ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう 作:ルピーの指輪
頂上戦争の登場人物多すぎる問題勃発中です。
あと、感想とか誤字報告ありがとうございます。
思ってたより待っててくれた方が多くてびっくり。
「ほう、その男があなたを説き伏せたと……」
ナイフに肉を突き刺して、モシャモシャと食べているモモンガ中将は私を見据えた後に、ハンコックに視線を送る。
どうやらこの軍艦の乗員は彼以外、石にされてしまったみたいだな。
「そうじゃな。わらわはこの海兵の熱意に絆されてしもうた。こちらの条件は呑んでくれるか?」
ハンコックは漂流した海兵である私を長い間幽閉していたが、ある日のこと差し入れでもらった新聞で“強制招集”のことを知り、国のために応じるように寝ずに彼女を説得したことになっている。
「
モモンガ中将はインペルダウンにハンコックが立ち寄る許可を得ることが出来たと言って、私の名を尋ねる。
「はっ! ラグナー・マク・ライアン三等兵です! 新兵になって早々漂流してしまい、恥ずかしながら何とか戻ることが出来ました!」
私は昨夜考えた自分の名前を答える。
そして、新兵になってすぐに漂流してしまった海兵を演じた。
「――“海賊女帝”を熱意を持って説得、か……。――ふんっ!」
モモンガ中将は肉を食べ終えたかと思うと、いきなり私に向かって手にしていたナイフを投げつけてきた。
しまった……。早くもバレてしまったか……。
「――な、何をされますか? 中将殿!」
私は内心ビクビクしながら、二本の指でナイフを抓み、モモンガ中将に抗議する。
見たところ、多少は加減してくれたみたいだけど……。
「ほう、やはり愚図ではなさそうだ。知っていると思うが今は有事である。ラグナー・マク・ライアン三等兵、貴様を“海賊女帝”を招集に応じさせた功績を以て伍長に昇格させるとのことだ。この先で、さらに武功を立てることを期待しよう」
なんとモモンガ中将は私を“伍長”に昇格させるように上から連絡がきたとか言ってきた。
前々から思っていたけど、この世界の海軍って適当に出世させすぎじゃない? まぁ好都合だけど。
「そ、それでは……」
「貴様は今日から海軍本部に所属だ。不服か?」
「いえ、これからより一層、正義のために尽力させていただく所存です!」
「うむ」
海軍本部に着いたらどうやって居座って戦争に参加しようかと思案していたが、どうやらその心配はなさそうだな。
あとは、海軍本部で私が賞金首だとバレないようにしなければ……。
指名手配犯が警視庁で働くみたいなものだからなぁ……。
その後、ハンコックは海兵たちの石化を解除して、彼女は丁重にもてなされ、軍艦はインペルダウンに向かった――。
「おい、新入り! 女ヶ島に居たなんて羨ましい奴だな。なァ、“海賊女帝”ってどんな感じだったのか教えろよ! あんな美人おれァ見たことねェ」
「おれも興味あるな」
モモンガ中将が率いる軍艦に上手く乗り込むことが出来た私は、新米の海兵として働いている。
男子禁制の“女ヶ島”から生きて戻ってきた(という設定の)私は海兵たちから質問攻めに遭っていた。
「ええーっと、そうですね。いくつか注意をしておきましょう。まずは、決してあのように、蛇姫様の部屋を覗いてはなりません。石にされてしまいますから」
「げっ、本当だ!」
「怖ぇ〜〜」
「お前、よく生きて戻ってこれたな……」
私がハンコックの居る部屋の前で石にされてしまった海兵たちを指さしながら彼らに忠告をする。
ハンコックなら大丈夫だと思うが、ルフィのことを秘密にするなら、部屋から海兵たちを遠ざけるに越したことはない。
「あと、蛇姫殿は大食でございます。この船の食料がどれ程あるか存じませんが、数日は絶食を覚悟したほうが良いですね」
そして、私はルフィが食べる量を把握しているので、ハンコックの食事の量についても言及しておくことにした。
「そんなバカな。あのスタイルだぞ、きっと小鳥の餌ほどしか食べないに――」
「――いや、先程食事を持っていったら、“女帝”は怒って10倍の量を要求してきた。しかもそれを5食もだ……。大食なのは間違いない」
しかしその忠告は遅かったらしく、既に彼女は大量の食事を注文しているみたいだった。
非常食用意していて良かった……。
「――おい、ライアン。お前に話があるって“女帝”が……」
そんな中、海兵の一人が私に対してハンコックが私を呼んでいると伝えてくる。今日だけで3回目だ。
あまり、何度も呼ばれると怪しまれるかもしれないから控えるように言っておこう。
「また、お前がご指名かよ。良いなぁ、おれもその顔に生まれていたら天下取ってるぜ。“女帝”もお前さんが若くてキレイな顔だから生かしてくれたんだろう」
