週明けの月曜日。それは1週間の内で最も憂鬱な日。おそらく子供から大人までの殆どの人たちが、これから始まる1週間に溜め息を吐き、そして前日まで幸せだった休日を想い浮かべてしまうだろう。僕、南雲ハジメも当然その一人である・・・その理由として徹夜でゲームをしていた事と・・・避けようのない事情がある。始業のチャイムが鳴るギリギリの時間に自分のクラスの扉を開ける僕。その瞬間、教室の男子生徒の大半から舌打ちやら睨みやらを頂戴する。女子生徒も友好的な表情をする者はいない。無関心ならまだいい方で、あからさまに侮蔑の表情を向ける者もいる。だがそんなものどうでも良いので無視して自分の席に向かって歩いていると四人の男子生徒がニヤニヤしながら近寄って来た。
檜山「よぉ、キモオタ! また、徹夜でゲームか? どうせエロゲでもしてたんだろ?」
斎藤「うわっ、キモ~。エロゲで徹夜とかマジキモイじゃん~」
一体何が面白いのかゲラゲラと笑い出す男子生徒達。声を掛けてきたのは檜山大介、毎日飽きもせず日課のようにハジメに絡む生徒の筆頭だ。近くでバカ笑いをしているのは斎藤良樹・近藤礼一・中野信治の三人で、大体この四人がセットになって頻繁に僕に絡んでくる。檜山の言う通り僕はオタクだ・・・けどキモオタと罵られるほど身だしなみや言動が見苦しいという訳ではない。見た感じ別に普通だし身だしなみは人並みに整えてるつもりだ。コミュ障という訳でもない。陰気でもない。ただ単純に創作物、漫画や小説、ゲームや映画というものが好きなだけだ。そう・・・誰しも趣味は様々だ・・・それをバカにする資格はないんじゃないか?確かに世間一般ではオタクに対する風当たりは確かに強くはあるが、本来なら嘲笑程度はあれど、ここまで敵愾心を持たれることはない。では、なぜ男子生徒全員が敵意や侮蔑をあらわにするのか。それが先ほど言った避けようのない事情である・・・それは・・・
香織「南雲くん、おはよう!今日もギリギリだったね。もっと早く来ようよ!」
ハジメ「ああ、おはよう。白崎さん・・・。」
香織「うん!おはよう!」
彼女の名前は白崎香織さん。学校では二大女神と言われ男女問わず絶大な人気を誇る途轍もない美少女だ。いつも微笑の絶えない彼女は、非常に面倒見がよく責任感も強いため学年を問わずよく頼られる。それを嫌な顔一つせず真摯に受け止めるのだから高校生とは思えない懐の深さだ。白崎さんが僕に声をかけて来るたびに無言の圧力が押し寄せる
『何でゲームオタクのあいつが!?』『白崎さんに面倒掛けておいてなんで直そうとしないの?』
好い加減うんざりする・・・・しかし僕にも妥協できない座右の銘がある。”趣味の合間に人生”これに尽きる。ちなみに父はゲームクリエイター、母は少女漫画家、二人の仕事の手伝いをしているため人生設計は問題無い。そして、いやいやでも学校に来る理由はもう一つある・・・この学校で唯一無二と言っていい親友に会う為でもあるからだ。
ガラ!
「南雲くんおはよう。毎日大変ね」
「っていうかお前もお前だ。そんなやる気ない奴には何を言っても無駄と思うけどなぁ」
香織「そんな事無いよ。」
ハジメ「あぁ・・・おはよう、八重樫さん、坂上くん。はは、まぁ、自業自得とも言えるから仕方ないよ」
教室に入ってきた三人の中で唯一挨拶をした女子生徒の名前は八重樫雫さん。白崎さんの親友で幼馴染、。ポニーテールにした長い黒髪がトレードマークである。切れ長の目は鋭く、しかしその奥には柔らかさも感じられるため、冷たいというよりカッコイイという印象を与える。彼女の実家は八重樫流という剣術道場を営んでおり、彼女自身、小学生の頃から剣道の大会で負けなしという猛者である。次に投げやり気味な言動の男子生徒は坂上龍太郎君。短く刈り上げた髪に鋭さと陽気さを合わせたような瞳、190センチメートルの身長に熊の如き大柄な体格、見た目に反さず細かいことは気にしない脳筋タイプである。・・・そして、アニメ機動戦士ガンダムUCに登場するフル・フロンタルの仮面を付けたイケメンが最後に僕に近づく。
コッコッコ!
