深淵卿に憑依しました リメイク   作:這いよる深淵より.闇の主人

17 / 25
ワタクシ、ガンバリモウシタ。コレガゲンカイ

お気に入り700突破です!ありがとうございます!!


それ……デハドウゾ


クラスメイトside

 時間は少し遡る

 

 浩介とハジメが奈落の底へと落ちていった後、一行は地上へ無事に帰還、その日はホルアドで一泊し、早朝には馬車に乗って王国へ戻った。

 あんな危険な目にあった手前、誰も迷宮に潜ろうとする者などいなかったし、勇者パーティーから死傷者が二名も出たのだ、メルドはそれを王国へ報告する義務がある。

 

 

 

 ハイリヒ王国ー玉座の間ー

 

「【オルクス大迷宮】で実施された実践訓練にて、死者が2名出ました」

 

 メルドの言葉に、国王やイシュタルは勿論のこと、この場に集められた貴族達の間に動揺と緊張が走る。それもそのはず、召喚された勇者とその仲間たちは皆一様に高いステータスと恵まれた天職を持っていたと聞いていたからである。

 

「な、なんと……魔人族との開戦前に——そ、それで、その者達の名は……」

 

 メルドの後ろに控えているのは天之河光輝、坂上龍太郎、中村恵里の三人、よって勇者が命を落としたという最悪の事態は回避したという事になる。が、白崎香織と八重樫雫の姿がないので、もしや……という嫌な空気が流れる。

 

「はっ、南雲ハジメと遠藤浩介の2名です」

 

「……南雲ハジメとは誰だ?」

「あぁ、確か天職が錬成師、ステータスが子供にも劣る使徒がそのような名だったな」

「なんだ噂に聞く“無能”か」

 

 一時の沈黙の後、誰かがハジメの存在を知らなかったのかポツリと言葉を溢すと。そこから口火を切ったように貴族達は口々に好き勝手言い出す。国王やイシュタルは死んだのがハジメと知った瞬間、ホッとした顔をしている

 

 天之河は仲間(・・)が悪く言われているので眉間にシワを寄せて少し機嫌が悪そうだ。龍太郎は目を見開き、肩を震わせながら飛び出すのを我慢している。

 貴族達は声を抑えているつもりだろうが、この部屋は些か声がよく通る……何よりも三人は通常より高いステータスを持っているので丸聞こえだ

 

「“無能”と後は……遠藤浩介だったか? その者の事は誰か知らないのか?」

「いえ、私は存じ上げませんが……」

「私もです」

「まぁ、“無能”と一緒に死ぬぐらいだ。大した者ではないのだろう」

「まさか、オルクスの低層で命を落とすとは……これが魔人族との戦いであれば他の使徒様たちの戦意を削いでしまっていたでしょうな」

「そうなると早いうちに膿供を切り捨てる事ができて良かったではないですか」

「ですな、足を引っ張る前に死んでくれて良かった」

 

 貴族達の陰口はハジメでは飽き足らず、よく知りもしない浩介にも及び、それはもう酷い言いようで、挙げ句の果てには死んで良かったと口を揃えて言う始末。正義感の強い光輝が声を上げようとして……その前に龍太郎と恵里の二人が動いた

 

「は——? ぶへらッ!?」

「ぐ、ガハッ……ぅぇあ?」

「あぁぁ!? な、目がァァ……ッ!?」

 

 龍太郎は、その体に見合わぬ速さで貴族の眼前まで移動すると面食らっている目の前の男を全力でぶっ飛ばした。床を何度も転がりながら壁にぶつかった貴族はボロボロになって気絶している

 

 恵里はというと、特に酷い言いようだった二人の貴族目掛け、殺す気で棒手裏剣を投合していた。一人は首を貫通し、口と首から大量の血を流して床に倒れ込み踠き苦しんでいる。二人目はというと、連続での投合は上手くいかなかったらしく、狙いは大きく逸れて右眼に当たる。それでも悲鳴と共に大量の血を流して床に蹲った。

 

 

 しばらくの間、苦悶の声とヒューヒューという空気が抜けたような音だけが鮮明に響く

 

「り、龍太郎殿……え、恵里殿まで……な、何を——」

 

 一人がそう口にする。しかし、それが精一杯だった。龍太郎の怒りの表情と、恵里の普段の様子からは考えられない豹変に怯えて息を飲むばかりだ

 

テメェら浩介とハジメのこと何も知らねぇ癖に好き放題言ってんじゃねぇ! 

