ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう 作:ルピーの指輪
今回はサンジとの出会いです。
それでは、よろしくお願いします!
「着きやした! 海上レストラン! ゾロの兄貴! ルフィの兄貴! ライアの兄貴! ナミの兄貴!」
ジョニーの大声が私たちの船が海上レストランに着いたことを知らせる。
「ライアはともかく、なんで私がアニキなのよ……」
「おい、失敬だな。君は……」
ナミの「ともかく」に私は反応してツッコミを入れる。
今さらだが、本当に初対面の人に女の子扱いしてもらえない。
ジョニーもヨサクも当然、初対面では私のことを男だと思ってた。
言いたくなかったけど、《魔物狩りのアイラ》と同一人物だという話をすると、アイラは女じゃなくて男だったのかと、私の期待の真逆の反応で悲しかった。
「どーですかっ! みなさん!」
ジョニーが自分の船のようにドヤ顔を示す。
どーんっと、目の前に浮かぶのは海上レストラン『バラティエ』――。
魚のようなデザインがオシャレなレストランだ。
私たちは感嘆して、わくわくしながらバラティエに進もうとした。
しかし、一隻の海軍の船が隣にいることに気付くとピリッとした空気が流れる。
なんせ、海賊船の横に海軍の船があるのだ。水と油みたいなものだ。揉め事がないほうがおかしい。
この海軍の船には確か海軍本部のフルボディ大尉が乗ってたはずだ。
メリケンサック付けてた人だってことくらいしか覚えてないけど……。どんな人だったっけ?
「見かけない海賊旗だな……。おれは海軍本部大尉“鉄拳のフルボディ”。船長はどいつだ? 名乗ってみろ」
考えごとをしていたら、フルボディ本人が登場して丁寧な自己紹介をした。
「おれはルフィ、海賊旗はおととい作ったばかりだ!」
ルフィは堂々とした態度でフルボディに返す。
なんだか嬉しそうなのは、海賊だと認めてもらったからだろうか?
しかしフルボディはルフィよりも、その後ろのジョニーとヨサクに目を付けたみたいで2人を挑発するような発言をした。
「そういや、てめェら二人……、見たことがある。確か……、小物狙いの賞金稼ぎ、ジョニーとヨサクっつったか……。ついに海賊に捕まっちまったのか?」
フルボディにそんな挑発されて怒ったジョニーとヨサクは彼の船まで喧嘩をしに行ってしまった。
さて、この間に準備しとくか。
ボコボコにされたジョニーとヨサクが返品されて、フルボディは食事に来ただけだからと
だが、少し船を走らせると彼はこちらに大砲を向けてきた。
まったく、カヤがプレゼントしてくれた船に無粋なことをしてくれる。
「ちょっと! あいつ、大砲を撃って来たわよ!」
「何ィ!?」
ナミの言葉にゾロもびっくりした声を出す。
「――目には目をってねッ!」
私は準備しておいた大砲を撃ち出した――。
海軍の船とゴーイングメリー号の間で爆発音が鳴り響く……。
私の撃ち出した大砲が海軍の大砲の弾に命中したからだ。
漫画だとルフィがゴムゴムの風船で大砲の弾を弾くんだけど、それが『バラティエ』の料理長であるゼフの部屋に直撃して多大な迷惑をかけるんだ。
さすがにわかってて止めないのは向こうに悪いし、ルフィが雑用で働くなんて可哀想だ、バラティエが!
「あー、良かった。船が無事で……」
私は船を撫でながらそう言った。万が一船が傷付けられたら、今度は私がフルボディと喧嘩しなきゃならんところだった。
「あなた、とんでもない事を平気な顔してするのね」
船に頬ずりをしてると、ナミが話しかけてきた。よかった。奇行はスルーしてくれた。
「ん? そりゃあ、この船も仲間だからね。仲間を傷付けられそうになったら助けるさ」
私はナミの言葉にそう返す。
「仲間ねぇ……。じゃあ、もし私がピンチになったら――」
「うん、もちろんナミがピンチなら、言ってくれ。絶対に助けるから。ルフィもゾロも一緒に、ね」
ナミの事情を知ってる私は出来るだけ優しく彼女にそう返した。
「ライア……、あなた……」
「ん?」
「そっ、その顔禁止! ――ったく、油断もスキもないんだから!」
ナミは顔を紅潮させてそっぽを向きながら、私の顔のダメ出しをした。
禁止って言われてもなぁ。ゴーグルつけたくはないし……。
そんなこんなで、私たちはようやく『バラティエ』に着いたのだった。久しぶりに美味しいモノが食べられそうだ。
◇ ◇ ◇ ◇
ジョニーとヨサクに船番を任せて、私たちは海上レストラン『バラティエ』の中に入って行った。
「へェ、ここが海上レストランか」
「中もきれいにしてあるのねぇ」
「うっひょー! 美味そうな匂いがするぞォ!」
私たち4人はテーブルに通されて、適当に注文して料理が運ばれるのを待った。
さて、サンジはどこかなぁ?
