ありふれた職業と選ばれた勇者で世界最強   作:わったさん

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ハジメとの再会が怖いような嬉しいような


反逆者の住処

光輝「ここ・・・何だ?」

香織「さぁ・・・。」

雫「天国?」

龍太郎「まだ死んでねぇぞ・・・。」

 

ドアの先を開けた光輝達。その先には広大な空間が広がり、草木が生い茂ったまるで未知の世界であった。まず、目に入ったのは太陽だ。もちろんここは地下であり本物ではない。頭上には円錐状の物体が天井高く浮いており、その底面に煌々と輝く球体が浮いていたのである。僅かに温かみを感じる上、蛍光灯のような無機質さを感じないため、思わず太陽と称したのである。次に、注目するのは耳に心地良い水の音。扉の奥のこの部屋はちょっとした球場くらいの大きさがあるのだが、その部屋の奥の壁は一面が滝になっていた。天井近くの壁から大量の水が流れ落ち、川に合流して奥の洞窟へと流れ込んでいく。滝の傍特有のマイナスイオン溢れる清涼な風が心地いい。よく見れば魚も泳いでいるようだ。もしかすると地上の川から魚も一緒に流れ込んでいるのかもしれない。川から少し離れたところには大きな畑もあるようである。今は何も植えられていないようだがその周囲に広がっているのは、もしかしなくても家畜小屋である。動物の気配はしないのだが、水、魚、肉、野菜と素があれば、ここだけでなんでも自炊できそうだ。緑も豊かで、あちこちに様々な種類の樹が生えている。

 

光輝「(敵の気配がまるでない・・・水も食料も完備・・・あまりにも快適すぎる場所だ・・・本当にここはあの世か?)」

香織「・・・!・・・見て、あの先に屋敷がある。」

龍太郎「でけぇ家だな・・・。」

雫「油断せずに入りましょう。」

 

石造りの屋敷は全体的に白く石灰のような手触りだ。全体的に清潔感があり、エントランスには、温かみのある光球が天井から突き出す台座の先端に灯っていた。三階建てらしく、上まで吹き抜けになっている。取り敢えず一階から見て回る。

 

雫「随分豪勢な作りの家ね・・・。」

龍太郎「台所もあるぜ・・・。」

 

暖炉や柔らかな絨毯、ソファのあるリビングらしきで台所とトイレを発見した一向。台所をしばらく確認した光輝はある発見をする。

 

光輝「!・・・。・・・ここで誰かが料理をしていた形跡がある。しかもごく最近だ。」

香織「え!?」

光輝「洗った食器が綺麗に並べられている上にまだ水滴が付着している・・・それに、ゴミ箱を見てみたらまだ腐りきってない食材の皮や骨が捨てられていた。」

雫「じゃあ、南雲君がここに住んでたってこと!?」

光輝「かもしれない・・・もう少し調べよう。」

 

より警戒しながら一行は進む。更に奥へ行くと再び外に出た。そこには大きな円状の穴があり、その淵にはライオンぽい動物の彫刻が口を開いた状態で鎮座している。彫刻の隣には魔法陣が刻まれている。試しに魔力を注いだ光輝は、ライオンの口から勢いよく温水が飛び出した事を確認する。

 

香織「お風呂ぉおおおおおおおお!!!!」

雫「ほんと・・・!」

光輝「本物だ・・・本物のお湯だ。」

龍太郎「そういや・・・俺ら今めっちゃくせぇよなぁ・・・。」

 

最初の頃は余裕もなく体の汚れなど気にしていなかったが、余裕ができると全身のカユミや垢が気になり始めていた。特に女性陣は思わず頬を緩め、お風呂に入りたがりそうな雰囲気だ。しかし、調査が済むまではお預けと光輝は全員を嗜める。

 

光輝「ここは・・・書斎か・・・。」

雫「駄目ね・・・何かしらの封印がされてるわ。」

 

それから、二階で書斎や工房らしき部屋を発見した。しかし、書棚も工房の中の扉も封印がされているらしく開けることはできなかった。仕方なく諦め、探索を続ける。そして、三階の奥の部屋に向かった。

 

光輝「三階はこの部屋のみか・・・。」

 

