ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう   作:ルピーの指輪

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待ってくれてる人がいるか不明ですが、お待たせしました。
色々と迷ったんですけど、もう書きたいところだけ書こうかなって。
言い訳です。すいません。


頂上戦争――決死の逃亡劇

 

「海賊 "巨大戦艦サンファン・ウルフ"!」

 

「あ……、見つかっつった上にバレつった……」

 

 山みたいな大男が海軍本部の建物の裏からひょっこり顔を出していた。

 こんなデカイやつをどうやって幽閉してたんだ……。

 

「"悪政王アバロ・ピサロ"!」

 

「懐かしいシャバだニャー……」

 

「"大酒のバスコ・ショット"!」

 

「トプトプトプ……! ウィ〜、こいつら殺してええのんか?」

 

「"若月(みかづき)狩りカタリーナ・デボン"!」

 

「ムルンフッフッフッ、あなた達もスキねェ」

 

「――そして! インペルダウンの"雨のシリュウ"看守長!」

 

「一体どうなってるんだ!?」

 

 個性的な"LEVEL6"の囚人たちとインペルダウンの看守長までが黒ひげについており、海軍も混乱しているみたいだ。

 

「シリュウ! 貴様……! マゼランはどうした!? インペルダウンはどうなった!? 貴様らどうやってここへ来た!?」

 

「後でてめェらで確認しな……ともかくおれは……コイツらと組む。以後よろしく」

 

 センゴクは特にシリュウにご立腹みたいだな。無理もないか。裏切り者なんだから。

 

 黒ひげ、マーシャル・D・ティーチはインペルダウンに侵入するために七武海に入った。

 そして、強い仲間を手に入れるという目的が達成された今、七武海の称号は要らないと宣う。

 

「ティーチィ~~!!」

 

「危ない! 船長!」

 

「「――ッ!?」」

 

「容赦ねェな……! あるわけねェか!」

 

「……てめェだけは息子とは呼べねェな! ティーチ!! おれの船のたった一つの鉄のルールを破り……お前は仲間を殺した」

 

 白ひげは怒っていた。エースを捕まえた海軍に対しては見せなかった怒気を感じる。

 大気を通じてビリビリとした覇気が私の身体を自然に震え上がらせた。 

 気をしっかり持たなきゃな。意識ごと持ってかれそうだ。

 

 

「「オヤジッ!」」

 

「黒ひげッ! 今度こそおれが決着をつけて……」

 

「マルコ! エース! 手を出すな! 4番隊隊長サッチの無念! このバカの命を取って おれがケジメをつける!」

 

「ゼハハハハハ! 望むところだ!」

 

 マルコとエースが勇み足を踏むが白ひげはそれを許さない。  

 彼は自分だけでケジメをつけると更に覇気を剥き出しにした。

 

「"闇穴道(ブラックホール)"!」

 

「サッチは死んだが……エースは助け出せて良かったじゃねェか。オヤジィ――だが、思ったとおり、あんたはボロボロだ」

 

「――ッ!?」

 

「おれはアンタを心より尊敬し……憧れていたが……! アンタは老いた! 処刑されゆく部下一人を救っただけで半死人になるほどにな!」

 

 黒ひげはヤミヤミの実の能力で白ひげに肉薄し、彼の衰えを口にする。

 全盛期の彼がどれ程のものか知らないが、死にかけでこれだけの膂力を見せつけるのだ。世界最強に相応しいだけの力を持っていたのだろう。

 

「あの野郎! もう許せねェ! オヤジのことを侮辱しやがって!」

 

「…………」

 

「どけ! ルフィ! おれはティーチを黙らせてくる!」

 

 エースが飛び出そうとするのを無言で制するルフィ。

 エースは血管が弾けそうになるくらいの剣幕でルフィに怒鳴る。

 

「オッサンは手を出すなと言った。これは、白ひげのオッサンの喧嘩だ」

 

「わかってる! そんなこと! けど、おれァあの人を見捨てられねェ! あの野郎を許せねェ!!」

 

「おい! エース待て!」

 

 ルフィの理屈などエースだって承知してるのだろう。

 だが、彼は許せなかった。白ひげが死ぬのを傍観することも、何よりも黒ひげが好き勝手することが。

 

「来るんじゃねェって言ってるのが、まだわかんねェか! アホンダラァ〜〜!!」

 

「――ッッッッッッ!?」

 

「お、オヤジがエースを攻撃した? いや、吹き飛ばした!?」

 