おや、あそこにはさっきのフルボディがいるぞ。そういえば、デートに来てたんだったな。
なんか、ワイン飲んで興奮してるな……。私もワインは好きだ。
「うまい……! このほのかな香りは……、北の大地ミッキュオの大地の香りか……。軽い酸味にコクのある辛口……。このワインは――イテェルツブルガー・シュタインだな! 違うかウエイター?」
大声でウンチクを語りながら、フルボディはドヤ顔でワインの銘柄を言い放つ。
これは、近くで見なければ……。私は席を立ってフルボディのテーブルに近づいた。
「
金髪とグルグル眉毛が特徴的な男、サンジがスープを持ってワインクイズの不正解を告げる。
周りのみんなはクスクス笑ってる。いやぁ、いいなぁ、ああいうスマートな感じ。
「スープです。熱いうちにどうぞ!」
「ふーん、優しくていい香りだね。多分グロリール・シャトーだろう。辛口のイテェルツブルガーじゃ、この料理の味を損ねちゃうから、美味しく食べられるように気を使ってくれたんだね。自信はないけど、当たってるかな? 副料理長」
私はフルボディと相席していた女性にグラスを借りて、ワインの匂いを確かめてサンジに尋ねた。
「――せっ、正解です。いやぁ、それにしてもキレイなお嬢さんだ! ワインが好きならおれと一緒に向こうで飲みませんか?」
やった、正解したぞ! ――って、えっ?
「ええと、副料理長? 今、お嬢さんって私に言った?」
「おや、お若く見えましたが、年上の方でしたか?」
当然という表情で私を見るサンジ。やだ、人生で初めてナンパされたんだけど。女の子に見られるのってこんなに嬉しいなんて……。
「おっと、こちらのお姉さんもこれまた美しい! お姉さんもこちらのお嬢さんと一緒にどうですか?」
サンジはその上でさらにフルボディの連れにもナンパをする。凄いなぁ、あんなに自然に口説けるなんて……。
私の中で既にサンジの好感度は上がりまくりである。
「副料理長、それは彼氏さんがいるのに悪いよ。グラス貸してくれてありがとう。こういう料理にはきっと合うと思うよ。優しいお姉さん」
私はサンジを窘めて彼女にグラスを返した。
「――あっ、あの! 私この人とは別に付き合ってません!」
「えっ?」
女の言葉にフルボディは愕然とした表情をする。まっまぁ、付き合ってなくても食事くらいは行くよね……。
「そっ、そうなんだ。それは失礼をしたね……。じゃあ、私はこの辺で……」
気まずくしてしまった私は自分の軽率さを呪いながら、この場を離れようとした。
「待って!」
私は彼女に腕を掴まれてしまう。なんだろう? やっぱり雰囲気を台無しにしたことを怒られるのかな?
「あ、あの。本当にこの人とは何でもないの。だから、わっ、私と付き合ってくれないかしら? ねぇいいでしょ?」
彼女は私の腕に絡みつきながら、そんなことを言う。何それ、怖い……。
「はっ、はぁ? いやいや、私はこちらの副料理長が言ったとおり女だし、心に決めた人が……」
「なっ、何を言ってるんだ? おっおれがワインを外したことがそんなにいけなかったとでも言うのか?」
私とフルボディが同時に早口で言葉を吐き出し、何ともカオスな状況になってしまっていた。
「だから見つめるなって、言ったのよ! いい加減に学びなさい! このバカ!」
「ああ、待って! せめてお名前を!」
それを見兼ねたナミが私の頭を叩きつけて、服を掴んで物凄い力でテーブルまで引っ張って行った。
「ごめん、ナミ。でもね、私! ナンパされたんだよ、ナンパだよ! 信じられないよ」
「はいはい、良かったわね。私は異様に喜ぶあなたが信じられないわよ」
ナミは私の言葉に呆れたような声を出すが、嬉しいものは仕方ない。君のような女性としてのアレやコレに恵まれた人には分からんのだ。
しかし、私などがナンパされるのだから、当然、ナミは……。
「ああ海よ。今日という日の出逢いをありがとう。ああ恋よ。この苦しみにたえきれぬ僕を笑うがいい。どうも、あなたの下僕でございます!」
ナミの放つ圧倒的な美女のオーラは怒り顔でも消せるはずが無く、サンジは私たちのテーブルにもハイテンションで現れた。
うん、本人に自覚はないかもしれないが、力の入り度合いに差があるよね。当たり前だけども……。目がハートマークに見える。
「なぁ、ルフィ! あの人良いと思うんだ! 彼を仲間にしよう!」
「お前、よっぽど女だと気付いてもらえて嬉しかったんだな……」
興奮気味にサンジを推す私を可哀想な人を見るような目でゾロは見ていた。
そんな中、気まずい空気に耐えられなくなったのか、フルボディは連れの女の手を引いて帰ろうとしていた。
すごい悪いことをした気がする……。そしてあの女の人、めっちゃ私に手を振ってる……。
彼が会計を済ませて店を出ようとしたとき、店の入口が開き海兵が慌てた顔で口を開いた。
「海賊クリーク一味の手下を逃してしまいました! “クリーク一味”の手がかりにと、我々7人がかりでやっと捕まえたのに!」
「馬鹿な! どこにそんな体力がありやがる! 三日前に餓死寸前で以降何も食わせてねェんだぞ!」
海兵の言葉にフルボディは驚愕の表情を浮かべた。
「申し訳あり――」
「おい、どうした!? うっ――!」
海兵とフルボディは撃たれてその場に倒れてしまう。そして、外からヨロヨロとふらつきながら、海賊が入ってきた。
彼はクリーク一味の幹部のギンだったけな。
ギンはテーブルに腰掛けて食事を要求する。そんな彼のもとに大柄なボウズ頭のコックが接客に向かった。
名前はええーっと、誰だっけ?
