凍てついた心に花束を添えて   作:ネム狼

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さよひな誕生日回です
今回の暁と紗夜は付き合ってます
本編とは別次元です


もう一つの花畑 ―幕間―
クチナシ 「とても幸せです」


 店に貼ってあるカレンダーに目を通し、俺は息を吐いた。もう少しで紗夜と日菜の誕生日、プレゼントはどうするか。これを紗夜の前で考えるのはプレッシャーを感じるな。

 

「暁、溜め息を吐いてどうしたの?」

「何でもない。カレンダーを見てただけだ」

「……私と日菜の誕生日のことかしら」

「いや、そんなことじゃないんだ。決してプレゼントをどうしようかなんて考えてないからな……あ」

 

 しまった口に出しちまった。紗夜は俺の考えていたことを当てたのか、口元を緩ませてドヤ顔をかました。何か腹立つ。

 

 紗夜に当てられるなんて、今日は厄日だな。紗夜と付き合って1年経つが、今までこんなことはなかった。はぁ、バレたのなら白状するしかないか。

 

「ああそうだよ。プレゼントのことを考えてたよ。どうしようか悩んでました!」

「そうだったの。暁、私は何でもいいのよ?日菜も何でもいいって言ってるし、暁が納得する物でいいから、無理に考えなくてもいいわよ」

「いや、大事な誕生日なんだ。ちゃんと決めたい、これだけは譲れない」

 

 そうだ、これだけは譲れないんだ。紗夜や日菜が何を言おうと真剣に決めなきゃいけないんだ。俺は紗夜の隣に座り、彼女の顔を見つめた。相変わらずエプロンが似合っている。店番っていうだけなのに、彼女はこうして今も手伝ってくれている。今はアルバイトという形でやっている。

 

 本当にどうするか。あと花も決めないとだ。花に関しては二人に合う花言葉を参考にするか。あ、香水も作らないとだな。はぁ、大変な一週間になるな。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 暁はいつにも増して真剣だ。私や日菜は暁が納得出来る物でいいと言ってるのに、彼は妥協はしなかった。私と日菜を想って言ってるのはわかっている。それだけのことなのに、私は心が暖かいと感じた。

 

「ねえ暁、日菜には何の花を贈るの?」

「ルピナスだな。花言葉は"いつも幸せ"っていうんだ、日菜らしいだろ?」

「日菜らしい……言われてみればそうね。どういう意味で選んだの?」

「そのまんまの意味だ。日菜は紗夜のこと好きだろ?」

「……なるほど。そういうことね」

 

 日菜が私のことを好き、つまり姉妹愛という意味かしら?そう思うと納得出来る。ここまで来ると私には何の花を贈るのか気になるわね。試しに聞いてみようかしら。

 

 私は暁に何の花を贈ってくれるのかを聞いた。しかし、教えてはくれなかった。やっぱり駄目なのね。ここで教えてしまっては楽しみが減るわよね。なら、誕生日までに楽しみにしていよう。

 

「暁、今度一緒に日菜の誕生日プレゼントを選んでくれる?」

「いいけど、俺が一緒に選んでいいのか?」

「今年は暁と選ぼうと思ったのよ。付き合って初めての誕生日だし、大事な一日にしたいの」

 

 私と暁が付き合って初めての誕生日、そして日菜の誕生日、この二つはとても大事だ。今回は暁と選んで、私と暁からのプレゼントとして贈りたい。去年は日菜と色々あったんだ。だから、私は日菜に恩返しがしたい。

 

 そしてシャルロッテは一日を終えた。私は暁にまた明日と言い、唇を重ねた。さよならのキスとしてやった。明日は会ったらおはようのキスをしよう。それにしても、キスって恥ずかしいわね。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 氷川姉妹の誕生日当日。はぁ、時間ってあっという間だな。昨日は1日使ってルピナスとある花を使って香水を作ったが、とても大変だった。いつもより気合いを入れて作ったんだ。喜んでくれたらいいんだが……。

 

 紗夜に贈る花はすでに決まっている。彼女に相応しい花を選んだんだ。ここで失敗する訳にはいかない。こんなことを考えながら俺は紗夜の家まで歩いた。そろそろ着く、ああ緊張するな。落ち着け、落ち着くんだ俺!

