ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう   作:ルピーの指輪

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すいません。色々と考えた結果、色々と投げました。
つまり、話がサクッと進みます。
ツッコミどころ満載でしょうがごめんね。許して〜。


聖地マリージョアにて

 

 聖地マリージョアへ向かう私たちだが、その前にモモンガは私を海軍本部に連れて行った。

 本部内は海兵たちが忙しなく動いている。

 どうやら、世界情勢が不安定となる要因が次々と立ち上っているらしい。

 

「インペルダウンに侵入者、新世界では赤髪とカイドウが小競り合い、白ひげのモビー・ディック号は雲隠れしている。海軍本部はピリピリしとるが、聖地マリージョアに予定外の人物を勝手に連れて行くわけにはいかんからな。然るべき手続きは踏まねば」

 

「インペルダウンに侵入者ですか? そんな自殺行為を行うような者がいるとは――。信じられませんね」

 

 白ひげの船である“モビー・ディック号”の消失。

 白ひげを討とうと“百獣のカイドウ”が動き、それを止めるために“赤髪のシャンクス”も動き、新世界で両者が衝突。

 さらにインペルダウンにルフィが侵入して掻き回すという事件も起こり、海軍本部はてんやわんやになっているみたいだ。

 

 私はルフィの情報を聞き出したいがためにインペルダウンの事件に食いついた演技をする。

 

「うむ。貴様の言うことはもっともだ。しかし、全く考えが読めない、イカれた海賊団の船長が主犯だからな。アマゾン・リリーには伝わっていたか知らぬが、ヤツの名は――」

 

「わしの孫じゃ! ぶわっはっはっはっは!」

 

「――っ!? あ、あなたはガープ中将!?」

 

 モモンガがルフィの名前を言う前に、背後からバカでかい気配と共にルフィの祖父であるガープ中将が現れた。

 心臓が飛び出るくらい驚いたんだけど……。ウォーターセブンでも感じたけど彼の戦闘力は計り知れない。

 

「なんじゃ、わしのこと知っとるのか」

 

「海兵で貴様のことを知らんほうがどうかしとるぞ」

「モモンガ中将の仰るとおりです。英雄を知らないはずがないですよ」

 

 ガープは鼻をほじりながら、私の顔をマジマジと見つめる。

 彼とはウォーターセブンでほとんど絡んでないからバレないと思うけど……。

 

「で、誰じゃ? そっちの若いの」

 

「ラグナー・マク・ライアン伍長です。会えて光栄です。ガープ中将」

 

「ふむ……、どこかでお前さんの顔を見たことがあるんじゃが」

 

 楽観的に考えていたんだけど、海軍本部の中将だもんな。勘は良いのか……。

 孫のルフィなんか、2年後の明らかな偽物にも付いていくくらい人間の判別が出来なくなったりするのに……。

 

「そ、そうですか? 初対面のはずですが……」

 

「いや、絶対に見たことある!」

 

「…………うっ」

 

 私が誤魔化しても、ガープは自信満々の表情でこちらを睨みつけてくる。

 くっ、苦しいかもしれないけどしらを切り続けるしか……。

 

「じゃが、忘れたからもういい! わっはっはっはっ!」

 

「誇らしげに言うことか?」

「ほっ……」

 

 私の心臓の鼓動が跳ね上がりそうになった瞬間にガープは潔い笑顔を浮かべて忘れたとはっきり言った。

 よかった。豪快な人で……。

 

「ガープ! 貴様! まだここに居たのか!? さっさと仕事に戻らんか!」

 

「せ、センゴク元帥!」

「ちょうど良かった。元帥、彼がラグナー・マク・ライアン伍長です」

 

 そんなガープを怒鳴り散らしたのは海軍本部・元帥である“仏のセンゴク”。つまり、ここで一番地位が高い人間だ。

 モモンガは私を彼の元に案内しようとしたのである。理由は聞いてないけど。

 

「ふむ。あの女帝が全幅の信頼を置いてると聞いとったから、もっと屈強な男を想像しとった。わからんのう」

 

「は、はぁ……、申し訳ありません」

 

「まぁよかろう。今は有事であるからして、半端な戦力はかの地に立ち入ることを許されておらん。ラグナー・マク・ライアンは本日この時間を以ってして少尉に昇格」

 

