空白刀の英雄譚   作:笹木地

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第一話 社会科見学

突如、世界各地で起きた異能覚醒現象

 

人々は突然のことに混乱し各地で能力者の暴徒化や迫害などが多発していた。

 

 

 

幾何かの年月が過ぎ人々は落ち着きを取り戻し今では

 

お互い手を取り合って生活している。

 

 

 

そんな能力者に囲まれた世界で水彩学園に通う高校二年生仙道日向人は非能力者、つまりはただの一般人として普通の暮らしを送るはずだった――――

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!!!」

 

 

 

激しく鳴り響く剣戟の音、対峙するのは黒い仮面の騎士。

 

そう只今絶賛戦闘中である!

 

誰に絶賛されているのかはわからないが。

 

 

 

「くらえ!!」

 

 

 

渾身の一撃を放つも容易く躱されてしまう。

 

 

 

「そんな剣捌きで誰かを護れるとでも?」

 

 

 

黒い騎士は俺の攻撃を軽くあしらいながら言った。

 

 

 

「黙れッ!」

 

 

 

半ばやけくそになりながらも刀を振るう、

 

すると黒い騎士は呆れながらも

 

俺の脳天に重い一撃を食らわす。

 

 

 

「...つまらないやつだ、悪いがここで眠ってもらう」

 

 

 

相手の攻撃を諸に受けてしまった俺は

 

そのまま眠るように倒れてしまう。

 

あぁ、なんでこんなことになってしまったんだろうか

 

朦朧とした意識の中でほんの数時間前のことを

 

思い返していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

季節は夏、その日の朝、仙道日向人は気持ちよさそうに

 

いびきをかきながら寝ていた。

 

 

 

「日向人ー遅刻しちゃうよー?」

 

 

 

今日も姉の元気な声で目覚める

 

やけに部屋が暗い思ったら今日は曇りだとても気分が重い。

 

 

 

「はやく着替えて朝ごはん食べてね?」

 

 

 

まだ完全に目覚め切れていない目をこすりながら気怠げに返答する。

 

 

 

「うん、今着替えるよ」

 

 

 

現在仙道家は5歳上の姉、仙道紫音ともう一人の姉の三人暮らしである。

 

両親は物心つく頃に家の火事に巻き込まれて亡くなっている。

 

 

 

今では紫音姉さんが家事が全くできない俺に代わって

 

洗濯掃除などといった家事全般をやってくれている。

 

もう一人の姉に関しては両親が亡くなってから

 

仕事に行くと言って家を出て行ってしまった。

 

それからかれこれ10年ほど家に帰ってきていない。

 

紫音姉さんにもう一人の姉は何の仕事をしているのかと

 

聞いたことがあったが『危ない仕事』とだけ言って

 

それ以上は教えてくれなかった。

 

 

 

「きょうの社会科見学の準備ちゃんとできてるの?」

 

 

 

寝起きでボーっとしながら朝飯を食べている俺に対して

 

心配そうな顔で話しかけてきた

 

そういえば昨日先生がそんなことをいっていた気がする

 

どこに行くんだっけか、あまり思い出せないが

 

確か施設内を見て最後に話を聞いて終わりだった気がする

 

あまり興味の内容だったので

 

ばれないようスマホをいじっていたのを覚えている

 

 

 

「話聞くだけなんだから準備もくそもないだろ」

 

 

 

姉はそれもそうかといったような顔をして支度をしている。

 

 

 

「それじゃあ、あたしは打ち合わせとかいろいろあるから先に出るけど、ちこくしないでよ!」

 

 

 

「行ってらっしゃ~い」

 

 

 

俺は姉を見送ると遅れて家を出発した―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

 

 

学園に向かう道中、普段見慣れぬ物に目が留まった。

 

きれいな白髪で背は低く、

 

一瞬少年か少女かわからないほどに整った顔立ち、

 

それでもすぐに男だと分かったそれは

 

うちの学園の男子用の制服を着ていたからだ。

 

 

 

しかしあんな目立つやつうちの学園にいただろうか?

 

新しく転入してきた子かもしれないので

 

声をかけてみることにした。

 

 

 

「やぁ!きみうちの学校の子だよね?今日転入してきたの?だいじょうぶ?」

 

 

 

しまったこれじゃあただのナンパだ。なんだやぁって。

 

 

 

「・・・・・」

 

 

 

しかもガン無視された。

 

確かにナンパまがいなことをされれば黙るのもわかる

 

だけどちょっとぐらい反応してくれてもよくないか?

 

 

 

「君、名前h・・あ!ちょっと!」

 

 

 

ショタにガン無視されたまま行ってしまった。

 

やはり声のかけ方がよくなかったんだろうか?

