遊戯王部部活動記<番外編集>   作:鈴鳴優

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※注意
 これは白井友紀さんの作品『神憑りのハートレス・サークル』とのコラボ作品です。
 本編と『神憑りのハートレス・サークル』をご覧になっていない方は、本編と『神憑りのハートレス・サークル』を読んでいただいてからをオススメします。

 ※時間軸について。
 
 『遊戯王部活動記』
 58話以降。

 『神憑りのハートレス・サークル』
 第31話あたり。


ex04.決闘部による少年少女の世界の話

 部活動というのは共通の趣味は思想を持った者たちの団体活動のことを言う。

 野球やテニス、バスケが好きならばその部活があるが遊戯王が好きな者たちが集まればその部活があることだっておかしくは無い。

 

 とある学園の生徒。神憑る運命力を持つ少女を中心とした全国に誇れる決闘者の決闘者による決闘者のための部「決闘部」で戦っていく物語。

 

──これは、決闘部による少年少女の物語

 

 

 

 + + + + +

 

 

 

「ここは、どこだ?」

 

 それは突然起こった。

 思わず夕凪高校遊戯王部の部長新堂創(しんどうはじめ)は当たりを見渡した。

 まったくと言っていいほど見覚えの無い景色が視界一杯に映る。

 

「学校なのは間違いないみたいだけど、遊凪高校じゃないのは確かね」

 

 同じく氷湊涼香(ひみなとすずか)が創よりも落ち着いた様子で冷静にあたりを観察する。瞳に映る廊下は彼女らが知る遊凪高校とはまず明らかに違う。まっすぐと長く続く廊下は幅も長さも倍以上に違う。おそらく敷地の面積やら規模そのものが違うのだろう。

 

「というか何でオレたちはここに来たんスか?」

 

 さらにもう一人。

 橘晃(たちばなあきら)はここに来た理由を疑問に問う。

 

「うーん、そういえばそうだよなぁ」

「確か部室の前で丁度、会ったのよね」

 

 なんて次々と思い出していく。

 晃と涼香は同じクラスと言えども部室に行くのは別々だ。同じクラスに風戸有栖もいて涼香は彼女と一緒に行くことが多いが今回は学校内での用事もありたまたま別々に行くことになったが偶然にも部室前の入り口で鉢合わせ。

 さらには別学年の創とも会うこととなったのだが、部室の扉を開けた瞬間、突然にも視界が真っ白に染まった。

 

 そして現在に至るのだ。

 途方に暮れそうになるのは言うまでも無い。

 ほんの少しだけ言葉が詰まりだまっていた頃だった。

 

「……む?」

 

 突如、創は表情をしかめる。

 まるで真剣な顔つきに一体何があったのかなんて涼香も晃も疑問に思うものの創は口を開き即座に告げた。

 

決闘(デュエル)の気配だ!」

「は……?」

 

 どのような場所、状況であろうとも変わらずの決闘馬鹿発言。

 そういえば昔、彼は半径500m以内であれば決闘の気配を感知できるなんて言っていた。

 

「行ってみるが吉! 先に行っているぜ!」

「あ、ちょ!?」

 

 廊下を走るな、なんてルールを振り切って駆け足で廊下をダッシュ。

 涼香と晃も廊下を走らない程度で追いかけるものの創との差はグングンとひらいていく。この廊下に他の人がいなかったことは幸いだ。

 

「ふっ、見つけたぜ! ここだぁ!」

 

 一つの部屋を見つけてはキィぃーと足で急ブレーキをかけて停止。

 決闘という一点に関係するのであれば新堂創は遠慮も常識も無い。目の前の部屋がどんな場所でどうなっているかなんて知らずもがな彼は勢いよく扉を開けた。

 

 

 

+ + + + +

 

 

 

「それで、あんたらは勝手に部室に乗り込んできたわけだな」

 

 当然ながら怒られた。

 不法侵入という形で創はもとより晃と涼香も巻き添えで正座をさせられたあげく目の前には鋭い目つきで睨まむ栗毛の少女、海馬千鶴(かいばちづる)。ほっそりとしたスタイルながらも男勝りな感じで創たちの目の前で腕を組み仁王立ちで立ちつくす。

 

 聞いた話ではここは決闘聖域学園(デュエルアカデミアサンクチュアリ)と言われる学校の決闘部の部室らしい。創たちは遊凪高校の遊戯王部に所属しているためになんとなく親近感を感じられる。

 

「まーまー、ちげちゃん。デュエルしたくて思わず乗り込んじゃう気持ち、わたしだってわかるよ!」

「そうだよな! なんか知らない場所にまで来てたことなんてしばしば──」

「あっ、わたしもそれ経験ある!」

 