私が名前を思い出してる内にそのコックがギンをボコボコにしてしまう。金のない人は客ではないと……。まぁ、正論と言えば正論。
そして、ボロボロになったギンは外につまみ出されてしまった。
「ルフィ、ちょっと外を見に行かないか?」
私はサンジの動いた気配を察知してルフィを外に誘った。彼にはサンジの人となりを見てもらう必要がある。
◇ ◇ ◇ ◇
「食え……」
空腹で倒れているギンにサンジはちょうど料理を渡していた。
「面目ねェ……、こんなにうめェ飯を食ったのは――おれは初めてだ……。――面目ねェ、面目ねェ……! 死ぬかと思った……! もう、ダメかと思った……!」
涙と鼻水を大量に流しながら料理にがっつくギン。よほど、空腹だったのだろう。美味しそうに食べていた。
「――クソうめェだろ」
それを満足そうな笑顔でサンジは見つめ、タバコを吹かしている。
やはり、この人は誰よりも優しい男だ……。
「にしし、ライア! あいついいコックだなぁ! よしっ! あいつを仲間にしよう!」
ルフィはサンジの良いところを感じ取り、ニコリと笑った。
よかった。これで、彼はサンジを仲間にしようと頑張るはずだ。
ルフィはさっそくサンジに声をかけた。
「よかったなーお前っ! メシ食わせて貰えてなー! おいコック! お前、仲間になってくれよ! おれの海賊船のコックに!」
「ルフィ、それはいかにもストレート過ぎやしないか?」
彼のまっすぐ過ぎる物言いに私はついつい、ツッコミを入れてしまう。
サンジとギンはチラリと私たちの方を見た。
「やぁ、副料理長。さっきは騒いでしまって悪かったね。私はライア。こっちは船長のルフィだ。一応は海賊をやってる。副料理長も良かったら名前を教えてくれないか?」
ルフィとともに彼らに近づきながら、私はサンジに自己紹介とルフィの紹介をした。
「へぇ、お嬢さん。ライアちゃんって言うのか。可愛い名前だな。おれはサンジ、よろしく」
「えっ? 可愛い……かな?」
サンジからの言葉に私はつい、過剰反応してしまう。いかんいかん、彼は誰にだってこんな感じなんだから。
照れている私を余所にルフィはサンジの獲得のための勧誘を続けていた。
サンジは男の人を相手にも気さくで、楽しそうにこの店が元々名のある海賊のコックが作った店で、その人にとっては宝のような店だと言うことを楽しそうに語っていた。
「なぁ、サンジ……、仲間になってくれよ」
「断る。おれはこの店で働かなきゃいけねェ理由があるんだ」
サンジはやはりルフィの勧誘を断った。そうだよね。最初はきっぱり断るんだよね。
「いやだ! 断る! お前が断ることを断る! お前はいいコックだから一緒にやろう!」
ルフィの無茶苦茶な理論にサンジは呆れた顔をする。
「おい、ライアからも言ってくれ。海賊の楽しいところとか」
そしてルフィは私にまで無茶ぶりをしてきた。
「そうだね。さっき、君が声をかけていたオレンジ色の髪の美人が居ただろ? あの子も私たちの仲間なんだ。彼女とひとつ屋根の下で暮らすことになるのは刺激的じゃないかい?」
私は彼に効果的な言葉を選んだ。まぁ、意志が固いからこれくらいじゃ――。
「えっ? あの天使みたいな彼女もかぁ! 確かにそりゃあ刺激的だ! ぐっ……、ぐぐ」
今、一瞬だけすごく乗り気になった気がする……。
そして、すごい形相で煩悩と戦ってるような……。
こうして、私たちはサンジと出会った。しかし、この海上レストランは間もなく大きな戦いに巻き込まれることとなる――。
色々とサンジに会ったらどうなるのか、と予想してくださった方が多かったので、こんな感じで良いのか不安ですが、いかがでしたでしょうか?
ワンピースのキャラクターってブレないところが魅力的なので、サンジはサンジらしく女性には誰にでも紳士的な態度でいってもらって逆にライアにときめいて貰いました。
そして、海に出て最初にライアに迎撃されたのは、フルボディ大尉の連れの女性でした。予想が当たった方はいますでしょうか?
あと、フルボディ大尉はそれなりに強いのでフラフラのギンに負けないとは思うのですが、傷心中にいきなりの展開で不意討ちされて敢えなくみたいな解釈でお願いします。
次回もぜひご覧になってもらえれば、嬉しいです!