紗夜が花をマジマジと見ている。見ている花は……マーガレットか。マーガレットの花言葉は"恋占い"だが、紗夜は何を考えてるんだ?恋占いとなるとアレだよな?好き……嫌い……好き……嫌いって占うアレだよな?
「紗夜、マーガレットなんか見てどうしたんだ?」
「暁さん……何でもありませんよ?」
「何で疑問形なんだよ。その花はマーガレットっていう花で、花言葉は……」
これって言うべきなのか?言った方がいいのか?もし言ったら紗夜はどうなる、どんな反応をする?俺は紗夜がどんな反応をするのか、どんな表情をするのか想像した。
顔を赤くして暁さん!何てこと言うんですか、と突っ込む。やべえ、想像だけなのに可愛い。今想像してることが実際に起きたらどうなるんだろう。俺はそんな願望のような事を思いながら紗夜にマーガレットの花言葉を教えた。
「花言葉は……何ですか?」
「恋占いだ。花占いとか、誰かに恋愛を占ってもらうとか、そんな物だ」
「そうですか。ありがとうございます」
「あ、ああ」
お礼を言った後、紗夜は俺から少し離れ、顔を逸らした。様子がおかしい、何があったんだ?花言葉を教えたのはマズかったか!?そうだとしたら紗夜に謝らないといけない。今は客はいない、こんな所誰かに見られたら勘違いされちまう。
――この状況、どう切り抜ければいいんだ?
▼▼▼▼
暁さんの馬鹿!貴方は何てことを言うんですか!花言葉が恋占いだなんて、どう反応したらいいのよ。ああもう、暁さんのせいで顔が熱いわ。
こんな顔、暁さんには見せられない。もし見られたら死んでしまう。それ以前に、お客さんが来たらおしまいだわ。
「すいませーん」
「はい、何でしょうか!」
「花を買いたいのですが……あれ、紗夜!?」
「今井さん!?」
――何故今井さんがここに!?
これはマズいことになったわね。今井さんが来たせいか、顔が更に熱くなっている。これってどうなるの?質問攻めされるの?こんなことを考えていると不安になってくるわね。
「紗夜、ここで何してるの?」
「こ、これはですね……色々と事情が……」
「ははぁ、なるほどねぇ。日菜が言ってた通りだ」
「あの、何方ですか?紗夜とは知り合いですか?」
「知り合いも何も同じバンドのメンバーだよ。あ、アタシは今井リサね。君は?」
「俺は結城、結城暁です。そのバンドってRoseliaですよね?」
そうだよ、今井さんは笑いながら親指を立てた。今井さん、この状況を楽しんでるわね。暁さんのことは今井さんにも言ってある。実際に会うのは初めてだ。
――嫌な予感がするわね。
今井さんの視線が私に向いた。ニヤッとしている、これはマズいわ。私は今井さんと暁さんに気付かれないようにこの場を去ろうとした。しかし、去ろうとした瞬間、暁さんに肩を掴まれた。
「紗夜、どこに行くつもりだ?」
「暁さん!?ちょっと急用を思い出して……」
「さーよー、聞きたいことがあるんだけどいいかなー?」
「紗夜、死なば諸共だ」
あ、死んだ。死んだわ私。死なば諸共ということは、暁さんも今井さんの犠牲になるのよね?一緒に犠牲になるなら別にいいわね。
――はぁ、何でこうなるのしら……。
▼▼▼▼
「そうかそうかぁ、暁も隅に置けないなぁ」
「名前で呼ぶの早いな。今井さん、俺はそんな隅に置けるような奴じゃないからな?」
「そうかな?あ、アタシのことはリサでいいからね」
「あの今井さん、花をお求め何ですよね?」
「そうだった。どれにしようかな……。よし、この花でいいかな」
選んだ花はサルビアか。俺はリサにサルビアの花言葉と咲く時期を伝えた。花言葉を聞いたリサの反応は、凄いね、という引き気味な反応だった。あれ、何かマズいことしたか?
「紗夜、何で引かれてるんだ?」
「多分、花のことで熱弁したからじゃないですか?」
「そこの二人、なーにイチャついてんの!」
「イチャついてねーよ!」
「そうですよ!今井さん、暁さんとは″まだ″そんな関係じゃ……」
「紗夜!?」
あ、と紗夜は顔を赤くしながら口を抑えた。一方のリサはツボっている。おい、待て。これ俺まで恥ずかしくなるじゃねえかよ。紗夜、お前何てことしてくれたんだよ。
紗夜がごめんなさい暁さん、と謝った。俺もごめん紗夜、と謝った。この様子をリサはニヤニヤしながら見ていた。何なんだよこの悪魔、この人がRoseliaのベース担当とか信じられねぇ。
「名前で呼び合うなんていいなぁ。これは恋だねぇ」
「リサァ!お前楽しんでんだろ!」
「今井さん、後で覚えてなさいよ……」
「ごめんごめん、やり過ぎたね。じゃあ暁、紗夜!頑張んなよー!」
どういう意味だよ、俺は去っていくリサを眺めながら思った。こんなことになるなんて……これじゃあ紗夜と話し辛いな。ああ、気まずい。
▼▼▼▼
私は店番の帰りに気になっていた花、マーガレットを買って帰路に着いた。花言葉は恋占い。好きな人に関しての占いは間に合っている。占ってもらうのならRoseliaのこれからで充分だわ。
「ただいま」
「おかえりおねーちゃん!さと君とはアツアツだったね!」
「日菜!?別に暁さんとはアツアツではなかったわ。というか何で貴女がそんなことを知ってるの?」
「リサちーから聞いたよ」
今井さん、何てことをしてくれたの!日菜に今日のことを話したらからかわれるじゃない!その後、私は日菜に色々聞かれ、マーガレットの花言葉を日菜に教えたら占いまでされた。
「おねーちゃんとさと君は……関係上手くいくよ!」
「占いになってないじゃない!適当にやってるでしょ!」
「それなりにやっただけだよ。なんかるんっと来たから、ね?」
「ね?じゃないわよ!可愛らしく言っても説得力無いわよ!」
今日は疲れたわ。電気を消して寝ようとした時、日菜に一緒に寝ていい?と聞かれた。今日は日菜に甘えようかしら。私はそう思いながらいいわよ、と答えた。
今井さんといい、日菜といい、今日は散々だわ。日菜はまだしも、今井さんにからかわれるのは複雑だ。質問攻めされてた時の暁さんはタジタジだった。あの勢いでは無理もないか。
こんな私を気にすることなく、日菜は私を抱き枕にして寝ていた。おねーちゃん大好き、と寝言を言いながらだ。
「暁さん、どうしてるかしら……」
私の恋は始まったばかりだ。正直、上手くいくか不安だ。占いでは結果が見えない、それならばアプローチを仕掛けるしかない。積極的にアプローチを仕掛けよう、そう決心しながら私は眠りに就いた。
ーーというか日菜の胸が当たってる、やっぱり私より少し大きいわね。
恋は占いでもわからない部分があるのだ