 『ねー』と、二人はまるで口裏を合わせたようなやり取りで意気投合。

 見てくれは美人。だけど不釣り合いなぐらいにテンションの高い少女、如月沙羅(きさらぎさら)と新堂創は同類と遭遇したようだ。

 

(……決闘馬鹿が二人ね)

(……決闘馬鹿が二人だ)

 

 二人の高いテンションのやり取りに冷ややかな視線で涼香と千鶴が同時に同じことを考える。一人だけでもめんどくさそうな決闘馬鹿が今は二人もいるという事実に思わず溜め息が漏れそうになる。

 

「ふっ、どうやら彼とギサラは似た者同士みたいだな」

 

 なんて微笑ましくも爽やかに美形の男子生徒が笑う。背は低いものの、それをカバーするかのような不思議なオーラを纏っており逆ピラミッドの首飾りとシルバーの腕時計を見に付けている彼は武藤一郎(むとういちろう)だ。

 

「だが決闘馬鹿が二人にもなると、騒がしくて仕方ないな」

 

 なんて涼香や千鶴が口に出さないことを問答無用で毒づいたのは中性的な声で背が低く女装が似合いそうに見えてしまう男子生徒。二条憲斗(にじょうのりと)だ。

 

「そういや、自己紹介がまだだったよな。俺は新堂創。遊凪高校の2年にして遊戯王部の部長だぜ。こっちが1年の氷湊涼香と橘晃だ」

 

 決闘馬鹿という言葉は聞こえているだろうが、彼にとってはむしろ褒め言葉だ。

 華麗にスルーしては自己紹介。彼の言葉に対して沙羅はぴくりと反応して同じように自己紹介を返す。

 

「へー、遊戯王部って言うんだ。わたしの方は決闘部なんだけど。あっ、わたしは聖域学園の如月沙羅。それでこっちはちげちゃん」

「違うだろ。あたしは海馬千鶴でこっちはギサラだ」

 

 なんて本名とあだ名での語り合い。

 さすがにどっちで呼べばいいのか困る。

 

「えーと、ギサラさんにちげさんと呼べばいいのかな?」

 

 困った風に晃が尋ねる。

 それを置いといて残りのメンバーたちも自己紹介を進めていく。

 全員が名乗り終えた後、中肉中背でハンサム。さやわかな表情の天馬正行(てんませいこう)は一つの提案をした。

 

「皆さんが何故、聖域学園にいるのかはわかりませんが同じ決闘者としての部活同士練習試合をやってみるのはどうでしょうか?」

「いいね! わたし、賛成!」

「ああ、俺も当然、賛成だ!」

 

 すぐさま決闘馬鹿たちが食い付く。

 はいっ、と勢いよく手を上げて賛同する二人に一般常識を持つ千鶴や涼香は難色を示す。聖域学園側としては、知らぬ間にここに来ていたとはいえ学校から見れば不審者のような者。それに遊凪高校遊戯王部としては決闘よりも帰ることを優先したい。

 

「けどなぁ……」

「急過ぎるでしょ」

 

 提案者を含めても賛同するのは8人中3人のみ。

 あまり話が進みそうもない中、一郎が助け船を出す。

 

「俺は別に構わないと思うぜ。彼らはきっと、俺たちと同じだ」

「うーん、一郎がそう言うのなら、そうか?」

 

 これで賛成が二人追加で8人中5人と過半数を超える。

 流れはもう練習試合を行うような雰囲気だ。

 さすがに、この流れを真正面から駄目と言えるはずが無い。

 

「はぁ……仕方ないわね」

「それで、どうするんだ。練習試合をするとなると向こうは3人、僕らは5人と余るぞ」

 

 憲斗のもっともな言葉に一同がうーんと首を捻る。

 聖域学園側が一人、向こう側へと付けばちょうど4人づつにはなるが、それは何か違う気がする。どうすべきかと悩んだ末に千鶴は

 

「しゃあないから。まずはシングルとタッグでやるか。んで、後は自由に決闘をするってのはどうだ」

「さんせーい! わたしはデュエルできるならなんでもいいよ」

「俺も異論なんてないぜ。デュエルさえできれば無問題さ!」

 

 提案にも即座に食い付く決闘馬鹿二人。

 後先どころかきっと名も考えてないだろう。

 誰からも不満も無いように見えたために涼香は一歩前を出て仕切るように口を挟む。

 

「決まりのようね。なら、シングルとタッグでオーダーを決めましょ。お互い聞こえないようにそうね……5分くらいが妥当じゃないかしら」

「そうだな。じゃあ、あたしたちはあっちで話合うからあんたらはアッチな」

 