 

 ビリビリと部屋全体を振動させるかのような怒声とその迫力に貴族や国王、光輝ですらも一歩、二歩と後退さる

 

役立たたず? “無能”? 大した事ない奴だと!? テメェらの都合で連れてきておいて何様だ! アァ!? アイツらは俺たちを助ける為に体張ってベヒモスの野郎を足止めをしたんだ! そんな言うんだったらテメェらがベヒモスと戦ってこいや! 

 

「まて、落ち着けよ龍太郎! ベヒモスと戦えだなんて、そんな危険なことを言うなんておかしいぞ!」

 

邪魔すんじゃねぇ! 光輝(お前)こそおかしいだろッ! なんで親友をここまで馬鹿にされて平気でいられるんだよ! 

 

「確かに、彼らが2人に言ったことは許せない。でもそれは彼らがベヒモスと戦った事実を知らなかったからじゃないのか? それを知っていて2人が俺たちの為に時間を稼いでいてくれたと知っていたなら、悪くは——」

 

「あーあ、気持ち悪い、気分が悪い、気味が悪い、吐き気がする、鳥肌が立つ……」

 

 耐え切れなかったのか、唐突に二人の言い合いに恵里が加わる。体を抱きしめるようにし、光輝に対する嫌悪感を隠そうともせず言葉を吐き捨てる

 

「恵里ッ!」

 

「あー違う違う、龍太郎君じゃなくて頭の中がお花畑な光輝君に言っただけだから」

 

「……恵里、何を言ってるんだ? 俺は——」

 

「聞く気ないから言わなくていいよ……はぁ、お姫様(雫ちゃん)のお世話もあるし、こんな事に時間を割いてられないから一つだけ言っておくと……ご都合解釈(・・・・・)は程々に」

 

 そう冷たく言い放ち、踵を返した恵里は制止の声を聞き入れず去っていってしまう。

 

「けっ……オイッ! またハジメと浩介の事を馬鹿にしてやがったら俺はテメェらには従わねぇ……この戦いから降りさせてもらうからな! 」 

 

 龍太郎もこの場にいたくなかったらしく、大声でそう宣言すると「ッたく……胸糞悪ぃ」と吐き捨てるように言って扉を開けると、玉座の間からでていく。

 

 しばらくして、残った光輝とメルド団長による詳しい説明と、ハジメと浩介に対しての侮辱の言葉について光輝からもう一度指摘され、侮辱していた貴族達はもれなく処分を受けることが決定し、龍太郎と恵里については王国側に非があるという事で処分は無かった。

 

 

 そして、死亡した二人の話題を出すことは密かに禁止されたのだった

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「そんなに多めに盛ってないから起きてもいいんだけど……やっぱり香織ちゃんと一緒かな〜」

 

 ベッドに香織と雫が寝ている側に置いてある椅子へ腰かけ、思い出したように恵里はそう(ひと)()ちる

 

 浩介とハジメが奈落の底は消えていった後、二人はメルド団長と恵里によって気絶させられた。恵里によって寝かされた雫はともかくとして、香織に関してはすぐに起きるはずだが、精神的ショックから心を守るための防衛処置として眠り続けていると医師は言っていた

 

 

「まさかあの(・・・)雫ちゃんがあそこまで泣き喚くとはねぇ……それを言っちゃえば僕も部屋帰ったら泣い——」

 

「……ん……う」

 

「……う」

 

「え、あ……香織ちゃん! 雫ちゃん! 大丈夫!? 私のこと分かる?」

 

 頬っぺたをぷにぷにしながら宿で一泊した時の事を思い出していると、二人は呻き声を上げる。急いで口調を変えて二人の名を呼んでみると、それぞれ虚ながらも目を開けた

 

「恵里……ちゃん?」

 

「恵里? あれ、此処は……」

 

「良かった……えっと、此処は王宮内にある私たち用の部屋だよ! 良かったぁ……五日間もずっと眠ってたから皆んなも心配してたんだよ?」

 

 意識が覚醒して間もないからか、ボーとしている二人だが、恵里がどのくらい眠っていたのかを伝えると二人はそれに反応する

 

「五日? どうしてそんなに……私、確か迷宮に……」

 