 

俺は気を取り直して学校へ向かった。

 

 

 

学校につくと教室内は普段より一段とにぎわっていた。

 

 

 

きっと今日来る案内役のせいだろう、

 

耳を澄ませて見れば予想道理そのことでもちきりだった。

 

 

 

「ねぇ!今日の案内役って『あの人』って本当!?」

 

 

 

「あぁ間違いねぇって!今日朝早く来たら『あの人』の

 

後ろ姿を見たんだって!」

 

 

 

「あぁ~やばい俺緊張してきた~!」

 

 

 

「わたしも~!」

 

 

 

クラス中がその話をしている、そんな光景に少しばかりの

 

遠足感を感じていると教室の後ろ側から聞きなれた声で

 

俺の名前を呼ぶ声がした。

 

 

 

「日向人!おはよう!今日遅いじゃん、なんかあったの?」

 

 

 

染谷暁

 

去年も同じクラスでよく遊びに行ったりする友人だ

 

 

 

「え、あ、うんちょっと寝坊しちゃってな。あはは。」

 

 

 

ショたっぽい奴にナンパまがいなことしてたなんて言えない。

 

 

 

「それより暁、今日の社会科見学ってどこに行くんだっけ?」

 

 

 

「はぁ!?当日に行き先忘れるやついるかよ!?あそこだよあそこ!え~っと、都内にある・・なんだっけか」

 

 

 

「おまえも忘れてんじゃねか・・・」

 

 

 

二人で笑い合っていると少し威勢のいい声が飛んできた

 

 

 

「対能力者犯罪取締組織ELEMENT

 

でしょ!もう二人ともちゃんとしてよね!」

 

 

 

雛森水樹

 

うちのクラス委員長。

 

水樹さんとは去年別のクラスだったが染谷暁と幼馴染らしく何度か話す機会があった

 

 

 

「あぁ~あそこか思いだした」

 

 

 

政府公認対能力者犯罪取締組織〈ELEMENT

 

それは能力者にあふれたこの世界で、

 

能力者による特殊犯罪を取り締まる組織だ。

 

組織は全9部隊で構成されており、

 

それぞれが様々な役割を果たしている。

 

 

 

実際、俺が先生の話を聞き流していた理由はここにある

 

ELEMENTには現在原則として能力者のみ

 

入隊を許されている。

 

公務員なのでそれなりの待遇はされるが

 

一般人にとっては縁のないことなのだ。

 

まぁだからって話を聞かないのはよくないんだけどね。

 

 

 

俺が通う水彩学園は一般人が大半なので

 

ここがなぜ見学の場所に選ばれたのかはわからないが

 

先生曰く、

 

『自分たちに関係がなくとも、社会の大事な部分を知ることは大事なことなのよ!』

 

だそう。

 

わからなくもないが別に知らなくても生きていけそうな気がする。

 

 

 

「しかし、日向人が寝坊なんて珍しいな」

 

 

 

「確かにそうね、なにかあったの?」

 

 

 

「い、いやそれは・・・」

 

 

 

ちょうどいいタイミングでチャイムがなり、先生が教室に入ってきた

 

 

 

「みんな〜今日の案内をしてくれる人を紹介したいから早く座ってね〜」

 

 

 

先生の言葉を皮切りにみんなの期待が上がっていく

 

確か案内役には隊員の人が就くと聞いた気がする。

 

だからみんなあれだけ盛り上がっていたのだろう。

 

 

 

いま日本ではELEMENT隊員達の人気が凄まじく、

 

隊長クラスともなると大物役者級の人気がある

 

みんなが話している話を聞くと

 

今日はかなりの有名人が来るらしい。

 

そうなるとあれだけ興味がない、

 

縁がないと言っていた俺でも少し緊張してきた。

 

 

 

みんなが着席し終わると先生は案内役の紹介を始めた。

 

 

 

「は〜い、静かに!今日の社会科見学を案内してくれるのはこの方です!どうぞ〜」

 

 

 

先生が声をかけると教室室のドアが開き一人の女性が入ってきた

 

赤く長い髪に赤い瞳、

 

脚が長く程よい肉付きだがよく絞まっている。

 

そして何より胸がでかい。デカイ。

 

そこらへんのモデルなんかよりも断然きれいだ

 

 

 

「朱音です、今日は皆さんよろしくお願いしますね♪」

 

 

 

彼女が自己紹介をしただけでクラス中から喝采が巻き起こる。

 

 

 

ELEMENT二番隊隊長、朱音

 

彼女は持ち前の美貌と類稀なる戦闘センスをもち

 

まさに才色兼備を体現したような女性である。

 

そのため彼女の人気は凄まじく、

 

彼女の能力、炎刀と、しなやかな戦闘スタイルから

 

人々から炎蝶と呼ばれることが多い

 

 

 

そんな超有名人が案内役なのだからクラスはお祭り騒ぎだ。

 

とくに男子は大騒ぎ、まぁあんなに綺麗な人が案内役なのだから

 

無理もないだろう。

 

しかし大騒ぎなのは男子だけでなく女子もだった。

 

 

 

「凄い!ほんとにが来てくれた!」

 

 

 

「やばい・・めっちゃ綺麗・・・かっこいい・・」

 

 

 

そんな歓声の中先生が案内役の紹介を続けた。

 

 

 

「は〜いみんな落ち着いて!それじゃあ、改めて!