三階は一部屋しかない。奥の扉を開けると、そこには直径七、八メートルの今まで見たこともないほど精緻で繊細な魔法陣が部屋の中央の床に刻まれていた。その魔法陣の向こう側、誰も座っていない豪奢な椅子が一つあるだけだった。魔法陣しかないこの部屋・・・寝室やリビングではなく、この場所だけ魔法陣しかないのはどんな意図なのか。

 

雫「・・・見るからに怪しいわね・・・どうする光輝?」

光輝「3人ともここで待っててくれ。何かあったら頼む。」

龍太郎「気を付けろよ。」

 

光輝はそう言うと、魔法陣へ向けて踏み出した。魔法陣の中央に足を踏み込んだ瞬間、カッと純白の光が爆ぜ部屋を真っ白に染め上げる。まぶしさに目を閉じる4人。やがて光が収まり、目を開けた一行の目の前には、黒衣の青年が立っていた。

 

光輝「!」

オスカー「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?・・・ああ、質問は許して欲しい。これはただの記録映像のようなものでね、生憎君の質問には答えられない。だが、この場所にたどり着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか・・・メッセージを残したくてね。このような形を取らせてもらった。どうか聞いて欲しい。・・・我々は反逆者であって反逆者ではないということを・・・。」

光輝「・・・どういう事だ?」

雫「?」

 

そうして始まったオスカーの話。それは狂った神とその子孫達の戦いの物語。神代の少し後の時代、世界は争いで満たされていた。人間と魔人、様々な亜人達が絶えず戦争を続けていた。争う理由は様々だ。領土拡大、種族的価値観、支配欲、他にも色々あるが、その一番は神敵だから。今よりずっと種族も国も細かく分かれていた時代、それぞれの種族、国がそれぞれに神を祭っていた。その神からの神託で人々は争い続けていたのだ。だが、そんな何百年と続く争いに終止符を討たんとする者達が現れた。それが当時、解放者と呼ばれた集団である。彼らには共通する繋がりがあった。それは全員が神代から続く神々の直系の子孫であったということだ。そのためか解放者のリーダーは、ある時偶然にも神々の真意を知ってしまった。何と神々は、人々を駒に遊戯のつもりで戦争を促していたのだ。解放者のリーダーは、神々が裏で人々を巧みに操り戦争へと駆り立てていることに耐えられなくなり志を同じくするものを集めたのだ。彼等は、神域と呼ばれる神々がいると言われている場所を突き止めた。解放者のメンバーでも先祖返りと言われる強力な力を持った七人を中心に、彼等は神々に戦いを挑んだ。しかし、その目論見は戦う前に破綻してしまう。何と、神は人々を巧みに操り、解放者達を世界に破滅をもたらそうとする神敵であると認識させて人々自身に相手をさせたのである。その過程にも紆余曲折はあったのだが、結局、守るべき人々に力を振るう訳にもいかず、神の恩恵も忘れて世界を滅ぼさんと神に仇なした反逆者のレッテルを貼られ解放者達は討たれていった。最後まで残ったのは中心の七人だけだった。世界を敵に回し、彼等は、もはや自分達では神を討つことはできないと判断した。そして、バラバラに大陸の果てに迷宮を創り潜伏することにしたのだ。試練を用意し、それを突破した強者に自分達の力を譲り、いつの日か神の遊戯を終わらせる者が現れることを願って。長い話が終わり、オスカーは穏やかに微笑む。

 

オスカー「君が何者で何の目的でここにたどり着いたのかはわからない。君に神殺しを強要するつもりもない。ただ、知っておいて欲しかった。我々が何のために立ち上がったのか。・・・君に私の力を授ける。どのように使うも君の自由だ。だが、願わくば悪しき心を満たすためには振るわないで欲しい。話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが自由な意志の下にあらんことを」

光輝「グ・・・ウ!?」

 

そう話を締めくくり、オスカーの記録映像はスっと消えた。同時に、光輝の脳裏に何かが侵入してくる。ズキズキと痛むが、それがとある魔法を刷り込んでいたためと理解できたので大人しく耐えた。やがて、痛みも収まり魔法陣の光も収まる。光輝はゆっくり息を吐いた。

