ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう   作:ルピーの指輪

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今回から、ライアの帰郷が始まります。


ウォーターセブンでの再会

 ウォーターセブン――つい先日のことだ。私が船員(クルー)たちにメリー号を休ませることを懇願して、フランキーにサニー号の制作をお願いしたのは。

 

 そこから、ロビンがCP9に攫われて……私たちは司法の島で死闘を繰り広げて勝利する。

 

 そんな経緯もあり、ウォーターセブンの市長であるアイスバーグには信頼してもらうことが出来た。

 

 

「んで、ライアちゃん。武装色は掴めそうかい?」

 

「全然だよ。あのさ、教える気あるのかな? 理論とか理屈とか、そういうので覚えるタイプなんだけど私は」

 

 この親父、武装色の覇気を教えるとか言って全然芯を食ったような話をしてくれない。

 見聞色の覇気が使えるなら、その延長上に武装色もあるから、覇気という概念を身体に染み込ませろ……みたいなことを言われたけど、一向に掴めないでいた。

 

「だって、理屈じゃねェもん。体で覚えるしかねェんだよ」

 

「本当に……?」

 

「さァな。ライアちゃん以外に教えたことねェから、よくわかんねェ」

 

 ……いい加減すぎる。よくもまぁ、あんなに自信満々に「いろはを教える」とか言ったもんだ。

 だけど、新世界での戦いでは武装色の覇気は必須。私にはウソップみたいな運もなければ耐久力もない。だから、殺られる前に殺らなきゃならないんだ。

 

 何とかして、この親父の技を全部盗まなきゃ……。

 

 

「お〜〜い、そろそろ飯にするぞ」

 

「ちょっと待って。もう一回試したら作るから」

 

「いや、もう出来てるって。早く食おうぜ」

 

「えっ……?」

 

 親父に調理なんて繊細なこと出来るとは思ってなかったから、私は心底びっくりした。

 いや、私だってサンジに及ぶべくもなく人並みにしか出来ないけど、この人が料理作るなんて……。

 

「別に普通に飯くらい作ってたぞ。お頭と組んだばかりの頃はな。お前の器用さは誰譲りだと思ってんだよ?」

 

「……母さん」

 

「まァ、母さんの方が美味い飯は作ってたよな。だけど、これだって――」

 

「うん。悪くないよ。故郷の味って感じだ。ちょっと塩気が多いけどね」

 

「嘘つけッ! おれァ、ちゃあんとライアちゃんの好みの味付けにしたぞ。薄味が好きだったからな」

 

 正解だよ。私は嘘をついた。なんかムカついたから。

 この人は私のことなんか忘れてると思ってたけど……覚えてたんだ、そういうとこ。 

 

 サンジには気を使わせてるんだよね。私のだけ、調味料を控えめにしてもらったりしてさ。何も言ってないんだけど、彼は気遣いの人だから。

 

 だけど、気遣いとは程遠い親父がまさかこうやって料理を出すなんて……やっぱり信じられなかった……。

 

 

「ウォーターセブンには、もう間もなくって感じか。久しぶりだなァ。赤髪海賊団の海賊旗無しで港に下りるのは」

 

「四皇と呼ばれるくらいになると、おいそれと動けないだろ。海軍が見張ってるだろうし」

 

「まァな。お頭は気にせず自由に動く時もあるけどな。この前もそれでカイドウたちと殺り合ったし」

 

 百獣海賊団の総督――シャンクスや白ひげと同じく四皇の一人に数えられる大海賊、百獣のカイドウ。

 最強生物とか言われてたっけ……。実は私は彼とルフィたちが決着をつけるところまで漫画を読んでいない。「和の国編」の始まった直後くらいに死んじゃったから。

 

 とりあえず、いつか喧嘩を売るのは間違いないのは知ってるけど……。

 

 まァいいや。こういうのはルフィが何とかしてくれるだろう。私はもうちょっと小物を相手にするというか、何というか……とにかく彼をフォローしつつ死なないように頑張ればいい。

 

「2年で戦えるようになるんだろ? カイドウだろうが、おれたちだろうが……。ルフィを海賊王にするために、さ」

 