 なんて聖域学園決闘部の部長の千鶴と遊凪高校の部長が頼りないからしっかり者の涼香が手際よくやり取りを行う。部屋の隅と隅で二つのグループが相談し合いオーダーを決める。

 やがて5分が経過したのち再び一同が部屋の真ん中にて対峙する。

 

「あたしたちはシングルが一郎、タッグがあたしとギサラだ」

 

 聖域学園からはシングルはエースの武藤一郎が抜擢されタッグはまず出ると話を聞かない沙羅にもっとも相性が良いであろう千鶴が入る。自然と彼女らは1年生のときに全国大会に出場したオーダーとなった。

 

「そうか。俺たちはまずシングルが晃。タッグが俺と氷湊だぜ!」

 

 ニッ、と歯を見せて創は笑いながら返す。遊凪高校ではエースというわけでは無いが独特な戦術でタッグには向かないという消去法から晃がシングルに抜擢されては、残る創と涼香は大会にてタッグを組んだことがあるためにも相性が良いのかもしれない。

 

「オーダーも決まったことだしさっさとやるぞ」

 

 千鶴の一言により6人の決闘者たちは対峙する。

 シングルは一郎と晃。タッグは沙羅と千鶴と創と涼香。

 6人がそれぞれ決闘盤を構えて後は開始の合図を告げるだけ。

 

 と、思った瞬間にけたましいブザーが鳴り響いた。

 決闘盤には『ERROR』の文字。確認してみればライフポイント設定が異なるのだ。聖域学園側は4000、遊凪学園側は8000となっている。

 

 話合いとジャンケンの結果、互いに8000の設定で行うこととなった。

 

『デュエッ……!!』

「うおぉっ!?」

 

 デュエル開始0秒。爆発。晃が吹っ飛んだ。

 視線を即座に傾ければ一郎の場には、巨大なモンスターが携えていた。それも普通のモンスターでは無く5枚のカードを合わせたときにやっと姿を現す究極のモンスター。

 

「悪いな。俺が最初の5枚で引いたのは《封印されし者の右足》《封印されし者の左足》《封印されし者の右腕》《封印されし者の左腕》そして──《封印されしエクゾディア》だ」

 

 エクゾディア。

 5枚のパーツを揃えた瞬間、どんなカードも使うこともできず止めることさえ許されずに決着を付けるモンスター。特殊勝利カードとしてはメジャーな方であり専用デッキさえ組めば十分に狙える。

 しかし、それらの専用デッキ【図書エクゾ】や【ワンチャンエクゾ】、【活路エクゾ】なんて取るに足らないと言わんばかりに発現させたのは一郎の【初手エクゾ】なのだ。

 

「いや、冗談よね……?」

 

 この現象にさすがの涼香も目をぱちくりと見開くしかなかった。

 エクゾディアを初手で揃えるなんて確率は65万8008分の1。

 まだ宝くじを買って1等を当てる方が確率が高いのだから。

 

「凄ぇ……俺は今、伝説を見ちまった」

 驚きのあまり声が出ない涼香に対して創は逆にテンションが高ぶる。

 肩をわなわなと震わせながら子どものようにはしゃぐ。

 

「伝説って、そうだけど、さすがに信じられないわ」

「『確定する引き(デステニー・ドロー)』それが一郎さんの聖魂(サイコ)能力なんです?」

聖魂(サイコ)能力?」

 

 まだ現実をしっかりと認識できないという状態を連れ戻すように正行が親切に解説をする。聞き慣れない単語に対して涼香はオウム返しに聞き返した。

 

「私たち聖魂決闘者(サイコデュエリスト)に発現する能力です。一郎さんの『確定する引き(デステニー・ドロー)』はドローするカードを操作することができます」

「そんな、オカルトな……」

 

 なんて信じられない表情をするが、涼香とていざという場面で逆転のカードが来るというのは当然みたいなものだったり能力者染みた力を持った決闘者だって見たことがあるために一存にそんなオカルトはあり得ないなんて言い難い。

 

「つまりは、普通よりも強いってことか。面白れぇ!」

「いや【初手エクゾ】とか、どうやって対抗するのよ!?」

「え? 気合とか?」

 

 そんな簡単に言ってくれるが揃えられたら気合でどうにかなるなんてもんじゃない。

 

「安心しな。あたしたちらも聖魂(サイコ)能力は持ってるけど、一郎のような『確定する引き(デステニー・ドロー)』じゃない。ちゃんとライフを削って決着をつけるさ」

「そう。それなら安心した。思いっきり行かせてもらうわ!」

「よーしっ、全力で行くよっ!」

「当然! 決闘者として持てる力の全てを出すぜ!」

 