 

雫「光輝!」

光輝「ああ、平気だ・・・それにしても、一気にスケールのでかい話になってきた・・・。今の話、皆聞いたか?」

香織「うん・・・。」

龍太郎「っち!・・・ふざけやがって。要は神様とやらのお遊びに俺達は付き合わされたってこったろ?何が至上の神”エヒト様”ってんだ・・・良い迷惑だぜ。」

雫「教会を裏切ったのは・・・案外良い判断だったかもしれないわね・・・イシュタルさんは神エヒトに相当崇拝していたのだから、良いように操られるところだったわ。」

光輝「あぁ・・・。・・・それと、さっきの真相に加えて神代魔法って魔法も覚えたみたいだ。」

龍太郎「神代魔法?」

光輝「あぁ、神代に使われていた現代では失伝した魔法・・・らしい。この床の魔法陣が、神代魔法を使えるように頭を弄られた・・・そんな感じだった。」

雫「大丈夫なの?」

光輝「あぁ・・・この魔法は生成魔法・・・。魔法を鉱物に付加して、特殊な性質を持った鉱物を生成出来る魔法みたいだ。」

香織「じゃあ、アーティファクトが作れるって事!?・・・凄い・・・!」

光輝「今の俺は錬成師の天職も追加されてる・・・上手くすれば俺も・・・。・・・ん?」

香織「どうかした?」

光輝「椅子の隅に何かある・・・。」

 

椅子の影に隠れてよく分からなかったが、目を凝らして見ると長方形の黒い金庫が置かれている事に気が付く光輝はそれを持ち込む。暗証番号でロックされた現代の金庫である事からハジメの錬成で残したものだと直ぐに感付く。

 

香織「やっぱり南雲君ここに・・・!」

龍太郎「番号分かるか?」

光輝「・・・。」

 

ハジメ『色んなガンダム見たけど、僕的には一番の名作はガンダムOOかな。』

光輝『俺はどちらかと言えばGガンダムかガンダムビルドファイターズだな。・・・ちなみにハジメはガンダムOOのどの話が好き?』

ハジメ『忘れもしない、2007年3月15日放送の”世界を止めて”。ロックオンが死んだときは本当に哀しかったよ・・・。』

 

光輝「2、0、0、7、0、3、1、5・・・。」

 

異世界に飛ばされる前にハジメと最近話した話題について思い出した光輝は、印象に残っている年月日をそのまま暗証番号に打ち込む。金庫はガチャリと音がした瞬間にドアが開かれる。中には4人分の指輪と十字の模様が彩られた指輪2種類とメモ書き、そしてボイスレコーダーに似た機械が入っていた。

 

龍太郎「なんだこりゃ?」

雫「見た所、指輪みたいね・・・このメモ書き・・・指輪について書かれてるわ。」

光輝「これは・・・ボイスレコーダー?」

 

ボイスレコーダーを弄った光輝は、二日前に記録された一件の音声記録を発見する。カチリと再生した瞬間に発生された声は、4人の友達である南雲ハジメからであった。

 

ハジメ『反逆者の住処によく来たな、お前等。』

光輝「!・・・ハジメ。」

香織「南雲君!!」

ハジメ『他のクラスの連中は信用ならないが・・・お前等4人なら、多分俺を探しにここに来ると信じてこのメッセージを残す事にした。神代魔法、それに解放者についてはオスカーから一通り聞いた事を前提に、これからの俺の考えと動向をお前等に教えて置く。俺は、この世界がどうなろうと知った事じゃない・・・故郷に帰る方法を探す事だけを考えて前に進む・・・それだけだ。』

 

ハジメの残したメッセージを注意深く聞く4人。どこか口調が荒々しくなったことに疑問を持つがそんな事はさしたる問題ではなかった。ハジメは更に話を続ける・・・書斎で見つけた七大迷宮、残りの神代魔法について簡単に説明しどの書物に記されているのかを教えた後、ハジメは今後の動向について説明する。

 

