ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう 作:ルピーの指輪
今回でシャボンディ諸島から舞台を移します。
それではよろしくお願いします!
「あれは、バーソロミュー・くまではない……! 気配が違う……!」
3日間の逃亡生活をしようとした矢先に目の前に現れたのは七武海のバーソロミュー・くまとそっくりの人間兵器――パシフィスタ……。
強力なレーザー光線を放ち、肉弾戦も強く、その上、鋼のように硬い身体を併せ持つ厄介な敵だ……。
「でも強いわ。私のJETスイングを食らってもビクともしないもの……」
ミキータやチョッパー、そしてフランキーが各々の必殺技を放ったが効果は芳しくなかった。
さて、どう攻めるか……、だが……。
「ゲフッ……、ガバッ……」
「ゾロっ……!?」
「ほっとけ、んな奴! まずはこいつをどうにかするかだ!」
ゾロはスリラーバークでのダメージが残っていて苦しそうだな……。
無理もない。満身創痍のところにルフィのダメージを注入したんだ。生きてることがそもそも不思議なくらいだ。
「――体は確かに硬いみたいだけど……。口の中はどうかな? ――必殺ッッ!! 雷光彗星ッッッ!!」
私は口からレーザーを放とうとしている瞬間を見極めて口の中に電撃を帯びた弾丸を放つ。
「ガガ……ッ!!」
するとパシフィスタは膝をついて、壊れた機械のような音を出した。
「あいつの様子が変わった! ライアの攻撃が効いたんだ」
「なるほど。何かがショートしたような音がした。確かに体は硬ェが、肌から血は出る。おれと同じ、体中を兵器だらけにした元は生身の人間ってわけか」
フランキーは自らもサイボーグなので、いち早くパシフィスタの本質を見抜く。
よし、弱点は浮き彫りになったぞ。
「ナミさんッ! 危ねェ!!」
「しまった!」
しかし、攻勢になったと思ったのも束の間、パシフィスタは口を再び開けて、ナミを狙ってレーザーを出そうとした。
「“
「さすが、ロビン。口の中でビームが暴発した――!!」
その瞬間、ロビンはパシフィスタの身体に巨大な四本の腕を生やして、強制的に口を閉じさせて、パシフィスタの口の中でレーザーが暴発させる。
「隙を見せたわね! “
さらにナミが
「効いてる……! でも、どうやら……、暴走しちゃったみたいだ……!」
これだけの波状攻撃の結果、パシフィスタは暴走して無差別に攻撃を繰り出すようになってしまう。
ここから、一気に決めないと面倒なことになりそうだ――。
「おい! こっちに飛ばせ!」
「ちっ! 無理しやがって!
ゾロの指示でサンジは燃える足から繰り出される強力な蹴り技で彼の方にパシフィスタを蹴飛ばした。
「“鬼気九刀流”! “阿修羅”!! “魔九閃”!!」
それを受けたゾロは3人になったと錯覚するほどの気迫を見せる大技で、パシフィスタに大ダメージを与える。
「よしっ! ルフィ、最後は君が決めてくれ!」
「“ギア
ボロボロになったパシフィスタにルフィがトドメの強力な一撃を放つ。
パシフィスタは巨大な拳に押し潰されて、ようやく沈黙した。
はぁ……。海軍の人間兵器一体を倒すのにこんなに苦労するなんて……。
確かに漫画で2年鍛え直すとルフィが判断したのは正しかったのかもしれないな……。
早速、疲労困憊気味の私たちはその場を直ぐに動くことは出来なかった。
――くそっ、こうしてる間にも……。
「サンジ……、気付いたかい? どうやらコイツは一体じゃないみたいなんだよ。そして、今もこっちに向かって近付いて来ている……」
「なにっ!?」
パシフィスタにPX4と書かれているのを見ていたサンジに私が声をかけると、みんなはギョッとした顔で体を起こした。
「まったく、やってくれるぜ! てめェら!!」
マサカリを担いだ男、戦桃丸がパシフィスタを引き連れて空から飛び降りてきた。
この男自体もかなり強いな……。確か漫画だと武装色の覇気も使っていた気がする。
「バラバラになって逃げるぞ! 3日後に会おう!!」
ルフィは素早く形勢が不利なことを悟って、逃げの一手を選択した。
さらに彼の判断でルフィ、サンジ、ゾロの3人は別々でバラける。戦力の集中を避けるといういい判断だ……。
でも――。
ゾロ、ミキータ、ブルックの向かった方向に大きな気配がいきなり現れる。
光の速度ってそういうことなのか……。神経を研ぎ澄ませていたのに、速すぎて接近に気が付かなかった――。
海軍本部“大将”――黄猿……。ピカピカの実の光人間……。
彼が出現して、一瞬でゾロがやられてしまう……。
「気を取られてるが、そんな暇はねェぞ!