「……そうだね。彼の障害を取り除くのが、私たち船員(クルー)の役目だから」

 

 恐らく初めて食べた親父の手料理。

 残すとサンジに怒られるからな。ちゃんと完食しなきゃ……。

 

 

 赤髪海賊団から借り受けた小船はウォーターセブンの目前まで迫っていた――。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「おおっ! ライアじゃねェか! マリンフォードで麦わらと馬鹿やったってすげェニュースになってたぞ!」

 

「パウリー、久しぶり――って程じゃないか」

 

 ウォーターセブンに着いて、私は一人でガレーラカンパニーに訪れた。

 親父は四皇幹部として顔がそれなりに売れてるから、小船の方で留守番してる。最後まで、娘にちょっかいだす男を仕留めるから付いてくると煩かったが……。

 

「ここに来た目的は分かってるぜ。メリー号を受け取りに来たんだろ? 麦わらとの待ち合わせが2年後に延びたから」

 

 そうそう。話が早くて助かるよ。

 

 ――んっ? ちょっと、待って。あの3D2Yのメッセージ……って、仲間の私たちにしか通じないはずだよな。

 だって、3日後に集まるなんて約束……あの場にいた仲間たちしか知らないはずだし。

 

「おーい、その資材はあっちに運んでくれ!」

 

「はいはーい。キャハッ、こんなの簡単よ!」

 

 1番ドックの奥の方から聞き慣れた笑い声が聞こえる。

 まさか、彼女がウォーターセブンにいち早く辿り着いていたのか……。

 

「全部、レモンの姉ちゃんの読みどおりだ。“船長さんが待ち合わせを延期したから、必ずライアは船を取りにここに来るはず”って言ってたからなァ」

 

 すごいな。クマにどこに飛ばされたのか、彼女だけ漫画の知識が役に立たなくて知らなかったが、こんなに早くここまで駆けつけたなんて……。

 

「お〜〜い! レモンの姉ちゃん! ライアの奴が来たぞ〜〜!」

 

 パウリーが叫んだ、その瞬間……。

 凄い勢いで、空高く彼女は舞い上がった――。

 

 前は空中に上がるのに傘を使ってた……、と思ったけど……。

 

「ライア〜〜! キャハハッ、やっぱりあんたも無事だったのね!」

 

 明るい笑顔を見せる彼女は麦わらの一味のムードメーカーとなっている、通称“運び屋”ミキータだ。

 色々あって、バロックワークスを裏切り私たちの仲間になった彼女はキロキロの実の能力者であり、私と共に漫画の麦わらの一味には居ないイレギュラーな存在でもある。

 

「会えて、嬉しいよ。君が無事で良かった」

 

「ば、バカ……、そんなの当然でしょ。……それより急にそんなに力強くされると、私……」

 

 ミキータを抱きしめて再会を喜ぶ私。

 彼女は声を震わせながら、返事をした。やっぱりミキータも不安だったみたいだ。

 

 ――顔を見るとびっくりするくらい赤くなってる。熱でもあるのかしら……。

 

「だけど、驚いたよ。私よりも早くウォーターセブンに着いてるんだもん。まさか、ここに飛ばされたのか?」

 

「……ううん。すっごく辛気臭いところに飛ばされたわ。何か世界政府の諜報員(スパイ)を育成している機関みたいなところ。抜け出すのに苦労したんだから」

 

 世界政府の諜報員育成って、CP9とかそういう系の育成機関って感じかな。

 また、濃いところに飛ばされて……よく抜け出せたな。

 

「で、これを頂いたってわけ。キャハハッ!」

 

 ミキータは懐から一冊の本を取り出した。

 なになに、“猿でもなれる六式マスター”――何だこりゃ。教本っぽいけども……。

 

「私、思ったの。今のままじゃ、確実に一味の足を引っ張るって。だから、体を鍛えて能力も鍛える。私はまだキロキロの実の力を使いこなせていない。少なくともあんたの方が私の能力(ちから)を上手く使えてると思う内は……」

 

