ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう 作:ルピーの指輪
申し訳ありません。
「済まないね。ミキータに六式の指南なんてさせちゃって」
「いえ、ご主人様の命令とあらばたとえ両手両足を束縛されたまま、海に放り込まれても構いません」
「私が構うんだが……」
カリファはメリー号でミキータに六式の基礎を教えている。この体術……キロキロの実とめちゃめちゃ相性が良い。
1万キロの鉄塊でプレスするだけで悪夢だし、剃も月歩もウエイトを自在に操れるミキータが使うと脅威になり得る。
彼女が六式マスターになれば、二年後の旅はかなり楽になるだろう。
「で、ライアちゃんはちっとは武装硬化使えるようになったか?」
「えっと、ね。指先だけ、ほら。ちょっと黒い気がしない? 気配を探るときのピリッとした感じを集めてみたんだけど」
「キャハハ。本当にちょっぴり黒っぽいじゃない。それが覇気って奴なの?」
ヤソップとミキータが私の指を覗き込む。漫画だと、覇気使いは腕とか全身とか真っ黒にしたりしてたけど、今の私は人差し指の先っぽが限界みたいだ。いや、これが本当に覇気なのか怪しいが……。
「おー、出来てるじゃねェか。よし、次は銃弾に覇気を込めるか」
「早いよ! ステップを多分10段階くらい飛び越えてるよ!」
親父が無茶ぶりをするから、私はついつい声を荒げる。
こんなもやしみたいな武装色しか出来てないのに銃弾に覇気なんて込められる訳がないじゃん。
「ライアちゃんは殴り合いするんじゃねェんだろ? だったら、銃弾に覇気を一点集中する訓練をした方が効率がいい」
「まぁ、確かに……。だけどさ、こんなに弱い覇気で……例えばロギア系の能力者を相手にして十分な効果を得られるもんなの?」
「相手が武装色で防御しなきゃ、それなりに効果はあると思うぞ。実体を銃弾が捉えるようになるからな」
そっか。武装色で防御しなきゃ銃弾で能力者にダメージが与えられるのは大きいな。
私の火力不足も随分と解消出来そうだ。
「んじゃ、さっそく指からギュッと覇気を注入してみろ」
「だから、もっと理屈を教えてくれ!」
親父の教え方が下手なので、私はムッとする。
いや、ルフィやゾロやサンジならそういう感じでもコツを掴んだりするんだろうけど。
こんな感じで久しぶりのゴーイングメリー号での航海は私がヤソップから武装色の覇気を、ミキータがカリファから六式を教わりながら、
「ンマー、これなら
「ありがとう。まさか、アイスバーグさんまで乗船してくれるとは思わなかったよ」
「プルトンのことも気になるし、何よりこの船の修理はおれがキャリアの全てを懸けて担当したからな。それならば、最後まで面倒が見たくなるってのが人情ってモンだろ」
メリー号の修理を責任持って請け負ったというアイスバーグは完璧な仕事をしてくれている。
既に新品以上のスペックなんじゃないかっていうくらい快速だし、
ということで新生メリー号は多少の荒波にも負けず、あっさりとアラバスタ王国に到着した。
いやー、
アラバスタからウォーターセブンって到着するまで結構頑張った気がするんだけど……。
まぁ、空島挟んだせいってのも大きいか。トラブルもめちゃめちゃあったし……。
◆ ◆ ◆
「じゃ、親父は船番頼んだよ。言うだけ無駄だけど気を付けて」
「おう。三下海賊なんざに負けんなよ。おれァ、ライアちゃんにプレゼントでも作ってやらァ」
「私の工具箱勝手に使ってるし……。まぁいいけど。壊さないでくれよ」
赤髪海賊団の幹部として顔が売れているヤソップは一人で船番をする。
彼は私の工具箱を開けて何かを作るみたいだ。
ていうか、私の作った道具を物色してるけどちゃんと片付けてくれよ……。
漫画のウソップを参考にして作ったは良いけど日の目を見ることの無かった発明品もそれなりにあるんだから。
「キャハ、こんなに早くここに戻ってくるとは思わなかったわ」
「逃げ出すのにも苦労したもんね」
「ンマー、まさかクロコダイルの称号剥奪も麦わら絡みの事件とは思わなかったぜ」