「――ッ!? 痛ェ〜〜〜ッ!! あいつの攻撃なんか変だぞ!」
ゾロに気を取られたルフィは戦桃丸からキツイ一撃を受けて吹き飛ばされてしまった。
また、武装色の覇気か……。恐らく“新世界”は当たり前のように覇気使いが居るんだろうな……。
「言っとくがわいは能力者じゃないぜ。――それにしても、遅かったな。黄猿のオジキ」
「そうだ!! ゾロ――!!」
戦桃丸の言葉にルフィはハッとしてゾロの方を再び見る。
彼は大ピンチに陥っていた。
「くっ――! ハンマーが効かない!!」
「剣も効きません!!」
ミキータとブルックが必死でトドメを刺そうとする黄猿を攻撃するが
「
「妙なことはさせねェ!」
私が風の弾丸でゾロをエスケープさせようとしたが、戦桃丸がそれを邪魔する。
「ちっ!!」
「――ほう、わいの攻撃を躱すとは……、なかなかやるな! だが、ロロノアはこれで終わりだ!」
私は彼の攻撃をギリギリで避けるが、ゾロを助けることに失敗した。
「くっ、ゾロがこのままだとやられちまう! ゾロ〜〜〜!!!」
「移動もさせない。今死ぬよ〜〜!!」
黄猿は無慈悲にゾロに向かって、光の速度の蹴り技を放とうとする。
しかし――。その技は止められた――。
「「――ッ!?」」
「――あんたの出る幕かい? “冥王”レイリー……!!」
黄猿の攻撃を防いだのはレイリーだった。さすがは海賊王の船の元副船長……。
老いても尚、その大いなる力は健在だった。
「若い芽を摘むんじゃない! これから始まるのだよ……! 彼らの時代が!!」
レイリーは涼しい顔で黄猿の技を受け流し、私たちの味方をすると言い放つ。
だが、彼の加勢もこの状況を好転させるには足りなかった。
既に満身創痍な状況の私たちにとって、パシフィスタと戦桃丸の戦力だけで十分な驚異であり、一人、また一人と仲間たちが倒れていく……。
チョッパーが3個目のランブルボールを摂取し、暴走形態となるが、パシフィスタと戦桃丸と黄猿は暴走チョッパーの無差別攻撃を上手く避け、倒すことはできない。
私がどうにかしないと……!
「――必殺ッッ!! 爆炎彗星ッ!!」
「確実に急所を射抜く上手い狙撃だが……! 貧弱だな、9600万の狙撃手!!」
私は戦桃丸の顔面に一撃を入れることに成功するが、彼は涼しい顔をして私に反撃してくる。
「ライア!!」
「――私は大丈夫だ。ルフィ……! 君は自分の身を守れ!」
ルフィが倒されればこの一味は終わりだ。まさか、漫画とは違ってくまは現れないのか……。
このままだと、逃げ切れずに……。
そう思った矢先である。スリラーバークで覚えた気配を感じるのと共にゾロを抱えて逃げているミキータの絶叫が聞こえた。
「キャハハッ! 悪夢ね! もう一人出てくるなんて!!」
そこにもう一体のくまが現れた。今度はパシフィスタではない、正真正銘の七武海、バーソロミュー・くまが。
ミキータはフラフラになりながらもハンマーを構えてくまに立ち向かおうとする。
「――旅行するなら……、どこへ行きたい?」
しかし、くまはそんなミキータを尻目に、ゾロの体に触れて彼を消してしまった。
正確には吹き飛ばしたのだが、私たちには消されたように見えた。
「――はァ? ゾロくん!? ど、どこに!?」
ミキータはキョロキョロと彼を探す動作をするが、ゾロはどこにも居ない。
ここからは漫画と同様の展開だった。
まずはブルック、ミキータ、サンジが消し飛ばされた。
そして、パシフィスタが消されて、ナミと暴走状態で暴れていたチョッパー……、さらにはロビンまで……。
実際、彼のおかげで仲間たちの命は助かったのだが、そんなことはルフィには分からないし、さすがの彼もこの状況に参ってしまっているようだ。
「――おれは仲間を救えな゛い゛!」
「諦めるな! 前を向くんだ! ルフィ……!」
私はしつこく何処かに吹き飛ばそうとする、くまの掌底を躱しながら、ルフィに声をかけた。
「ライア? お前、まだ――!?」
「――ふむ。見聞色に特化しているタイプか……。面倒だ。後に回すか……」
くまは私を吹き飛ばすのを後に回して、ルフィを飛ばそうとした。
「――もう二度と会うことはない……」
「――今だ! ――必殺ッッ!! 銭形補物星!!」
私はくまの掌底がルフィに当たる寸前に、予め作っておいた新しい銃からロープ付きの手錠を彼に向かって飛ばして、腕を捕らえる。