「勝利の栄光を君に!」
ハジメ「・・・ップ!フル・フロンタルのつもり?それはシャアの台詞だよ。天之河くん。」
光輝「あれ?・・・そうだったかな?っていうか・・・前々から光輝で良いって言ってるだろ?ハジメ。」
仮面を外して気さくに僕に話しかける彼の名前は天之河光輝君。容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能の完璧超人だ。小学生の頃から八重樫さんと同じ八重樫道場に通う門下生で、全国クラスの猛者だ。八重樫さんと白崎さんとは幼馴染であるらしい。惚れている女子生徒が数多くいるそうだが、いつも一緒にいる八重樫さんや白崎さんに気後れして告白に至っていない子は多いらしい。それでも月二回以上は学校に関係なく告白を受けるというのだから筋金入りのモテモテ君だ。僕とはまさに天地の差程もある人間であり、一生関わる事が無いと思っていた・・・しかし、彼が僕と同じく趣味が創作物・漫画・小説・ゲーム・映画という共通点があるという事を偶然知り、それ以来妙にウマが合うようになった。必然的に光輝君と仲良くなった僕は趣味の話で休み時間は盛り上がり、暇な日は一緒にゲームをやる仲にまで発展した。これが僕にとって・・・親友と言える存在だ。
光輝「そうそうハジメ。俺、実は買っちゃったんだ・・・例の・・・。」
ハジメ「え・・・・・・。・・・・買ったってまさか・・・HGUC 1/144 NZ-999 ネオ・ジオングを!?いくらした!?」
光輝「45000円。・・・貯金おろして無理したよ。今日はお父さんとお母さんの仕事の手伝いは無い日だろ?ウチに来て一緒に作ろう。」
ハジメ「うん!行く行く!」
光輝「ついでに新しく始まったガンダムシリーズも一緒に見よう。」
ハジメ「良いね!まだ見てなかったんだ!」
雫「またそんなガラクタ買って・・・。」
ハジメ・光輝「ガラクタ!?」
光輝「雫、今のは聞き捨てならないな・・・謝りなよ。」
雫「嫌よ。」
ハジメ「僕も許せない・・・謝って。」
雫「はいはい、分かった分かった。ごめんさいね。」
光輝「よかったら雫も作りに来る?」
雫「結構よ、お二人でどうぞごゆるりと。」
香織「じゃあ今回も私が・・・!」
光輝「香織は却下だよ。前に俺とハジメと三人で作った時、最後のパーツの取り付けに失敗してデススターを落っことして木端微塵に破壊したよね・・・。」
香織「えぇ~・・・そうだっけ・・・。」
光輝「その後も手伝いに来たけど、HGマジンガーZの羽をポッキリ折ったりロケットパンチを飛ばしてどっかにやっちゃったよね・・・。」
香織「うぅ~古傷を掘り返さないで・・・。」
ハジメ「うん・・・白崎さんはいいかな・・・今回のプラモはレゴとはワケが違うから難しいと思うよ・・・。」
香織「そんなぁ~南雲君までぇ~・・・ショボン。」
雫「まぁまぁ、誰しも得手不得手があるわよ。」
龍太郎「ッチ!・・・おい光輝!そんな奴とつるんで楽しいのかよ・・・。」
光輝「あぁ、楽しいよ。」
怪訝そうな龍太郎に対し迷いなく応える光輝。そうこうしている内に始業のチャイムが鳴り教師が教室に入ってきた。そして、いつものようにハジメが夢の世界に旅立ち、当然のように授業が開始された。その様子を見て香織と光輝が微笑み、雫はある意味大物ねと苦笑いし、男子達は舌打ちを女子達は軽蔑の視線を向けるのだった。・・・そして、学生の楽しみの一つである、お昼ご飯の時間がやってきた。