 心意気は万全。

 4人は向きあい改めて──

 

『デュエル!!』

 

 開始の合図を宣言する。

 

 

 

「あのー、オレの事忘れてないッスか?」

 

 その中、床に転がり倒れた晃は密かに呟いた。

 

 

 

「先攻はあたしだ! 手札の《伝説の白石》を1枚捨て《ワン・フォー・ワン》を発動。デッキから《青き眼の乙女》を特殊召喚しデッキから《青眼の白龍》を手札に加える」

「っ……【青眼】ね」

 

《青き眼の乙女 ☆1 ATK/0》

 

 最初の一手だけでも疑いようも無くデッキが判明する。

 確実に千鶴のデッキは通常モンスター最強の【青眼】だ。サポートカードも豊富で多種多様な戦術が組めるが、なんといってもその最大の特徴はとてつもない破壊力を秘めていることだ。

 

「さらに《トレード・イン》で青眼を捨て2枚ドローし《聖刻龍─アセトドラゴン》から《聖刻龍─シユウドラゴン》を特殊召喚。リリースしたアセトの効果で《ギャラクシー・サーペント》を特殊召喚してシユウと《閃珖竜スターダスト》をシンクロ召喚」

 

《閃珖竜スターダスト ☆8 ATK/2500》

 

 流れるように、そして鮮やかにシンクロ召喚を決める。

 光が輝く閃珖の竜は翼を羽ばたかせその輝きを千鶴の場に佇む乙女へと与えた。

 

「スターダストの効果。1ターンに1度対象カードにエンドフェイズまでの破壊耐性を与える。あたしは乙女を選択! そして、その瞬間──」

「なっ! まさか……!?」

 

 涼香が目を見開く。

 輝きを受けた乙女は目を閉じ両手を合わせて祈る。

 祈りは形となり巨大な輪郭が形を作り質量を持たせやがては同じ青い瞳の龍を生み出した。

 

「手札、デッキ、墓地から《青眼の白龍》を特殊召喚できる。あたしはデッキから特殊召喚しレベル1のチューナ《青き眼の乙女》と共に《蒼眼の銀龍》を守備表示でシンクロ召喚!」

 

 《蒼眼の銀龍 ☆9 DEF/3000》

 

 青き眼でありながらより鋭利的にそして白く美しい身体は銀色に成り輝きを増す。

 銀色の龍は場へと舞い降りたと同時に咆哮を上げ千鶴の場の2体の龍に白い障壁を纏わせる。

 

「銀龍が特殊召喚に成功したことで、あたしの場のドラゴン族は次の相手ターンまで対象にならず効果破壊されない。カードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

 たった1ターンで2体のシンクロモンスター。

 それも攻撃力2500と守備力3000に加え1度のみ1体に破壊耐性を加えられる挙句に効果破壊を受けずに対象にもならない。まるで高い城壁を見上げるような感覚だ。

 たった1ターン目といえど彼女の実力の高さが十分過ぎるほど伝わってくる。

 

「へぇ、やるじゃない」

 

 次のターンプレイヤーである涼香は口元を釣り上げた。

 デュエルにおいて相手は弱いよりも強い方が良い。それも強者ならばなおさらだ。

 

「私のターン。まずは《E・HEROブレイズマン》を召喚。効果によりデッキから《融合》を手札を加える!」

 

 相手が城壁のような守りを築き上げたのならばどうすればいい?

 涼香ならばきっと真正面から撃ち砕くと答えるだろう。

 

「そして《融合》を発動。場のブレイズマンと手札のバブルマン、シャドー・ミストの3体で《V・HEROトリニティー》を融合召喚。トリニティーは融合召喚したターンのみ攻撃力が倍となる!」

 

《V・HEROトリニティー ☆8 ATK/2500→5000》

 

 3体のモンスターが渦を描き1体の戦士へと姿を変える。

 幻影の名を持ったHEROは力を増大させこの時のみ城壁さえも撃ち砕く力を得る。

 

「シャドー・ミストの効果でオーシャンを手札に加え《融合回収》を発動。《融合》とバブルマンを回収して再び《融合》を発動! 現れなさい《E・HEROアブソルートZERO》!!」

 

《E・HEROアブソルートZERO ☆8 ATK/2500》

 

 即座に手札に引きこんだ2体の水属性E・HEROを素材に出現するのは涼香のエースモンスター。場に巨大な氷柱が現れ中から白い氷結の英雄が参上する。

 

「バトルフェイズに入るわ! トリニティーは相手モンスターに3回まで攻撃できる。スターダスト、銀龍へと攻撃を行うけど効果を使うかしら?」

「どうせ1度だけ破壊を防いでも変わらないから使わねえよ」

 