この武器は海楼石の手錠を利用しても使えそうだな……。
私の賭けとも言える目論見は成功して、ルフィと共に私は吹き飛ばされた――。
さてと、ここから何とか頂上戦争に足を運べるように立ち回らなくてはならないな……。
「ちきしょー! みんなどこへ消えたんだよーー!」
「多分、私たちみたいに吹き飛ばされたんだよ。どこかにさ」
一緒に吹き飛ばされているルフィが叫び声を上げていたので、私はそれに対して返事をした。
「あれ? ライア! なんで、お前も一緒なんだ!?」
「ほら、腕を見てみな。手錠が付いてるだろ? 君が飛ばされる寸前にコイツで君を捕まえたから、私も同じく吹き飛ばされたということだよ」
私は手にしたロープを彼に見せながら、状況を説明する。
「い、いつの間に!? すげェな、ライアは。くまみてェな奴に襲われて、おれは何にも出来なかったってのに……」
ごめん……、ルフィ……。知ってたから用意してたんだよ。
そして、知ってたにも関わらず……、私の力が足りないから……、くまの襲撃をそのまま甘受するしか……、みんなを助ける方法はなかったんだ……。
「出来なかったことを考えるより、これから出来ることを考えよう。みんなが同じ状況なら全員生きてる可能性が高い」
私は自分にも言い聞かせるようにルフィの言葉にそう返す。
「そうだな! みんなでまた集まってサニー号で出発しよう!!」
ルフィは私の言葉で気を取り直して、前向きな考えになってくれた。
「ああ……。じゃあ、ルフィ……。私は疲れたから寝るとするよ……」
「寝るのか!? あんま、おれも寝る場所は選ばねェけどよ、この状況で寝ようって思えねェ……」
元気になったルフィの顔を確認した私が寝ようとすると、彼は珍しく私にツッコミを入れる。
パシフィスタや戦桃丸と戦って疲れていたし、これからひと悶着ありそうだから体力を温存したいだけなんだけどなー。
「だけど、あれだけの激戦の後だ。どれだけ飛ばされるのか分からないし、体力は出来るだけ温存した方がいい。私は君と違って貧弱だから尚更だ。大丈夫、海に落ちたら助けるって。こうやって、ロープは腕に巻いとくからさ」
「そっか、なら安心だ――。Zzzzzz……」
私が彼に寝る理由を話すと、直ぐにそれを受け入れて、ルフィはさっさと寝てしまった。
「くすっ……。私より直ぐに寝ちゃってさ。でも、それでいい。悩むよりも寝てリフレッシュするほうがよっぽどね……」
睡眠をばっちり取った私たちはドンドン海の上を飛ばされていって、とある島にたどり着いた。
ニキュニキュの実の能力は親切なもので、落下するときは、ボフンとクッションの上に落ちたような感覚で、怪我一つなく到着することが出来た。
うーん。ジャングルの中か……。果たして漫画と同じく女ヶ島に着いたのだろうか? 強い力を持つ気配は幾つも感じるけど……。
「さて、どうしようかな……。ん? ルフィ。何を見てるんだい?」
「レイリーから貰ったビブルカードがあるから、そっちに向かえば、みんなに会えるかと思ってよォ」
ルフィが何かを眺めていると思ったらビブルカードだった。なるほど、みんながそれを辿ると読んで、そっちに進もうとしたんだな。
「そうだな。その意見は正しいけど、結局私たちは海を越えなきゃシャボンディ諸島には行けないだろ? 幸いこの島には人が居るみたいなんだ。だからさ……」
「船を貰えねェか、頼めば良いんだな! そっか、よかった! 人が居んのかァ!」
私が人が居るということを、彼に伝えるとルフィは喜んで、人が居る場所に行こうと私を急かしてきた。
というわけで、私たちは人里を目指して歩くこととなった。
「何か昔を思い出すなー。子供の頃、じいちゃんに無理やり投げ込まれたジャングル。やっぱ思い出したくねェ」
「完全にトラウマになってるね……」
途中で腹が減ったとルフィが騒いだので、近くにいたイノシシを仕留めて焼いて食べた。
やっぱり、ただ焼くだけでもサンジが居るのといないのとでは味が大違いだな。正直言ってあまり美味しくない。
「ところでさ。ルフィ……。君が囓ってるのって、イノシシの肉じゃないよね?」
私はルフィが美味そうに食べているモノを指さして、質問した。
何か食べ物を持ち歩いていたのだろうか?
