら何も失うものはねェ! ゾンビなら不死身で替えのきく無限の兵士! おれは死者の軍団で再び海賊王の座を狙う!!」
モリアの持論はどこか寂しげで自暴自棄な感じがしていた。
そう言う割に、ペローナ、ホグバック、アブサロムといった生きている部下も持っていたということは矛盾してるのではないかと、私は思った。
「うっ……、影が……」
モリアが切り札である能力――
まだ、心臓が動いているから辛うじて意識はあるみたいだが、苦しそうにしている。
「――もう少しだけ……、時間を……」
シンドリーは1000体分の影を吸収して巨大化したモリアを見ながら、静かに呟いた――。
「君は……」
彼女もまた私たちと同様にルフィの勝利を疑ってなかった。
そもそも、この勝負はすでに私たちが勝っている。
モリアはあの巨大なパワーをコントロール出来ていない。あの変身は朝日が昇るまでの時間稼ぎなのだ。
「“ギア
体から蒸気を吹き出しながらルフィは切り札である“ギア
ここからルフィの猛攻がモリアを追い詰める。1段階強くなった彼の強烈な攻撃を受けてモリアは次々と影を吐き出していった。
しかしモリアも粘り強く応戦して時間は過ぎるのに中々倒れてくれない。
そんな中、ゾロやサンジたちと同様に影を奪われて日向にいるせいで、体が消えかけているのにも関わらず、ルフィを応援し続けていたローラが叫び声を上げた。
「帰ってきなさいよ! 生まれた時からずっと一緒だったじゃない!!」
彼女の声と共に、ルフィも叫んだ。
「おれの影にも一言あるぞ! お前っ! 海賊王になりてェんなら、しっかりおれについてこいっ!!!」
ルフィはその声と共に凄まじい勢いでモリアの腹に体当たりを仕掛けた。
モリアは断末魔のような声を上げて、口から大量の影を吐き出していった――。
「み、みんな!!」
しかし、それと同時に朝日が完全に大地を照らしてきたので、影を奪われた仲間たちが消え去ろうとしていく。
私はその光景を見て血の気が引いてしまった――。
「はぁ、心臓に悪い……。みんな無事で良かったよ……」
ギリギリのところで、全員の体は無事だった。
モリアから排出された影が元の持ち主の場所に帰って行ったからだ。
しかし、彼女には影はない……。借り物の影で動いていたから……。
「ありがとう……。一晩だけの短い付き合いだったけど……。私にとって、この自由な時間は最高に幸せな時間だったわ……」
シンドリーは横たわったまま、私の手を握りしめて自分は幸せだったと言う。
そんな……、この人は酷い目に遭わされて来たのに……、どうしてそんなことが言えるんだろう? でも――。
「――君のことは決して忘れない。私の胸に君との想い出を刻むと約束するよ……」
私は彼女のことを記憶に刻み込む。ずっと、ずっと……。
「――うん。前の人生では好きな人にお別れも言えなかったから……。今度は満足……かな……。ふふっ……」
「シンドリー……」
彼女は最期に笑った。朗らかに……、満足そうな顔をして……。
「さよなら。ライア……、また、生まれ変わったら……、次は――」
そして、別れの言葉を呟くと……、目を閉じて……、動かなくなった……。
気付けば私は泣いていた。声も出せずに、ただ涙をこぼして……。
「――ほら、顔を拭きなさい。この子もあんたのそんな顔は見たくないと思うわ……」
それを見兼ねたのか、ミキータは私にハンカチを渡す。
「すまない……。あとで、彼女を埋葬しなきゃ……」
「
私のセリフにミキータは不思議そうな顔をした。
そう、私は今、悲しみに暮れる余裕がないことを思い出したのだ……。
この島にいるもう一人の七武海――バーソロミュー・くま……。
『世界政府より特命を下す。麦わらの一味を含むその島に残る者達全員を抹殺せよ』
「た易い……」
政府からの指示を電伝虫で伝えられたくまは、私たち全員の抹殺に動き出した。
「キャハッ……! あれ、嘘よね……。“暴君”が……、何故ここに……!」