ハジメ『・・・故郷に帰る方法を探す為に、俺は他の七大迷宮の攻略に乗り出し、残りの神代魔法も手に入れるつもりだ。俺達をこの異世界に召喚した魔法に関しても、恐らくだがこの神代魔法に大きく関係すると思う。お前等も帰る方法を探すのなら、七大迷宮攻略を大きく薦める。この最下層まで来れたお前らの実力なら、他の迷宮攻略も充分可能であることを俺は信じている。・・・金庫には俺が複製した指輪型のアーティファクトが入っているはずだ。使い方は、紙に書いて一緒に入れておく。・・・本当だったら、お前らが来るのを待つことも考えたが・・・なんていうか・・・今俺・・・結構変わっちまってるから・・・。再会して・・・俺を・・・嫌いになるんじゃないかって・・・そう思って・・・。・・・あぁ止めだ!!止め止め!!!とにかく、元の世界に帰る方法があるかもしれないのにいても立ってもいられないから出発した!!そういう事にして置いてくれ!!・・・俺が複製したアーティファクトの一つ、”宝物庫”の中にはささやかだが”贈り物”を用意した。使ってみてくれ・・・。・・・天之河、八重樫、坂上、白崎。』

「!」

ハジメ『助けに来てくれてありがとな。一人で出て行った事について不満がってるかもしれないが、迷宮攻略に乗り出すのなら、また会える日がくるかもしれない・・・そうだろ?・・・帰る方法を見つけたら、一緒に帰ろうぜ。俺にとって、クラスメートの中で唯一大切な存在は・・・お前らだけだ。』

香織「南雲君・・・。」

光輝「(この過酷な迷宮を乗り越えたんだ・・・多少なりともあいつも変わったかもしれないな・・・。でも、本質的なあいつの優しい心は、昔のままだ。・・・ハジメ・・・絶対にまた会おう。)」

ハジメ『あぁそうそう。この迷宮で面白い奴にもめぐり合えた。声だけだが一応紹介しておく・・・名前は・・・。』

ユエ『初めまして・・・私、ユエ・・・吸血鬼族の生き残りでハジメとは将来を誓い合った仲。』

ハジメ『お、おいユエ勝手に!!』

ユエ『だって本当のこと・・・。』

「!?」

龍太郎「ず・・・随分可愛らしい声だな・・・。」

雫「そ・・・そうね。・・・!?・・・か・・・香織。」

香織「なにぃ?」

光輝「目が怖い・・・ちょっと落ち着こうよ。」

香織「何言ってるの光輝君、私はいつも冷静だよ?・・・クールだよ?・・・見て分からない?」

光輝「(見て分かるから落ち着こうって言ってるんだよぉおおおお!)」

 

ユエの声がした瞬間、般若のような面影と殺意がこもった声色に変わる香織に恐怖する3人は声を震わせる。そんな香織の状況は露知らず、ユエは話を続ける。

 

ユエ『ハジメから4人のことは大体聞いている。私からもお礼を言いたい・・・ここまでハジメのために来てくれてありがとう。でも、ある人に一言言っておく・・・白崎香織って女に向けて。』

 

光輝・雫・龍太郎「(よりによって名指し!!??)」

香織「へぇ~なにかなぁ・・・?」

 

ユエ『ハジメはもう私のものだから、ちょっかい出さないで。言いたい事はそれだけ・・・それじゃ、今度はハジメのあくまで一人の”ト・モ・ダ・チ”としてまた会おうね・・・さようなら。もういいよ、ハジメ。』

ハジメ『ん・・・んん!!・・・まぁそういうことだ。俺が迷宮攻略できたのもユエのお陰と言っても良い。また再会するときがあったらじっくり紹介してやる。地上へ戻る方法は十字の文様を彩ったオルクスの指輪を使えば戻れる。七大迷宮の事やこの施設の事も書斎を調べれば幾らか分かるはずだ。工房と書斎に入るには同じくオルクスの指輪を使え・・・それじゃあな。』

 

とんでもないオチを付けて再生はここで終了する。恐らくユエはハジメから光輝達のことを聞いて、香織がハジメに恋心を抱いていることを直ぐに察して残したメッセージだと思われる。その瞬間、怒気を含めた暗黒のオーラを垂れ流しながら香織は冷ややかな笑顔を崩さずにいた。

 

