魔法陣の光に満たされた視界、何も見えなくとも空気が変わったことは実感した。秘密通路と思われる洞窟をどうにか進み、奈落の底の澱よどんだ空気とは明らかに異なる、どこか新鮮さを感じる空気に光輝達の頬が緩む。やがて光が収まり目を開けたハジメの視界に写ったものは念願の地上だった。
光輝「ふぅ・・・ようやく外か。」
龍太郎「よっしゃぁ!地上だぁ!!」
香織「はぁ~・・・太陽の光がまぶしい・・・。」
雫「よかった・・・て言いたい所だけど・・・書物によれば、ここはライセン大峡谷よ。魔法が分解されて使えない場所だから注意しましょう。」
光輝「そうだね・・・っていきなりこれか。」
「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
双頭のティラノサウルス型の魔物に出くわす光輝達。ライセン大峡谷の魔物は凶悪な魔物として有名ではあったものの所詮大迷宮を制覇した光輝達の敵ではなく、魔物は龍太郎の左ジャブで簡単に消し飛んで事無きを得る。光輝達は今後の向かう場所について話し合う。
雫「今後の動向だけど、一番近いのはライセン大迷宮ね。・・・砂漠横断となると、飲み水の確保が難しくなるから樹海側に向かいましょう。書物に会った”ハルツィナ樹海”、そこにも大迷宮があるかもしれないわ。」
光輝「そうだな。上手くすれば町にも立ち寄れそうだ。ハジメの情報も手に入るかもしれない。」
雫「えぇ・・・ただ、樹海は亜人族以外では必ず迷うと言われているわ。この先に兎人族の集落があるはずよ。彼等と交渉して道案内を頼んだ方が得策ね。」
龍太郎「んじゃま!かっ飛ばそうぜ!!」
全員がハジメから受け取ったバイク”シュタイフ”に乗り込みオスカーの得られた情報を元に兎人族の住処へ真っ直ぐに向かう4人。先へ進む中、先頭を走っていた光輝は壁に書かれていた文字を見て急停止する。
龍太郎「どうした?急に止まりやがって。」
光輝「この崖に文字が刻まれている・・・。・・・ハジメの字だ。」
香織「え?」
光輝「”この先の樹海はまだ目指すな。先にライセン大迷宮を先に攻略しろ。ハルツィナ樹海にある迷宮は条件(四つの証・再生の力・紡がれた絆の道標)を満たさなければ挑戦不可能。”」
雫「4つの証?・・・再生の力?・・・。・・・・何の事かしら?」
龍太郎「どちらにせよ、俺達はハジメのおかげで要らぬ時間の無駄遣いをしないで済んだって事だろ?」
光輝「この岩の先か・・・。・・・・ハジメが残してくれたメッセージだ。行こう・・・ハルツィナ樹海の迷宮の条件に関しても後で追々調査を進める・・・今は後回しだ。」
先にライセン大迷宮を見つけたハジメの言葉を信じ、岩の隙間に入る4人。壁面側が奥へと窪んでおり、意外なほど広い空間が存在した。其処には、壁を直接削って作ったのであろう見事な装飾の長方形型の看板があり、それに反して妙に女の子らしい丸っこい字でこう掘られていた。
〝おいでませ!ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪〟
光輝「分かり易い・・・。」
雫「・・・罠?」
香織「でも、ミレディ・ライセンって名前が出るって事は本当じゃないかな?オスカーさんの手記に出て来たライセンのファーストネームだし・・・ライセンの名は世間にも伝わっていて有名ではあるけどファーストネームの方は知られていないから、その名が記されているこの場所がライセンの大迷宮である可能性は高いと思うよ。」
龍太郎「ま、何にせよ行けば分かるだろ?行こうぜ。えーっと入口はっとぉ・・・。」
光輝「おい龍太郎、まだ調べてないのに勝手に・・・。」
ガコン!
