10月になり、紅葉が咲き始めた。秋になれば色んな花が咲く。定番の花だとコスモスやダリア、ホトトギス、金木犀等、有名な花がある。
花のことは今は置いておこう。店は絶賛経営中だが、俺はある問題に直面していた。その問題はレノン、犬にとっては重要な物だ。俺たち飼い主でも苦戦したりしなかったりする。
「レノン、大人しくしてくれ!体洗えないだろ!」
レノンの体を洗いたいが、彼は大人しくしてくれなかった。小さい頃はちゃんとしてしてたのに、大きくなってからは聞いてくれなくなった。反抗期だと信じたい。
シャワーで洗うとなれば、服は濡れてしまう。初めてやった時は全身ずぶ濡れだったか……。今は上半身裸で、下はハーフパンツを履いている。ハーフパンツはレノンの体を洗う用で買った物だ。
今はレノンを止めよう。俺はレノンに大人しくしてくれたらご褒美をあげると言った。それを聞いたレノンは本当なの?と聞くような顔をし、上目遣いで見つめてきた。しかも尻尾を振りながらだ。じっとしてくれたのは良かったが、期待されてるな。
「本当だ。体洗ってからだから、それまでじっとしてくれるか?」
レオンは明るく吠えた。よし、後は洗うだけだ。犬の体を洗うのは大変だが、ここで洗っておかないと看板犬の立場が無くなる。手早く終わらせるか。
温度を37度に下げ、蛇口ハンドルを回し、お湯を出す。温度が高いと体力を奪ってしまう。少しぬるいくらいが犬にとっては最適な温度だ。俺はシャワーをレノンの体に掛けた。目に入らないように気を付けよう。ここでやらかしたら洒落にならない。
次にシャンプーだ。マッサージをするように洗おう。シャンプーは犬用を使う。人間用は皮膚を痛めるから使うのはNGだ。
「レノンどうだ?気持ちいいか?」
レノンの顔は穏やかだった。耳と口角は後ろに引いてる。尻尾も下向きにくねらせている。分かりやすいなこいつ。気持ちよさそうにしてる間に終わらせよう。
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暁さんと話をしようと、私はシャルロッテに向かった。湊さんから楽しそうね、何て言われたけど、あの時はヤバかったわね。私が暁さんのことを好きだということを皆に知られたのだ。それも今井さんが原因で……。
それを聞いた湊さんはなるほどと納得、白金さんは母親目線で見守るかのような目線になり、宇田川さんからはおめでとうございますと言われた。今井さん、本当に酷いことをしてくれたわ。
「素直になりなよ、何て言われたけど……告白出来たら苦労なんてしないわ」
暁さんに告白は出来ていない。もう10月に入るけど、このままでいいのかしら……。もし、暁さんに彼女が出来たら、私はどうしたらいいのかしら……。
こんな顔、暁さんに見せられない。ネガティブになっては駄目だ、私は気持ちを切り替えることにした。今日は話をするために来たんだ。暗くなってはいけないわ。
シャルロッテに着き、私は遥さんに挨拶をした。店内を見ると、暁さんはいなかった。部屋にいるのか、それとも休みなのか。私は遥さんに暁さんはどうしているかを聞くことにした。
「暁ならシャワーを浴びてるところよ」
「シャワーですか?」
「ええ、さっきまでレノンの体を洗ってたから、ついでにシャワーを浴びるって言ってたわ」
暁さんはいないけど、レノンはいる。レノンは……寝ているわね。綺麗になっているのはそういうことなのね。そうなると、待った方がいいわね。
「紗夜ちゃん、よかったら上がって待ってる?」
「それはさすがに……暁さんに悪いですよ」
「大丈夫よ。暁に会いたいんでしょ?」
「会いたいですが……上がって大丈夫ですか?」
大丈夫よ、遥さんは微笑みながら言った。本当に上がって大丈夫かしら……。ここで断ったら遥さんに申し訳ないし、ここは言う通りにしよう。私はシャルロッテの奥、もとい暁さんの家に上がることにした。
まさか家に上がるなんて思ってなかったわ。階段を上がり、私は洗面所の扉が開いていることに気付いた。暁さん、開けっ放しにするなんて、隙だらけだわ。
「ここで待って驚かせようかしら。そんなことをしたららしくないって言われるわよね。ここは……」
どうしようか考えていると、扉越しから音がした。シャワーを浴び終えたようね、私は暁さんをサプライズ的な意味で驚かせることにした。
ーーここで待とう。暁さんが来たら挨拶、これでいきましょう!