 槍を振るい、白ひげは近づいてきたエースをこちらに向かって吹き飛ばす。グラグラの実の力が封じられているにも関わらずにだ……。

 黒ひげとの戦闘中なのに……、そんな余裕はないはずなのに……。

 

「エース! てめェはやっぱりあの男のガキだ! 気が短くて、無鉄砲!」

 

「オヤジ……」

 

「あいつァ! お前のことを待っている! ここで死んでもいい男じゃあねェんだ! 目に焼き付けろ! おれの背中を! 歯を食いしばれッ! 強くなるためにッ! 覚悟を決めろッ! あの男の意志を受け継げるのはエース……お前だけだ! お前はおれの自慢の()()だからなッッッ!!」

 

「 オ……ゴワァアア!!」

 

 エースへの思いを語り、黒ひげを直接武器で攻撃する白ひげ。

 その圧倒的な覇気は黒ひげといえども大ダメージを受けたみたいだ。

 

「ハァアアアアッ! 痛ェエ!! 畜生ォ……」

 

「過信……軽率……お前の弱点だ……」

 

「い…………え!? オイ! やべろッ!」

 

 黒ひげの顔を掴み、震動を加えようとする白ひげ。

 わざわざ弱点を指摘するところを見ると、黒ひげへの情も残ってるのだろうか……。

 

「やべろォ! オヤディ! おれァ息子だど 本気で殺スン……ああああああ――ッ!?」

 

 グラグラの実の能力を顔面に受ける黒ひげ。私なら即死だろうが、彼の耐久力はワンピースの世界で屈指だろうからな。まだまだ、生命力は衰えていないみたいだ。

 

「こ、この……"怪物"……がァ!」

 

「死に損ないのクセに!……黙って死にやがらねェ!」

 

「やっちまえェ!!」

 

 黒ひげの仲間たちから総攻撃を受ける白ひげ。

 漫画で見て知っていたが、実際に見るとここまで凄惨なものか。

 私の見聞色の覇気は彼の生命力の衰えを確実に捉えていた。彼はもう――。

 

「ライア……、白ひげのおっさんは……」

「……死ぬよ。間違いなく……」

 

「オヤジィ〜〜〜!!」

 

 ルフィだって確かめなくても分かっている。私にそんな問いかけをしたのは、そう言わずにいられないほど、目の前の光景が壮絶だからだ。

 

「ゼハハハハ! やれェ!! 蜂の巣にしろォ!!」

 

「オヤジ……! クソォ! 離せ、マルコ! 頼むから! 離してくれよォ!」

「おれだって割って入りたいんだよい! だが、オヤジはお前に生きろと命令したんだ。ならば、お前を守るのがオヤジの意志だ!」

 

 黒ひげたちが白ひげを嬲る様子に我慢ならないエースだが、それをマルコが羽交い締めして動きを封じる。

 そんなマルコも歯を食いしばりながら、耐えているみたいだが……。

 

「エースはいつかきっと、ロジャーの意思を継ぐ! お前じゃなくてな、ティーチ! "血縁"を断てなかったてめェの甘さを呪いな……!」

 

「――誰になるか知らねェが、いつの日かその数百年分の"歴史"を全て背負ってこの世界に戦いを挑むヤツが出て来るだろう……!」

 

「センゴク……お前たち"世界政府"は……いつか来る……その世界中を巻き込む程の"巨大な戦い"を恐れている!!」

 

「興味はねェが……あの宝が見つかった時……世界はひっくり返るのさ……エースかそれとも別の誰かが見つけ出すのか知らねェが! その日は必ず来る……!」

 

「"ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)"は 実在する!!!」

 

 白ひげはエースに、そして世界中の海賊たちに……遺言にも近いセリフを遺す。

 "ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)"とは何なのか私は知らないが……恐らく世界がひっくり返るような何かなのだろう。

 

「あのおっさん。ワンピースのこと知ってんのか?」

 

「あの白ひげが最期にいい加減なことを言うはずがないからね。知ってるんだろう」

 

「最期って……、白ひげのおっさん……立ってるぞ」

「言葉のとおりさ……、()()()彼は凄いんだ。海賊王になるなら、君はあの背中を超えなきゃいけないね……」

 

 漫画とは違って、ルフィは白ひげの死に様を見た。

 これが今後……どのように彼の生き様に影響するか分からないが……。

 

「てぃ、ティーチのやつ、何をするつもりだ!?」

 

「くそっ! 海軍のやつ! 思い出したかのように攻撃をしてきやがって!」

 