「違いねェ。おれなら捕まって直ぐに殺されている自信がある。そもそも、ライアンと同じ顔なら海兵なんざやってねェや。ははっ……」
「お前にしても、あのレディキラーにしても、モテる顔の奴っているんだよな〜」
海兵たちはやたらと私とハンコックの関係を疑い、面白可笑しく囃し立てた。
まぁ、私自身が疑われているわけじゃなさそうだから、いいか……。
「か、勘弁してくださいよ。先輩方……。そ、それでは行ってまいります!」
「おう、冗談だ。気にすんな! あとで話を聞かせてくれや」
私はペコペコ頭を下げながら苦笑いしていると、先輩海兵の一人がニヤリと笑って、背中を叩いた。
うーん。当たり前だけど、海兵の方が海賊よりマトモな人って多いんだな。
「おう! ライア! これ、美味ェぞ! 食うかァ!?」
「ルフィ、あまり大きな声を出しちゃダメだよ。見つかると全部パァになるんだから」
「んぐっ、そうだった、そうだった」
私は海王類のハムとかいう食べ物を美味しそうに食べているルフィに声が大きいと注意する。
こんなところで見つかったら最悪なんてもんじゃない。全てがご破算だ。
「ハンコック、君のおかげで助かったよ。まさか私が君を説き伏せた事にしてくれるなんて……」
「ついでじゃ。ルフィの為になることなら、少しでもしておきたいからの」
私はハンコックの計らいに感謝する。どうやら海軍はハンコックが“強制招集”に応じない事にかなり参っていたらしい。
私がハンコックを説得したということになれば、海軍は私を信頼してくれるはず――彼女はそう読んだのだ。
まぁ、いきなり“伍長”にまでなれるとは思わなかったけど……。
「うん。きっと、君の想いも伝わるはずさ」
「――だ、だと良いのだが……。見たところ、ルフィはわらわよりもおぬしを慕っているみたいだし……」
私は素直にハンコックの恋を応援すると口にしたら、彼女はルフィが私を好きなのでは、と疑っているみたいなことを言い出した。
いやいや、それはないって。そもそも彼は恋愛感情を持ち合わせているかどうかも怪しいし……。
「ルフィが私を? ちょっと、変なこと言わないでくれ。付き合いが長い分打ち解けているだけだから。そんな不安そうな顔をしないでくれ」
私はハンコックの言い分を否定して、彼とは長く一緒に海賊をやっているから気兼ねなく話しているだけだと伝えた。
「そうか……。仲間か……、羨ましいな」
「ルフィは強い……、でも精神的にはまだ成熟はしていない。ハンコック……、彼がもし今後……、心が弱ってしまったら……、君が支えてくれると嬉しい。私は生きていられるか分からないからさ」
そして、彼女には万が一のことがあったときにルフィの事を頼むとお願いしておいた。
エースを救う気ではいるけども、それが出来るとも限らないし、私自身が死ぬかもしれない。
だから彼女には彼のことを何とか守ってほしいと頼み込んだのだ。
「ライア……、おぬしは……。――いや、もしその時が来たらわらわに任せよ」
「君は強いから、安心してルフィのことを任せられるよ。ありがとう」
ハンコックは私の想いを受け止めて、ルフィのことを守ることを了承してくれた。
彼女になら、ルフィを任せられる……。
そして、アマゾン・リリーを出航して4日と半日後――遂に軍艦はインペルダウンに辿り着く。
なるほど、バスターコールもびっくりなくらいの数の軍艦が待機しているな……。
「ルフィ……、上手くやれよ……」
ハンコックの服の中に隠れたルフィが大監獄“インペルダウン”の中に入っていく様子を軍艦の上から私は見つめていた。
「おーい。ライアン。やっぱりおめェ、“海賊女帝”とデキてるんじゃないか? 今さ、チラッとお前の方を見ていたぞ」
そんな私に話しかけてきたのは海軍本部少佐のスナイプランである。
長い金髪を後ろで結んでいる彼は狙撃を得意としている海兵で、私も銃撃を得意としていることを話すと気に入られてしまい、よく雑談に付き合わされるようになってしまった。
兄貴分って感じのキャラで若い海兵たちに慕われているみたいだ。
「気のせいですよ。彼女は私など目に入っていません」
「そっか、そりゃあそうだよなー。あの絶世の美女を落とすのはキツいよな。――わかるぞ。おまえさんの気持ちは痛いくらいわかるぞー!」
なぜかスナイプラン少佐の中では私がハンコックに振られた事になっていて、私は背中をバシバシ叩かれた。
なんだろう。戦ってないのに負けた気がする……。
「いや、私は別に……」
「でも、ま、気を落とすなよ。マリンフォードは初めてなんだろ? 可愛い女海兵も多いんだぜ。どうだ? 素敵な出会いがあると思えば、テンションも上がるだろ?」
私の返事も聞かずに彼はマリンフォードでの素敵な出会いとやらに期待しろとか言ってくる。
ええーっと、そんなこと言ってる場合じゃないような……。私は海賊という立場も忘れて、この人が心配になってきた。
