ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう   作:ルピーの指輪

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いつも誤字報告や感想をありがとうございます!
アマゾン・リリーにやってきたライアとルフィ……。
今回はあのキャラクターが登場します!
それではよろしくお願いします!


女帝現る

「あれ? アフェランドラ、ルフィはどこに?」

 

 ルフィの処置をアマゾン・リリーの村の人たちに任せた後、よそ者の私は妙なことをしないようにアフェランドラに監視されていた。

 と、言っても拘束などされず、お茶と菓子を出されて雑談をするみたいな感じだったが……。

 まぁ、私のような貧弱な人間などいつでも組み伏せられると思ってるんだろう。

 

「ああ、あの子なら――汚れちゃってたから、近くの川にマーガレットが洗いに行ったわよ。――それにしても、あなたってキレイな顔してるのねー。マーガレットも言ってたけど、見てたら心臓の鼓動が早くなるから不思議」

 

 アフェランドラは私の顔をマジマジと見つめながらルフィは近くの川にいると教えてくれた。

 

「ああ、ありがとう。そっか、体を洗いに――。ん? ルフィの体を洗う……!?」

 

 私は一度、そのセリフを飲み込んだが、猛烈に嫌な予感がして立ち上がる。

 そうだ、アマゾン・リリーって……。

 

「ちょっと、どうしちゃったの? 急に走り出して」

 

 私はルフィの気配を辿りながら走り出す。アフェランドラはそんな私を後ろから追ってきた。

 

 

「「きゃあああああ〜〜〜〜っ!!」」

 

 私が川に辿り着いたとき、ルフィを取り囲む女たちの悲鳴が響き渡り、私は何が起こったのか察した。

 

「しまった。遅かったか……!」

 

「ちょっと、何が起きたの? あの子は一体……」

 

 アフェランドラは近くでルフィを見ていた人の内の一人に状況を確認する。

 

「それが大変なのよ。あなたたちが連れてきた子が“男”みたいだったの!」

 

 やはりルフィが男だということがわかって混乱してるみたいだな。ここって、男子禁制の掟とかあったんだっけ? 

 ルフィは漫画でよく助かったな……。まぁ、ハンコックが彼に惚れたおかげだろうけど……。

 

「お、男〜〜!? ライア、あなたのお友達は男だったの?」

 

 アフェランドラはルフィが男だということに対して言及する。

 

「え、いやー、その……。男だとまずいのかな?」

 

 私はとりあえずこの場をどうしようかと思案しながら、彼女の言葉を肯定した。

 

「お前もここに来ていたか。まずいなんてものじゃない。“男子禁制”は数百年続くこの国の規律。それを破ったとなると、あの男はおろか、お前や、連れてきたマーガレット、スイートピー、アフェランドラもこの国の君主である蛇姫様が許すまい」

 

 アフェランドラと話していると、キキョウという村の戦士たちをまとめてる女が私に話しかけてきた。

 アフェランドラに私を見張るように言ったのも彼女だ。

 

「そうなんだね……。キキョウだっけ? 何とか許してもらえないだろうか? さっきも話したけど、ここに辿り着いたのは不可抗力。故意ではないんだよ」

 

 私はキキョウの目を真っ直ぐに見つめて、ダメ元で穏便に済ませないか頼んでみる。

 

「――ッ!? お前も何か雰囲気が違う……。よくわからないが、お前を見ると胸が高鳴る……。――まさか、男じゃあるまいな!?」

 

「なんで、“男子禁制”のところでまで、私はそんなことを言われなきゃいけないんだ……。私は女だよ。――ルフィはどうするつもりだい?」

 

 私は女しか居ない島でも男だと言われて少しだけ傷付きながら、ルフィの処遇を質問した。

 

「目が覚めるまで、牢獄に入れて待つ――」

 

 彼女はルフィが起きるまで待つと言った。

 

「目が覚めたら?」

 

「――お前には悪いが……、殺すしかないだろうな。蛇姫様が居ない内に“男”が入ってきたことを揉み消すことが出来れば、アフェランドラたちはもちろん、お前も助かるだろう。理解してほしい……」

 

 キキョウは少しだけ申し訳なさそうな顔をして私にルフィを殺すつもりだと伝えた。

 到底、承諾できない話だがこの国にはこの国のルールがあるのだろうし、彼女が個人的な感情でルフィを殺したいと思ってる訳ではない。

 言い争うだけ無駄だろう……。

 