「向こうが気になるが! ここは逃げるぞ! エースくん! ルフィくん! お前さんたちは……しっかりと生きにゃならん!!」

 

 黒ひげは黒い布で白ひげの遺体を覆った。どうやったのか知らないが、彼のグラグラの実の力を奪うのだろう。

 それと同時に海軍がこちらに向かってくる。白ひげを失って、士気が下がってるところを狙うつもりか……面倒な……。

 

「ジンベエ……! おれァ……!!」

 

「情けないじゃろう! 無力感に打ちひしがれて辛いじゃろう! だがな、あの人はお前さんが立ち上がることを信じとる。じゃから、涙を飲んで意志を汲み取るんじゃ!」

 

「…………」

 

 ジンベエが呆然としているエースに声をかける。

 まるで、エースを失ったときのルフィだな……。ショックで覇気を微塵も感じない……。

 

「君が死ぬことほど、白ひげの死を侮辱することはないだろうね。……うちの船長も満身創痍になっている。無駄にしたら、私は許さないよ」

 

「分かってる。知った風な口を利くんじゃねェ!」

 

 私も一応は声をかけたが無駄だった。ここで死なれるのは惜しいから奮起して欲しいんだが……。

 

「エース……」

「ルフィ……? ぐはっ――!」

 

 ルフィは完全にエースの不意をついて、彼の腹をぶん殴って、ふっ飛ばした。

 本来ならメラメラの実の力で覇気無しの攻撃など効かないんだろうけど、精神的に消耗していたのだろう……。

 

「ルフィくん、何をするッ――!?」

 

「このままぶっ飛ばせば運べるだろ? エース動かねェし」

「んな、無茶苦茶な……。理屈もなにもあったもんじゃないわい」

 

 ジンベエは通常運転のルフィのぶっ飛んだ理屈に驚いていたが、力尽くでも動かすっていうのは本質をついている。

 

「麦わら、礼を言うよいッ! また海で出会ったら、な」

 

 マルコは動く、倒れたエースを抱えて……。ここからの逃亡戦は漫画以上に厄介かもしれない。 

 エースが生きてる分、海軍には大義があるからだ。

 

「大噴火ッ!」

天岩戸(あまのいわと)ッ!」

暴雉嘴(フェザントベック)ッ!」

 

 三大大将は容赦なく海賊たちを駆逐する。

 黒ひげたちをもっと構ってやれよ、とか思ったけど……エースの生存は向こうにとって負けも等しいので面子を優先したらしい。

 

 そして――。

 

「ゼハハハハ、手に入れたぜ! 全てを無に還す闇の引力! 全てを破壊する地震の力! これでもうおれに敵はねェ! おれこそが最強……まさしく究極の存在だ!! おれの前にひれ伏し、恐怖し崇めろ! これからの未来は決まった! そう、これからは……、この黒ひげの時代だァ!!」

 

 マリンフォードが激震するのと同時に景気の良い笑い声が聞こえる。

 最強と最凶の力を併せ持つ、超越者。悪魔の実の能力は一人ひとつという法則を打ち破ったただ一人の例外。

 

 黒ひげ、マーシャル・D・ティーチは両手を広げて、自らの時代の到来を宣言した。

 

 

「あいつ、白ひげのおっさんの力を――」

「気になるのは分かるが……逃げた方がいい」

 

 私とルフィは思った以上にもたついている。

 ルフィを早く逃さなきゃ、と焦っているが私も彼も消耗していて……衰えない敵の量に辟易していた。

 

「……そろそろ、ベッドの中でだらけて寝てェ。お前ら、さっさと死んでくれねェか? Zzzzz」

 

「はぁ……、もう寝てるし……」

「青キジ……はぁ、はぁ……」

 

 いかんな。ルフィは私以上に疲れている。そりゃあインペルダウンで死にかけた足で来たんだから当然か……。

 赤犬の奴はどうやら、エースを追って、マルコとジンベエと戦っているみたいだな……。

 

「無駄な戦いはしない。逃げれば、文字通り勝ち……だからね」

「はぁ、はぁ……、わかってる。あんな強いのと戦ってる暇はねェ……!」

 

 青キジと私とルフィは逃亡戦を開始。

 しかし、大将と戦う気力は我々には残っていなかった――。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「ルフィ〜〜〜ッッッッ!」

 

 私を庇ってルフィが氷漬けにされる。

 まだ生きているが、早く逃げないとヤバい。

 