「……恵里……浩介は……浩介は何処にいるの!?」

 

「……あ……そうだ……南雲君は……南雲君はどうなったの!?」

 

「えと……覚えてない? その……」

 

「え……そんな……嘘だよ、ね。そうでしょ? 恵里ちゃん。私が気絶した後、南雲くんも助かったんだよね? ね、ね? そうでしょ? ここ、お城の部屋って言ってたよね? 皆で帰ってきたんだよね? 南雲くんは……あ、そうかいつもみたいに龍太郎くんや浩介くん達と一緒に訓練してるのかな? 訓練所にいるよね? うん、きっとそう……私、ちょっと行ってくるね。南雲くんと……あ、浩介くんにもお礼言わなきゃ……恵里ちゃん? 掴んでたら二人にお礼しにいけないから離して……ね?」

 

 次々と言葉を並べながらベッドから抜け出し、ハジメを探しに行こうとする香織の腕を掴んで離さない恵里

 

 そうしていながら恵里は香織と先程からブツブツと聞こえない程度の声量で言葉を紡ぎ続けながら頭を抱えている雫の様子を交互に見ながら二人にとって効果的な言葉(・・・・・)を選んで話す

 

「……はぁ……ま、行ってもいいけど愛しの南雲くんは此処にはいないよ? あ、もちろん浩介くんもね?」

 

「やめて……」

 

「……ッ」

 

「いるとしたら……そうだねぇ。奈落の奥底にいるんじゃかいかな?」

 

「やめてよッ! それ以上言わないで! 南雲くんは……」

 

「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ……浩介は……」

 

「今頃何してるかな〜奇跡的にあの落下で生きていても、手負いだから凄い強い魔物に襲われて死にかけちゃうかもね? でも……それでも浩介なら何とかして生き残るだろうし、次いでに南雲君も助けて二人でパワーアップして僕たちの前に現れるってのが王道だと思わない? そうなると次に会えるのは……うん、やっぱり僕たちがピンチに陥ってる時に颯爽と現れて助けてくれるっていうシュチュエーションだと思うな! そうなると準備が大変だなぁ……まずは血糊を用意して大袈裟に怪我を負ったアピールすればキスぐらいはしてくれると思わない? ね、ね? もしかしたらそれ以上のこと——」

 

「ちょ、ちょっと待って恵里ちゃん!」

 

 イヤイヤと首を振って「南雲くんが死ぬわけない!」と言っていた香織は途中からの恵里による妄想話で脳の許容がオーバーし、慌ててストップをかける

 

「え、どうしたの香織ちゃん? 僕、すっごい良いところまで妄想してたんだけど……なんならキスしてたんだよ? 妄想で」

 

「妄想でキス!? いや、私もしたことないわけじゃないけ……じゃなくて! えっと……二人は生きてるの?」

 

「さぁ? 僕が知ってるわけないじゃん」

 

「恵里ッ……ふざけてるなら今すぐやめて!」

 

 恵里の返答に今まで口数が少なかった雫が怒気を含んだ声色でそう忠告する。普通なら萎縮してしまうだろうが恵里は逆に笑みを深める

 

 

「え〜ふざけてないよぉ? 最初……はともかくとして、ほとんど本音で本気の大真面目に話してるけどぉ?」

 

「……そう、今までは猫被ってたってわけね」

 

「まぁねぇ〜浩介とか……まぁ、“特別(・・)”な人には知られてるし、受け入れられてたけどぉ〜」

 

 香織は驚きつつもオロオロしているが、雫は’’特別,,という言葉に反応し、苛ついているのが目に見えて分かる。

 

「……恵里、一つ聞くわ。……私を怒らせて何がしたいの?」

 

「う〜ん、私だってこんな事したくないんだよねぇ……恋敵が勝手に自滅してくれるんなら願ったり叶ったりだし……でもまぁ、浩介からの頼まれ事だしぃ」

 

「……ぇ? それって……」

 

「……浩介君はこうなるって分かってたの!?」

 

「それは無いと思うよ? “死ぬつもりはないけど俺に何かあったら雫をよろしく”って言われた時、僕が聞いてみたけど“直感”じゃアバウトにしか知れないから詳しくは知らんってさ」

 

「あ、そうだったんだ……でも、雫ちゃんって浩介くんに大切にされ……雫ちゃん!?」

 