「君たちの立場はわかったよ。じゃあせめて、牢獄の前で彼が起きるのを待たせてほしい。彼と私は一蓮托生だ。ルフィが死ぬなら、私も死なねばいけないだろう」

 

 しかし、私もハイそうですかと引くつもりはない。

 彼を生かすために動くつもりだし、彼を置いて自分だけ助かるなんてあり得ない。

 だから、何とかルフィを逃がすキッカケを掴むために牢獄の前に居させてほしいと頼んだ。

 

「ふっ、ヒョロヒョロの体のクセに言うじゃないか。好きにするがいい……。不思議だな……。お前から感じる独特の雰囲気は妙に心地よい……」

 

「そ、そうか。すまないけど、牢獄とやらに案内してくれ……」

 

 キキョウは私には悪い感情を持っていないようだ。彼女はあっさりと牢獄の前で待つことを許して、そこに案内もしてくれた。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「ふわぁ〜〜! んん? ここはどこだ?」

 

「ようやく目覚めたか。ルフィ……」

 

 爆睡して、目が覚めたルフィに私は声をかけた。

 

「おお、ライア! お前がここに運んでくれたのか!? ん? こいつらは誰だ!?」

 

 牢獄の前には初めて見る男に興味津々のこの村の女たちがズラリと並んでルフィを観察していたので、彼はギョッとしている。

 初めてパンダが動物園に来たみたいな状況になってるな……。

 

「ああ、君が変なキノコを食べて死にかけていたのを、この村の人が助けてくれたんだ」

 

「ふーん。そっか。こいつらが命の恩人ってことか! おっ、麦わら帽子、持っててくれてありがとな!!」

 

 私が手短にさっきあったことを話すと、彼は手を伸ばして私が持っていた彼の麦わら帽子を掴み取る。

 

「腕が伸びた!」

「男は腕が伸びるんだ!」

「知らなかったわ」

 

 腕の伸びたルフィを見て、この国の人たちはゴムゴムの実の能力が男の基本性能だと思っているみたいだな……。そういえば、ハンコックたち姉妹も悪魔の実の能力者だと認識されてなかったんだっけ?

 

「――あっ! おれ、裸じゃん!! ライアが脱がせたのか!?」

 

「誤解を招くような発言は止めてほしいな……。君の服はマーガレット……、そう、彼女がボロボロだろうからって、新しいのを作ってくれたんだよ。ね、マーガレット?」

 

 私はルフィの衣服に関してせめて下だけでも着せてあげてくれと頼み込んだ。

 しかし、新しいのを作るし、彼をじっくり観察したいからという理由であっけなく断られてしまう。

 もう少しで、ルフィに付いてるアレについて質問攻めに遭うところだった。その前に彼が目覚めてくれて本当に良かった……。

 

「そ、そうだ……。ほら、お前のボロボロになった服と同じ形で作った」

 

「――え〜〜悪ィな! ありがとう!」

 

 私が話しかける度に急にモジモジする人見知りなマーガレットはルフィに彼女が縫った服を手渡す。

 マーガレットは私のせいで責任が自分にも及びそうなのに、特に怒ることもなく、牢獄の前で待っている私の隣にずっと居てくれた。

 時折、顔を赤くしては首を傾げて体調が悪くなったかもしれないと口走っていたので、何かの病気になっていないか心配である。

 

「――ッ!?」

 

 ルフィは花の刺繍やフリルが付いた服を着て、不服そうな顔をしていた。

 普通に良くできていて、可愛いんだけどなー。

 

「へぇ、可愛く出来てるじゃないか。凄いな、マーガレットは。羨ましいよ、こんなに裁縫が得意だなんて」

 

「ええっ……!? そ、そうかしら? じ、じゃあ、今度はライアの分も作ってあげるね」

 

 私がマーガレットの作った服を褒めると、彼女は嬉しそうにニコリと笑って、私の服も作ると言う。

 

「ライア! 可愛いじゃねェって! おれは男だぞ!!」

 

 そんなやり取りを見ていたルフィはいつものようにツッコミを入れる。

 私にとっては普段どおりのことなのだが……、これがいけなかった……。

 

「いや、そうなんだけど……。あれ?」

 