龍太郎「え?」
注意しようとした光輝の眼前で、龍太郎の触っていた窪みの奥の壁が突如グルンッと回転し、巻き込まれた龍太郎はそのまま壁の向こう側へ姿を消した。さながら忍者屋敷の仕掛け扉だ。
雫「・・・行きましょうか。」
光輝「そうだな。」
扉の仕掛けが作用して、光輝を先頭に三人は扉の向こう側へと向かう。中は真っ暗だった。扉がグルリと回転し元の位置にピタリと止まる瞬間、無数の矢が襲い来るが光輝は全て掴みとる。その先では同様に龍太郎も全ての矢を拳で撃ち落とした後であった。
龍太郎「おう、お前等。」
光輝「怪我は無いか。」
龍太郎「こんなチンケな矢で俺を傷つけられるかってんだ。それより先に石板があるみたいだぜ。」
雫「ええっと何々・・・?」
〝ビビった? ねぇ、ビビっちゃた? チビってたりして、ニヤニヤ〟
〝それとも怪我した? もしかして誰か死んじゃった? ・・・ぶふっ〟
雫「なんだか随分幼稚な子供みたいね・・・。ミレディ・ライセンって子は・・・。」
光輝「とはいえ、この大迷宮も一筋縄ではいかない場所だ。魔法が使えない以上、細心の注意を払って進もう。」
ミレディ・ライセンの挑発に対し、特に何も興味を示さなかった4人は先へと進む。オルクス大迷宮同様に長期戦になる事を予想して、マッピングを重点に置いて地道に消去法で迷宮攻略を目指し始める。その間にも光輝は攻略中に手に入る鉱石の収集も忘れずに行い、少しずつ錬成師として出来る鍛冶スキルを研鑽して行く。その瞬間、ガコンと床のブロックの一つを踏み抜き、光輝が”え?”と思わず声を出してしまった瞬間に、左右の壁のブロックとブロックの隙間から高速回転・振動する円形でノコギリ状の巨大な刃が飛び出してきた。
龍太郎「俺の後ろに隠れろ!!”硬質化”!!」
龍太郎の気功術の一つである身体硬質化を使い、自分を盾に襲い来るノコギリを全て自分の身体で受け止め破壊する。この気功術に関しては魔法として扱われず、本人の気力を使った能力であるためこの迷宮内でも自在に活用可能となる。魔法が使えない以上、今回迷宮攻略のカギとなるのは龍太郎であるかもしれない。その事を承知していた光輝は龍太郎を乗せる。
光輝「この先のトラップは魔力感知にも引っかからない完全な物理トラップだ。おまけに魔法も使えない・・・龍太郎、この迷宮攻略のカギを握るのはお前だ。頼むぞ!」
龍太郎「お・・・俺かよ?」
光輝「そうだ。お前が居ないと俺達は駄目だ・・・ここの先陣は任せるよ。」
龍太郎「そ・・・そうかぁ?しょうがねぇなぁ、俺がいねぇと駄目なんだから・・・俺がいねぇとぉ・・・。」
雫「チョロい・・・。」
香織「この単純な所が龍太郎君の長所だけどね。」
光輝「(単純・・・)そうか!香織、それだよ!単純に行こう!」
香織「・・・え?」
そしてトラップ地獄の迷宮を進む一行。攻略する中で光輝はある発見をする。トラップが仕込まれたこの迷宮、その分壁が通常よりも脆く薄い弱点を見出し、龍太郎に頼み壁を突き壊しながら進むパワープレイで迷宮攻略する作戦へ切り替える。魔法を使えなくしてあるが故にこの破壊対策は特に講じてないと光輝は読み切る。あまりに単純すぎたこの作戦・・・しかしこれが功を奏したのか見事に的中、迷宮自体が変化する仕様であるこの迷宮、内部には迷宮を変化させるための核が埋め込まれていたがそれをたまたま破壊した龍太郎は特に迷う事も無くこの迷宮を順調に進めたのであった。手の込んだ仕掛けが生み出した弊害とも言えるものである。長方形型の奥行きがある大きな部屋へとかち合う。壁の両サイドには無数の窪みがあり騎士甲冑を纏い大剣と盾を装備した身長二メートルほどの像が並び立っており。部屋の一番奥には大きな階段があり、その先には祭壇のような場所と奥の壁に荘厳な扉があった。祭壇の上には菱形の黄色い水晶のようなものが設置されている。