 いつになく真剣な顔をしたミキータは自分の力不足を2年間で補うために特訓をすると豪語した。

 キロキロの実は強いと私も思う。六式と組み合わせれば、面白いかもしれない。ん? 待てよ……。さっきのあれって……。

 

「キャハッ! さすがに気付いたわね。月歩(げっぽう)はまだ全然出来ないけど、一歩だけなら、空中に踏み出せるようになったってわけ。それでも、私が体重を極限まで減らせばあの効果。傘や爆発無しでもあの高さまで飛べるようになったわ」

 

 身体能力に難があったミキータだったが、そこを克服すれば戦闘力は相当高くなるだろう。

 さらに能力の応用が利くようになったら……。あれ? 私よりも強くなるんじゃない……?

 

 

「おい、お前ら。再会を喜んだところで、メリー号を見るか? あれから、さらにガレーラ総出でメンテナンスもばっちりしたんだぜ」

 

 私たちがひとしきり雑談をしたところでパウリーがそう声をかけてきた。

 へぇ、メリー号のメンテナンスもばっちりか。ナミが航海士として居ないのが怖いけど、何とか無事に帰れそうかな。

 

「1番ドックに置いてくれてるのかい?」

 

「いんや。特別な場所に隠してる。なんせ、麦わら関連の船だから政府に目をつけられちゃならねェ。アイスバーグさんが格納庫の鍵を持っているんだ。恩人の大切な私物だからな。あの人が管理するって聞かなくてよォ」

 

 アイスバーグ……そこまでメリー号を大事にしてくれたんだ。嬉しいな。あれに乗って帰って……カヤに早く会いたいよ。

 

「キャハッ! あんた……エロい顔してるじゃない。故郷の彼女の顔でも想像してたの?」

 

「あはは、バレちゃったか。ミキータは何でもお見通しだな」

 

「その余裕な感じ腹立つわね。私も会いに行って、現地妻ですって挨拶してやろうかしら。キャハハ」

 

「まったく、冗談でも勘弁してくれよ。意外と怒ると怖いんだからさ」

 

 ミキータと私はパウリーに案内されて、ガレーラの本社に入り、アイスバーグのいる社長室に向かう。

 

 アイスバーグ、元気かな。まずはお礼を言わなきゃいけないよな。色々と気を遣わせちゃったし……。

 

「あれ? おかしいな。この時間はここにいるはずなんだが。寝てんのか?」

 

 ノックをしても反応がないみたいで、パウリーは首をひねる。

 ドアノブを回すと鍵はかかっておらず、扉は開いた。変だぞ……見聞色の覇気で中を探ったけど、中には人は――。

 

「誰もいねェ! この部屋は機密とか結構あるから出かけるにしても鍵は絶対にかけるはずなんだが……!」

 

 パウリーが中をキョロキョロと見渡し誰も居ないことを確認する。

 私は椅子を触ってみた。まだ温かい……。さっきまで誰か座っていたのは間違いないみたいだ。

 

「……ライア。見てご覧なさい。これって、血じゃないかしら。まだ固まってないから、ちょっと前よ。ここに血が付着したのは……」

 

 ミキータは窓枠に付いた血を指差す。窓は――鍵がかかってない。開いている……。

 

 まさか、誰かがこの部屋に入って……アイスバーグを――。

 

「アイスバーグさんを攫ってった奴が居るのか。世界政府絡みの連中? いや、司法の島のことであれだけCP9がコテンパンにやられて……バスターコールまでかけちまって、それはねェか」

 

 パウリーは自問自答しているが、アイスバーグが攫われたのは殆ど間違いない。

 

 犯人は……、近くにいるはず。私は見聞色の覇気で怪しい気配が近くに居ないか探る……。

 

 

 ――居たッ!?