「へっ?」

 

 なんと、よくわからないが私は昇進ということになったらしい。

 本当に意味がわからない。この世界の海軍ってホイホイ昇格させるイメージはあるけど、これは明らかにやりすぎだ。

 

「将校でないと、かの地の要人の護衛は出来ぬというしきたりがあるのだ。貴様のコートだ。大事にしろよ」

 

 どうやら、有事のときの特別処置らしい。こんな無茶苦茶な人事は元帥の権力でないと出来ないから、私は彼の元に連れられたのである。

 

「はっ、はい! 正義のためにいっそう励みます!」

 

「うむ」

 

「では、急ぐぞ。聖地マリージョアへ!」

 

 海軍将校にのみ配られる例のコートを渡されて、私はそれを羽織る。

 なんだろう。コスプレしている気分になるな……。

 

 私はモモンガに連れられていよいよ聖地マリージョアへと向かった――。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 聖地マリージョアは赤い土の大地(レッドライン)の上にあり、世界政府の中心地だ。

 世界貴族である天竜人の居住地がある場所で、4年に一度、各国の王達が集う“世界会議(レヴェリー)”が行われる。

 

 楽園側からは、マリンフォードからすぐ近くにある赤い港(レッドポート)からそこに向かうことができる。

 

 ここに来るなんて思ってもみなかったなぁ。

 七武海にはなるべく関わりたくないけど……。

 

 しかし、当たり前だが七武海は全員、円卓のある会議室に集合させているらしい。

 ハンコックも当然、そこにいるというわけだ。

 

「ぬっ、“ボア・ハンコック”は居ないのか?」

 

「は、はぁ……、こんな汗臭い場所には居たくないと仰られましたので……」

 

 会議室にハンコックは居なかった。

 モリアとかミホークとかクマとかドフラミンゴは居たけど。ドフラミンゴは初めて見たけど、あの派手な格好はやっぱり目立つ。

 ハンコックは気を利かせてこいつらから離れたんだろう。

 黒ひげはすでにインペルダウンに向かおうとしているくらいの頃か……? 姿が見えない。

 

「まったく、身勝手なやつめ。公開処刑まで時間も少なくなってきているというのに。黒ひげもいないが……」

 

「彼は腹を壊したと言って先程トイレに行かれました」

 

「あの風体でデリケートだな。まぁいい。“ボア・ハンコック”の護衛の男を連れてきた。彼女の居場所を教えろ」

 

 モモンガが私をハンコックの護衛だと口にした瞬間に大きな影がいきなり立ち上がり、彼と話していた海兵に襲いかかる。

 この影――。

 

「――っ!? か、影がいきなり!? がはっ――」

 

「……この能力は――!」

「おい、青二才! 何の真似だ? そりゃあ」

 

 私は椅子でふんぞり返っていたモリアの頭に拳銃を向けた。

 彼は私の行動が気に入らないというような表情をしている。

 

「いや、あんたが私を攻撃しようとした理由を聞いとこうと思ってさ。ゲッコー・モリアさん」

 

 モリアの狙いは明らかに私だった。殺気くらい感じることはできる。

 しかし、私の正体に気付いたわけではなさそうだった。

 

「キシシ、おれにも護衛が欲しいと思っただけだ。“海賊女帝”だけ特別扱いは気に食わねェ」

 

 何か子供っぽい理由でこの人は攻撃してきたみたいだ。

 ついこの前にゾンビ兵をルフィに負けて全部失ったからそんな考えが起きたのかもしれない。

 

「そっか。意外だなぁ。モリアさんと言えば、かの四皇“百獣のカイドウ”と肩を並べるほどの大海賊だと聞いていたけど、私みたいな若造に守ってもらいたいほど臆病だったとは」

 

「誰が臆病者だと! てめェのような優男なんざいるかよ!」

 

「ライアン、そこまでにしておけ。モリアもこれ以上、有事に問題を起こすと称号の剥奪もあり得るぞ」

 

 私が嫌味を言うとモリアが私などいらないと怒って、見かねたモモンガは私と彼の二人を一喝した。

 私も殺気に当てられたとはいえ、大人気なかったかもしれない。

 