「ああ、これか? 何かその辺に生えてたキノコだ! 結構イケるぞ!」
「ふーん。その辺に生えてるキノコかァ……。――えっ!? お、おい! ルフィ!! 早く吐き出しなよ!! そんなもの食べたら……」
私は彼の発言を理解すると悪寒が走り、彼にキノコを吐き出すように促した。
しかし――。
「ん? うわぁああああっ!!!」
B級ホラーのようにルフィの体から多くのキノコが生えてきて、彼はパニックになったのか、何が起こったのか分からないが気絶してしまった。
「まずいな……。こういう場合どうすれば良いか分からないし……。ん? 近くに人の気配――」
「おい! そこのお前!! 見かけない顔だな!! 何者だ!?」
気配に気付いたのと同時に私はその方向から声をかけられる。
どうやら、この島の住民が明らかに余所者である私を警戒しているようだ。
3人組の女――それも全員がかなりの手練……。やはり、ここは女ヶ島――アマゾン・リリーで間違いなさそうだな。
「いや、驚かせてすまない。訳あって、こちらの島に遭難してしまったんだ。そして、腹を空かせた仲間がキノコを食べると、体中にキノコが生えてきて困っている。助けて頂けると嬉しいのだが……」
私は事態が事態なので両手を上にあげて戦意のないことを示して、手短に状況を話す。
「――キノコ? ふむ、こ、これは“カラダカラキノコガハエルダケ”だな。食べたらキノコが生えるのよ! 大変!」
金髪で弓矢を持っている女は素早くルフィの陥っている状況を理解して緊急事態だと口にした。“カラダカラキノコガハエルダケ”って、そんな体から如何にもキノコが生えそうなモノがあったなんて……。
「やっぱり、あのキノコが原因か……。何とかならないか? 大事な仲間なんだ!」
「――ッ!? な、何でだろう……。お前の顔を見ると胸がドキドキする……。い、いや、そうだな。このままだと生気を吸われて死んでしまう。アフェランドラ!」
私が金髪の女に詰め寄って、ルフィを助けてくれと懇願すると、彼女は驚いた自分の胸を抱くような仕草をした。
しかし、すぐに顔つきが変わり、私の倍以上の身長がある長身の女に声をかける。
「はーい。この子を村に運ぶのね」
アフェランドラと呼ばれたその女は、軽々とルフィを持ち上げて歩き出した。
「“一刻を争うの巻”ね……」
独特の喋り方をするツインテールの女がその後に続き……。
「急ぎましょう!!」
金髪の女は、私の手を引いて急いで村に行ってルフィを助けようと言ってくれた。
村に着くまでの間に金髪の女はマーガレット、ツインテールの女はスイートピーと名乗った。
私はどうやってここに来たのかを、そのまま伝えたが、あまり理解してもらえず、村に着いたら詳しい話をみんなで聞くと言われる。
いきなりルフィが倒れてしまったし、どうなることか不安だな……。それに、ここを治めている“女帝”ボア・ハンコック――彼女は難しい人物だと聞いている。
ルフィはともかく果たして私は無事でいられるだろうか――。
そんなことを考えている内に私たちは、マーガレットたちの村へと辿り着いた。
さて、ここからどうなるのだろうか――?
女ヶ島に行く展開は多少強引な気もしますが、ご容赦ください。
なんか、ライアがある意味1番行ってはいけない場所に行ってしまったような……。
次回からは舞台はアマゾン・リリーで、本家メロメロの使い手が登場します!