 

 

 この場所にいち早く行くためには――。

 

 

「ミキータ! 屋上まで私を運べるか?」

 

「キャハハ! 任せなさい。何処へだって運んだげるわよ!」

 

 ミキータは私を背負いつつ、窓枠から上空に向かって一歩踏み出した。

 

 すると、物凄い勢いでガレーラ本社の屋上までひとっ飛びで到着する。短期間でこれだけ出来るようになれたのは素直に凄いな……。

 

 

「隠れても無駄だ。そこの裏に居るんだろ? 君がアイスバーグさんを攫ったのかい?」

 

「無礼者……! 世界政府に追われている私がそんなことをするものか!」

 

 物陰から飛び出たのは、かつて私とナミが司法の島で死闘を繰り広げ……かろうじて勝利したCP9の紅一点――アイスバーグの秘書としてガレーラカンパニーに潜入していた女――カリファである。

 

 ルッチとかカクの気配は感じないな。この人、一人だけか……。世界政府に追われてる……? そういや、スパンダムが全部責任をルッチたちに被せたんだっけ。

 

「カリファ。アイスバーグさんが行方不明なんだ。状況的には君が怪しいけど、この辺りには彼が居ないし……。どうしてここにいるのか教えてくれるかい?」

 

「あなたに身も心も奪われた私よ。あ、あんなセクハラしといて……。め、命令すれば良いじゃないですか。何してるのか話せって。というか、命令しなさい! そして、思う存分……束縛しなさい!」

 

 私がここにいる理由をカリファに尋ねると、急に頬を赤らめてモジモジしながら変なことを言う。

 いや、束縛とかいいから早く話してよ。

 

「あんた、この人にナニしたのよ? キャハハ、言わなくても想像つくけど」

 

「何もしてないって。鍵をちょっと凄いとこに隠してたから……色々と触ったりはしたけど」

 

「そ、そうよ。もう、尊厳も全て奪われたんだから……。もう、私はレディキラーの奴隷になるしかないの……」

 

 それは、あなたが悪いじゃん。ていうか、殆どナミがやったことだし……。

 あのさ、DV被害者みたいな顔しないでもらえるかな。

 

「で、話を戻すけど……カリファは何でここにいるの?」

 

「命令したのなら答えます。司法の島で私だけ仲間とともに逃げ遅れて……。何とかあなたのお仲間が逃げるのに紛れて、この島に潜伏してたのですが。流石にずっとここに居るわけにいかないから、秘書時代に隠したへそくりを回収しにここに来ました。……まだ何もしてません。さぁ、縛りなさい」

 

 嘘はついて無さそうかな。血の匂いもしないし……。何よりカリファから戦意を感じない……。縛りなさいは意味がわからん。

 

「ライア。そういえば、さっき社長室でこれを拾ったんだけど……」

 

「ん? カード……だな。これは……。あれ? このカードって……」

 

「……このカードには見覚えがある。アイスバーグは厄介な連中に捕らえられたみたいです。……ご主人様。恐らく狙いは私たちと同じ……プルトンの設計図でしょう。なるほど、バスターコールの権限まで与えて私たちを急かせたのはこういう理由もあったのね……」

 

 なんかカリファが訳知り顔でミキータの手にしたカードを見てきた。

 とりあえず、ご主人様とはもう二度と言わないでほしい。

 

 それは置いといて、プルトンの設計図を狙っていたのは世界政府だけじゃなかったってこと? まぁ、あれが燃やされたとかいう情報は極秘だろうから、狙ってる奴が他に居たとして、それを知らないってのは分かるけど。

 

 うーん。このカードって……どう見てもアレだよなぁ。

 

 私の帰郷は思わぬ敵によって邪魔されつつあった――。

 




ミキータとカリファがパーティーに加わりました。
ここから、プルトンを巡っての戦いは完全にオリジナルストーリーです(敵も含めて)。
プルトン言えば、某砂漠の国も関わってきますし、あの王女様もこの先出てくる予定です。
今のところ、面白くなっているか不安ですが頑張ります。

とにかくミキータが好きで、贔屓してます。ライアと共にイレギュラーな存在なので、里帰りに付き合わせようと思いました。
カリファは何となくドMな感じにしてみました。勝手なことして申し訳ありません。

このストーリーも去年から考えていたのですが、頂上戦争編を書くのに苦心しちゃってて、投稿が遅くなって申し訳ありません。

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