凍てついた心に花束を添えて   作:ネム狼

21 / 22
顔を赤くしたら説得力は無くなる


アンズ 「乙女のはにかみ」

 10月になり、紅葉が咲き始めた。秋になれば色んな花が咲く。定番の花だとコスモスやダリア、ホトトギス、金木犀等、有名な花がある。

 

 花のことは今は置いておこう。店は絶賛経営中だが、俺はある問題に直面していた。その問題はレノン、犬にとっては重要な物だ。俺たち飼い主でも苦戦したりしなかったりする。

 

「レノン、大人しくしてくれ!体洗えないだろ!」

 

 レノンの体を洗いたいが、彼は大人しくしてくれなかった。小さい頃はちゃんとしてしてたのに、大きくなってからは聞いてくれなくなった。反抗期だと信じたい。

 

 シャワーで洗うとなれば、服は濡れてしまう。初めてやった時は全身ずぶ濡れだったか……。今は上半身裸で、下はハーフパンツを履いている。ハーフパンツはレノンの体を洗う用で買った物だ。

 

 今はレノンを止めよう。俺はレノンに大人しくしてくれたらご褒美をあげると言った。それを聞いたレノンは本当なの?と聞くような顔をし、上目遣いで見つめてきた。しかも尻尾を振りながらだ。じっとしてくれたのは良かったが、期待されてるな。

 

「本当だ。体洗ってからだから、それまでじっとしてくれるか?」

 

 レオンは明るく吠えた。よし、後は洗うだけだ。犬の体を洗うのは大変だが、ここで洗っておかないと看板犬の立場が無くなる。手早く終わらせるか。

 

 温度を37度に下げ、蛇口ハンドルを回し、お湯を出す。温度が高いと体力を奪ってしまう。少しぬるいくらいが犬にとっては最適な温度だ。俺はシャワーをレノンの体に掛けた。目に入らないように気を付けよう。ここでやらかしたら洒落にならない。

 

 次にシャンプーだ。マッサージをするように洗おう。シャンプーは犬用を使う。人間用は皮膚を痛めるから使うのはNGだ。

 

「レノンどうだ?気持ちいいか?」

 

 レノンの顔は穏やかだった。耳と口角は後ろに引いてる。尻尾も下向きにくねらせている。分かりやすいなこいつ。気持ちよさそうにしてる間に終わらせよう。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 暁さんと話をしようと、私はシャルロッテに向かった。湊さんから楽しそうね、何て言われたけど、あの時はヤバかったわね。私が暁さんのことを好きだということを皆に知られたのだ。それも今井さんが原因で……。

 

 それを聞いた湊さんはなるほどと納得、白金さんは母親目線で見守るかのような目線になり、宇田川さんからはおめでとうございますと言われた。今井さん、本当に酷いことをしてくれたわ。

 

「素直になりなよ、何て言われたけど……告白出来たら苦労なんてしないわ」

 

 暁さんに告白は出来ていない。もう10月に入るけど、このままでいいのかしら……。もし、暁さんに彼女が出来たら、私はどうしたらいいのかしら……。

 

 こんな顔、暁さんに見せられない。ネガティブになっては駄目だ、私は気持ちを切り替えることにした。今日は話をするために来たんだ。暗くなってはいけないわ。

 

 シャルロッテに着き、私は遥さんに挨拶をした。店内を見ると、暁さんはいなかった。部屋にいるのか、それとも休みなのか。私は遥さんに暁さんはどうしているかを聞くことにした。

 

「暁ならシャワーを浴びてるところよ」

「シャワーですか?」

「ええ、さっきまでレノンの体を洗ってたから、ついでにシャワーを浴びるって言ってたわ」

 

 暁さんはいないけど、レノンはいる。レノンは……寝ているわね。綺麗になっているのはそういうことなのね。そうなると、待った方がいいわね。

 

「紗夜ちゃん、よかったら上がって待ってる?」

「それはさすがに……暁さんに悪いですよ」

「大丈夫よ。暁に会いたいんでしょ?」

「会いたいですが……上がって大丈夫ですか?」

 

 大丈夫よ、遥さんは微笑みながら言った。本当に上がって大丈夫かしら……。ここで断ったら遥さんに申し訳ないし、ここは言う通りにしよう。私はシャルロッテの奥、もとい暁さんの家に上がることにした。

 

 まさか家に上がるなんて思ってなかったわ。階段を上がり、私は洗面所の扉が開いていることに気付いた。暁さん、開けっ放しにするなんて、隙だらけだわ。

 

「ここで待って驚かせようかしら。そんなことをしたららしくないって言われるわよね。ここは……」

 

 どうしようか考えていると、扉越しから音がした。シャワーを浴び終えたようね、私は暁さんをサプライズ的な意味で驚かせることにした。

 

 

ーーここで待とう。暁さんが来たら挨拶、これでいきましょう!