光輝「いかにもって所だな・・・。」
雫「えぇ・・・でもあの周りの甲冑兵・・・いかにもって感じがしてならないけどね。」
雫の予想は的中した。騎士達の兜の隙間から見えている眼の部分がギンッと光り輝いた。そして、ガシャガシャと金属の擦れ合う音を立てながら窪みから騎士達が抜け出てきた。その数、総勢五十体。騎士達は、スっと腰を落とすと盾を前面に掲げつつ大剣を突きの型で構えた。窪みの位置的に現れた時点で既に包囲が完成している。
香織「じゃ、やろうか・・・ちゃっちゃと。」
龍太郎「ようやく準備運動が出来るぜ。」
4人全員が戦闘態勢を整える。既にオルクス大迷宮を乗り越え旅立つ時の時よりも更に強さを増した4人からしてみれば酷く簡単なことだった。光輝・雫の一振りの剣と刀が簡単に騎士達を斬り刻み、龍太郎の一発のパンチが数十体の騎士達を一網打尽に破壊する。特に後衛の回復役である香織の無双振りにも目を見張る。超重量のメイスを軽々操り、騎士を簡単に叩き壊すその様は最早聖女の面影を残した、狂戦士にも似た戦いを見せ前衛組に勝るとも劣らない戦闘力を見せる。戦いはものの数秒で終わり、先の扉へと進もうとする。しかし・・・
龍太郎「こいつら・・・再生するぜ!」
雫「これじゃキリがないわね・・・。って・・・あれ?」
香織「再生・・・中々しないね・・・。」
光輝「?・・・・とにかく今がチャンスだ。早く扉へ急ごう。」
光輝の判断に従い、騎士達が再生している間に奥の扉へと進み始める。その先には浮遊するブロックに一体の巨大ゴーレムだった。
ミレディ「やほ~、はじめまして~、みんな大好きミレディ・ライセンだよぉ~。」
光輝「あ・・・どうも、こんにちは・・・天之川光輝です。(あ、うっかり挨拶し返しちゃった・・・あんまりにもフランクだからつい・・・。)」
ミレディ「フムフム君は中々に礼儀をわきまえたイケメン君だね。以前来たあの無礼な男の子と違って好感が持てるよぉ~。」
香織「!・・・ハジメ君がここに来たの!?」
ミレディ「名前は聞いてないから知らないけど、多分そうなんじゃないの?」
雫「それ以前にあなた・・・何者?ミレディ・ライセンは人間でとっくの昔に死んでるはずよ・・・オスカーの手記に書いてあったわ。」
ミレディ「おぉ!オーちゃんの迷宮攻略者がまた来たんだぁ!」
龍太郎「(間違いねぇ・・・ハジメだ!)」
光輝「(扉の前に居たあの騎士達・・・あれだけ木端微塵に破壊しながらも再生を始めた。ゴーレムタイプの敵なら何処かに核があるにも関わらず・・・だ・・・倒した騎士達にそれが無かったと言う事は・・・こいつが元締めの可能性が高い!)それなら話は早い。俺達の目的は、神代魔法を手に入れ自分達の故郷へ帰る手段を見つける・・・その為にここへ来た。」
ミレディ「成程成程、じゃ・・・早速やろうかな?これ以上私の正体が知りたければ私を倒してみなさい!」
光輝「皆!!核を破壊しろ!!元締めがこいつならどこかに核があるはずだ!!」
龍太郎「おっしゃああああああ!!」
光輝の掛け声と共に戦闘態勢を整える4人。先手必勝の如く龍太郎は巨大ゴーレムに飛びかかり無防備な胸元にパンチを叩きつける。挨拶代りの一発だったがビクともしない事に驚きながら龍太郎は後方へと下がる。
龍太郎「こいつ・・・ビクともしやがらねぇな・・・。」
ミレディ「当然だよぉ・・・この”アザンチウム鉱石”の装甲を破らない限り、君達に勝ち目は無いよぉ?」
光輝「(この世界で最も硬い鉱石か・・・厄介だな。)」
ミレディ「それじゃ、出血大サービス!私の神代魔法を見せて上げちゃう!」