ミキータはくまの存在に気付いて、青ざめた顔をする。
「何故かなんて考える時間はないよ。ミキータ。やらなきゃ、やられる……」
私は離れた場所にシンドリーの遺体を安置すると、
「その通りだ。覚悟を決めろ……! 災難ってのは畳み掛けるのが世の常だ……!」
ゾロも私の横に立って刀を構える。
私たちは同時にくまに向かって攻撃を加えた。
「――必殺ッッ! 雷光彗星ッッッ!!」
「――百八煩悩砲ッッッ!!」
私はくまの体が機械だということを知っているので、
ゾロも遠距離からの飛ぶ斬撃でくまを攻撃した。
しかし、バーソロミュー・くまは強かった。
私とゾロの同時攻撃をニキュニキュの実の能力で軽く弾き返したくまはそのまま、圧縮された空気の塊である“つっぱり
なんで、肉球人間がこんなに理不尽に強いんだ? 何でも弾いて、その上攻撃にも転じられるって……。
そもそも、モリアとの戦いで満身創痍な私たちは徐々に追い詰められてしまった――。
「お前たちの命は助けてやろう。そのかわり”麦わらのルフィ”の首一つ、おれに差し出せ。その首さえあれば、政府も文句は言うまい。さぁ、麦わらをこっちに……」
そんな私たちを見兼ねたのか、くまが取り引きを持ち込んできた。
ルフィの命と引き換えに私たちを助けると――。
そんな取り引き、到底飲み込めるはずもなく、私たちは声を揃えて叫ぶ。
「「断るッ!!」」
私たちはくまの譲歩を突っぱねて、戦いを続けようとした。
しかし――。
「“
くまによって、超圧縮された空気の塊が解放され、私たちはそれに飲み込まれて、全員が吹き飛ばされてしまった――。
◇ ◇ ◇ ◇
「――み、みんな……。ぞ、ゾロが居ない……、まさか……!!」
私が目覚めたとき、仲間たちは皆倒れて気絶していた。ただ一人を除いて……。
漫画ではゾロが自らの命と引き換えにルフィを救おうとしていたことを思い出して、彼の気配を探って駆け出した――。
「が、ああああああっ……!!」
彼を見つけたとき、私はまた泣きそうになってしまっていた……。
ルフィの受けた全ダメージを自らが引き受けている最中であろうゾロは、体中から血を吹き出して、苦悶の表情を浮かべていた。
「ゾロ!!」
「ぐっ……、ハァハァ……。ら゛、ライ゛ア……、てめェ……、誰にも言うな゛よ……、ハァハァ……。――こごでは……なにもな゛かった……!!」
彼は凄い剣幕で私のことを睨みつけて、誰にも言うなと私に告げる。
「――ライアちゃん。こいつは一体……!」
そんな中、サンジもこっちに駆けつけて、血溜まりの中で仁王立ちしているゾロを見て顔を青くした。
「…………いや、私も今来たところで何があったのか分からない。とにかく、チョッパーの元に――」
私は血まみれのゾロを抱きかかえて、チョッパーの元へと運ぼうと歩き出した。
「――おい、女がおれ゛を運ぶのかよ゛!?」
「あははっ……、ゾロが私を女の子扱いか……、こりゃ雪が降るな……」
ゾロは私が彼を抱きかかえていることに悪態をつくので、私はそれを流す。
「てめ、あ゛とで覚えでろ……!」
「クソ野郎! 口を閉じて大人しくしやがれ……! ライアちゃん、やっぱりおれが運ぶぜ!」
そんなゾロを見てサンジは自分が彼を運ぶと言い出してきた。
まぁ、彼は紳士だから女の私にそれをさせたくないのはわかるけど……。
「いや、この中で1番傷が少ないのは私だから……、このくらいさせてくれ……、頼むよ」
サンジもボロボロになっている。だから、1番ダメージの少ない私がゾロを運びたかった。
この戦いで何の役にも立たなかったから――。
ゾロをチョッパーに診せて、すぐに私はシンドリーの遺体の元に向かった。
そして、彼女をスリラーバークの中から見つけた棺桶に入れて埋葬する。
安らかに眠ってくれ……。
そのあと、チョッパーとナミとミキータが花をどこからか見つけて来て、一緒に供えてくれた。
さらにその後、フランキーが気を利かせて立派な墓を作ってくれる。私はみんなの優しさが嬉しかった――。