 

 

 私は壁に凭れ、彼を待つことにした。待っていると、洗面所から擦れるような音がした。この音ってあれよね?服を着てる音よね?これは耳を塞いだ方がいいかしら?それとも……じっくり音を聞く?

 

 

ーー私は何を考えているの!?

 

 

 暁さんが気になる、耳を塞ぐ、私はどちらを選ぼうか迷ってしまった。やる事はすぐに決まった。私は聞き耳を立てることにした。体が勝手に動いた、そう言い訳したら何て思われるか、そんな事を考えずに私は扉に耳を近づけた。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 俺は視線を感じた。誰かに見られている、それも知っている人に覗かれているような視線だ。ヤバいな、早く服を着ないと命が無い。

 

「おかしい、扉は閉めた……よな……?この違和感は何だ?」

 

 俺は急いで服を着ることにした。見られてないよな?上はまだしも、下を見られたらマジでヤバい。こんな所、紗夜に見られたら告白出来なくなる。覗かれただけで告白出来なくなるとか洒落になんねえし、このままだと一生独身になる。

 

 着替え終え、扉を開けることにした。あれ?ちょっとだけ開いてる、これって俺が悪いよな?いや、もう考えたくない。俺は覗かれたという現実から逃げようと頭を振り、扉を開けた。考えるのはやめだ。これ以上はキリがない。

 

「はぁ、何か疲れたな。レノンはゆっくりしてるし、店番は休みだし、このまま寝るのもいいか……」

 

 両腕の上に伸ばし、伸びをした。こうしていると、欠伸が出る。シャワーを浴びた後は眠くなるというのはよくあることだ。特に今日はレノンの事で大変だったんだ。今日は昼寝してもいいよな?

 

「あ、あの……」

「ん?誰だ俺を呼んだのは……。つかこの声って……」

「暁さーん」

 

 俺は誰かに呼ばれた。それも聞き覚えがあり、いつも隣で話をして、放っておけない人だ。そうだ、この声はあいつだ。俺は声の元を確認しようと、隣を振り向いた。

 

「あれ……紗夜!?何でここに!?」

「いきなりですみません。遥さんから上がっていいって言われて上がりました」

「母さんが!?それ言われたら何も言えないな。てか紗夜、何で洗面所の前にいるんだ?」

「こ、これはですね……アレです!暁さんを驚かせようかなと思って待ってたんです!」

「待ってたって……。あと聞くんだが、覗いたりとかしてないよな?」

「はい!?そんなことしませんよ!暁さんは私を何だと思ってるんですか!」

 

 紗夜は顔を赤くしながら反論した。こいつ、一瞬目を逸らしたな。逸らしたってことは覗いたのか?いや、紗夜に限ってそんなことはしないか。紗夜は風紀委員だ。風紀委員が風紀を乱したらヤバいよな。うん、決めた。とりあえずこう言うか。

 

「……真面目で熱心で偶に見せる笑顔が綺麗で、頼りになって、ポテトが好きで、あと美人で可愛くてそれから……」

「分かりました!分かりましたから!覗いてはいませんが、服を着てる音は聴きました!すいませんでした!」

「覗いてないのはいいが、音を聴いたってお前、ムッツリスケベか?」

「違います!暁さん、それは言い過ぎです!」

 

 ごめん、俺は言い過ぎと感じ、彼女に謝った。もし覗いてたらやべえ奴だ。好きな人に着替えを覗かれてたら穴に入りたいレベルだ。つか、俺の着替えてる音を聴くとか変態だろ。

 

 俺は紗夜を部屋に上げることにした。初めて女の子を部屋に上げるが、大丈夫だろうか……。嫌な予感しかしない。いや、マジで。

 

 

 




真面目な奴ほど変態の可能性は高くなる
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。