浮遊する数百体の騎士を見せつけ光輝達を精神的に追い詰め始めるミレディ。その光景を見せられた瞬間に、雫は目にも映らない速さで動く。
ミレディ「これが一気に君達に襲い掛かるわけ!どう・・・謝るなら今の内に・・・。」
ミレディが何かを言いかけた瞬間、空中を疾空しながら数百体の騎士を雷の如き速さで全て斬り刻む雫。そのまま光輝の隣に並び立ち何食わぬ顔でミレディに質問を投げる。
雫「良いわよ?言いたい事があるんでしょ?・・・で・・・なに?」
ミレディ「君・・・良い性格してるね。」
光輝「・・・皆、ゴーレムの相手を暫く頼む。俺はこの巨大ゴーレムを暫く観察する。準備が整ったら、後は総攻撃だ。」
香織「分かった!任せて!」
3人を周辺に浮遊する残りのゴーレムの相手を任せ、光輝は巨大ゴーレムに集中し始める。縮地を使いながら巨大ゴーレムに近づいた光輝は攻撃すると思いきや、剣で軽く突く程度で破壊しようとはしなかった。巨大ゴーレムは纏わりつく光輝を両腕で振り払おうとするも、光輝は簡単にかわし作業を続ける。
ミレディ「君、なんのつもりかなぁ?そんな攻撃でこのミレディちゃんを本気で倒すつもりなのぉ?」
光輝「うん・・・そうだね。」
ミレディ「ピキ!・・・その余裕綽々な態度・・・少しカチンと来たかも・・・。殴り飛ばす!!」
光輝「!」
光輝の態度が癪に触ったのか、攻撃のスピードがどんどん上がっていくことに気づく光輝。しかし光輝はその攻撃にどこか違和感を感じ始めていた。それでも作業は続き、約数分後には全ての身体の打診が完了し、龍太郎達に叫ぶ。
光輝「(速い事には速い攻撃だけど・・・動きに何か違和感というか、ぎこちなさがある・・・)龍太郎!雫!香織!」
「!」
光輝「俺が傷つけたポイントを狙え!」
光輝の言う通りに動く三人。三人は光輝が付けた傷に向かって攻撃を仕掛けようと突進する。ミレディは余裕綽々と言った態度で三人の攻撃を受けようとする。
ミレディ「フフン!ようやくその気になったのかな?でも生半可な攻撃じゃ壊せないってさっきも・・・!」
龍太郎「おらぁ!!」
雫「はぁ!!」
香織「せりゃあああ!!」
光輝が傷つけたポイントを攻撃した瞬間、アザンチウム鉱石製の装甲は”バキャアア”といったガラス割れるような音を鳴らしながら脆く崩れ去り破壊される。三人が驚くも、この状況に一番驚いたのは何よりもミレディ本人だった。
ミレディ「う・・・嘘!?なんで!?(魔法の類は全く使ってない!!だからと言って上級魔法を使ってるわけでも天翔閃みたいな上級技を使ってるわけでもない!!・・・普通の攻撃でなんでアザンチウム鉱石製の装甲が簡単に壊されるわけ!?・・・この子、まさか!?)」
ミレディはようやく先ほどまでの光輝の狙いが分かったものの時すでに遅く、ポイントを全て突いた攻撃により巨大ゴーレムは見る影もなくバラバラに破壊されてしまう。胸元の残骸からコロリと核が転がり、完全なる勝利で一歩手前の状態に光輝達はミレディを追いつめるのであった。
龍太郎「ふぅ・・・あっけなかったな・・・これでジエンドだぜ!」
ミレディ「待って・・・降参・・・私の負けだよ。」
龍太郎「あぁ?そんな出まかせに騙され・・・。」
光輝「いや・・・多分本当だと思うよ。」
龍太郎「光輝・・・。」
雫「根拠はあるの?」
光輝「・・・さっき見せた騎士ゴーレムを浮遊させた魔法・・・多分あれ、重力を操る神代魔法でしょ?それならこの動く足場も全部説明がつく。」
ミレディ「御明察・・・。」
光輝「でもそれだけ強力な魔法なら、この部屋の天井にあるブロックを全部落として俺達をミンチにする事も出来たはずだ・・・でもそういった大技を仕掛けなかった・・・この扉に入る前の騎士ゴーレムたちについてもそうだ・・・再生がやたら遅かった・・・これらの情報から・・・君、もう殆ど魔力が残ってないんでしょ?」