私は壁に凭れ、彼を待つことにした。待っていると、洗面所から擦れるような音がした。この音ってあれよね?服を着てる音よね?これは耳を塞いだ方がいいかしら?それとも……じっくり音を聞く?
ーー私は何を考えているの!?
暁さんが気になる、耳を塞ぐ、私はどちらを選ぼうか迷ってしまった。やる事はすぐに決まった。私は聞き耳を立てることにした。体が勝手に動いた、そう言い訳したら何て思われるか、そんな事を考えずに私は扉に耳を近づけた。
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俺は視線を感じた。誰かに見られている、それも知っている人に覗かれているような視線だ。ヤバいな、早く服を着ないと命が無い。
「おかしい、扉は閉めた……よな……?この違和感は何だ?」
俺は急いで服を着ることにした。見られてないよな?上はまだしも、下を見られたらマジでヤバい。こんな所、紗夜に見られたら告白出来なくなる。覗かれただけで告白出来なくなるとか洒落になんねえし、このままだと一生独身になる。
着替え終え、扉を開けることにした。あれ?ちょっとだけ開いてる、これって俺が悪いよな?いや、もう考えたくない。俺は覗かれたという現実から逃げようと頭を振り、扉を開けた。考えるのはやめだ。これ以上はキリがない。
「はぁ、何か疲れたな。レノンはゆっくりしてるし、店番は休みだし、このまま寝るのもいいか……」
両腕の上に伸ばし、伸びをした。こうしていると、欠伸が出る。シャワーを浴びた後は眠くなるというのはよくあることだ。特に今日はレノンの事で大変だったんだ。今日は昼寝してもいいよな?
「あ、あの……」
「ん?誰だ俺を呼んだのは……。つかこの声って……」
「暁さーん」
俺は誰かに呼ばれた。それも聞き覚えがあり、いつも隣で話をして、放っておけない人だ。そうだ、この声はあいつだ。俺は声の元を確認しようと、隣を振り向いた。
「あれ……紗夜!?何でここに!?」
「いきなりですみません。遥さんから上がっていいって言われて上がりました」
「母さんが!?それ言われたら何も言えないな。てか紗夜、何で洗面所の前にいるんだ?」
「こ、これはですね……アレです!暁さんを驚かせようかなと思って待ってたんです!」
「待ってたって……。あと聞くんだが、覗いたりとかしてないよな?」
「はい!?そんなことしませんよ!暁さんは私を何だと思ってるんですか!」
紗夜は顔を赤くしながら反論した。こいつ、一瞬目を逸らしたな。逸らしたってことは覗いたのか?いや、紗夜に限ってそんなことはしないか。紗夜は風紀委員だ。風紀委員が風紀を乱したらヤバいよな。うん、決めた。とりあえずこう言うか。
「……真面目で熱心で偶に見せる笑顔が綺麗で、頼りになって、ポテトが好きで、あと美人で可愛くてそれから……」
「分かりました!分かりましたから!覗いてはいませんが、服を着てる音は聴きました!すいませんでした!」
「覗いてないのはいいが、音を聴いたってお前、ムッツリスケベか?」
「違います!暁さん、それは言い過ぎです!」
ごめん、俺は言い過ぎと感じ、彼女に謝った。もし覗いてたらやべえ奴だ。好きな人に着替えを覗かれてたら穴に入りたいレベルだ。つか、俺の着替えてる音を聴くとか変態だろ。
俺は紗夜を部屋に上げることにした。初めて女の子を部屋に上げるが、大丈夫だろうか……。嫌な予感しかしない。いや、マジで。
真面目な奴ほど変態の可能性は高くなる