「お前には悪いが、やはり男とは相容れない存在らしい! 命を救われた恩を忘れて獰猛に怒鳴り散らす! 凶暴な本性が見えた今、蛇姫様が戻る前に迅速に処分すべきだと私は判断した!」

 

 気付いたら、周りの女たちが一斉にルフィに向かって矢を向けた。そして、キキョウは彼を危険な存在だとして殺すと明言する。

 おいおい、こんなのノリじゃないか。ルフィだって本気で怒ってなんかいないのに……。

 

「ちょっと待ってくれ。彼は凶暴とかそういうのとは程遠い人間だ! 地声が少しだけ大きいだけなんだよ!」

 

 私はルフィの前に立ち、両手を広げて彼の弁護をする。

 

「そこをどけ! どのみち蛇姫様は男がこの国に入ることを許さん!」

 

「お、おい! 服を悪く言ったことは謝るからよォ! ちょっと撃つの止めろよ!!」

 

 ルフィも自分がまずい立場であることを理解して、素直に謝罪した。

 

「謝罪も弁明も聞かん! ライア! お前のことは個人的には気に入っているが、退かねば撃つ!」

 

 キキョウはそれでも聞く耳は持たない。私ごと撃つことも辞さないという姿勢だ……。

 

「ふっ、それは出来ない相談だよ。でも、私も君のそういう真面目なところは好きだけどね。キキョウ……」

 

「――なっ!? ば、バカなことを……。くっ、ほ、本当に撃つからな!!」

 

 私の言葉を聞いたキキョウは顔を真っ赤にして怒り出し、弓を放とうとする。

 

「ライア、もういい! 退いてろ!!」

 

「ルフィ! 私は大丈夫だ! 君は逃げろ!! 煙星ッ!!」

 

 ルフィは私に退けと命令した瞬間に、私は隠し持っていた煙玉を床に投げつけて、ルフィに逃げるように促した。

 

「――なっ!? 煙幕だと!?」

 

「な、何だかわかんねェけど! わかった!!」

 

 ルフィは牢獄を破壊して外に飛び出して逃亡する。

 さて、私も姿を隠すとしよう……。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「ふぅ……、ホバーボードのおかげで何とか九蛇城とやらの天守閣まで来られた。まさか、ここに隠れるとは思うまい」

 

 私はルフィが騒ぎを起こしてそちらに全員の目が行っているスキを狙って、村を出て……、あえてこの国で1番高い建物、“九蛇城”の頂上である“天守閣”にある蛇の彫刻の裏に身を隠した。

 この場所なら見通しも良いし、ルフィがハンコックと遭遇しても直ぐにわかる。

 

 ルフィはマーガレットを捕らえて、また別れたみたいだ。

 多分、ビブルカードを回収したんだろう。

 

 しばらくして、城の周辺が騒がしくなった。この国の“女帝”であるハンコックが海から戻ったのだ。

 なるほど、さすがは七武海だ――こんなに強い力を持つ女を私は見たことがない。

 美しい外見とこの力、そしてカリスマ性……、国の人間が敬うのも当然だな……。

 

 彼女が城に入ってしばらくすると、老婆が弾き飛ばされた。恐ろしいほど洗練された身のこなしで見事に着地したけれど……。

 あの人はさっきルフィを男だとみんなに教えていた人だ……。

 

 そして、さらに時間が過ぎると、今度は城から続々と人が出てきた。

 

「蛇姫様の湯浴ぁ〜〜〜み〜〜〜っ!!」

 

 大声でハンコックの入浴が喧伝される。確か彼女は背中に天竜人の奴隷であった証拠である烙印が押されていたはずだ。

 だから、自分の体を見られることを恐れて入浴するときは人払いをしているということだろう――。

 

 で、その場面を漫画だとルフィに見られたんだよな……。 ん? 待てよ……。この真下からハンコックの気配が――。

 まさか、この下ってお風呂だったりするのか?