ミレディ「!」
光輝「ハジメがこの迷宮攻略の為に戦った後でまだ数日ぐらいしか経って無いのなら、回復出来てないのも頷けるしね。それに今戦った巨大ゴーレム・・・あちこちにガタが来ていて動きが鈍く感じたよ。なす術がもう無いから降参した・・・違う?」
ミレディ「フ・・・フフフフ・・・完敗だね。君の仰る通りだよ・・・いくら再生出来るとしても、無限ってわけにはいかない・・・どこかで限界はあるからね・・・・。・・・それ以前に・・・君・・・よくあの短時間で”石目”を見抜けたね。」
光輝「気づかれたか・・・。」
龍太郎「何だよ・・・その石目って・・・」
光輝「岩石や鉱物中に存在する割れやすい特殊なポイントさ。この方向に向かって正確に衝撃を与えれば、僅かな衝撃でも簡単に石を割ったり加工したりできるってわけ・・・錬成師なら誰もが知ってる基礎中の基礎の知識だよ。」
雫「だからあの巨大ゴーレムを観察してポイントを探してたのね。」
ミレディ「(そうは言っても、アザンチウム鉱石レベルの石目を見つけるにはそれこそミクロン単位のポイントを即座に見抜く洞察力と鉱石に対する理解が無いと、簡単に出来る事じゃない・・・この子・・・オーちゃんに勝るとも劣らない錬成師の才能があるのかも・・・。)・・・良いよ、君達とちょっと話がしたい・・・この核を持って来てくれるかな?部屋まで案内するよ。」
香織「部屋?」
香織達の乗る浮遊ブロックは、そのまま通路を滑るように移動していく。どうやら、ミレディ・ライセンの住処まで乗せて行ってくれるようだ。そうして進んだ先には、オルクス大迷宮にあったオスカーの住処へと続く扉に刻まれていた七つの文様と同じものが描かれた壁があった。ハジメ達が近づくと、やはりタイミングよく壁が横にスライドし奥へと誘う。浮遊ブロックは止まることなく壁の向こう側へと進んでいった。
ミレディ「やっほーさっきぶりぃ!ミレディちゃんだよ!」
龍太郎「えぇえええええ!?」
雫「まぁ・・・でしょうね。ミレディの本体が巨大ゴーレムだったら、今後現れる挑戦者の監視は誰がやるの?って話だしね。」
光輝「君が本体か・・・。」
ミレディ「ンフフ!よろしくね!」
香織「えっと・・・試練はクリアって事で良いかな?なら・・・神代魔法を・・・私達急いでるの。」
ミレディ「分かってるよ・・・ミレディちゃんもちょっとだけお話ししたいから用件は簡単に済ませようか。」
雫「用件?」
ミレディの言う用件が気になるも、魔法陣の中に入る光輝達。今回は、試練をクリアしたことをミレディ本人が知っているので、オルクス大迷宮の時のような記憶を探るプロセスは無く、直接脳に神代魔法の知識や使用方法が刻まれていく。ものの数秒で刻み込みは終了し、あっさりと4人はミレディ・ライセンの神代魔法を手に入れる。
ミレディ「ミレディちゃんの魔法は重力魔法。上手く使ってね・・・って言いたいところだけど、ポニテちゃんと筋肉君は適性ないねぇ~もうびっくりするレベルでないね!」
龍太郎「大きなお世話でい。」
雫「仕方ないわ・・・得手不得手があるのだから・・・。」
ミレディ「まぁ筋肉君は拳を重くして自分の攻撃力を更に上げるぐらいなら出来るだろうし、ポニテちゃんなら自分の刀に重力を付加して攻撃に変化をつけるぐらいならどうにかなるかな。イケメン君と神官ちゃんなら適性がバッチしだから、修練次第で大きな力になるよ。・・・それとこれも・・・この迷宮を攻略した証、”ライセンの指輪”もね。」
光輝「ありがとう。ハジメにも上げたの?」