「クロコダイルのやり方は世界政府すらも欺くほど見事でした。ニコ・ロビンが隠れ蓑にしただけはあります。それを見抜くなんてご主人様は流石です」
私とミキータ、それにアイスバーグとカリファの四人はアラバスタ王国の港町であるナノハナに上陸した。
うーん、よく考えなくてもおかしな四人組だ。
元バロックワークス、元CP9、ウォーターセブン市長って、キャラクター濃すぎるだろ。
とにかく、ユノ一味もこの国に来て良からぬことを企んでいるはず。
それを知った以上、奴らを野放しにするわけにはいかない。
ルフィが居たらきっと同じことをしただろう。
「で、会いに行くんでしょう? あの子に」
「うん。本来は海賊である私が軽々に会っちゃいけないっていうのは分かるんだけど。ビビに事情を伝えた方が話が早いからね」
「アラバスタ王国は世界政府加盟国だぞ。お前ら海賊がネフェルタリ・ビビ王女に簡単に会えるのか?」
「簡単には無理かな。公には関わりなんか無かったことになってるし。だから世界政府関係者に成りすまして会おうと思うんだ。例えばCP9とか」
「なるほど、身分を偽って謁見するのですね。先方には騙されたフリをしてもらう、と」
ビビが私たち海賊と関わっていたことはトップシークレット。
ならば身分を偽って会えばいい。アラバスタ王宮のみんなとは顔見知りだから、きっと演技に付き合ってもらえるし。
ここに来るとき、それくらいは想定して作っておいたんだ。
CP9に成りすます為の変装道具を……。
「ということで、みんなにはこれを身に着けてもらう」
「キャハ! あのときに見た変な仮面ね!」
「ンマー、再現度高すぎて傷跡が疼くな」
「自前のものを持っていますが、ご主人様が作られたものを身に着けます」
私は三人にCP9が被ってた変な仮面を手渡した。
いや、カリファは本物を持っているならそれを使ってくれ……。
と、まぁこんな感じで私は変装してナノハナから首都アルバーナを目指し、予定通り到着はしたんだけど――。
「この街に世界をひっくり返す程のお宝があると聞いた! おれァ!
「やいやいやいやい! お前ら、知ってることをちゃあんと吐かねェと後悔するぞコラァ! あっしは、この近海の最高賞金額を目指してる男ォ! 通称2500万ベリー男! ゲリラ豪雨のディオラだァ!」
「シンプルに口が臭いだとォ!? そうさ、このわしこそ毒ガスを吐き出す最悪の男! ピーチランド海賊団、船長! デスブレスのゼオスじゃ!」
アルバーナは海賊たちの溜まり場みたいになっていた。
これはどういうことだ!? アルバーナは前に来たときは治安はまぁまぁ良かったのだが……。
いくら、クロコダイルの抑止力が無くなったからって……。
「ユノ一味の得意技です。近海のならず者たちに独自ルートで偽の情報をバラ撒いて、任意の場所の治安を悪化させるという」
「キャハッ、そういうこと。連中はプルトンの場所を知らない」
「ンマー、アラバスタ王家が過剰反応してプルトンの在り処を守ろうと動くことを期待したって訳か」
カリファはユノ一味が情報操作してこの連中をアルバーナに集めたのだと読んだ。
理由はミキータとアイスバーグの言うとおりだろう。
やはり陰湿な手を使う……。まったく、この国の平和を私の目の前で再び乱すなんて――。
「ライア、連中に構わず先を急いだ方が良さそうだ。騒ぎを起こすとおれたちが此処に――」
「キャハハ、無駄よ。そんなこと言っても。知ってた? あの子、うちの船長さんやゾロくんよりも喧嘩っ早いのよ」
いっけね。もう、
だって、こいつらさ。ビビがあんなに必死な想いをして守った国をめちゃめちゃにしようとしてるんだよ? 許せないじゃないか。
「せ、船長! どうしたんですかい!? 急に撃たれて……!」
「なんだ、なんだ!? 海軍か!? それとも王国の兵士共か!?」
「おれたちに歯向かうものは! ぐえっ!」
「この無礼者めらは皆殺し……で、よろしいでしょうか? ご主人様……」
