ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう   作:ルピーの指輪

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お久しぶりです。
前回の話とか覚えてないかと思いますが、よろしくお願いします。


王女と海賊

 まさかアラバスタ王宮にもう一度訪れることになるとはなぁ。

 私は海賊だし、ビビとはあんな別れ方をしたから気まずいっていうのもあったけど、プルトンが狙われている事態は看過出来なかったし。

 

 ビビはずっと私に寄り添っていて、ミキータの視線が痛い。

 アイスバーグやカリファも何か勘違いしているみたいだ。

 

 まったく、私が王女を誑かして国を滅ぼしかけたって酷い噂もあったもんだよ。

 そんなわけ無いじゃないか……。

 

「……というわけで、私たちが来たのは他でもない。ユノ一味がこの国にあるという古代兵器プルトンを狙っていること知ったからだ」

 

「まさか、そんなことが起きていたとは。君がプルトンについて知っていたことにも驚いたが……。わざわざここまでよく来てくれた……」

 

 アラバスタ王国の国王ネフェルタリ・コブラに政府からの使者として謁見する私たち。

 ふぅ、人払いしてくれたからようやく仮面を外せる。

 どうやらコブラは我々を歓迎してくれたらしい。

 

「ライアさん、また逞しくなったわね」

「そうかい? 筋力は多少ついたと思うけど女の子らしさからはまた離れてしまったよ」

「そこがいいのよ」

 

 ビビとも積もる話をしたいところだが、まぁ、それはこの話が解決してからだ。

 しかし、今日の彼女は随分と甘えてくるような気がする。

 

「せっかく来てくれたところ、悪いのだが、プルトンの場所を教えるわけにはいかぬ。ニコ・ロビンから聞いて知っているのかもしれんが」

 

「いや、ロビンからは聞いていないよ。それに場所を教えてもらう必要も全くない」

 

 ロビンが私たちの仲間になっているのは流石に知っているか。

 手配書も出回っているもんな。変な疑いをかけられたくないところだが。

 

「そういえば、ミス・オールサンデー、いやニコ・ロビンが何でライアさんたちの仲間になっているの? 随分とライアさんと仲が良さそうだったけど」

「キャハッ! あなた、ライアの手配書持ち歩いてるの? 重症じゃない」

 

 ビビが私の手配書を取り出して、ロビンの腕が一緒に写っていることを指摘する。ちょっと怖い顔してるのは、やっぱりこの国を陥れようとしたクロコダイルのパートナーだったからかな。

 うーん。話せば長いんだけどな。今はそんなこと話している場合じゃないし。

 

「ロビンのことはまた説明する。それよりもユノ一味のことが先決だろう? 私たちは連中の野望を阻止するために迅速に動かなくてはならない」

 

「ご主人様は何か妙案があるようにお見受けしますが」

「また、ライアさん。別の女の人とも仲良さそうにしてる……」

「キャハハ、こんなの日常茶飯事なんだから目くじら立てるだけ無駄よ」

 

 カリファの言うとおり、作戦ならある。

 コブラはプルトンの場所を教えられないとしているがそれは当然だろう。

 守るにあたって、場所を知る必要はないのだ。ユノ一味をぶっ倒せばこの話は終わりなのだから。

 

「偽の情報を流す。アラバスタ王国は持てる兵力を総動員してある場所を守っていると。その場所が本当である必要はない。奴らをおびき寄せる餌にすればいいのだから」

 

「ンマー、やってることは連中と同じだが、おれたちが国と繋がっていることも知らねェし、連中の企みがバレていることも知らねェだろうし、有効だろうな」

 

 私が口にした作戦を聞くとアイスバーグはそれは有効だと口にした。

 ユノ一味が偽情報を使った陽動が得意なら、私もそれに倣おうじゃないか。

 あいつらをおびき出して一網打尽にする。

 それが私の考えた作戦の最終段階だ。

 