ミレディ「まぁ殆ど強盗紛いに近い行為だったよ・・・指輪だけじゃなくミレディちゃんが所有してるアーティファクトや鉱石類も全部ぶんどられたからね・・・。」
雫「そ・・・それは御愁傷様・・・。」
龍太郎「本当にあいつ・・・どうなっちまったんだ?」
香織「ところで・・・南雲君と一緒に女も居ましたかね?」
ミレディ「うん、居たよ。金髪ちゃんに・・・あと兎人族のウサギちゃんも居たかな。」
光輝「兎人族?」
ミレディ「巨乳の可愛い女の子だったねぇ・・・両手に美しいお花を持ってた罪深~い男の子だったねぇ!」
香織「そう・・・ですか・・・・巨乳の可愛い女の子も・・・・一緒だったんですねぇ・・・。」
ミレディ「ん?・・・どうしたのかな君・・・ちょっと怖いよ。」
雫「か・・・香織香織・・・落ち着こう・・・ね?」
香織「大丈夫・・・自分でも驚くぐらいに落ち着いてるから・・・。」
雫「(そういう生死を賭けた落ち着きじゃなくてぇ・・・。)」
龍太郎「ふぅ・・・何だかどっと疲れたぜ・・・。」
光輝「ちょっと回復しておこう。・・・リザレクトオーブを使うね。」
ミレディ「!?」
予め魔力を溜め込んだリザレクトオーブを使い、4人を全回復させる光輝。そのアーティファクトを見た瞬間、ミレディは途端に食いつき始める。
ミレディ「それ!!そのアーティファクト!!だれが作ったの!?」
光輝「俺だけど・・・。」
ミレディ「その効果・・・神水のはず・・・もしかして・・・神結晶を作ったのかい!?」
光輝「??・・・神結晶が何かは知らないけど・・・これはハジメから貰った神水を元に俺が錬成したアーティファクトだよ。オルクス大迷宮で生成魔法を習得したからね。これなら神水を消費しないで魔力を注入して解放するだけで回復効果が得られるからね・・・便利でしょ。」
ミレディ「神水をオーブ化したとか・・・オーちゃん同様の化け物かよ・・・。」
光輝「褒めてるのか貶してるのか知らないけど・・・もう用が無いなら出て行くよ。」
ミレディ「あぁ待って!もうちょっとゆっくりしてってよぉ・・・お・ね・が・い♪」
光輝「・・・。」
ミレディの懇願にしぶしぶ乗る光輝達。ハジメがミレディに無礼を働いたのであれば、その罪滅ぼしにというせめてもの償いをする意味も兼ねてのものだった。
ミレディ「そっか・・・じゃあ君達も・・・あのクソ野郎共とは・・・。」
光輝「そうだね・・・俺達も帰ることが目的だから・・・それ以上のことは出来ないよ。悪いけど、諦めて。」
ミレディ「・・・一つ聞かせて・・・。今までの話を聞いて・・・君は世界を救いたいとか思わないの?」
光輝「・・・。・・・俺も皆も、そのエヒトって神様のお遊びに巻き込まれてこの世界に来た口だ。だから急に世界を救えとかその神をぶっつぶせとか言われても、まるで意味不明だしやれと言われてはいそうですかと受け入れられない。」
ミレディ「・・・そうだろうね・・・。・・・でも、君は・・・それなのにどうして戦える?何のために戦ってるの?」
光輝「何のため・・・俺が戦えるのは・・・友達と家族の為だからだ。」
ミレディ「!」
光輝「ここにいる雫も龍太郎も香織も・・・はぐれて離れ離れになってるハジメも、俺の友達であり家族だからだ。だからもし・・・万が一・・・・俺の家族に手を出そうものなら・・・・・・・・・・・神だろうと教会だろうと、そのクソ共全部叩き潰して殺す覚悟くらいは・・・あるよ?」
ミレディ「ゾクリ!」
光輝の良い知れぬ冷たい視線から恐ろしいまでの覚悟を見て一瞬凍りつくミレディ。3人は光輝の覚悟をとっくに知っていた故にそこまで驚きはしなかった。ミレディは光輝の態度と覚悟に、オスカーと同じ何かを感じ懐かしさにあふれていた。