 

 入り口のチャイムを鳴らし、来たことを告げた。この声は日菜か。いきなり紗夜が来たら余計緊張するから助かる。

 

「おはよう、さと君!上がって上がって!」

「おはよう日菜、お邪魔します」

 

 靴を脱ぎ、玄関に上がる。さぁ、ここからだ!ここからが勝負だ。俺は日菜に案内された。しかし、案内されたのは……まさかの紗夜の部屋だった。え?嘘だろ?

 

「おねーちゃん、さと君来たよー!」

「日菜!ノックしてって何度も……あ、おはよう暁」

「お、おはよう紗夜」

 

 ヤバい!紗夜の前なのに冷や汗が出る。誕生日なんだからちゃんとしないとだ。俺は深呼吸をし、紗夜の部屋に入った。そして俺は二人に祝いの言葉を贈った。

 

「えっと……紗夜、日菜、誕生日おめでとう!渡したい物があるんだが、受け取ってくれるか?」

「もちろんだよ!さと君」

「暁、そんなに緊張しなくていいのよ。まず落ち着きましょ?」

 

 俺はもう一度深呼吸をした。まずは紗夜からだ。紗夜に渡す花はクチナシ、花言葉は"とても幸せです"、紗夜に相応しいからこそ選んだ花だ。花といっても香水だ。俺は花ではなく、香水を贈る。二人には何度もこれで渡してきたんだ。香水で渡そうって決めてたんだ。

 

「暁、ありがとう!私は幸せよ」

「ちょ、紗夜!?」

「アハハ、おねーちゃん嬉しそう!」

 

 紗夜に香水を渡した瞬間、彼女に抱き着かれた。しかも嬉し泣きまでしてる。こんなに喜んでくれたんだ。紗夜の喜んでる所が見れたなら俺も幸せだ。

 

 その後、日菜にルピナスを渡したが、日菜にまで抱き着かれてしまった。姉妹にここまでされるなんて想定外だ。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 暁から渡されたプレゼントはネックレスだった。それも日菜とペアルックのネックレスだ。暁が選んでくれたプレゼントなんだ、大切にしないといけないわ。

 

「暁、ありがとう」

「喜んでくれたなら何よりだ。日菜には渡せたんだろ?」

「ええ、日菜にはありがとうって笑顔で言われたわ」

「そっか、よかったな」

 

 日菜に渡したプレゼントは傘だ。しかし、日菜からも同じ物をプレゼントされた。それも同じ色、翠色の傘だった。同じ色だなんて、何の偶然なんだろう。

 

 あの秋時雨で私と日菜は互いの想いをぶつけ合った。少しずつ互いに話をしたり、ギターを弾いたり、色んなことをしてきた。今は本当の姉妹として仲良く出来ている。

 

「おねーちゃん!」

「日菜、どうしてここに……」

「さと君と話してたんでしょ?」

「ええ、どうしたの?」

「さと君に伝えたいことがあってね」

 

 暁に伝えたいこと?何なのかしら?私は暁から離れることにした。日菜は笑顔で暁の方を向いて話をした。それは一瞬のことだけれど、感謝に満ちた言葉だった。

 

「さと君、ありがとうね!」

「へ!?ど、どういたしまして?」

「何で疑問形になるのさ」

「いや、急だからしょうがないだろ!」

 

 ありがとう、か。それは私には凄く意味がある言葉だ。誕生日を祝ってくれてのありがとう、おねーちゃんを支えてくれてありがとう、そんな意味が込められているんだと私は感じた。

 

 そして暁は私と日菜に誕生日おめでとう、ともう一度言われた。私こそ暁にありがとうと言おう。こんな私と付き合ってくれてありがとう、と。私と日菜を結んでくれて……ちゃんと向き合わせてくれてありがとう、と言おう。

 

 

ーー暁、ありがとう!

 

 

 

 

 




後半ぐだり気味になりましたが、これが精一杯です
最後になりますが、紗夜、日菜誕生日おめでとう!
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