 

 私が自分の居る場所を理解したその時である――。

 

「ライアーーーッ!! 良かった! お前も無事だったんだなァ!!!」

 

 城壁の上からルフィが“天守閣”の彫刻の裏に隠れている私を発見して、そのままこちらに飛び移ってきた。

 

「えっ? あっ! ルフィ……、ちょっと待ってくれ!! うわっ――!!」

 

 私はルフィに待ったをかけたが遅かった。彼は凄い勢いで私の方に飛びついて来たので、脆かった“天守閣”の屋根が破壊されて私と彼はそのまま真下に落ちてしまった。

 

「ぶはーっ! み、水だーーーっ! 熱ちち!! 違うお湯だーーっ! 溺れる……! ライア、助けて!!」

 

「いや、ここは浅いから……。まぁ、それ以外の問題はあるけど……」

 

 水に落ちたルフィがパニックになっていたので、私は彼を落ち着かせようと声をかける。

 

「ほ、本当だ。足ついた」

 

「――ッ!? ――男……!?」

 

 そんな大騒ぎをしてハンコックが気付かない訳がない。振り返って私たちの顔を見て驚いた顔をした。

 

「ん? おめー、その背中の……、おれ、どっかで……」

「いや、私は女で……、って、そんなこと言える雰囲気じゃないな……」

 

 私もルフィも見てしまった――。彼女の見られたくないモノを……。

 いや、困ったな……。私はこの場にいるつもりはなかったんだけど……。石になりたくないし……。

 

「――見たな!?」

 

 ハンコックは怒りの形相で私たちを睨みつける。当然の反応だ……。

 しかし、参ったな。どう立ち回るのが正解だ?

 

「姉様!」

「姉様! 何事なの!?」

 

 そんな騒動の中、彼女の妹たちが浴室に入ってくる。

 この二人も悪魔の実の能力者だったかな? 強い力を感じる……。

 

「誰だ!? あいつらは!? 男!?」

「なんで、男がここに!?」

 

 完全に私も男扱いされてるな……。反論できる雰囲気じゃないけど……。

 

「――背中を見られた……」

 

「せ、背中を!?」

「じゃあ、死んでもらうしか無いわね……」

 

 ハンコックが手短に状況を伝えると、彼女の妹たちは私たちを殺すと言って前に出てきた。

 

「せ、背中を見たくらいで、何だよ!? なぁ、ライア……、あれってどこかで見たことがあるよな?」

 

「そうだね。ルフィ……、私の口からは詳しく話すつもりはないけど……。彼女にとっては、耐え難いことを私たちはしたとだけ言っておくよ……」

 

 私はとりあえず彼に自分たちがやってはならない事をしたとだけ伝える。

 天竜人云々は特に今は話す必要がないだろう。

 

「そっちの銀髪は間違いなく理解しておるな……。そうじゃ、そなたらが見た背中のこれは、わらわたちがたとえ()()()()見られたくないものじゃ……!!」

 

 ハンコックは青ざめた顔をして、私たちにそう言い放つ。

 やはり、彼女は私たちを殺すつもりらしい。

 

「見たもの全てを墓場に持っていけ! “メロメロ甘美(メロウ)”!!」

 

「くっ……!」

「なんだ? 何をやってるんだ?」

 

 私は石になることを覚悟し、ルフィは何をされてるのか全く気付かずにキョロキョロしている。

 

「「あれ?」」

 

 結論から言ってルフィはもちろん、なぜか私も大丈夫だった。光線みたいなのを受けても何も感じなかった……。何でだ?

 

「“メロメロ甘美(メロウ)”!!」

 

「…………?」

「ふぅ、どうやら大丈夫みたいだ……」

 

 もう一度、ハンコックは石化させる光線を出すが何とか私も無事だった。

 

「なぜじゃ!? そなたら、わらわの湯浴み姿を見て何の心も動じておらぬとでも言うのか!?」

 

 あー、なるほど。ハンコックの姿を見て何かしらの邪心が生まれる人間が石化するのか……。

 私ってナミやミキータからよく鈍感って言われてるし、そういう感情に疎いのかな?

 

 しかし、石化は免れたのだが……。そもそも、ハンコックはそんな力が無くても私などよりも遥かに強く……、私はあっさりと捕まって、ルフィも私が捕まったのを見て立ち止まり――、二人仲良く捕まってしまう。

 

 そして、私たちは鉄のロープのような蛇によって縛られて、晒し者のように闘技場のようなところに連れて行かれて座らされた。

 これは、一戦交える感じになりそうだけど……。ルフィはともかく私は大丈夫かなァ……。

 

 




病気レベルで鈍感なライアはメロメロにならないという理屈なんですけど、許してもらえませんかね?
アマゾン・リリーで男を知らない子たちはそもそも異性とかに対する恋心は知らないと思うので、ライアから新鮮な感情をもらってる感じです。
ハンコックも今は怒ってますけど、次回には……!?


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