再スタートですが、よろしくです
花に水をやる、水は花にとって命の恵みであり成長、もとい人生を歩むにおいて必要不可欠なものである。花の命は短い、それは誰だって知っている。だが、花の短い命には人間の長い人生が凝縮されていると俺は考えている。
こんな考えは誰も思いつかないだろう。花のことになると熱くなってしまう、俺の悪い癖だ。
「結城……結城!」
「は、はい!」
先生に呼ばれる、そうだ今は授業中だった。ぼーっと外を眺めていた俺が悪いから呼ばれるのは仕方ないか。
先生が俺を見ている。これは理由を聞かれるな。はぁ、なんて言おうか……。
「今何を考えていたんだ?」
「……外の景色について考えていました」
「外の景色?」
「はい、空は何故青いのかだったり桜はなんであんなに綺麗なのか等を考えていました。授業中にすみません」
俺は先生に頭を下げて謝罪した。俺は周りから花のことになるとお花畑になると言われている。花屋の看板息子というだけなのに、酷い言い様だ。
「次は気を付けるように。さて結城、この問題解けるか?」
「はい、その問題は……」
俺は先生に言われた問題を解いた。よかった、なんとか解けた。見逃してもらえたな。
俺は
花屋の看板息子である以上、花言葉を聞かれたらちゃんと説明できるように勉強している。俺が見ていた桜の花言葉は純潔だ。他にも意味があるようだが、一応純潔の意味が込められていると言っておこう。
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私は同じクラスの生徒である結城さんのことがわからなかった。先生に外を余所見していたことで注意をされていた。しかも理由は景色のことで考えていた、訳がわからない。
私から見た結城さんは何を考えているのかわからない、そんな印象だ。赤い髪をしているけれど、不良なのかしら?でも見た目に反して成績も態度も良い、ここまで来るとわからなくなってくるわ。
「それにしても……結城さんは私のことを知っているのかしら……」
同じクラスということは知っていなくても私が風紀委員であることは知っているかもしれない。それだけ知っていればよしとしよう。
もう放課後、今日は部活は休みだからすぐに練習に行ける。湊さん達を待たせてはいけない。急いで行こう。
私は玄関で靴を履き替えて外に出た。今日も練習、明日も練習、毎日ギター漬けだ。私にはギターしかない、ちょっとでも気を抜いたら日菜に抜かれてしまう。それはあってはならないことだ。
ライブハウスに向かっていた道中、一匹の犬が吠えていた。あれはウェルシュコーギーかしら?
私は犬のことが気になり近づくことにした。湊さん達には言っていないが、私は犬が好きだ。このことを知っているのは日菜や親しか知らない。
「この子、誰の犬かしら?首輪も付いてる。名前は……レノン。あなたレノンっていう名前なのね」
私がそう言うとレノンという犬はワン、と吠えた。これはどうしたらいいのかしら?ここで待っているわけにもいかない。練習があるし、あまり時間を潰すわけにはいかない。
私は湊さんに少し遅くなります、と連絡をすることにした。事前に連絡しておけば問題はないわね。
「レノン、おーいどこだー!」
「この声は何処かで聞いたような……」
私は今聞いた声が誰の声なのかを思い出そうとした。声に釣られたのか、レノンは声がした方へと走っていった。飼い主かもしれない。私はレノンに着いていき、声のした所へ向かった。
「よかったレノン!探してたんだぞ!」
「あの……貴方は……」
「ありがとうございます。見つけてくれたんですねレノンを」
「は、はい。貴方もしかして結城さんですか?」
よく見ると結城さんだった。つまりレノンは結城さんが飼っているということになるわね。結城さんが犬を飼っている意外だ。
「ええそうですが、どこかでお会いしましたっけ?」
「はい、どこかでお会いしたはずです。では聞きますが、私のことはご存知ですか?」
結城さんは考え始めた。ここで知っているのであればプラスだけど知らないのであれば残念だ。
「……すいません、心当たりが無いですね」
「そうですか、ではヒントを出しましょう。ヒントは風紀委員です」
これぐらいならわかるはずだ。それにしても私は何をしているのだろう。練習があるのに、こんな無駄なことをしているなんて、今日の私はおかしいわ。
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俺は目の前の翠色の髪をした女子が誰なのかを思い出そうとしていた。出されたヒントは風紀委員、そういえば朝の挨拶運動とか生徒に注意をしていた時にこの子と同じ髪の色をした女子がいたな。
制服は花咲川学園だが、学年はわからない。それにギターケース?みたいな物を抱えている。いや、それは気にしないでおくか。
「……記憶に無いですね」
「そうですか。これだけヒントを出してもわからないなんて、本当に残念です」
「なんかすいません」
「では答えを出しましょう。名前は氷川です」
氷川?どこかで聞いたな……。
あっ、思い出した!氷川さんっていうと風紀委員でそんな名前の人がいたな。この人が氷川さんか!
「え!氷川さんなのか!?」
「そうですよ。結城さんと同じクラスなのですが、気づきませんでしたか?」
「ごめん、忘れてた」
「酷いですね!」
氷川さんからここまで言われるのは当然だ。同じクラスだったことを忘れるなんて、怒られてもおかしくない。氷川さんから見た俺の印象は最悪だろう。髪は赤い、これじゃ不良だって思われるのは無理もない。
「聞きたいことは色々ありますが、私はこれから用事がありますのでまた今度にしましょう」
「あ、ああ!わかった。じゃあまたな氷川さん」
「ええ、ではまた明日」
そう言って氷川さんはギターケースみたいな物を抱えて歩いていった。まさか同じクラスだったなんて、完全に忘れていた。
「どうしたレノン?散歩が途中だから歩かせろって?わかったよ」
レノンは俺の頬をザラザラした舌で舐めてきた。尻尾も振っている、そんなに散歩の続きをしたいんだな。可愛い犬だ。ウェルシュコーギーは足が短い、俺は足が短い所が可愛いと感じ、レノンを飼い始めることにした。
さて、散歩をしたら帰らないと。 もう暗くなる、帰って花にも水をやらないといけないし、忙しいしやることが多すぎるだろ。
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私は練習を終えて部屋で弾き終えたギターをスタンドに掛けた。今日は練習に集中出来なかったわ。ここまで集中出来なかったのは久しぶりだ。
「おねーちゃん、何かあったの?」
「日菜!?いつの間にいたの……」
「今来たばかりだよ。何かおねーちゃん調子悪そうだったから、どうしたのかなーと思って声掛けたんだ」
日菜に心配を掛けるなんて、私は何をしているのかしら。日菜とはギターで競うことはあるけれど、こういう時だけは姉として優しくしよう。昔みたいにピリピリとしてしまっては駄目だ。
「なんでもないわ。私は大丈夫だから、早く寝なさい。明日も早いのでしょう?」
「うん、わかった。何かあったら言ってよ?相談には乗るから!」
そう言って日菜は部屋を出た。あの子は天才であるけれど、今のは日菜なりに言ったのかもしれない。日菜にこんなことを言われるなんて、いつぶりかしら。
このモヤモヤは寝て忘れよう。寝ていれば忘れるかもしれないし、気にしないというのが一番だ。私は部屋の電気を消して布団に入り、眠りに就いた。
このモヤモヤは誰もわからない、少女の心は凍てついたままである。