「キャハハ、アラバスタ軍と私らでユノ一味をフルボッコにするって訳ね」

 

「いや、ミキータ。戦うのは私たちだけだ。不特定多数の人間にプルトンの情報を知られるのはまずいからね」

 

 沢山の人が聞いている前でプルトンのことを連中が口にすると面倒だ。変な噂が広まり、ロビンを狙ったときみたいに世界政府が兵器を狙う可能性すらある。

 出来るだけ目立たず、収めたいところだ。

 

「うむ。それは私も懸念していたことだ。君たちに任せても良いだろうか? ペル、チャカ、お前たちも同行しなさい」

 

「「はっ!」」

 

 ペルとチャカも一緒に来てくれるのか。

 ペルは飛行能力があるし、チャカはゾオン系の能力者でパワーもある。同行してくれると心強い。

 

「私も行くわ! ライアさんを放っとけない!」

「ビビ様! 何を仰る! ここは私とチャカに任せて、吉報をお待ちください!」

「ペルの言うとおりだ。ビビは王女なんだか――」

「ライアさんは私を何度も守ってくれた! 今度は私が守りたいの! あなたが託してくれたこの銃で!」

 

 ビビが手にしているのは赤色の銃(レッドエンジェル)

 私が東の海(イーストブルー)から愛用していた武器である。 

 って、わがまま言われてもなぁ。ユノ一味は危険な連中の集まりだしビビを連れて行くっていうのは……。

 

「ライアさん、今度会ったときまた私のことを仲間と呼んでくれるって約束してくれたでしょ? この国で仲間が危険な人たちと戦おうとしているのは見過ごせないわ。アラバスタのために戦っているのなら尚更!」

 

「……はぁ、仲間とか言われると弱いじゃないか。ルフィがここにいたら、即答するだろうな。『いいぞ』って」

「キャハハ、船長さんなら間違いなく何も考えずに言うでしょうね」

 

 クロコダイルと戦ったとき、いやアーロンと戦ったときからビビは仲間だった。

 麦わら一味だと公の場で話すなんてことは出来ないけど、みんなそう思っているはずだ。

 だからこそ私はここに来たんだし、みんなだってこの事態を知っていれば駆けつけてきてくれるのは間違いない。

 

「ビビ、君は置いていっても抜け出す気満々だね?」

「ふふ、バレてる? お願いライアさん。この国にあなたがいる間だけでも、あなたの仲間で居させてほしいの」

「……仕方ないな。なるべく、私から離れるな。手が届く範囲じゃなきゃ君を守れなくなるからね」

「……はい」

 

 私はビビの肩を抱いてなるべく離れないことを条件に同行することを許した。

 いや、私が許したところで許されるかどうか分からんのだけど。

 ペルとかチャカとか、すげー睨んで来てるし。

 

「ビビ様! もう少し離れなさい! 深みにハマるとまた大変なことになりますぞ!」

「恋煩いでどれだけ精神を消耗したのかお忘れか!? 彼女はアラバスタの恩人ではあるが、あなたにとっては毒薬なのです!」

 

「えっ? えっと、そのう。ビビの同行を諌めてるんじゃ」

「さすがはご主人様。アラバスタ王女をここまで依存せしめるとは」

「ンマー、それがレディキラーって二つ名が付いた由縁だろうな。お前やニコ・ロビンを見ていてもそれは分かる」

 

 ペルとチャカはユノ一味よりも寧ろ私を危険視しており、カリファとアイスバーグはそれに納得している。

 えっ? 私が変なの? どうかしているの?