私の発砲を皮切りに、カリファが動き出して次々に海賊たちを六式によって沈めていく。
ありがとう。付き合ってくれて……。
ユノ一味との戦いとの前にウォーミングアップだ。
私だって強くなったんだ。懸賞金に負けないくらいの実力を見せつけてやる。
「キャハッ! 仕方ないわね! 船で覚えられたのは、これ一つ! 1万キロ
「ぐぎゃあああああああっ!」
うわぁ……、やっぱりキロキロの実と体術って相性良いなァ。
ていうか、ミキータ……物覚え良すぎ。カリファが教えるのが上手いのもあるかもだけど。
「ったく、麦わらが居なくてもこいつら結局こうなるのか……」
アイスバーグは呆れ顔で身を隠しながら、私たちの暴れっぷりを傍観している。
大丈夫だよ。ほら、ちゃあんと仮面で変装してるし。
どっからどう見てもCPっぽいって。
「ど、どうなっている? 市民の通報で駆けつけてみれば、大量の海賊共が倒れている……」
小一時間くらい戦っていたら、ほとんどの海賊たちは倒れていた。
どうやら偽情報に踊らされた海賊って時点で大した奴らでは無かったらしい。
それにしても、懐かしいな――。
空から降りてきたアラバスタ最強の戦士――ペルが呆気にとられた表情をしていたので、私は彼に挨拶を兼ねて状況を説明しようとした。
「やぁ、ペル、久しぶり。ちょっと内密に国王に話したいことがあるんだけど……」
「――っ!? そ、その声はライア? どうしてこの国に? それにその妙なマスクは……」
CP9風のマスクをつけた私に話しかけられたペルは驚愕して私を見る。
そりゃ、騒ぎを聞きつけて来てみれば、こんな格好した私がいるんだもん。驚くよね……。
「いやぁ、これには訳があってさ。実は――」
「ライアさん!!」
「――っ!? うおっ、と!」
ペルに事情を説明しようとしたとき、懐かしい声と共に……彼女が私の胸に飛び込んで来た。
近くにいることは見聞色の覇気で感知していたんだけど、まさか仮面をしていても私に気付くとは……。
「ビビ、よく私だと気付いたね。久しぶりだけど、元気にしていたかい? また、君に会えて嬉しいよ」
力強く抱きしめられて、ペルから変な視線を送られつつも私はビビの顔を見て、再会を喜んだ。
あんな別れ方をしたんだから、もっと気まずくなると思っていたんだけどな……。
「愛する人を仮面くらいで見紛うはずがないわ。それに、こうしてるとライアさんの匂いがするし……」
「に、匂い? そ、そんなに匂うかい? 私……」
ギューッとさらに力を込められて顔を胸に押し付けながらビビは私の匂いがするとか言ってきた。
確かに砂漠を越えて汗はかいたけど、恥ずかしいな。
「キャハッ! イチャつくのは、そこまでよ。私たち、急ぎの用件で来たんだから」
「……ミキータ。あなたも来てくれたのね」
「そうよ。だから、さっさとライアから離れなさい……」
ミキータに話しかけられても、一向に私を離そうとしないビビに対して、彼女は呆れた声と共に私からビビを強引に引き離そうとする。
「ご主人様、まさかアラバスタの王女を愛人に……? ますます素敵です」
「王女に惚れられて国を滅ぼしかけた危険人物という噂は本当だったのか」
カリファは妙に興奮した声で、アイスバーグは若干引いたような口調で私がビビと親しいことについて言及する。
いや、愛人でもないし、国を滅ぼしかけたなんて大嘘だし……。
「ビビ、さっきペルに話そうとしたんだけど……。この国に不穏な影が迫って来ている。至急、コブラ国王に報告しなければならない話なんだ」
「不穏な影が……? わかった。王宮に来てもらって話を聞くわ。ルフィさんたちのことも含めて」
私はビビにユノ一味について国王に報告したいと述べる。
彼女はもちろんオッケーしてくれたけど……。今度は手をギュッと握ってそのまま歩き出した。
ミキータはカヤに告げ口するとか小声で囁くし……、なんかユノ一味よりも恐ろしいことになりそうなんだけど――。
ということで、久しぶりの更新は如何でしたでしょうか?
ビビとの再会も書きたかった要素の一つなので、投稿できて嬉しいです。