香織「ウフフ・・・再会がとっても楽しみだねぇ・・・ウフフフフフフフフ!!」

光輝「んん・・・まぁまぁ!!とにかく今は・・・ハジメは無事だった!そして地上にも直ぐに戻れる!!それが重要だろ!ね?雫!」

雫「そ、そうそう!!そうよ!!その通り!!」

龍太郎「なぁ、指輪確認してみようぜ!!あいつが残した贈り物ってのが気になるしよ!!」

光輝「それだよ!龍太郎!それそれ!!」

 

香織を抑えようと必死に話題を摩り替える3人。そして、ハジメが残した指輪”宝物庫”を外で使ってみることにした。”宝物庫”、それは魔力を流し込むことでありとあらゆる物を出し入れできる保管庫のようなものである。本来であれば魔力を込めなければ使えない代物ではあるがハジメによって改造が施されており、指輪自身が弱い魔力を半永久的に保持し続けている為、魔力を持たない人間でも使える仕様となっていた。早速4人は宝物庫を使ってみる。魔法陣が現れた瞬間、魔力駆動式のバイク”シュタイフ”が4人分出現する。本来であれば魔力を注ぎ込まなければ動かないバイクであるものの、このバイクもハジメによって4人用に改造が施されていた。カートリッジ形式のこのバイクは、誰かがカートリッジに魔力を溜め込めば魔力を使えずともカートリッジを燃料にバイクを動かせる仕様となっていた。

 

光輝「ありとあらゆるものを出し入れできるアーティファクトみたいだが・・・まさかこんなでかいものまで・・・。」

龍太郎「ウォオオ!!すっげぇ!!!スピード半端無いぜこのバイク!!」

雫「無免許でノーヘル運転・・・現代だったら確実に逮捕決定ね。」

香織「まぁ異世界だからノーカンかな?」

雫「まだ何か入ってたわ・・・小瓶に入った水が沢山入ってるわ?・・・”神水”・・・”飲んだ者はどんな怪我も病も治る奇跡の水”・・・だって。」

香織「南雲君こんな凄い回復薬も入手してたのか・・・。」

光輝「加えてこのバイク・・・これで移動もグッと楽になる・・・良い置き土産を残してくれたよあいつも。・・・よし、次は書物だ。」

 

もう一つの従事に円が重なった文様が刻まれた指輪”オルクスの指輪”を試した光輝。その指輪に刻まれた文様が書斎や工房にあった封印の文様と同じだったことに気がついた光輝は書棚にかけられた封印を解き、めぼしいものを調べていく。すると、この住居の施設設計図らしきものを発見した。通常の青写真ほどしっかりしたものではないが、どこに何を作るのか、どのような構造にするのかということがメモのように綴つづられたものだ。ハジメから教えて貰った書物を開いたものの、七大迷宮の概要までは記載されていたが正確な場所を示すような資料は発見できなかった。現在、確認されている【グリューエン大砂漠の大火山】【ハルツィナ樹海】、目星をつけられている【ライセン大峡谷】【シュネー雪原の氷雪洞窟】辺りから調べていくしかないと判断する。

 

光輝「残りは工房か・・・。」

 

最後に工房へ向かう4人。中には、様々な鉱石や見たこともない作業道具、理論書などが所狭しと保管されており、錬成師にとっては楽園かと見紛うほどである。最近になってここで作業していた形跡を見た光輝はハジメが使ったのだろうと簡単に考え付き、それらを見ながら腕を組み少し思案する。

 

光輝「皆、聞いてくれ。」

「?」

光輝「俺達は・・・無論だけど帰る方法を探す為に、ハジメ同様七大迷宮の攻略に進み他の神代魔法を習得する旅に出る。だがその前に、しばらくここで可能な限り準備しておきたい。恐らくハジメもそうしたはずだ。」

香織「それは分かるけど・・・。」

光輝「無論、ここへ長期間留まる気は無い。ハジメがどんどん先に行く可能性もあるし、いつまで経っても再会出来ないしね。・・・俺も早く合流したい。だから3日だ。3日だけ待ってくれ・・・その間に俺は習得した生成魔法で俺達の武器を更にパワーアップさせる。・・・俺の我儘だけど・・・付き合ってくれるか?」