ハジメ「いただきまーす・・・ジュルル・・・ご馳走様。(さて・・・どっかに消えてお昼寝・・・あ!)」
香織「南雲くん。珍しいね、教室にいるの。お弁当? よかったら一緒にどうかな?」
ハジメ「あ・・・良いよ、もう済んだから・・・天之河くんたちと一緒に食べなよ・・・。」
香織「えっ!お昼それだけなの?ダメだよ、ちゃんと食べないと!私のお弁当、分けてあげるね!(よし、お弁当をあげると同時にちょっと胸元をチラリと見せて・・・スカートも短く・・・これで良いの?光輝君。)」
ハジメ「う・・・!(何でリボン取って胸の谷間見せようとしてんのこの子?・・・太腿もモロに見せて来るし!・・・天之河くんの仕業だなぁ・・・!!)」
光輝「・・・良いぞ香織・・・攻めて攻めて攻めまくるんだ・・・胸を見せて、太ももを見せて。そうだ!そのまま目標を破壊するんだ・・・。」
ハジメに対する香織の仄かな想いに気づいている光輝は、彼女に対しハジメを落とす様々な策を授けていた。とにかく自分のセクシーさを強調しろ!胸を見せろ!肌を見せろ!攻めろ!このアドバイスで香織の恋を応援する。言う通りにハジメを誘惑する香織の姿を見てガッツポーズを見せたそんな光輝の頭を小突く雫。
光輝「痛!」
雫「香織に何教え込んでるの!・・・っというか破壊してどうするの・・・。」
龍太郎「ッケ!」
檜山「(っちムカつく・・・あのキモオタ後でヤキ入れて・・・。)」
光輝「ギロリ!!!!」
檜山「う・・・!」
香織がハジメに話しかけてから約数分、再び不穏な空気が教室を満たし始める。特に面白くないと感じた檜山はお昼ご飯の後にまた絡もうと考えるも、そうはさせじと光輝が殺意の籠った視線でギロリと檜山を睨みつけ硬直する。そしてハジメの隣にそっと近寄り光輝は耳打ちする。
ハジメ「あ・・・。」
光輝「ボソ(周りは気にしなくていいよ。彼女の愛妻弁当タップリ食べな。)」
ハジメ「あはは・・・愛妻って・・・。パク・・・。」
香織「どう?」
ハジメ「うん・・・美味しい。」
香織「本当!良かった!・・・チラ!(どう?)」
光輝「ボソ(完璧だ!)」
香織「ボソ(やった!)」
ハジメは心の中で悲鳴を上げるが、光輝と気遣いと香織の優しさに触れ思わず弁当を食べた瞬間、彼女に対しほんの少しだけ心を開くようになる。光輝と香織はやったと言わんばかりにアイコンタクトを取りながらお互いにサムズアップを交す。ようやくハジメの学校生活にほんの少しだが希望が見えてきた・・・しかし、その瞬間に事件が起きる。教室全体に魔方陣が突如敷かれ、強烈な光が発光、生徒全員が注視する。その魔法陣は徐々に輝きを増していき、一気に教室全体を満たすほどの大きさに拡大した。
「皆!教室から出て!」
教師である畑山愛子がようやく事の重大さを把握し叫ぶも、時すでに遅かった。数秒・数分後、光によって真っ白に塗りつぶされた教室が再び色を取り戻す頃、そこには既に誰もいなかった。乱雑された椅子に、食べかけのまま開かれた弁当、散乱する箸やペットボトル、教室の備品はそのままにそこにいた人間だけが姿を消していた。
暇があったらまたちょこちょこ投稿するかも・・・