◇ ◇ ◇ ◇
「ラブーンが元気だとわかった、影も戻った、魔の海域も抜けた、これはもう私一人が昔を懐かしむ為の歌ではなく、ラブーンに届ける為の歌! 辛くない日などなかった……、希望なんて正直見えもしなかった……、でもねルフィさん! 私! 生きててよかったァ!! 本当に生きててよかった!! 今日という日が! やって来たから!!!」
ラブーンの無事を聞いて、仲間たちと最期に歌った“ビンクスの酒”を記録した
「あ、私仲間になっていいですか?」
「おういいぞ」
そして、仲間になりたいと願う彼の想いをルフィはすぐに受け取る。
というわけで、“麦わらの一味”の新しい
「通称“鼻唄のブルック”、懸賞金3千300万ベリー! 昔、とある王国の護衛戦団の団長を務め、その後、ルンバー海賊団船長代理“音楽家兼剣士”。今日より麦わらのルフィ船長にこの命! お預かりいただきます! 骨身を惜しまず頑張りますっ! ヨホホホホホー!!」
うーん。彼は仲間になるというより、ルフィに忠誠を誓ったって感じだな……。
それから、2日が経ち……、ゾロの容態も安定してきたので、私たちは出航することとなった。
「これあげる、ナミゾウとミキタロウは
「これなぁに?」
「キャハッ! ただの紙に見えるけど……」
ローラは自分の母である四皇である“ビッグ・マム”の“ビブルカード”をナミたちに手渡した。
ローラとナミとミキータは猪ローラの件があったからなのか直ぐに打ち解けて仲良くなっていた。
特にナミは猪ローラに助けてもらったらしく、宝をあげるとまで言う始末である。
私はローラに男に間違われて求婚され、さらに女だと告げるとまた求婚された。
どうやらシンドリーが猪ローラに言い放ったセリフが影に刻み込まれて、女同士でも恋愛関係になれると気付いたとか言っていた。
どうにか、私は故郷に恋人がいることを話して引き下がってもらったが、彼女は恋愛対象がシンドリーのおかげで倍に増えたとご満悦だった。
これは、彼女にとって良いことなのかどうか、私には分からない。
話を“ビブルカード”に戻そう。
ビブルカードとは新世界にしかない物であり、自分の爪を練りこんで造られた特殊な紙で、別名“命の紙”とも呼ばれている。
離れていく家族や恋人に破った一部を持たせると、離れたカード同士は世界中どこに居ても引き合うから、相手のいる方角がわかる、という便利な代物だ。
その説明を聞いたルフィはエースに貰った紙がビブルカードだということに気が付いて、麦わら帽子からそれを取り出した。
「あり? ちょっと焦げて小さくなっているぞ……」
ルフィは焦げて縮んでいるビブルカードを手のひらに乗せて不思議そうな顔する。
やはり――こうなってしまったか……。
「気の毒だけど、この人の命! もう消えかけているわよ!!」
ローラはエースの命の灯火が消えかけていることを告げた。
おそらく、エースは黒ひげに負けて、海軍に捕まりインペルダウンに収監されてしまっているのだろう。
頂上戦争はこの世界でも起こってしまいそうだな……。
私がこの海に出た目的は父親であるヤソップに会うこと……。
漫画だと、赤髪海賊団はあの場所にやってくる……。
力不足は自覚している。自殺行為に近いことをしようとしてることも……。
私はルフィよりも数段弱いのだから……。
だが、ここまで来たからには逃げるつもりはない。
拳を握りしめて、まだ見ぬ未来の戦いに私は想いを馳せていた――。
最後まで、シンドリーがヒロインだったスリラーバーク編は如何でしたでしょうか?
メンヘラ化しても女たらしを止めないライアを描いていて、ダメだコイツとか思ったのは内緒の話です。
この先の章分けなんですけど、場面の移り変わりが早いので1つにまとめようと思います。
なので、次回からいよいよ頂上戦争編ということで新しい章を開始します。前半戦のクライマックスです。
とにかく登場キャラクターが多い、この章を書くのは非常に不安ですが頑張ってみます。