「悪いね、この前みたいに生かしてやらねェぞ」

 

 青キジは容赦なく氷像となったルフィを踏み潰そうとした。

 私も足を凍らさせられて、火貝(フレイムダイアル)でどうにか解凍しようとしているが、間に合わない。

 

「麦わらボーイッ! まだ、こんなところにいたっちゃブルか!」

 

 ギリギリのタイミングで革命軍の幹部であるイワンコフがルフィを助ける。

 革命軍たちが、こちらに援軍に来てくれたみたいだ。

 

 

「イワンコフだっけ? 青キジをちょっと私が抑えとくからさ。ルフィを安全なところまで運んで助けてやってくれないか?」

 

 私は彼だか彼女だか分からないが、イワンコフに声をかける。

 革命軍に任せれば、それなりに安全を確保できそうだ。

 

「レディキラーね。男の子にしてあげたいタイプ……。ヒーハー! ヴァナタ、あの青キジを止めるだなんて、そんなこと本気で言ってるの? どう考えても、返り討ちにされるだッチャブル」

 

「1秒、時間をくれれば何とか。君たちは振り返らずに真っ直ぐ逃げてくれればいい」

 

 凍ったルフィを抱きかかえるイワンコフに先に行くように促した私。

 青キジとの勝負は3回目だけど、今度は負けない。

 

「ンーフフフフ、いい目をするじゃない。地獄のWINK(ヘ〜ルウィーンク)ッ!! 行くわよ!」

 

 青キジに爆風を伴う衝撃波を発したイワンコフは逃げの手を打ってくれた。

 あとは彼の無事を祈るだけだ。そして、私の健闘を――。

 

「レディキラー、お前さんの覚悟を汲んで奴らの寿命を少しだけ伸ばしてやった。おれを止めると断言するたぁ、大言壮語を吐くようになったな。命を捨てて、船長を生かす気か?」

 

「いやいや、とんでもない。私もさ……、目的があって海に出たんだ。気配が近付いているのが分かったからね。声が聞こえるんだ。とても懐かしくて……ムカつく声が……。今死んだら、この海に来た意味が無くなる」

 

 そう、私には目的がある。ルフィを海賊王にするよりも前に立てた目的が。

 その瞬間は近付いている。確かな気配が私にそれを知らせてくれている。

 

「……? よくわからねェが、死ぬ気がねェってことはよく分かった。奥の手があるってことも。力はねェが、頭がある。あの女が惚れる訳だ……」

 

「ご明察……。怪我したくなかったら、こっちに動かないことをオススメするよ。もうじき、この戦争の意味は無くなる。エースは海に出ていったみたいだし」

 

 サカズキのスキをついて、エースは上手く逃げられたらしい。

 マルコたち、白ひげ海賊団の隊長たちやジンベエが見事に抑えたみたいだな。

 ルフィはもう少しかかりそうだが……、公開処刑の意味を失ったのはでかい。

 

「それで、動かねェとでも? 何をしても無駄だ。一撃で決める――」

「必殺――」

 

 勝負は一瞬。ここ一番の集中力で未来を読み切れ――!

 

両棘矛(パルチザン)ッ!」

「銭形捕物星ッッ!」

 

 最後の切り札。これが私に残されたラストジョーカー。

 これ以上は何にも用意していない。ここぞという場面で使おうと残していた。

 

 そう、私は最後の土壇場で――。

 

「か、海楼石の手錠を飛ばした――、だと……? 死ぬ場面があれ程あったにも関わらず、ここまで……これを使わずにいたというのか……」

 

 青キジの左足に嵌められた手錠は海楼石で出来ている。

 つまり、ヒエヒエの実の力は封じられて……。彼の力も激減した……。

 

 とはいえ、私も確実に当てるために引きつけ過ぎて、脇腹を氷の槍で貫かれて出血しているのだが……。

 

「ちっ、まんまと策に嵌められたみてェだな。さっさと行っちまえ。今度会ったら、全力でお前さんから倒す」

 

 怖いことを言いながら、青キジは素直に負けを認めてくれた。

 

 だけど、さ。私もここから離れるつもりは無いんだよね……。

 

 

 ――だって、来てくれたんだもん。

 

 

「この戦争を終わらせに来た……」

 

 

 赤髪海賊団が――。

 

 私の旅の目的が一つ……達成されようとしていた――。




とまぁ、こんな感じであっさりと赤髪海賊団の登場。
次回は父娘の対面とか、そんな感じ。

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