 

対能力者犯罪取締組織ELEMENT二番隊隊長、朱音さんです!

 

みんな?迷惑かけちゃダメよ?」

 

 

 

「「「はーい」」」

 

 

 

すると朱音さんがニッコリ笑顔でみんなに言った。

 

 

 

「バスの時間までまだ少しあるから、

 

みんなの質問に答えちゃおっかな♪」

 

 

 

そんなこと言って大丈夫か?と

 

思った矢先にある男が真っ先に手を挙げた。

 

まずい、あいつはクラス一の変態だ。

 

あいつに質問させた瞬間、あいつの命が終わる。

 

朱音さんがあいつを指さないことひたすら祈る。

 

 

 

「はい♪じゃあそこの元気な君♪」

 

 

 

指してしまった。いや、さすがのあいつもそこまで馬鹿じゃないだろう

 

 

 

「はい!!!スリーサイズ教えてください!!!あとパンツの色も!!」

 

 

 

やりやがった。

 

あいつはわかっているのだろうか。

 

今ここにいる女子全員を敵に回したことを。

 

そしてこの様子がネットに流れてしまえば

 

過激派から命を狙われることになることを。

 

 

 

「はぁはぁ・・・」

 

 

 

ダメだ、あいつ何も考えてない

 

自分の欲に忠実なただの性獣だ。

 

 

 

「ほんっとサイテー」

 

 

 

「おいおい、死んだわあいつ」

 

 

 

「ナイス!!」

 

 

 

クラスの所々から声が漏れる。

 

 

 

「…え~っと~スリーサイズは~上から、88.56.79だよ♪

 

それとパンツの色は赤かな♪」

 

 

 

いや、答えるのかよ。

 

クラスの大半が鼻血吹いたぞ

 

先生も慌てふためいてしまっている。

 

 

 

「さ、さぁ、次の質問に行きましょうか、朱音さん?」

 

 

 

「そうね♪じゃあなた!」

 

 

 

と、次々と生徒たちの他愛ない質問に答えていく

 

彼氏は、だとか

 

好きなタイプは、とか

 

どこのシャンプー使ってるんですか、とか

 

そんなよくある質問だ。

 

そんな質問コーナーも終わりに差し掛かったころ

 

朱音さんと目が合った。

 

 

 

「それじゃあ最後はそこの君!」

 

 

 

「え?おれですか?」

 

 

 

当てられてしまった、どうするかとくに質問もないし

 

適当に断っておこう

 

 

 

「僕は大丈夫です」

 

 

 

「まぁまぁそんなこと言わずに♪」

 

 

 

どうするか、何も思いつかない。

 

頭を悩ませているとあることをおもいだした。

 

実は先ほどから妙な違和感を感じていたのだ。

 

なんだか初めて会った気がしない

 

それに妙な懐かしさも感じる。

 

俺はそのもしかしたらという思いを質問に乗せてみた

 

 

 

「朱音さんの・・・苗字は何ですか?」

 

 

 

彼女が苗字を名乗らなかったのには理由がある

 

ELEMENTでは原則、苗字の公表を禁止しているのだ。

 

その理由は個人の家族への危険を避けるためだ。

 

 

 

過去、ELEMENTに取り締まりをうけ、逆恨みした罪人が

 

担当した隊員の家族を皆殺しにするという事件があった。

 

それに対して政府がとった行動が隊員達の苗字の公表禁止だった。

 

おもえばまぁまぁやらかした質問だった気がする

 

俺がその質問をすると朱音さんは少し驚きはしたものの

 

すぐに表情を直し涼しげに言った。

 

 

 

「・・・今はまだ無理だけどもうちょっと私と仲良くなれたら教えてあげてもいいよ♪」

 

 

 

「・・・ありがとうございます。」

 

 

 

またもあたふたしている先生が質問コーナーを締め

 

送迎のバスへ向かうよう促す。

 

 

 

「さ、さぁみんな!質問コーナーは終わり!

 

送迎のバスが待ってるからみんな校門にあつまって!」

 

 

 

先生の指示に従って生徒たちが教室から流れていく。

 

朱音さんのバスも一緒なのでバスへ向かう道中

 

ずっと生徒たちに囲まれていた。

 

その集団に一瞬だけ目をやると朱音さんと目が合った

 

まさか、見られていた?いや、考えすぎだろう。

 

そう思い、気にせず歩いていると突然悪寒を感じた。

 

 

 

「なんだ!?」

 

 

 

「ん?どうしたんだよ日向人」

 

 

 

「あぁ暁か、いやぁ突然寒気がしてさ」

 

 

 

「なんだ風邪か?うつすなよ?」

 

 

「うーん熱はないんだけどなぁ」

 

 

 

そんな色々なモヤモヤを抱えながら社会科見学へと向かった。

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