「これから戦争をするんですよね? そんなお気楽思考でいいのでしょうか?」
「あったりめーよ。気楽にならんと、やってらんねェ。大体な、男ってのはな、死ぬかもしれねェって時が1番子孫を残してェって思うもんなのさ。だからよ、一夜の相手を探すってこたァ、自然界の道理に従った行動なのよ」
しかし、スナイプラン少佐はこのあと生きる死ぬの戦いをすることを意識していない訳ではなかった。
彼には彼の理屈があって気楽な思考に転じているのだ。私にはわからないけど……。
「わかりました。少佐のご高説は私の心のノートにキッチリとメモしときましたよ」
私は熱く語る彼の話を無視するわけにもいかずに、出来るだけ愛想よく返事をしていた。
「おう! ついでに絶対に上手くいくナンパの方法も教えてやろうか? お前さんの容姿なら迎撃数だけで1個中隊は作れるぞ」
「ナンパですか? 生憎、私はそういうのはちょっと……」
そういう態度のせいか、スナイプランはさらにノリノリになって、私にナンパの方法まで教えるとか言い出す。
そういうのはサンジを見ているだけでお腹いっぱい。ていうか、1個中隊ってどれだけさせるつもりなんだ……。
「おいおい、お前さんも
「はぁ……、わかりました。お供させていただきます」
私はナンパに難色を示したが彼のスナイパーなら女を落とすべきとかいう謎理論に圧されて、彼にマリンフォードで付き合うことを約束してしまう。
へぇ、男のスナイパーってそんなこと考えてるんだ。女である私には考えられない理屈だ……。
「ははっ、ライアン伍長。すっかり、少佐のお気に入りだな」
「まったく、私のようなつまらない人間のどこが気に入ったのやら……」
そのやり取りを見ていたベテラン海兵から、スナイプラン少佐に気に入られていることを指摘され、私は苦笑いする。
「こいつ、おれの若いときにそっくりなのよ。ナンパのやり方さえ覚えれば、絶対に凄いことになるぜ」
スナイプランの若いときか……。いや、私はこんなに陽気な人じゃないけど……。
まぁ、顔立ちは整っているからモテるんだろうし、昔はもっとモテていたのかもしれない。
とりあえず、スナイプランの後ろにいるのは悪くない。
一人で孤立して変な感じになる方が怖いし、海軍本部では目立つことはしたくないしな……。
色々と考えをまとめていると、モモンガ中将がハンコックと共に戻ってきた。
彼女は私に目で合図をしてルフィが無事に侵入できたことを伝えてくれた。
良かった……。武運を祈ってるぞ……。
そして――。
「おい、ライアン。ここがマリンフォードだ。壮観だろ? 世界中から腕自慢の海兵たちが集ってきてる……」
「確かに、凄いですね。みなさん見るからに強そうです」
海軍本部のお膝元、マリンフォードには世界中から招集を受けた海兵たちが集まっており、緊迫した空気が流れていた。
さて、戦争が始まるまで少佐を隠れ蓑にして――。
「うおっ! さっそく可愛い子発見! 行くぞ! ライアン!」
「あ、はい!」
スナイプラン少佐はかなり遠い場所にいる人の顔を認識出来るみたいで1キロくらい全力で走らされた。
ちょっと待って――この気配……。
「ねェ、君はたしぎちゃんだっけ? 相変わらず可愛いね。あっちでお茶しない?」
「あ、あの、そのう。困ります……」
「おい、スナイプラン。てめェ誰の部下をナンパしてやがる」
そう、スナイプラン少佐がナンパしているのはスモーカーの部下であるたしぎだった。
この人たちとは直接顔を合わせているから、出来れば会いたくなかったんだけど、いきなり出くわしてしまった――。
「おー、スモーカー
「
「へぇ、そりゃ偉くなったもんだ。ヒナちゃんより上だから同期じゃ1番か? だったら何か奢ってくれよ。おれとたしぎちゃんに……」
スモーカーとスナイプラン少佐は同期みたいだ。
でも、スモーカーの態度からするとあまり好かれてなかったのかな?
「調子の良いこと言いやがって。後ろの若いのはてめェの部下か?」
「んー、まぁそんなとこ。あの“海賊女帝”を口説き落とした手柄を立てて本部に配属になったライアン伍長だ。おい、突っ立ってねェで挨拶しな」
スモーカーは私に気が付いて、スナイプラン少佐は私に挨拶するように促す。
ええい、ここで変な動きをするほうがリスクが高い……。
「ラグナー・マク・ライアン伍長です。よろしくお願いします!」
「スナイプランの部下にしちゃ、礼儀正しいな。ん? てめェの顔……、どこかで……」
私の挨拶を聞いたスモーカーはタバコを吹かせながら顔を近づけて、私の顔をどこかで見覚えがあるとか言ってきた。
こ、これは着いて早々に逃げなきゃいけなくなってしまったか? 私は戦慄しながら、スモーカーの視線に耐えていた――。
ライア以外にオリキャラ出すつもりなかったんですけど、物語を円滑に進めるためにやむを得ず。