「ちっ、冗談も通じねェのか。暇つぶしくらいさせろよな。ライアン? その顔……。どっかでおれァ……。まぁいい。戦争になりゃあゾンビ取り放題だしな。護衛はやっぱいらねェよ」

 

 モリアはつまらなそうにそっぽを向いて、目を瞑った。

 ゾンビ取り放題か。この人の能力も厄介だよなぁ。

 

「黒ひげが見当たらない? ちゃんと探したのか?」

「あと3時間以内に見つけろ! でないと本部に報告することになるぞ!」

「黒ひげがいないとはどういうことだ!」

「も、モモンガ中将!?」

 

 黒ひげが行方不明となっていることに気付いた海兵たちがざわつき始めて、モモンガはそちらに状況を聞きに行ったみたいだ。

 面倒ごとが増えそうな気がしているのか、彼の顔色が悪い。

 

 そんな彼の様子に気を取られていた一瞬の間に、彼は私の真後ろに立って威圧感を放った――。

 

 こ、この男は世界一の大剣豪――“鷹の目のミホーク”――。

 

東の海(イーストブルー)で会って以来だな……。船長や剣士は元気か……」

「“鷹の目のミホーク”さん……? 何の話かわからないんだけど……」

「おれの“目”は誤魔化せん。安心しろ、質問に答えれば悪いようにはしない……」

 

 なぜか知らないが、海上レストランでちょっと顔を合わせたくらいのミホークに正体がバレた。

 モリアもスモーカーですら気付かなかったのに、どういう目をしてるんだこの人は……。

 仲間のことを言えば、悪いようにはしないとか言ってるけど、ゾロはこの人の家にいると思うし、ルフィはインペルダウンで無事かどうかまだわからないし……。

 

「何も言うつもりはない……、私が知りたいくらいさ……」

「ほう……、この状況で何も言わぬか。面白き女だな……。貴様を見るだけで暇つぶしになりそうだ……」

 

 適当なことを言うのは簡単だが、彼は下手な嘘を見抜くだろう。ならば何も言えない。

 その答えがなんで気に入ったのかわからないけど、彼はそれ以上なにも聞かなかった。

 威圧感で心臓が潰れるかと思ったよ。

 

「フッフッフ! なんだ鷹の目ェ! その若造と内緒話か? 聞かせろよ」

 

 そのやり取りを見ていたドフラミンゴは楽しそうに笑いながらこっちに来た。やっぱ、派手だなぁ。この人は……。

 

「つまらん話だ」

 

「そうかそうか。おれァてっきり、鷹の目に男色の趣味でもあるかと思ったぜ。フッフッフ! あの海賊女帝も誑かせるくらいの色男か。海賊になりゃあ国を落とせるかもしれねェな。海軍辞めたくなったらおれに声をかけな。いい就職先を案内してやるぜ」

 

 ドフラミンゴは私の顔をマジマジと見つめて、面白そうに笑いながらありがたくない親切な言葉をかける。いや、この人の斡旋先なんて碌な商売してるところないじゃないか。

 

「ドフラミンゴさん。お気遣い、痛み入ります」

 

「なぁに、構わねェよ。フッフッフ」

 

「ライアン! こっちに来い。面倒ごとが増えそうだ。貴様の案件だけでも終わらせたい」

 

 ドフラミンゴと会話していると、モモンガは焦ったような顔をしながら付いてこいと私を呼んだ。

 やっとハンコックのところに行けそうだ。

 

 

「おおっ! ()()()! 待っておったぞ。まったく、むさ苦しい連中がいる部屋にわらわを入れようとしおって」

 

 ハンコックは私を見るなり、駆け寄ってきて手を握った。

 いやいや、のっけから名前を間違えてるよ。モモンガは気付いてないけど。

 

「まずいよ、ハンコック……、モモンガの前では私はライアン」

「すまぬ……、間違った……。よく来たな、ライアン」

 

 私は彼女に小声で注意して、彼女は改めて再会を喜んだような表情をした。

 一人で不安だったから彼女と共に居られるのはありがたい。

 

「貴様ら、本当に仲が良いのだな。とにかく約束は守ったぞ。ボア・ハンコック、わがままは聞いてやったんだ」

 

「わかっておる。このわらわが信じられぬと申すか? 無礼な男だ」

 