 なんか、変な方向に収集がつかなくなっているんだけど。

 

「まぁまぁ、良いではないか。百合は文化だ。それもまた良し」

「国王! 百合は国を滅ぼしますぞ!」

「あなたが亡くなると王族はビビ様しか居なくなるのです! これは国家問題なのですよ!」

 

 何当たり前みたいに百合とか言ってるんだよ。

 私たちが居ない間にコブラは何をしていたんだ。てか、ビビのことは止めないのか……。

 よく考えたら、ビビを二年間もバロックワークスに潜入させていたんだった。

 私にもまだ前世の常識みたいなのが残っていたけど、割とそういう世界だった。

 

「キャハハ、もうどうでもいいから早く動きましょ。今の私たちには船長さんたちが居ないんだから、一人でも戦力が多い方が良いわ」

 

「ンマー、言っちゃなんだがおれは戦えねェからな」

「諜報部隊で培ったこの力、全てはご主人様のために」

 

 私たちの中で最も常識人なミキータが戦力が多い方が良いという非常に当たり前のことを言ってくれたおかげで話はまとまった。

 アイスバーグにはここに残ってもらって、ペルとチャカ、そしてビビを加えた六人でユノ一味に挑む。

 コブラたちと相談した結果、ユパ付近の砂漠地帯をアラバスタ王家の大切な宝の隠し場所として警備するという偽情報を流布させておいた。

 

 さて、連中はどう動くか。

 “万策”のユノの配下には、“寝首落としのシェード”というキプキプの実の能力者、“逆転のラルトス”というリバリバの実の能力者がいるのは既に知っている。

 

 さらにカリファに聞いたところ、“金縛りのデジール”というドゥルドゥルの実の能力者。

 よく分からんが強制ドロー人間なんだって、枷を押し付けて一度触れられると重量が二倍、二度触られると重量が四倍、相手は重さに耐えきれずに頭を垂れるという何か聞いたことがあるような能力者だった。

 

 相手は四人でこっちは六人。人数の上では有利だけど、勝てるかなぁ……。

 情報戦が得意で武闘派では無かったとのことだが、新世界の海賊だったらしいし。

 

 でも、やらなきゃならない。大切な人の大切な(くに)を守るために――。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「しかしルフィ無しで勝てるものか。彼が居たらどんな相手にも負ける気がしなかったのに、気弱になったもんだよ」

 

 銀色の銃(ミラージュクイーン)やホバーボード、衝撃貝(インパクトダイアル)などのメンテナンスを終えた私は砂漠の岩陰に隠れながら連中がやってくるのを待つ。

 やっぱりアラバスタは暑いなぁ。こりゃあ早く連中がやってきてくれないと干からびちゃうぞ。

 

「あんただって、今や億超えの賞金首なんだし、海軍と白ひげの戦争に巻き込まれても無事だったんだから、自信を持ちなさい」

 

「あれも近くにルフィが居たからなぁ。それに懸賞金は戦闘能力じゃない。ユノ一味はその際たる例だろ?」

 

 頂上戦争で生き残り、懸賞金1億9600万ベリーになった海賊と聞けば、結構厳つい感じになるけど、過大評価も良いところだ。

 ユノ一味はその逆。懸賞金は1000万ベリー前後なのにビッグマムに目をつけられるまで新世界で生き残っていたと聞く。

 懸賞金はあくまでも政府から見たときの危険度合いでしかなく、戦闘能力とは比例しないのだ。

 あの黒ひげだって、頭角を現す前はゼロだったって話だし……。

 

「今は私がライアさんの側にいるわ。それじゃ、心許ない?」

 

「あはは、そうだね。ビビもミキータもカリファもいる。それにペルとチャカもね。一人で構え過ぎていた。仲間に頼りながら、勝つ方法を模索するとするよ」

 

 手を握りながらビビは仲間ならいると口にした。

 そうだった。今のこの状況でも私には頼りになる仲間がいるじゃないか。

 力を合わせれば、実力以上の戦果を出せることは今までの冒険で証明している。

 

 きっと大丈夫だ。どんな奴が相手だとし――。

「おーい、オイオイ! やーっぱり、船長の言うとおりだ。偽情報だったじゃねェか。ねずみが六匹しかいねェってのは、おかしいよなァ。オイ!」

 

「「――っ!?」」

 