ミレディ「(あぁ・・・同じだ。・・・家族想いのオーちゃんと・・・家族の為なら、どんな連中だろうと戦う姿勢・・・さっき見せた錬成師としての素質・・・)うん・・・君も、それで良い・・・さっきの子と同じように、君の思った通りに生きればいい。・・・君の名前・・・光輝だっけ?」
光輝「そうだよ・・・。・・・あぁそうだ。君のゴーレムをバラバラに壊しちゃったから・・・代わりといっては何だけど俺が作っても良いかな?」
ミレディ「え?」
光輝「まぁ、半分は俺が作りたいってのがあるんだけどね。」
ミレディ「ま・・・まぁ、好きにしなよ!あのゴーレムを超える何かを作れるかどうか分からないけど、君の錬成師としての実力も見たいからね!」
・・・1時間後
光輝「完成!!!」
ミレディ「ポカーン!」
雫「(やると思ったけど・・・本当に作っちゃったわね。)」
そう、光輝が作ったのはハジメと元の世界に帰ったときに一緒に作ろうと考えていたネオ・ジオングのそれだった。あまりの精巧さにミレディはあんぐりと口を開け空いた口が開かずに居たが、3人は予想通りと言った表情でその光景を見据えていた。
ミレディ「ねぇ・・・これぇ・・・。」
光輝「型式番号NZ-999ネオ・ジオング。シナンジュをコアユニットとした拠点攻略用超巨大モビルアーマーで、サイコフレーム技術を基点としたサイコミュ兵装を多数備えており・・・。」
ミレディ「いやいやいやいや!!!そういう細かい説明はまた今度で良いから・・・ちょっとコウちゃんのステータスプレートみせて!あるでしょ!」
光輝「コウちゃん?・・・まぁいいや、どうぞ・・・。(っちぇ!!!もっとネオ・ジオングについて語りたかったのに!!!)」
ミレディ「!?・・・どぅえええええええ!?なんじゃこりゃああああああああ!!!」
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天之河光輝 17歳 男 レベル:100 + 70
天職:勇者、錬成師
筋力:9900
体力:9500
耐性:9700
敏捷:9850
魔力:9500
魔耐:9800
技能:全属性適正[+光属性効果上昇][+発動速度上昇]・全属性耐性[+光属性効果上昇]・物理耐性[+治癒力上昇][+衝撃緩和]・複合魔法・剣術[+無念無想]・剛力・縮地[+爆縮地] [+重縮地]・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破[+覇潰][+超越]・錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系合成][+鉱物分離] [+複製錬成] [+鉱物複製] [+消費魔力減少][+鉱物分解]・生成魔法・重力魔法・言語理解
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旅立ちの時と比べ大きく成長を遂げた光輝のステータスを見てビックリするミレディ。ちなみに雫達の成長度合いも光輝とほぼほぼ同じレベルであった。
ミレディ「ちなみに・・・後天的に追加された天職はどれ?」
光輝「錬成師。」
ミレディ「この世界に来てどれぐらい経つ?」
光輝「二ヶ月経つか立たないかぐらいかな?」
ミレディ「(そんな僅かな期間でこれだけの錬成師スキルを独学で!?)病的!・・・もうこれ錬成師として病的なまでに執着してるよね君!」
光輝「病的って・・・嫌な言い方するね・・・折角作ったのに。もうあげないよ!」
ミレディ「嘘嘘嘘嘘!!!!頂きます!!使います!!!」
光輝「駄目それじゃ・・・親愛なる光輝先生!使わせてくださいっ!・・・て言って。」