「……え、なんで泣いてんの? 気持ちはわからんでも無いけど」

 

 恵里から聞かされた浩介の頼み事。それを聞いた香織は、雫に視線を向けて……泣いているのに気がつく。嬉しかったのか、はたまた別の理由か、香織だけでなく恵里も珍しく動揺してしまう

 

「……浩介……私に……相談して……くれてたのに……」

 

「……雫ちゃん?」

「……は?」

 

「迷宮に行く前日の夜……浩介から注意しておけって……言われてたのに……」

 

(えぇ……私に猫被ってるとか言ったくせに……雫ちゃんも普段と変わりすぎ(ギャップありすぎ)じゃない? え、なに……浩介いないとこんな感じなの? 依存し過ぎ……あ、そこは少し僕と一緒かな?)

 

 普段とのギャップに動揺を隠せない恵里、それと共に浩介から頼まれたのにも納得がいってしまったようだ。少なからず恵里が雫に同族意識を持ち始めている

 

 

「雫ちゃん考えすぎだよ……どんなに注意しててもあの時はどうしようもなかったと思うよ?」

 

「……でも……」

 

「……それなら私だって同じ日の夜、南雲くんの部屋に行って話をしたんだけど……そこで私、迷宮に行かないように説得したの……駄目だったけど、私が部屋に縛り付けてでも……手錠と鎖で拘束してでも迷宮に行くのを止めておけばって思ってた」

 

「……え、えっと、それは——」

 

「私、南雲くんが……二人が死んだなんて信じない。恵里ちゃんが話してくれた事を聞いて思ったの、あそこから落ちて生きてる可能性は限りなく低いけど、確認していないならゼロじゃない」

 

「香織……」

 

「後悔は後回し、それよりもっと実戦と訓練をいっぱいして私はもっと強くなる。そして、南雲くんの事を自分の目で確かめる。……雫ちゃんはどうするの?」

 

「私は……」

 

 香織の目は真っ直ぐに雫を見つめている。その視線から逃れるように視線を隣に移して……

 

「浩介にご褒美に何を要求しようかな……キスは再会時にするつもりだし、彼女に……ハッ、今ならいけそうこの勢いなら最後まで要求しても——」

 

妄想に浸っていた恵里は弱々しく此方に目線を寄越した雫を見下すように笑った。

 

ピキッ……雫の表情が笑顔で固まる。ただし、青筋が浮かんでいるので可愛いではなく怖い……それもかなり

 

「……香織、私にも手伝わせて。浩介は強いもの、あんな事じゃ死なない。次にあった時にガッカリされないように強くならなきゃね」

 

「うん、これから一緒に頑張ろうね!」

 

「ええ」

 

 香織は雫を強く抱きしめ、雫もそれに応えるように抱きしめる。少しするとハッとしたように雫が恵里の名を呼ぶ

 

「あ、そうだ。恵里」

 

「——私、拘束されるのも案外……え?」

 

「えっと……別にもう変な演技とかしなくていいのよ?」

 

「演技? これ、僕の素なんだけど」

 

 自分の背中を押すために変な演技をしていたのだと思っていた雫も、キョトンとしていた香織も、恵里の言ったことが原因で固まってしまう

 

「恵里……浩介の事どう思ってるの?」

 

「未来の旦那、夫、彼氏、恋人、運命の人、愛する人、パートナー——」

 

「いや、そうじゃなくて……浩介の事……好きなの?」

 

「え、分からない? 大好きだよ……あ、LOVEの方ね」

 

 この後、鈴が部屋に様子を見に来るまで互いに浩介のことをどれだけ知っているかとか、買ってもらったものを自慢したり、(膝枕など)してもらったり、した事を言い争っていたのだった

 

 




龍太郎君の事、意外と気にいってるんだよね……

中盤から後半はちょっとこれが限界ですかね。最後は無理やり持ってった感あるかもなぁ……

恵里ちゃんの良さ出せてると良いんだけどなぁ……

次の話はすぐにでもあげようと思います(前作を少し変更して書いていくから)

あ、もう少しでヒロインアンケート閉じますね!この調子だと……恵里、リリアーナに+して園部、ティオ、シアがヒロインですかね

それではまた会いましょう!

中村恵里、リリアーナ以外のヒロイン

  • ティオ
  • シア
  • 園部
  • 愛子先生
  • ハウリア族のみなさん
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。