「…………ライアン。貴様がコントロールしろ。昇格を無駄にするなよ」

 

 モモンガはとりあえずハンコックの件だけでも安心したいらしく、私に念を押した。

 中将ってかなり上の地位だと思うんだけど、こんなに忙しく動くもんなんだな。

 というより彼ほどの人間が忙しくなるくらいヤバめの出来事が頻発してるってことか……。

 

「もちろんです! ハンコック殿、何かありましたら何なりと申しつけてください」

「うむ。相変わらずライアンは殊勝な態度じゃな。モモンガ、お主にはもう用はない。どこへでも行くがよい」

 

「言われなくてもそうする。こちらとて忙しいのだ」

 

 モモンガはハンコックの態度を見てホッとしたのか、部屋から急ぎ足で出ていった。

 ふぅ、やっとひと心地つけるな。

 

 

「助かったよ、ハンコック。君のおかげでルフィは潜入出来た」

 

「しかしわらわは不安じゃ。ルフィが兄の元へと無事に辿り着けるか。見つかったという話も聞いたからのう」

 

 ハンコックにお礼を言うと、彼女はルフィの身の心配をしていた。

 インペルダウンの環境を直に見たからますます心配になったんだろうな。

 

「今のところ、彼が捕まったっていう情報は入ってない。それに――」

 

「それに?」

 

「彼は海賊王になる男だからね。やると言ったことは必ずやる。そういう男なんだ。きっと無事だよ」

 

 私はルフィなら無事だと信じていた。漫画で未来を知ってるからじゃない。

 たとえ漫画と違う現象が起きたとしても、あの逞しい船長なら絶対に切り抜けるという信頼があるからだ。

 

「やはり羨ましいのう。おぬしとルフィは互いに信頼しあっているように見える」

 

「何言ってるんだ。君も同じだよ」

 

「えっ?」

 

「ルフィは君に助けられた。この先、何があっても彼は君を信頼するし、私だってそうだ。だから、君もルフィを信じてほしいな」

 

 ルフィは助けてもらえた恩を決して忘れない。  

 一度、相手を信じたら死んでもそれを曲げない男だ。彼はハンコックのことを信頼するだろうからこそ、私も彼女にルフィを信じてもらいたかった。

 

「信じるか……。思えば、ルフィにはわらわが忘れてしもうた感情を思い出させてもらった気がする。はっ――もしや、これが婚約――!?」

 

「あはは……」

 

 彼女は人を信じるという心をルフィに思い出させてもらったと述べて、婚約とまで口にしたので、私はつい笑ってしまう。

 でも、彼女は本気なんだよな。その気持ちは応援したい。

 

「ライア、いろいろ考えたが、これはお主が持つがよい。ルフィの兄の手錠の鍵じゃ。想像したくないが、ルフィが失敗したときのためにおぬしに渡しておこう」

 

「まさか、そのために私を?」

 

「無論じゃ。ルフィのために海軍本部にまで潜入するおぬしの覚悟はしかと見させてもらった。わらわも愛する者の意志は継ぎたいと思っておる。ならば、多少のリスクは背負いたい」

 

 どうやったのか知らないがハンコックはエースの錠の鍵を手に入れたみたいだ。

 そして、私にそれを託そうとしている。

 

「リスクならとっくに背負ったじゃないか。ありがたいけど、私より戦闘力が高い君が持っていたほうが――」

 

「ふむ。わらわも最初はそう思うたが、戦争が始まってドサクサに紛れようにも七武海という立場ゆえに目立ちすぎる。もちろんその場合、ルフィはインペルダウンから脱出して兄のもとに駆けつけると信じておるが、彼もまたおぬしが持っていた方が安心するじゃろう」

 

「ハンコック……」

 

 しかし、ハンコックは自分では立場的に処刑されようとしているエースに近付くことすら難しいと言う。

 それなら目立たない海兵の一人となるだろう私のほうが良いだろうし、ルフィだってそう思うとも――。

 

「これが信頼というやつなのじゃろう? わらわもおぬしを信じる。ルフィが信じておるのじゃから。それにおぬしには力はないかもしれんが、知恵がある。その知恵でルフィを助けてやってくれ」

 

「わかったよ。君の覚悟を無駄にしない。これはありがたく受け取っておくよ」

 

 彼女の、そしてルフィの信頼を無駄にしないと心に誓いながら私は彼女から鍵を受け取った。

 どうにか三大将とかセンゴクとかガープのスキをついてエースに近付く方法を考えないとな。

 色々と無理ゲーだけど、何とかしなきゃ。これくらい役に立たないとここまで連れてきてもらったルフィに申し訳ない……。

 

 そんなことを考えていたらハンコックは急にモジモジとして顔を赤らめる。どうしたのだろう?