 千鶴・沙羅 LP8000→5500

 

 強大な2撃がそれぞれの龍へと直撃する。

 強固な城壁はそれを上回る力によって崩壊した。

 

「さらに《E・HEROアブソルートZERO》で直接攻撃(ダイレクトアタック)!」

 

 千鶴・沙羅 LP5500→3000

 

氷結の英雄がその腕を振るわせ冷気を相手へと解き放つ。

 攻撃は命中。相手のライフは大きく削ることはできたが

 

(思ってたよりも数段強ぇ。けど仕込みは万全。ギサラ、お前の力を見せてやれ)

 

 場には2枚の伏せカードが残されている。

 しかも千鶴の相方は中学時代に地元を世紀末に変えたなんて噂が立つほどの実力を持つ『神憑りのギサラ』なのだ。たかだが、高レベルの融合HERO2体程度なんて目では無い。

 

「私は2枚のカードを伏せてターンエンド」

「おっしゃ! わたしのターンだね。スタンバイフェイズにちげちゃんの残した『リビングデッドの呼び声』を発動するよ」

 

 蘇るのは白銀の龍。

 舞い戻る龍は咆哮を上げ仲間を呼ぶ。応じるかのように墓地よりふつくしき青い眼を宿した純白の龍も場へと舞い降りた。

 

「銀龍はスタンバイフェイズに墓地からバニラモンスターを蘇生できる。スタンバイフェイズに蘇生し同時に青眼も蘇生するなんてやるな!」

「行くよ! わたしはライティを通常召喚。さらに《月の書》でアブソを裏側にして《異次元隔離マシーン》で除外! ライティーの効果でファイリーを出してトリニティーを破壊してダメージを与えるよ!」

「えっ……ちょ!?」

 

《フォーチュンレディ・ファイリー ATK/?→400》

 

 涼香・創 LP8000→5500

 

 速い。

 その異常なまでの速度に驚きを隠せなかった。

 

 メインフェイズに入ってから思考速度がどうなっているのかと問い詰めたくなるぐらいの早打ち。たった数秒で場のモンスターが消えてしまいダメージも負っている。しかもご丁寧にアブソルートZEROの効果も発動できないように処理された。

 

「ファイリー、銀龍、青眼で攻撃!」

 

 そして気が付けばライフは相手のモンスターの総攻撃力よりも下回っている。

 冗談じゃない。この攻撃を受ければ終わると言うかのように涼香は伏せカードを発動させる。

 

「くっ、だったら《神風のバリア─エア・フォース─》を発動。攻撃表示モンスター全てをバウンスさせて貰うわ!」

「だったら《ちゃうちゃうチャン》を発動っ! エア・フォースを無効に」

「くっ……!?」

 

 涼香・創 LP5500→5100→2600

 

 攻撃を防ぐ罠さえも無効にされた。

 ファイリー、銀龍の攻撃を連続で受けていく。そして、最後のとどめの青眼の攻撃を受けようとした瞬間だ。涼香はもう1枚の伏せカードを開く。

 

「さすがに洒落にならないわ。私は銀龍の攻撃を受けた瞬間に《ダメージ・ゲート》を発動! 墓地からバブルマンを蘇生。そして場と手札がこのカードだけのために2枚カードをドロー!」

 

 バブルマンの効果の処理を行うのは蘇生した《ダメージ・ゲート》が墓地に送られた後。残されたカードが無くなったがために発動条件を満たす。

 

「うおっ!? バブルマンのドロー効果を使われた! だけど青眼でバブルマンを攻撃!」

 

 白龍のブレスがバブルマンを木端微塵にする。

 凄まじい早打ちからの連撃。一瞬でも気を抜けない状況においてなんとか命辛々生き残れた感じだ。

 

「わたしはカードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

 まるで嵐が過ぎたような気分だった。

 沙羅の早打ちデュエルは凄まじいものだったが、それに匹敵するぐらいに凄まじい決闘者を涼香は知っている。

 

「さあ、俺のターンだぜ! ドロー!!」

 

 最後のターンプレイヤーは遊凪高校部長の新堂創。

 彼は同じ部員からプレイングやデッキの性質上、立ち上がりの遅いスロースターと称されているものの、本来は相手の強さを見るたびに燃え滾り呼応するように力を発揮できると語る。

 そして、今の彼は千鶴に涼香、沙羅のプレイングを見てゲージが満タンだ。

 

「最初から全速力で行くぜ! 俺は《手札抹殺》を発動し手札を全て捨て新しく5枚引く!」

 