ミレディ「親愛なる光輝先生!使わせてくださいっ!」
龍太郎「何となくだが・・・光輝の奴、ミレディって女を飼いならしてる気がするな。」
雫「気がするじゃなくて飼いならしてるよ・・・あれは。」
香織「うん、主導権握られてるね。」
完成したネオ・ジオングについてミレディへ簡単に説明する光輝。絶大な戦闘力を発揮するが消費する魔力も絶大であるため本来であればコストパフォーマンスが悪い欠点があるものの、巨大ゴーレムの核以外に内部に組み込んだ自作の魔石により、大気を吸収することで半永久的に魔力を蓄え続けながら稼動できる代物となっていた。
ミレディ「じゃ、これで本当にお別れだね。」
光輝「うん、色々ありがとう。」
ミレディ「・・・。・・・・最後に、一つだけ良いかな・・・コウちゃん。」
光輝「何?」
ミレディ「黒縁のメガネを錬成して・・・かけてくれるかな?」
光輝「?・・・良いけど。」
ものの数秒で度なしのメガネを錬成する光輝。メガネをかけ、その姿を見たミレディはオスカーと同じ面影を重ねたミレディはより懐かしさがこみ上げ、ゆっくりと光輝に近寄りながら光輝の頬を両手で触る。
ミレディ「オーちゃん・・・。」
光輝「あの・・・。」
ミレディ「(ねぇ・・・オーちゃん・・・見てる?・・・・君を超えるかもしれない逸材が・・・私達の光が・・・目の前に居るよ・・・それも・・・二人同時にだよ・・・!)う・・・・うっ!!」
光輝「大丈夫?」
ミレディ「ううっ・・・・間違ってなかった・・・私は・・・間違ってなかった・・・!」
香織「どうしたんだろ・・・急に・・・。」
雫「よくよく考えたら・・・あの子は何千年と気の遠くなるぐらいの時をたった一人で過ごしてきたのよね・・・懐かしい仲間も家族も先に逝ってしまって・・・それでもずっと一人でこの世界を変えてくれる希望が現れることを信じて、ずっと生きてきた・・・誰にも頼れない状況が一変したから、心の重荷が降りて溜まってた感情があふれたんじゃないかな?・・・光輝から出てくる、オスカー・オルクスの面影をきっかけに・・・。」
龍太郎「・・・。」
オスカーの面影を見て、いつものウザさが消えうせ光輝の胸に蹲りながら涙を流せないながらも泣きじゃくるミレディ。どうしたら良いか分からない光輝であったが、震えるミレディの肩を片手で優しく置き、泣き止むまでずっと黙っていた。その様子を察した3人もその場で光輝に同様に黙って見守る。そして・・・
ミレディ「ありがとう・・・もう大丈夫。」
光輝「じゃあ、今度こそもう行くよ。そうだ・・・このメガネもあげるよ。俺は使わないし・・・。」
ミレディ「・・・。・・・ありがとう・・・オーちゃんのときと同じで、神代魔法を継承したその魔法陣が外への入り口になってるから・・・”ライセンの指輪”を使ってね。」
雫「分かったわ・・・それじゃあ・・・。」
ミレディ「・・・クス!よっぽど君達は友達想いなんだね!あの子が羨ましいよ・・・本当・・・羨ましい・・・。」
香織「・・・。ミレディちゃん・・・今度・・・また遊びに来ても良い?」
ミレディ「!」
香織「トラップは無しだよ。ね!皆!」
光輝「ま、俺のネオ・ジオングを使った感想も聞きたいしね。」
龍太郎「まぁ・・・別に良いんじゃね?」
雫「勿論。」
ミレディ「クス・・・うん!」
魔法陣から今度こそライセン大迷宮を脱出す4人。消えてしまった4人に対し、ミレディは何度も手を振りながら彼らを温かく見送る。その後、光輝から手渡されてメガネを見つめ、再び声を震わせながら涙を流さず泣き始める。
ミレディ「・・・オーちゃん・・・皆・・・。・・・早く会いたいよ・・・。」
ミレディちゃん・・・独りぼっちは寂しいもんな・・・