 

「あ、あの。こんなことを聞くのははしたないと思われるかもしれんのじゃが……」

 

「はしたない?」

 

 彼女はどうやら私に質問したいことがあるらしい。

 一体どんなことだろう……?

 

「る、ルフィとおぬしは長く冒険をしたと聞く……。教えて欲しいのじゃ、ルフィの冒険の話を――。愛する者のことを知りたいと思うことは間違っておるのか? 嫌われたりは――」

 

「間違っちゃいないさ。戦争が起こるにしてもまだ時間がある。彼の冒険の話をしよう。最初の話は私の住んでいた村にルフィたちが来た日の話だ――」

 

 ハンコックが聞きたがったのは、ルフィがどんな冒険をしてきたか、ということだ。

 好きな人のことを知りたいという彼女の純粋な気持ちに応えるために私は彼との冒険の話を時間が許す限り語った。

 彼女はとても楽しそうにその話を聞く。村にいた頃はカヤにも色々とこうやって昔の話をしたっけな……。

 

 ハンコックはルフィの話はもちろんのこと、私とカヤの関係にも興味を持ったらしく、その辺りも質問攻めにあった。

 こんなところで恋バナなんてするとは思わなかったよ……。ちょっと恥ずかしいな……。

 

 そんなことをしているとすぐに時間が経ってしまい、エースの処刑までもう間もなくというところまで来てしまった。

 

 

「“ボア・ハンコック”さま! そろそろ出陣の準備を――」

 

「行こう、ハンコック。ルフィはインペルダウンで間に合わなかったみたいだ。でも、まだチャンスはある」

 

「おぬしの話の中で、カヤという者との関係は非常に興味深かった。わらわもいつかルフィとそのような関係に――。考えるだけで体が熱くなる」

 

「そうだね……、ルフィもいつか大人になるんじゃないかな? 君の想いもきっと届く。彼は思ったよりも良く人を見ているからさ」

 

 ハンコックはいつかルフィの恋人になれる日を夢見ていたので、私はそれを応援すると答えた。

 さて、話をしながら武器やアイテムのメンテナンスは済んだ。出し惜しみをするつもりはないし、何としてでも生き残る覚悟も出来ている。

 

「おぬしは優しいな。それでは向かうとするかのう。愛する者を待つために」

 

「うん。私も敬愛する船長の到着を待つとするよ。いやぁ、世界最強の海賊と最前線で対峙するなんて経験なかなか出来ないだろうなぁ」

 

 その一瞬のスキを見つけるまで、私は立場上は海軍側の人間だ。

 つまり狙われるということである――世界最強と言われる海賊、白ひげこと“エドワード・ニューゲート”とその仲間たちに……。

 七武海の配置位置は港から見える軍隊の最前列だ。つまり護衛である私の配置も自ずと七武海・“海賊女帝ボア・ハンコック”のすぐ傍らということとなった。

 

「死ぬなよ。ライアよ……。おぬしが死んでもルフィは悲しむぞ」

 

「ああ、大丈夫さ。そうならないように準備はしている。怖くないと言ったら嘘になるけどね」

 

 ポートガス・D・エース処刑まで残り3時間を切った。

 総勢十万人を超える海軍の精鋭たちが決戦の刻を待つ中、私もその最前線であの頂上戦争が始まるプレッシャーに耐えながら、その時を待っていた――。

 




頂上戦争をさっさと始めることにしました。
戦闘力が圧倒的に低いライアがどう立ち回るか……、という感じになりそうですね。
二次創作で頂上戦争といえば、無双するのがお約束なんですが、ライアにはそれが無理というか何というか……。
とりあえず、彼女の目的まであと少しなので私も頑張ります。

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