 手札の交換を行うのはターンプレイヤーの創と前のターンのプレイヤーだった沙羅だ。それぞれ5枚と1枚の手札を効果するが、これで創の墓地には5枚のカードが溜まったこととなる。

 

「《XX(ダブルエックス)─セイバーボガーナイト》《(エックス)─セイバーパシウル》《XX(ダブルエックス)─セイバーフォルトロール》を場に出しさらに《(エックス)─セイバーアクセル》を蘇生!」

 

《XX─セイバーヴォガーナイト ☆4 ATK/1900》

《X─セイバーパシウル     ☆2 DEF/100》

《XX─セイバーフォルトロール ☆6 ATK/2400》

《X─セイバーアクセル    ☆1 DEF/100》

 

 いきなりトップギアだった。

 まるで沙羅の真似をしていると言わんばかりにモンスターを大量展開。引きの強さ、デュエルにおける独特の嗅覚、臨機応変に対応できる柔軟性、と決闘という一点だけならば誰にも引けを取らないセンスを持っているのだ。

 

「前のターンで銀龍が蘇生したことで効果は適応中だったよな。けれど、対象を取らない除外ならば問題無いってわけだ。俺はレベル2チューナーパシウルにレベル6フォルトロールとアクセルでシンクロ召喚を行う!」

 

 その合計レベルは9。

 最恐のシンクロモンスターを呼ぶ鍵を開く。

 

「現れろ《氷結界の龍トリシューラ》!!」

「うおっ! トリシュっ!?」

 

 これはさすがに沙羅もびっくりだ。

 三つ首の龍は眼を光らせそれぞれの獲物を狙う。

 

「トリシュの効果だ! 墓地からスターダスト、場の銀龍、そして手札1枚を除外するぜ。さらに《死者蘇生》を使い墓地からパシウルを蘇生! さらに《手札抹殺》で落とした《シャッフル・リボーン》をを除外。ボガーナイトを戻して1枚ドロー!」

 

 場を荒らして己は場を整えていく。

 

「今、引いた《サイクロン》を発動し《異次元隔離マシーン》を破壊。戻ってきた裏側のアブソを反転召喚しパシウルと共に《神樹の守護獣─牙王》へシンクロ召喚!」

 

《神樹の守護獣─牙王 ☆10 ATK/3100》

 

 融合モンスターさえも取りこみシンクロ召喚へと繋ぎ2体の超重量級モンスターが並ぶ。

 その刹那、相手の場へ猛吹雪が襲いかかった。

 

「ZEROは例えシンクロ素材となったとしても場から離れたのであれば《サンダー・ボルト》と同じ効果が発動するわ」

「いや、ギサラのターンに蘇生した青眼は銀龍の効果で破壊されねぇ!」

「わたしは《ディメンション・ゲート》でファイリーを除外。ライティーは破壊されるけど、効果でダルキーを特殊召喚!」

 

《フォーチュンレディ・ダルキー ☆6 ATK/?→2000》

 

 一番攻撃力の高い青眼を破壊できずに後続も呼ばれアブソルートZEROの効果は十分な効果は発揮せずに終わったが、創は『それで良い』と軽く笑った。不可解なのはライティーで呼ばれたダルキーが攻撃表示ということだが、攻めることには変わりは無い。

 

「お待ちかねのバトルフェイズだ! まずは牙王で青眼を攻撃!」

 

 千鶴・沙羅 LP3000→2900

 

 巨大な龍と巨大な獣がぶつかり合う。

 たった100の差であるが絶対的な差とでも言うかのように牙王が勝る。

 

「そして、トリシュでダルキーへと攻撃だ!」

「わたしは《ギブ&テイク》を発動! ちげちゃんの青眼を相手フィールドに特殊召喚してそのレベル分だけダルキーのレベルをアップさせる!」

 

 青眼のレベルは8。それをダルキーに足せば掟破りのレベル13。

 その攻撃力は5200とトリシュを遥かに上回る。

 

「やっぱりコンバットトリックか。させねえぜ! 《禁じられた聖槍》を発動し攻撃力を800下げ魔法・罠を受け付けなくさせる。当然、《ギブ&テイク》もな!」

 

 《ギブ&テイク》の恩恵を受けようとするダルキーに黄金の槍が飛来する。

 命中はせずともパワーアップの邪魔をさせては弱体化まで行われダルキーは恨めしく創の使用した《禁じられた聖槍》を睨む。

 

 千鶴・沙羅 LP2900→1400

 

「俺はこれでターンエンドだぜ」

 

 随分と場を荒らされた。

 さらにカウンターは失敗。オマケに青眼を守備表示とはいえ相手の場へと特殊召喚させてしまった。客観的に見ては大失敗なのかもしれない。

 