龍太郎「馬鹿野郎、従えって言え。」

雫「異論は全く無いわ、勿論賛成よ・・・ね、香織。」

香織「・・・うん、分かってる・・・ここで得られるものはまだあるのは分かり切ってるしね。」

光輝「それまでは、皆ここでしばらく疲れを癒してくれ。さっきの風呂も安全が確認できたし入ってきても良いよ。」

香織「やったぁああああ!!雫ちゃん!早速行こう!!」

雫「え・・・えぇ・・・ちょっと待ってってば!」

龍太郎「そんじゃ、俺も少し寝るか・・・お前もあんま根詰めんなよ。」

光輝「あぁ・・・さてと。」

 

光輝の考えに乗り、4人はしばらくこの住処に留まることとなった。早速光輝は工房の設備と残された鉱石や迷宮で手にした鉱石を使い武器のパワーアップに勤しむ(ハジメから受け取った神水の効果を生かしたアーティファクトの構築にも手を出し始める。)その間に3人は折角の神代魔法という事もあり、3階の魔法陣で生成魔法を習得、全員が神代魔法を手にしたのだった。その際にまたオスカーが現れ同じ話をペラペラと話すが無視する。夕刻となり、雫と香織が作った料理を堪能後は再び武器の改造に戻る光輝。

 

龍太郎「風呂上がったぞ。お前もそろそろ入れよ。さっぱりして気分を切替りゃ、作業効率も上がんだろ。」

光輝「クンクン・・・そうするか・・・流石に限界だ。」

 

流石に汗臭さと疲れから龍太郎の言うとおり風呂に入る。その日の晩、天井の太陽が月に変わり淡い光を放つ様を、光輝は風呂に浸かりながら全身を弛緩させてぼんやりと眺めていた。

 

光輝「ふぅ~・・・。」

 

気の抜けた声を発声した突如、ヒタヒタと足音が聞こえ始めた。龍太郎と勘違いした光輝は背中越しに光輝は話し始める。

 

光輝「龍太郎か?風呂が気持ち良いのは分かるが、入ったばっかりだしそんなに焦んなくても明日入れば・・・。」

雫「私よ、光輝。」

光輝「・・・。・・・・本気?」

雫「本気と書いて、マジよ。」

 

バスタオルを巻いた雫は光輝の隣にゆっくりと入り共に星空を見つめ始める。隣を見ないように光輝は夜空だけを見つめ続け雫に話しかける。

 

光輝「雫はもう入ったんじゃなかったっけ?」

雫「二度風呂・・・一回じゃ満足しないわよ。」

光輝「そう・・・。・・・ハジメも結構この住処でお楽しみだったりしてな。あのユエって子とさ・・・。天蓋付のベッド見ただろ?一緒に添い寝とかしてたりして・・・。」

雫「止しなさいよ。香織に聞かれたら、あの子にメッタメタにされるわよ。」

光輝「分かってるって・・・だからツバつけとけって言ったのになぁ・・・こういうことがいつ起こるかもしれないから・・・。・・・まぁとにかく、あいつが無事なのが分かって一安心だ。早く合流しなきゃな。」

雫「えぇ・・・私も早く会いたいわ。」

光輝「それにしても・・・懐かしいな・・・こうして二人で入るの。」

雫「小学校低学年以来かしら・・・。・・・覚えてる?私が苛められてたときのこと・・・。」

光輝「あぁ・・・あの時か・・・。」

 

四歳の時に剣術の才能の片鱗を見せ、家族や門下生達から期待されたことで剣の道を歩んだ雫。当時、道場に入門したばかりの光輝に好意を寄せていたが、小学生の頃、光輝と一緒にいることが気に喰わなかった少女達からやっかみや嫌がらせを受けるようになる。それに気がついた光輝はその嫌がらせをしていた少女達に突然バケツで水をぶっ掛け泣かしてしまう。当初、その少女達の親や道場の師範からも怒られた光輝。バケツに水をかけた理由は”あのブス達が気に食わないから”というただそれだけの理由と嘘をつき更に怒られてしまう。当然、雫に嫌がらせをしていた少女達はそれ以降嫌がらせを受けた光輝に近づかなくなり、雫の苛めはピタリとなくなった。