 背後から現れたのは“寝首落としのシェード”。

 テレポートを使う悪魔の能力者だ。見える範囲しか動けず、遮蔽物があると乗り越えられないって聞いたけど。

 

「おーい、オイオイ、見える範囲しか動けないのにどうしていきなり現れたって面してんなぁ。こいつがありゃあ、()()()()()ってのは増やせるんだぜ」

 

 望遠鏡を片手にニヤつくシェード。そういうことか。

 砂漠で高いところから予め、こっちの様子を望遠鏡で観察して私たちの姿を発見して接近したという訳か。望遠鏡でテレポートの範囲を伸ばせることには気付かなかった。

 いや、だとしてもこの場所は簡単に分かるはずがない。遠くからは簡単に見えないような場所を選んだのだから。

 

「キャハハ、ユノってやつ、あんた並の広範囲で“見聞色の覇気”っていうのが使えるんじゃない?」

「そ、そうか。そういうタイプはエネル以外に今まで居なかったから失念してたよ」

「“万策”のユノは無能力者の中でもかなりの強者のはずです。覇気使いかどうかの情報はありませんが、十分に考えられます」

 

 参ったな。ユノが見聞色だけじゃなくて武装色まで使えるとなると、私たちの戦力じゃどうにもならない可能性があるぞ。

 漫画の知識しかないけど、覇気使いで能力者を圧倒していた描写は見られたし。

 

 まぁ、そんなことを考えても意味がないか――。

 

「おーい、オイオイ。アラバスタのねずみ共。船長が言うにはお前らがプルトンの場所を知っていると読んでいる。死にたくなけりゃあ、吐くこった。おれらも急いでるんでね」

 

「悪いが素直に話す連中に見えるかい? 私たちが」

 

「かぁー、オイオイ。命ってのは大事にした方がいいぜ。船長命令で、てめェらを拷問にかけても吐かせろって言われてんだぜェ。()()()()は……!」

 

「「――っ!?」」

 

 私の見聞色の覇気がシェード以外の二人が猛スピードで接近していることを感知したのと同時に隠れ蓑にしていた巨大な岩が砕け散る。

 とっさに私たちは防御姿勢を取りながら、その場を離れた。

 やって来たか、ユノ一味。恐らく“万策”のユノはどこかで様子を見ていて手下をこっちに送り込んで来たんだな。

 

「シェードの旦那ァ! こいつら、ウォーターセブンに居た連中じゃないっすか」

 

「オイオイ、そういえば見た顔だな。世界政府の連中がアラバスタ王国と結託してプルトンを……、あり得ねェ話じゃねェか」

 

「どうでも良いですよ……、そんなこと。私は早くジメジメした船室に帰りたい……」

「デジールの旦那、しっかりしてくれよ。砂漠は絶対に嫌いだと思っていたが」

 

 シェードに続けて“逆転のラルトス”が現れて、さらに横にいる顔色の悪い長髪の男は恐らく“金縛りのデジール”だろう。ラルトスがそう呼んでいたし……。

 

 奇しくも私たちは三手に分かれて三人の男たちと対峙している。

 スキップ人間、“寝首落としのシェード”とはペルとチャカが。

 反転人間、“逆転のラルトス”とは私とビビが。

 そして、“金縛りのデジール”とはミキータとカリファが向かい合っていた。

 

 これはタッグを組んで二人で一人を倒す計算かな。いや、早く倒せば助太刀も出来るし、卑怯だと言われようが人数差で押し切る気で戦おう。

 

 アラバスタ王国の砂漠での戦いがはじまった――。

 




ユノ一味との戦い、そしてビビとの別れと見せかけて……。
里帰りにビビも同行させたら面白いかも、とか妄想しています。
二年後編もやりたいなー、強くなったライアがドフラミンゴやら四皇やらの一味とどう戦うとか。
ゆっくり更新になりますが、気長にお待ちいただけると幸いです。

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