 だが、沙羅と千鶴は聖域学園の高1からの友人だ。

 すでに逆転の布石は打たれている。

 

「あたしのターンだ。まずは《マジック・プランター》で対象を無くしたリビデで2枚ドロー。《調和の宝札》で白石を墓地に2枚ドローし3枚目の青眼を手札に加えさらに《トレード・イン》でもう1度、2枚ドローだ」

 

 すさまじいドローの連打。

 1枚の手札が一気に3枚に。

 

「これで逆転の準備は整った。《所有者の刻印》を発動し青眼をあたしの場へと連れ戻す! そして《滅びの爆裂疾風弾(バーストストリーム)》を発動し相手モンスターを全滅させる」

「ぬおっ!?」

 

 『ただいま』と言わんばかりに主の元へ戻った龍は即座にブレスで元主になっていた創たちのフィールドを焼き尽くす。レベルを上回るシンクロモンスターも対象を取らない破壊効果によって全滅だ。

 

「けど、これで攻撃は出来ないわよね?」

「そうだな。だから《龍の鏡》を発動! 現れろ、《青眼の究極竜》!!」

 

《青眼の究極竜 ☆12 ATK/4500》

 

 一切の無駄が無い鮮やかなプレイングだ。

 そのふつくしき姿に神にさえ匹敵する力はまさに究極の一言だ。

 

「こいつで、終わりだ。アルティメット──」

 

 フィールドは焼け野原。

 魔法も罠も手札も無く受け止められる分のライフももう残されていない。

 

「──バーストォ!!」

 

 ほとばしる嵐に3つの首からそれぞれ弾ける閃光。

 創へと命中する手前に小さな丸い影が映り込み弾かれた。

 

「墓地から《虹クリボー》の効果を発動し特殊召喚した。直接攻撃までは届かない!」

「成程、《手札抹殺》のときか。あたしはもう何もできないターンエンドだ」

 

 各々が会心の一手を繰り広げる攻防。

 互いに攻めぎ合い防ぎ合う。一瞬でも気を抜けば終わってしまう状況の中で次は涼香のターンが回ってくるが。

 

「私はカードを2枚伏せてターンエンド」

 

 今、最も手札を持っている彼女が最も静かにターンを終えた。

 万策が尽きたのか、それとも──。

 

「わたしが引いたのは《RUM-七皇の剣(ザ・セブンス・ワン)》を発動!」

「七剣!? ならその前に《リビングデッドの呼び声》を発動し墓地からシャドー・ミストを特殊召喚!」

「エクストラデッキからシャイニングを呼び出して、《CNo104仮面魔踏士アンブラル》へとエクシーズチェンジ! 効果でその伏せカードを破壊!」

 

 沙羅の勝利のパターンであるアンブラルが出現する。

 魔法の波動がジグザグに動きながら伏せカードを撃ち抜こうと向かう。

 だが逆の涼香は安堵したような表情を見せた。

 

「ふぅ……アンブラルの可能性も考慮してよかったわ。手札の聖バリを捨て《超融合》を発動! わたしが融合するのは当然、アンブラル! 場のシャドー・ミストと闇属性のアンブラルを素材に《E・HEROエスクリダオ》を融合召喚!」

 

《E・HEROエスクリダオ ☆8 DEF/2000》

 

 相手の場をも巻き込む融合を行うことで除去と共に融合モンスターを生み出す。レベルは8でステータスも決して低くは無いというのだが、究極竜の前では壁モンスターとして出さざるを得ない。

 

「だったら究極竜でエスクリダオに攻撃っ!」

 

 3つ首から放たれるブレスが炸裂。

 後には塵一つ残らない。

 

「躱わされちゃったね。ターンエンド」

 

 攻撃は相手まで届かずにライフの変動は無い。

 激しい攻防により全てのプレイヤーは手札も持たずに伏せカードも存在しない。唯一、場にあるのは千鶴の《青眼の究極竜》のみ。次の創はこれから引くたった1枚のカードで立ち向かわなければならないわけだ。

 

「さあ、俺のターンだ! 《貪欲な壺》を発動し氷湊のバブルマン、ミスト、ブレイズマンとアブソ、トリニティーをデッキに戻し2枚ドローする!」

「ここでドローソースかよっ!」

 

 思わず千鶴は声を荒げる。

 これで使えるカードは1枚から2枚。

 

「さあ終幕だぜ! まずは《ミラクルシンクロフュージョン》を発動。墓地のシンクロモンスター、トリシュと牙王を素材とし《旧神ノーデン》を融合召喚しレベル2チューナーパシウルを蘇生。そして《大地の騎士ガイアナイト》へとシンクロ召喚!」