 

雫「ごめんね・・・私のためにつかなくても良い嘘をつかせちゃって・・・。」

光輝「あの連中が気に食わなかったのは本当さ。見るからに俺の見た目やステータスだけで判断してお近づきになりたいって連中ばかり・・・付き合えるようになれば自分の株も鰻上りって下心が見え見え・・・うざくて仕方が無かったよ。・・・でも、雫は違う。・・・俺を一人の人間として全うに見て、接してくれた。」

雫「////」

光輝「・・・。ここで俺達はまた更なる力を身に着ける・・・・俺達の扱う武器や力は、地上では異端だ。裏切られた聖教教会や各国が黙っているということはないだろう・・・無論ハジメも例外じゃない。兵器やアーティファクトを要求されたり、戦争参加を強制される可能性も極めて高いと考えていいと思う。」

雫「・・・だから?」

光輝「今回の旅は・・・雫も居てくれて本当に良かったと思ってる。これからの旅も・・・俺の傍に・・・いてくれるか?」

雫「・・・。分かってるくせに聞かないでくれる?・・・離れるなって言っても・・・離れる気は無いわよ・・・馬鹿ね///」

光輝「・・・俺の背中は、雫に任せるよ。」

雫「私の落ちつける場所は・・・光輝の背中だけよ・・・この先もずっと・・・ね。」

 

雫の傍に静かに寄り添った光輝は雫の手をギュッと握る。その後、笑顔で更に寄り添った二人は互いに顔を近づきおでこをくっつけながら次に静かにキスを交わす。

 

光輝「・・・なぁ・・・。」

雫「・・・ねぇ・・・。」

光輝・雫「好きだ(よ)。」

 

そして・・・三日後

 

※装備一覧

■光輝

・スプリームソード(光属性・闇属性・火属性・水属性・風属性・土属性)

・ヒヒイロカネの鎧

・神秘の指輪(全ステータスアップ・属性効果大幅アップ)

■雫

・天雷旋風刀(嵐属性・雷属性)

・ヒヒイロカネのベスト

・神秘の指輪(全ステータスアップ・属性効果大幅アップ)

■香織

・アブソリュートメイス(水属性・氷属性)

・ヒヒイロカネのローブ

・神秘の指輪(全ステータスアップ・属性効果大幅アップ)

■龍太郎

・煉獄炎龍拳(炎属性)

・ヒヒイロカネの道着

・神秘の指輪(全ステータスアップ・属性効果大幅アップ)

 

※作成アーティファクト

・再来の腕輪(腕輪からマーキング魔法を打ち出し、マーキングした場所にいつでもワープできる)

・リザレクトオーブ(神水を結晶化し、光球に研磨した空色に輝くオーブ。魔力を溜め込み解放させることで経口摂取させずとも、全体に神水の効果を与える。)

 

新たな装備・アーティファクトの錬成に成功した光輝。更にこの短期間でも雫達は自分達の鍛錬を怠らずに更なるレベルアップ向上を目指し万全な準備を整える。そして、出立の準備を整え一向は魔法陣の中央部に立つ。

 

光輝「すまない皆・・・3日じゃこれが限界だった。」

香織「いや・・・十分すぎるくらいに十分なんだけどね・・・。」

雫「凄いわね・・・神水を半永久的に使えるってことでしょ・・・このオーブ。」

光輝「あぁ、魔力を込めれば何度でも使える。ここの環境も貴重だから直ぐに戻れるようにワープのアーティファクトも作った。何かあればここに戻ってリフレッシュも出来る。」

龍太郎「ここにまた戻れるってのはありがてぇな。」

香織「お風呂を確保できたのは本当に嬉しい限りだよ!ねぇ雫ちゃん!」

雫「ま、汗臭いままじゃストレスも溜まるし良いわね。」

光輝「・・・じゃ、行こう皆・・・。・・・残りの神代魔法習得・・・そしてハジメと再会するために。」

香織「うん!」

雫「えぇ!」

龍太郎「おぅ!」

 

そして4人は再び旅立つ。ハジメとの再会・・・そして神代魔法を手にするために。




俺達の戦いはこれからだ!・・・的な?
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