 

《大地の騎士ガイアナイト ☆6 ATK/2600》

 

 流れるようにたった1枚のカードからシンクロ召喚へと紡いだ。

 もっともガイアナイトは効果を持たず究極竜にはステータスも遥かに及ばない。

 

「そして《緊急テレポート》を発動するぜ。デッキから《調星師ライズベルト》を特殊召喚し効果によりそのレベルは3から6となる」

 

 これでレベル6のモンスターが2体。

 

「さあ現れろ! ランク6、勝利への希望《No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》!」

 

《No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ ★6 ATK/3000》

 

 終幕を飾るのに相応しき純白の装甲を纏い黄金の翼を持ち合わせる騎士が出現する。攻撃力は究極竜には及ばないものの効果は絶大。

 

「このカードがエクシーズ召喚に成功したことにより相手モンスターの攻撃力を0とする。楽しい決闘だったぜ! この一撃が最後の一撃(ラストアタック)だ!」

 

《青眼の究極竜 ATK/4500→0》

 

 最高峰の攻撃力をゼロへと無力化。

 終幕を飾るに相応しい剣撃が究極竜へと迫った。

 

 千鶴・沙羅 LP1400→0

 

 超過ダメージにより決着。

 青眼と同じ攻撃力3000の超過ダメージがまるまると通ったために衝撃も大きくわずかに見をたじろいでしまい全員が思わず目を閉じてしまう。

 団体戦形式の勝負で負けてはしまってもポジティブに次があると沙羅は迅速に気持ちを切り返る。まだフリーで対戦する約束も残っているから。

 

「負けちゃったね。でも、次は負けないよ! さあ誰がやるかな……ってあれ?」

 

 言葉を失った。

 今まで目の前で戦っていた二人がいなかったのだ。

 ついでに一一郎に瞬殺された晃の姿もいない。

 

「誰もいねえな。逃げたって、いうわけでもなさそうだし。どっか行ったのか?」

 

 まるで狐にでも化かされたような感じだ。

 だが、さきほどまで行っていたデュエルの熱気は残っており本物だ。彼らと対戦していた記憶だってまぎれもない真実だ。

 

「あるいは、帰るべき場所に帰ったのかもしれないな」

 

 彼らがいた場所をみつめて一郎が呟く。

 それにしても──

 

「負けちゃったけど、楽しかったね」

「ああ、次は絶対に負けねえ」

 

 また会えないかな。

 なんて気持ちで天井を見上げた。

 

 

 

 + + + + +

 

 

 

「もう、部活中にどこ行っていたんですか!」

「心配したんだよ」

 

 気が付けば遊凪高校の中庭。

 部室へと戻れば残されていた茜と有栖が頬を膨らませて拗ねていた。

 

「いやー、ごめんごめん。なんか覚えていないけど気付けば中庭にいたんだ。だけど聞いてくれよ。俺たちは先ほど伝説を目にしたんだ!」

 

 まるで子供のように無邪気に語る。

 拗ねていた茜もそんな彼の言葉に押されるかのように釣られてしまう。

 

「伝説、ですか?」

「ああ、それも初手エクゾだ。誰だったか覚えてないが、それで晃をふっとばしたんだぜ! 俺も今度、やってみようか」

「そんな簡単にやれるわけ……って、アンタなら出来るかもって思う時点で怖ろしいわね」

 

 普通に考えて狙ってできるはずが無い。

 というのに、彼だったらもしかしたら出来てしまうかもしれない。なんて思わせるぐらいの可能性が見えてしまうのだから彼とて常識外れだ。

 

「あれ、そういえば晃くんは?」

「え……?」

 

 言われて気付いた。

 その初手エクゾを受けた本人である晃がいないのだ。

 

「仕方ない。探しに行くしかないわね」

 

 溜め息まじりに涼香は来た道を巻き戻ろうとする。

 とりあえず説教は中断され晃を一同は探すこととなった。

 

 その後、晃は無事、中庭で倒れているのを回収された。

 

 

 

 

 




 今回は白井友紀さんの作品『神憑りのハートレス・サークル』とコラボさせていただきました。
 白井友紀さん、ありがとうございました。

 とにかく白井友紀さんの『神憑りのハートレス・サークル』はアイデアが凄まじく良いです。このコラボで出た初手エクゾや普通ではありえないようなデッキなどが出てきます。
 さらには、様々な人の心理描写は私今まで読ませていただいた小説には無いもの感じて面白いです。
 まだご覧になっていない方は一度でも『神憑りのハートレス・サークル』をご覧になることをオススメします。
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